前代未聞、72時間ぶっ通しの生放送! 稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんが事務所退所後に初共演し、素顔とホンネでトークやイベントを繰り広げるという「72時間ホンネテレビ」。
2017年11月は日本中がこの話題で持ちきりになり、Twitterのトレンドワードでも世界1位を獲得するなど、その大きな成功は、時間を経たいまでも話題が絶えません。
この突き抜けた番組は、テレビ局が制作したものではなくインターネットテレビ「AbemaTV」から生まれたものでした。インターネットとスマートフォンの普及により若者のテレビ離れが叫ばれている中、いま熱く盛り上がるインターネットテレビ。その役割とは、そしてユーザーの心をつかむ理由とは? その可能性や番組制作秘話について、同社のプロデューサーで、オリジナルドラマや若い女性をターゲットにした恋愛リアリティーショーなどを担当している横山祐果さんに伺いました。
テレビ離れ世代がネットで見る“尖った”テレビ
2016年4月に本開局した「AbemaTV」は、“無料で楽しめるインターネットテレビ局”として展開する、新たな動画配信サービスです。オリジナルの生放送番組など多彩な番組を約25チャンネル、会員登録不要で全て無料で提供しています。テレビを見るような感覚でスマートフォンやPC、タブレットなどさまざまな端末から利用することができるほか、「Google Cast」や「Amazon Fire TVシリーズ」などのテレビデバイスでも利用することができます。
約25チャンネルの中には、大きく分けて「AbemaTV」がオリジナルで制作するニュースやバラエティーなどの番組と、「アニメ」「ドラマ」「スポーツ」など、外部から調達した番組の2種類が存在します。
何より、「AbemaTV」の大きな特徴は、視聴者のターゲット層がテレビ離れ世代ということ。
「10代~30代でテレビを習慣的に見なくなった、なおかつ、生活の中心にスマートフォンがあるような若者をターゲットにした番組づくりを積極的に行っています。ですので、10代女子中高生向けの恋愛リアリティーショーなど、より絞られた特定のターゲットから熱狂的な支持を得られるような“尖った”番組づくりを意識していますね。
ユーザーの約8割がスマートフォンで視聴するため、引きの画よりアップに寄った画が多いなど、小さな画面でも見やすいような画づくりも意識しています。昨今、スマートフォンで楽しむコンテンツはデザインがスタイリッシュなものやきれいなものが多いので、テロップなども含め、デザイン性にもこだわっているんです」
さらに、インターネットならではの機能も、インターネットテレビが支持される大きなポイントです。
「コメント機能やTwitterとの連携機能など、他の視聴者の反応をリアルタイムで見ながら番組を楽しんだり、SNSで発信したりすることも可能なため、テレビとはまた違う楽しみ方・利用のされ方があるかと思います」
SNSでつながっている誰かと放送中の会話を楽しみ、おもしろい番組やシーンをシェアする。次世代のテレビは個人で楽しむのではなく、同世代のみんなで楽しみ盛り上がるものといえるかもしれません。
AbemaTVが生まれる場所、「トンガリスト会議」
AbemaTVでは、魅力的な番組づくりを行うための取り組みのひとつとして、隔週で「トンガリスト会議」というものを実施しています。
「これはテレビ朝日とサイバーエージェントのメンバーから構成されたAbemaTVの制作リーダー陣が集まる会議で、『尖った』=『その番組を見るために、わざわざAbemaTVをつけたくなる企画か』を基準に番組企画のアイデアを持ち寄り、社長の藤田に直接企画を提案するというもの。企画はその場で議論し、ポイントがつけられるので、参加する制作陣は切磋琢磨して企画提案をしています。
よく、『テレビではできないことを狙っているのでは』と思われがちですが、決して、ただ過激なものをつくりたいと思っているわけではありません。どうしても見たくなるようなコンテンツ、誰かの熱狂を生むようなコンテンツをつくることが『尖っている』の定義だと考えています」
そんな「トンガリスト会議」を重ねているAbemaTVだからこそ、大きな反響を呼ぶ番組が続々と誕生しているのでしょう。
例えば、5月に放送した「亀田興毅に勝ったら1000万円」。
こちらは、元プロボクサーの亀田興毅さんが一夜限りでリングに復活し、賞金1000万円を懸けて一般応募で選ばれた4人と対戦するという番組。当時、歴代最高視聴数の1420万視聴を記録し、番組自体もインターネットをはじめ、テレビ、新聞など多くのメディアにも取り上げられるなど、とても大きな反響がありました。
「1000万円の賞金を懸けて闘うというコンセプトをはじめ、少し過激な要素も含むので実現までのハードルは高いものでした。でもインターネットテレビ局のAbemaTVだからこそ挑戦できた番組だったといえるのではないかと思います」
2月に放送した女子高生の恋愛リアリティーショー「オオカミくんには騙されない」も大ヒット。この番組は、恋愛をしたい女子高生4人とイケメン4人がデートを繰り返し、恋に落ちていくまでを追いかけるドキュメンタリー。
「大きなポイントは『男子の中には“本気で恋をしようとしていない”うそつきオオカミくんが一人以上いる』というルールを取り入れたこと。その結果、ネット上での議論が大いに盛り上がり、10代の女性を中心に高く支持されるようになりました」
7月には続編「真夏のオオカミくんには騙されない」を放送し、「2017年ティーンが選ぶトレンドランキング」にもランクインするなど、10代の女性という特定のターゲットに向けた番組づくりでその心をわしづかみにしました。視聴者目線のコンテンツづくりへの思いが功を奏したのではないでしょうか。
次世代のスターはインターネットテレビから?
