「相槌をもっと上手に打ちたい」「聞き上手になりたい」と感じたことはありませんか? 相槌は、コツさえ押さえれば、誰でも上達する会話スキルの一つです。効果的な相槌を打てるようになると、ビジネスシーンでのコミュニケーションもさらにスムーズになるでしょう。
今回は、そんな相槌について、社会人基礎力協議会の代表理事である長尾素子さんに伺った話をもとに、その重要性や種類、相槌を打つときのポイント、やってしまいがちなNG相槌、効果的な打ち方について解説します。
相槌を打つ重要性とは
私たちは、会話をする際、「話した内容が伝わっているか」「聞き手がどう思っているか」といった点を、聞き手の相槌や表情によって確認しています。
例えば、直接的な言葉がなくても、相槌や顔の表情、うなずきなどから、「聞いてもらえている」「理解してもらえている」と読み取れると、安心して会話を続けられます。一方、聞き手が無表情だったり、困惑していたりすると、不安を感じる人も多いでしょう。
このように、コミュニケーションの内容や質は、話し手の発言や話し方だけでなく、聞き手の相槌によっても変わります。そのため、コミュニケーションを円滑に進めるには、聞き手が効果的な相槌を打つことが重要なのです。
ここからは、相槌を打つことで得られる効果について、詳しく解説します。
話し手の発言が増える
「相槌」という言葉は、もともと、2人の鍛治職人が槌(ハンマー)を交互に打ち交わして刃物を作る様子を表しており、そこから派生して「聞き手が話し手に合わせて反応すること」を指すようになったといわれています。
交互に打つという意味では、相槌は、「餅つき」にも似ています。餅つきは、「杵で餅をつく人」と「臼に手を入れて餅を返す人」が行う共同作業です。餅を返す人がもたつくと、餅をつく人の手が止まってしまいます。
餅つきと同様に、聞き手が相槌をリズミカルに打てるようになると、話し手の発言が活性化され、会話も自然と弾むでしょう。
話し手のモチベーションが上がる
話し手のモチベーションを上げられるのも、相槌の効果の一つです。例えば、プロジェクトの完了報告をしたときに、上司が笑顔で聞いてくれたら、自然と会話も弾み、仕事へのモチベーションも上がるでしょう。
無理にポジティブな相槌を打たなくても、相手に向き合い、笑顔でうなずくだけで十分です。話し手の気持ちが上向きになり、コミュニケーションも仕事も円滑に進められるようになります。
聞き手の感情を伝えられる
聞き手は、相槌だけでなく、相槌を打つ際の声のトーンや顔の表情、ジェスチャーなどの「非言語コミュニケーション」から、自分の感情やメッセージを話し手に伝えています。
「うん、うん」といった相槌は、話を聞いていることの意思表明になりますが、退屈だと感じている場合は、声のトーンなどに表れることもあるでしょう。
短い相槌だからこそ、非言語の部分にもインパクトがあることを意識することが大切です。
会話をコントロールできる
相槌は、話し手のモチベーションや話の展開を左右することも少なくありません。例えば、「あっ」と言って、話し手の気を引いてから、「そろそろ次の約束がありまして……」と、会話を切り上げたことがある人も多いでしょう。
このように、相槌には、話の流れを変えたり、話を終わらせたりする効果があります。相槌のスキルが上がると、聞き手に回っていたとしても、会話のペースをコントロールできるようになるでしょう。
相槌の種類と具体例
相槌は、一般的に「単純相槌」「反復相槌」「共感・同調相槌」「要約相槌」「推進相槌」の5種類に分類されます。具体例を交えて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
単純相槌
「はい」「ええ」「うん」といった基本の相槌は、「単純相槌」に分類されます。単純相槌は、話し手の発言に対して、「聞いている」「関心がある」といったメッセージを伝えるための相槌です。適切に打つと、話し手に安心感を与えることができ、会話もスムーズになります。
(具体例)
「〇〇さんにお願いがあります」
「はい」
「明日A社を訪問するので、君に同行をお願いしたいと思っています」
「ええ」
反復相槌
「反復相槌」は、話し手の発言の一部を繰り返す相槌です。適切に使えば、「聞いている」「理解している」というメッセージを伝えられるだけでなく、自分の理解が正しいか確認することも可能です。
(具体例)
「明日A社を初めて訪問するので、君に同行をお願いしたいと思っています」
「A社への訪問に同行するということですね。承知しました」
要約相槌
「要約相槌」は、話し手の言ったことを区切りの良いところで要約し、内容を確認する相槌です。反復相槌と似ていますが、要約相槌では、相手の発言を繰り返すのではなく、自分の言葉で要約したうえで相手に投げかけます。
お互いの理解にずれがないか確認し、齟齬が生じている場合はその都度調整できるのが、要約相槌のメリットです。話し手は相手の理解度を確認できるので、安心して会話を展開できます。
(具体例)
「明日A社に初めて訪問するので、君に同行をお願いしたいと思っています」
「新規開拓ということですね。分かりました」
共感・同調相槌
