
パーソナルトレーナーとして活動しつつ、運動や食事について楽しく学べる動画を発信している人気動画クリエイターの片倉岳人さん。YouTubeのチャンネル登録者数は90万人を超え、書籍『結局これが一番やせる! 努力0.1%ダイエット』を上梓するなど、幅広い世代に支持されています。
インタビュー前編では、片倉さんのキャリアとパーソナルトレーナーになった経緯、仕事の向き・不向きについて伺いました。
※インタビュー後編はこちら
キャリアプランが明確じゃなくても問題ないです。パーソナルトレーナー・片倉岳人が語るキャリアの考え方
明確なビジョンを持つよりも、流れに乗って生きてきた
──まずはキャリア初期のお話から聞かせてください。片倉さんは大学でスポーツ系の学科を専攻された後、新卒で繊維系商社に就職されていますよね。なぜそのような進路を選ばれたのでしょうか?
浅い理由で申し訳ないんですが、「アパレルって身近だし」くらいにしか考えていませんでした。ほぼバイト感覚です。というのも、当時僕が所属していた陸上部には早めに就活をするのをあまり良しとしない文化があったんです。「インターン……とは?」みたいな。
そもそも大会があるから就活に熱心な人もあんまりいなかったんですよね。だから企業分析は浅かったし、業界研究もほとんどせず。たまたま勤めた会社がそこだったというだけで、他に受けていたのもパチンコ業界……というか、その2社しか本格的には受けていないんです。

──なぜその2択だったんですか? 繊維系商社とパチンコ、あまり接点が見えないような……。
これも身近だったからですね。僕自身はそんなにハマっていたわけではないけれど、周りにパチンコをやっている人が多くて。大学時代は田舎だったし娯楽が少なかったんです。
──スポーツ系の進路に進もうとは?
思わなかったですね……。スポーツメーカーさんに就職するのは狭き門だとは知っていたし、そのハードルを突破するほどの熱量もなかったので。
──会社員をやりながら陸上を続ける選択肢もあったのではないでしょうか。
いや、さすがにそれはきついと思っていました。大学までにやりきった感覚もあったし、そもそも入学した時点で才能の違いを痛感していたんです。オリンピックに出るような人を前にすると、自分にはそこまでの才能がないんだと思ってしまって。大学3年時にはすでにトップを目指す熱量ではなかった気がします。
──なるほど。ではその頃は、将来についてはどう考えていたんでしょうか。
正直なところ、ビジョンはゼロでした。特に何も考えていない。その時々の流れに身を任せてきた感が本当にあります。今でもそれはわりと変わらないんですけどね。
「生きるための逃走」新卒で入った会社を2年未満で辞める
──新卒で入社した繊維系商社は2年未満で「社風が合わず」やめたそうですが、具体的にどんなところが合わないと感じたんでしょうか。
そこは平均年齢が高くて若い人が少なく、飲み会も多い会社だったんです。「家帰って映画観たいなあ〜」とか思いながら飲み会に参加していました。そういう不満やストレスが積もり積もってしまったんです。
──辞めるのも簡単ではなかったのでは? 「3年くらい勤めるのが当然」みたいな無言の圧力もあったと想像できるのですが。
めちゃくちゃありましたね(笑)。でも、そんな圧力よりも今の環境が「つまらない」という気持ちが超えていました。上司と同じ方言を聞くだけでものすごいストレスを感じていて、どうにかなってしまいそうだったので、一刻も早く辞めなければと。「生きるための逃走」という感じです。