横山さんは現在、新たな取り組みとしてAbemaTV初となる完全オリジナルドラマ「AbemaTVオリジナルドラマ進出記念作品 #声だけ天使」を担当しています。コンテンツにこだわり続けるAbemaTVだからこそ、苦労や不安も多いそう。
「この作品は、劇作家、演出家、劇団扉座の座長で、『スーパー歌舞伎2ワンピース』など数々の舞台やドラマを手掛けている横内謙介さんが、AbemaTVのために脚本を書きおろしてくださいました。横内さんの力に頼らせていただきながらも、完全オリジナル作品となるため、世界観やストーリーの流れをつくるところは、監督を中心に制作するスタッフと共に試行錯誤の連続でした。キャストは有名な方ばかりを起用するのではなく、脚本にフィットする方を新たに発掘するため、1,000人もの大規模なオーディションを実施。
視聴者の皆さんにどう届けることができるか手探りで不安な部分もありますが、ゼロから携われるやりがいもあります。ドラマというよりも、一つの映画を見ているような作品にしたいですね」
※【スーパー歌舞伎2ワンピースの「2」は、正式にはローマ数字の2の表記です】と追記する
ちなみに本作の制作費は全話で3億円ほどなんだそう。これは地上波の番組と同じ規模感の金額。それにしても1,000人のオーディションとは驚きですね。今後は新たなスターがインターネットテレビから続々と登場するかもしれません。
インターネットテレビは、ネット発のマスメディアになれる
試行錯誤を重ねながら挑戦を続ける「AbemaTV」には、開局当初から大きな目的があります。
「インターネットテレビは、インターネット発のマスメディアになれる可能性があります。AbemaTVはそれを目指しています」
テレビや新聞だけがマスメディアを名乗る時代は衰退しつつあり、インターネットとスマートフォンの普及で、インターネットテレビがそのポジションへと近づきつつあります。
「具体的な数字をあげると、1週間での利用者数が1000万人の規模になれば、マスメディアと呼べるメディアになれるのではないかと考えています。多くの方に日常生活の中で習慣的に利用してもらえるサービスにすることを目標に、思わず見てみたくなるような番組づくりを続けていきたいんです。
若者たちを熱狂させるような番組をつくりたいと思っていますが、特に、若者たちの生活の中心にあるSNSで大きな話題を生み出すことに番組づくりを通して挑戦していきたいですね」
スマートフォンが大きく変えた、私たちの生活スタイル。毎日利用するSNSと連動したインターネットテレビは、同世代の声を聞いて刺激を受けたり、自分の価値観を広げたいスマホ世代のキャリアコンパス読者にとって、とても相性がいいメディアなのではないでしょうか。
「テレビがつまらなくなった」を覆し、今後若者を熱狂させていくのは、インターネットテレビをはじめとする“次世代メディア”なのかもしれません。
(取材・文:ケンジパーマ/編集:東京通信社)
識者プロフィール
横山祐果(よこやま・ゆか)
2008年、サイバーエージェントに新卒で入社。企画・運営した携帯ゲーム「私のホストちゃん」が人気を博す。その後、「ガールフレンド(仮)」をヒットさせ、29歳で同社初の女性執行役員に就任。2016年より「AbemaTV」の制作部門へ異動、自身が企画した「オオカミくんには騙されない」などのオリジナル番組のプロデューサー。著書に『フツーの女子社員が29歳で執行役員になるまで(仮)』がある。
AbemaTV:https://abema.tv/
●番組情報
「AbemaTVオリジナルドラマ進出記念作品 #声だけ天使」
企画から脚本まで手がけた完全オリジナル連続ドラマの第一弾。アニメの聖地・池袋を舞台に、声優に憧れ上京してきた主人公・ケンゾウ(主演・亀田侑樹)と同じ志を持つ4人の仲間の、友情と純愛、挫折と希望を描く青春群像劇。
2018年1月15日(月)より、毎週月曜日夜10時から10週にわたり放送。
※この記事は2018/01/23にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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