話し手の感情に配慮し、共感や同調を示すときに使う相槌は、「共感・同調相槌」に分類されます。共感・同調相槌では、あくまで共感を伝えているだけなので、相手のメッセージに同意したことにはなりません。
声のトーンを相手に合わせて「へえ~!」「なるほど」とリアクションしたり、「よかったね」「大変だったね」と、相手の感情を言語化したりすると、話し手が安心感や親しみを感じ、コミュニケーションが促進されます。共感をさらに強めたいときは、反復相槌と組み合わせると効果的です。
(具体例)
「先月は出張が続いて大変だったよ」
「出張続きだったの? それは疲れたでしょう」
推進相槌
「その後どうなった?」「なぜそうなったの?」といったように、話し手の言葉をさらに引き出したいときに使うのが、「推進相槌」です。
推進相槌には、話し手の話をさらに深堀りし、続きを引き出す効果があります。「関心をもって聞いています」「もっと知りたいです」といったメッセージを伝えられるのが特徴です。
(具体例)
「先月は出張が続いて大変だったよ」
「それは大変だったね。どこに出張だったの?」
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相槌を打つときのポイント
ここからは、相槌を打つときのポイントを解説します。
相手との関係性に合わせて相槌を変える
敬語と同様に、相槌も、相手との関係性に合わせて使い分ける必要があります。
例えば、「へえ~」「なるほど」などの相槌は、相手を評価するニュアンスが含まれるため、顧客や上司には不適切な相槌となる場合があります。同調したいときは「おっしゃるとおりです」、相手の発言に納得したときは「勉強になります」など、ふさわしい相槌に置き換えると良いでしょう。
声のトーンや表情にも意識を向ける
実は、オーラルコミュニケーションでは、言葉よりも、声のトーンや表情、仕草など、非言語の部分のほうが、影響力が大きいといわれています。
例えば、驚いたような明るい表情で「へえ〜!」と言われれば、ポジティブに聞こえますが、小さい声で目を見ずに「へえ……」と言われたら、ネガティブに聞こえるでしょう。「よかったね」といったポジティブな相槌も、暗い表情で言われたら、嫌味に聞こえるかもしれません。
このように、コミュニケーションでは、「何を言うか」よりも「どのように言うか」が重要です。フレーズだけでなく、非言語の部分にも気を配ってみましょう。
相手の感情に配慮する
相手が喜んでいるときに同じような表情をしたり、悲しんでいるときに声のトーンを下げたりすると、共感が伝わるため、信頼関係の構築に役立つといわれています。このように、非言語の要素を相手に合わせるコミュニケーション手法を「ミラーリング」と言います。
ミラーリングは、相槌にも応用可能です。「否定せず聞いてくれた」「共感してくれた」という安心感は、信頼関係を深めるきっかけになります。例えば、同僚が「今回の商談、うまくいかなかったんだ」と、落ち込んだ様子で話しかけてきたら、無理に励ましたりせず、沈んだトーンで「そっか……」と相槌を打ってみましょう。
バリエーションをつける
相槌は短いだけに、意味もなく繰り返すと、悪目立ちしてしまいます。「はい」「ええ」「へえ」「そう」などは、つい繰り返したくなる相槌ですが、それが続くと、軽く受け流されていると感じる人も少なくありません。
対策としては、レパートリーを増やしてバリエーションをつける方法がおすすめです。普段使っていない相槌があれば、レパートリーに入れてみるのも良いでしょう。
質問を織り交ぜる
区切りの良いところで質問を入れるのも効果的です。日常会話でも活用できますが、ビジネスシーンで実践すると、仕事をさらに円滑に進められるようになります。
例えば、上司から「会議用の資料を、金曜の午前までに用意してほしい」と指示されたら、「はい」「承知しました」と相槌を打つだけでなく、「先月の月次報告書のことでしょうか」「正午までにお渡しすれば良いでしょうか」などと質問をしてみましょう。
誤解やミスが減るだけでなく、「きちんと理解している」というメタメッセージを伝えられるので、相手に安心感を与えられます。
文化的な違いを理解する
日本人は相槌を頻繁に打つことで知られています。一方、英語圏などでは、相手が話している間はじっと聞き、相手が話し終わってから話し手になるスタイルが一般的なので、話の途中で相槌を打つと、違和感を覚える人もいるようです。
外国人と話す場合は、このような文化的な違いがあることを意識しておくと、不要な誤解を避けられるでしょう。
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ついやってしまいがちなNG相槌
会話を円滑にしてくれる相槌ですが、使い方を間違えると、意図しないメッセージが伝わったり、誤解の原因になったり、会話が弾まなくなったりすることがあります。
ここでは、ついやってしまいがちなNG相槌を4つ紹介します。
相手の話を遮る
よどみなく話しているときに、唐突な相槌が入ると、「話を遮られた」と感じる人も少なくありません。相槌が頻繁すぎると、急かされているように感じて、うまく話せなくなる人もいるでしょう。