──それはかなり辛い時期でしたね。
本当に上司や先輩たちとノリが合わなかったんです。
──「せっかく新卒で入れたのに」「転職できるだろうか?」といった葛藤はありませんでしたか?
それよりも 現状への拒否感が強かったです。周りからは辞めることを止められたけれど、若手のいちばん上の世代の人の働き方や待遇を聞いた時に「このストレスの先にある自分の姿」が少し見えてしまったような気がして…。それが逆に辞める後押しになりました。
──会社を辞めたあとはスポーツジムでアルバイトを始められたそうですね。
すぐに始めた訳ではなくて、三カ月くらいは何もしていなかったと思います。その後、パチンコ屋とスポーツジムでバイトを始めました。パチンコ屋は就活で身近だったのと家から近かったので、ジムは健康になりたいなと思って。
当時はストレスでお酒を飲んでいたし、仕事帰りに毎日チョコを買って帰るような生活をしていたので、太ってはいないけれど不健康な自覚があったんです。だから健康になれる趣味が欲しいなと思ってジムにしました。バイトとして入れば無料でマシンを使えてお金ももらえておトクじゃん、みたいな気持ちでしたね。
──筋トレは嫌いだったんですよね?
嫌いでしたね。陸上では「筋肉ではなく技術で走りたい」と思っていたんです。今考えると本当にこじらせてましたね(笑)。だから大学時代、ほとんど筋トレはしていません。大学の同期が聞いたらびっくりすると思います。「お前、そもそもジムにすら来なかったじゃん」って。
でも健康になるためにはジョギングより筋トレのほうがマシだったというか。屋外を走るのが嫌だったんですよね。
──陸上部でしたよね(笑)?
はい、陸上部で、短距離走をやってました(笑)。でも短距離走も今思えば、たまたま足が速かったからやっていただけで、これも流されていたような気がしますね。陸上が好きというより、陸上をやっていると自己肯定感が満たされるからやっている。昔はそれが自分の個性だと思っていたんです。
だから陸上をやめてからは個性が薄れてしまった気がしていました。強みがないことが悩みでしたね。コンプレックスとまでは行かないけれど、数年間はモヤモヤしていた気がします。
──スポーツジムでアルバイトを始めた後はすぐにパーソナルトレーナーになったんですか?
いや、すぐではなかったです。2年くらい期間はありました。パーソナルトレーナーがいるジムだったので、先輩たちの仕事を見ているうちに「自分にもできるんじゃないか?」と思うようになって。それと、バイトが受け持つクラスがあって、自分でクラスをやるうちに少しずつその思いが育っていった気がします。
人生はちょっとした選択の結果。「筋トレが嫌い」だったからこそ今がある。
──実際にパーソナルトレーナーになってみて、学生時代から素直に筋トレをしておけばよかったと思ったことはありますか?
でも、当時素直に筋トレしていたら、今YouTubeをやっていないかもしれないんですよね。そう考えると「別にやんなくていいよ」と思います。やっていなかったからこその今なので。
今の自分があるのはたまたまだとよく思うんです。タイムトラベルじゃないけれど、過去に戻って何かをやっていたとしたら、世界線がずれてしまうんじゃないかって。だから自分の過去は何ひとつ直さなくていいと思っています。「あの時これをしておけばよかった」みたいなことはひとつもありません。
ただ、もしも生まれ変わるとしたら「いろんなことやったら?」とは思います。部活しかしていなかったので、他にもいろんなバイトをしたり、インターンをしてみたり。
──すごい。自分の人生を肯定できているわけですよね。逆に「あれはやっておいてよかったな」ということはありますか?
大学の授業で「機能解剖学」という授業がありました。筋肉の場所や機能を学ぶ授業です。筋トレは嫌いだったけれど単位取得のために受けたんです。そのおかげで、トレーナーの資格を取るのがめちゃくちゃ簡単でした。ほぼノー勉強で合格したんです。だって知ってることばかりだったから。
まるで、自分が「なろう系主人公」にでもなったような感覚でした。いつ役に立つかはわからないけれど、とりあえずやっておけばそれが後から効いてくるかもしれない、やらないよりはやっておいたほうがいいんだと学ぶ良い経験になりました。
──ご自身では、パーソナルトレーナーに向いていると思いますか?
正直にいうと、向き・不向きはまだわかっていません。YouTubeもそうです。向いているからやっているという感覚ではないし、不向きだとも思っていない。どちらでもなくて普通。ただ、楽しんではいます。
パーソナルトレーナーの楽しいところは、まずはいろんな人と話せること。いろんな人の背景を知って、その人の人生を疑似体験できる気分になれるのが楽しいです。ただそれは、やってみてからわかったことですね。もともと自分は人と話すことがあまり好きではなかったタイプでしたから。
もう一つの楽しみは、ジムで他のトレーナーの指導を見ながら、「自分だったらこうするかもな」と考えることです。単に与えられた業務をこなすのではなくて、「自分ならこうする」という考えを反映させて改善していく試行錯誤のプロセスにやりがいを感じていました。

──嫌いな筋トレに関連した仕事なのに、やってみたら思っていた以上に楽しかったんですね。
実際のところ、筋トレを好きになったということでもないんです。パーソナルトレーナーの仕事を通じて得られる経験に楽しさを見出したという感じです。
仕事をしていると自分には向いていないと思っている業務を振られることってありますよね。でも、実際にやってみると楽しさを感じる部分って何かしらあると思うんです。この仕事に向いているよりも、この仕事楽しい!と感じる方が続けられますよね。ポジティブ思考というか、そういった楽しさを見出す姿勢って大事なんじゃないかなと。
そのあたりの気持ちは今も変わらないですね。YouTubeの楽しいところもパーソナルトレーナーと同じで試行錯誤できるところですし。
「こうやったら伸びるのかな?」「こうかな?」と試して、リアクションを見て、そのリアクションを元に、今度は少しずらしてまた反応を見て……というふうに、壁打ちしているみたいに結果を見ながら工夫できるのが楽しいんです。これもやってみてから知った楽しさですね。
※インタビュー後編はこちら
キャリアプランが明確じゃなくても問題ないです。パーソナルトレーナー・片倉岳人が語るキャリアの考え方
【プロフィール】
片倉岳人(かたくらがくと)
2019年にYouTubeチャンネル「ダイエットの知恵袋」を開設。パーソナルトレーナーの経験を活かし、おすすめの食べ物や運動法などの役立つダイエット情報を発信中。著書は『結局これが一番やせる! 努力0.1%ダイエット』(KADOKAWA)。
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