そのため、相槌を打つ際は、タイミングや頻度に気を配ることも大切です。話に区切りがついたときや息継ぎで間があいたときに、うなずいたり、「はい」「ええ」などの短い相槌を入れたりすると、リズミカルでスムーズな流れになります。話し手が気持ちよく話せるようになり、会話も弾むでしょう。
相手の目を見ない
話し手の目を見ずに相槌を打つと、「聞いているのかな」「ちゃんと伝わっているかな」「何か変なことを言ったかな」と、話し手が不安を覚えてしまいます。「はい」「ええ」と言っていたとしても、相手の目を見ていなければ、どこか上の空で心ここにあらず、という印象になるでしょう。
相槌を打つときは、表情やアイコンタクト、ジェスチャーなどを意識することが大切です。まずは、話し手の目を見ることを意識してみましょう。
声のボリュームが不適切
相槌には、相手にフィードバックを伝えることで、会話のキャッチボールを促す働きがあります。
聞こえないくらいの小声だと、相槌の役割を果たせず、話し手に不安感を感じさせてしまう場合もあるでしょう。反対に、必要以上に大声で相槌を打つと、高圧的な印象を与えてしまうことも。
相槌を打つ際は、声のボリュームにも気を配り、会話が双方向的になっているか、確認するようにしましょう。
同じ言葉を繰り返す
同じフレーズでも、「はい」と「はいはい」では、伝わるメッセージや印象が異なります。「はい」は語尾を下げると、話を聞いていることを伝える単純相槌になりますが、2回繰り返すと、「そんなこと言われなくても分かっている」というネガティブなメッセージに変化してしまう場合も。
リズミカルなので、知らず知らずのうちに癖になっている人も多いかもしれません。特に目上の人と話すときは、失礼な印象を与えてしまうので、意図しないメッセージを送ってしまわないよう、無用な繰り返しは意識して避けるようにしましょう。
会話が弾む相槌の打ち方
最後に、会話が弾む相槌の打ち方を4つ紹介します。試してみたい相槌があれば、ぜひ実践してみてください。
笑顔でうなずく
人の話を聞くときに笑顔でうなずくのは、コミュニケーションの基本です。心から笑顔になれないときには、意識して口角を上げるだけでも表情が和らぎます。鏡を見て試してみるのもおすすめです。
もちろん、相手が怒っていたり、悲しんだりしているときに、笑顔になる必要はありません。その場合でも、相手が話しやすくなるよう、表情を和らげておくことが大切です。
ポジティブな表現を使う
SNSで「いいね」やグッドボタンをもらえるとうれしいと感じる人は多いのではないでしょうか。相槌でも同様に、ポジティブな表現を使うよう意識してみましょう。
相手と意見が異なる場合でも、「いいアイデアですね。問題は資金面だと思いますので、そこを少し詰めて……」といったように、まずポジティブな相槌を打ってから、自分の意見を述べるようにすると、議論を建設的に進められるでしょう。
共感するメッセージを伝える
共感は、信頼関係を構築するのに欠かせないステップです。相槌を通じて、共感のメッセージを伝えれば、信頼関係を深めるきっかけになります。
例えば、「課長にミスを指摘されて落ち込んでいるんだ」と同僚から言われたら、「へえ」「そうなんだ」と返すのではなく、「それは落ち込むね」と一部を繰り返すか、「それはへこむね」と言い換えると良いでしょう。
ただのオウム返しにならないように、抑揚をつけることも大切です。「あなたなら、次は大丈夫だよ」といったように、ポジティブな相槌を加えると、共感がさらに伝わります。
謙遜することで話し手に感謝を伝える
「勉強になります」「視野が広がりました」「教えていただき、ありがとうございます」など、謙遜する相槌を打つと、相手への敬意だけでなく、感謝の気持ちも伝えられます。
感謝が伝わると、相手も「話してよかった」という気持ちになり、コミュニケーションがさらに活性化されます。うまく活用すれば、会議や商談などの難しい局面で、相手の発言を引き出すきっかけになることもあるでしょう。
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実践を積んで、相槌のスキルをアップさせよう
相槌は、コミュニケーションを円滑にする上で欠かせないスキルですが、日常生活を通じて高められるスキルでもあります。試してみたい相槌が見つかったら、普段行っているコミュニケーションのなかで積極的に実践してみましょう。仕事やスポーツなどと同様に、トライアンドエラーを繰り返すうちにコツをつかめるようになるはずです。相槌のスキルを高めておけば、仕事の「ここぞ」という局面でも役立つでしょう。
監修:拓殖大学商学部教授 長尾素子
株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY(東京都英語村)取締役COOおよび一般社団法人 社会人基礎力協議会 代表理事を兼務。コミュニケーション論を専門とし、グローバル人材の育成、社会人基礎力の育成に携わる。また、企業・団体における研修事業にも関わっている。
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