- 仕事や職場での人間関係に悩んでいる人は多い?
- 職場における人間関係の悩みの主な原因は?
- 人間関係がうまくいく人の特徴
- 人間関係がうまくいかない人の特徴
- 職場の人間関係の悩みを解消する方法とは?
- そのほかに知っておきたい!人間関係がうまくいくためのポイント
- いい関係を築くという気持ちを大切に
1日の大半を過ごす職場では、人間関係がうまくいかないと大きなストレスを抱えてしまいます。それぞれの立場が異なる中で、良好な関係を保つのは簡単ではないかもしれませんが、可能な限り、良い環境で過ごしたいものです。
今回は、職場の人間関係でストレスを感じる原因をはじめ、関係を良好にするためのポイント、悪化させないための注意点などについて、公認心理師の川島達史さんに伺った内容を基に、分かりやすく解説します。
仕事や職場での人間関係に悩んでいる人は多い?
職場や仕事上の人間関係に悩んでいる人は少なくありません。厚生労働省のデータによると、仕事や職業生活に関する強い不安、ストレスを抱えながら働いている人の割合は、2022年時点の調査時には8割を超えています。
その悩みを抱えている人のうち、26.2%、つまり約4人に1人が、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」に原因があると答えています。
出典:「令和5年版過労死等防止対策白書(本文)」第1章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況 P27(厚生労働省)
職場における人間関係の悩みの主な原因は?
では、職場における人間関係の悩みには具体的にどのような原因があるのでしょうか。よくある原因について解説します。
気を使ってつい周りの意見を優先してしまう
さまざまな人がいる職場において、人間関係を円滑にするために周りに気を使うことは大切です。しかし、必要以上に気を使いすぎて、自分の気持ちや感情を押し殺すことは良い結果につながりません。
職場内で求められている役割に適応しようと無理をし続けてしまうと、ストレスを溜め込むことになり、職場で心理的な安心感を保ちながら働くことが難しくなってしまいます。
メンバーの「調整力」が不足している
業務を円滑に進めていくためには、異なる意見を尊重しながら合意形成をしていく「調整力」が必要になります。しかし、各自の調整力が足りないと意見がまとまりにくく衝突が生じてしまう場合もあります。不満を抱える人が増えると前向きに業務に取り組むことが難しくなり、職場内の雰囲気の悪化にもつながります。
<関連記事>調整力とはどんなスキル?求められるビジネスシーンと身につけ方を解説
チーム内の雑談が不足している
本来であれば、雑談によってちょっとした驚きや笑いを共有することで、親近感が生まれチームワークが強化されていきます。しかし、雑談が少なく、お互いに笑いあったり慰めあったりする機会が減ると孤独感や抑うつ感が発生しやすくなり、ストレスがたまる一因となってしまいます。
職場の風通しが悪く、若手の意見が通りにくい
企業によっては、若手社員とベテラン社員の間に距離があり、若手社員が萎縮して意見を発信しにくい環境がみられます。このような環境だと、コミュニケーションの意欲が下がり関係性が冷え込む可能性があるだけでなく、モチベーションも下がってしまいます。
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チーム内にハラスメント気質の人がいる
なんとなく気が合わなくて苦手に感じる上司がいても、仕事だと割り切ってある程度我慢することはできるかもしれません。しかし、ハラスメント気質の上司の場合は、その環境に無理して順応しようとすると自分の心身を壊す恐れがあります。
実際に厚生労働省が発表した「精神障害の出来事別労災決定及び労災支給決定(認定)件数」でも、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という回答が200件を超えているように、上司との人間関係は職場の人間関係の悩みで大きな要因となっています。
同僚との関係においても、悩んでいる人は少なくありません。上記のデータからは、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」との回答が120件を超えている実態もあります。
このような場合は、無理をせず、自分の心身の健康を第一に考えましょう。信頼できる相手にまずは相談してみるなど、ひとりで抱え込まないことが大切です。
出典:「令和4年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」P64(厚生労働省)
人間関係がうまくいく人の特徴
それでは、人間関係がうまくいく人の特徴にはどのようなものがあるでしょうか。主な特徴についてそれぞれ解説していきます。
ソーシャルスキルがある
人間関係がうまくいく人は、「ソーシャルスキル」が高い傾向があります。ソーシャルスキルとは、社会の中でよい人間関係を築くためのスキルのこと。ソーシャルスキルがある人は、共感力が高く、相手の気持ちや立場を理解しようと努めたり、自分の意見を伝えつつも、異なる意見を受け入れたりするなどの柔軟性が高いです。ほかにも、さまざまな人と積極的に会話を楽しんだり、感謝の気持ちを表現することを厭わなかったりするなどの特徴があります。
話し合いの機会を積極的に持とうとする
チームの中で小さな葛藤や衝突が発生し、それについて触れないようにして我慢をする人がいると、ストレスが大きくなってから爆発してしまう可能性があります。
人間関係がうまくいく人は、業務を進めるうえで気になることやモヤモヤすることがあったら、そのままにせず、積極的に話し合いの機会をつくろうとする傾向があります。お互いが納得するまで気持ちを伝えることによって、チーム内での対立などを未然に解消しているのです。
相手の「短所」ではなく、「長所」を見る
人間には、「選択的知覚」といって、職場でトラブルが発生すると、揉めている相手の嫌なところばかり見えてしまうという特徴があります。そうなると、ますます相手の嫌なところが目について、人間関係が悪化してしまいがちです。
人間関係がうまくいく人は、相手の嫌なところではなく、良いところを意識的に見るようにしているので、職場内で円滑なコミュニケーションが取りやすいです。
相手の存在を無条件に受け入れる
これは特にリーダーやマネージャーに関連しますが、普段チーム内の後輩や部下を褒める際に条件付きで褒めていないでしょうか。例えば、相手が目標を達成したときにのみ誉めていると、相手は「結果が出ないと誉められない」と思うかもしれません。これでは心理的な安心感を感じにくくなってしまいます。
一方、人間関係がうまくいく人は、相手の人間性や存在そのものを認める褒め方をしていることが多いです。具体的には相手が仕事で成果物を提出したときに、成果物に対して工夫したポイントや、努力を褒めると相手は安心感を覚えます。
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人間関係がうまくいかない人の特徴
逆に人間関係がうまくいかない人にはどのような特徴があるのでしょうか。仕事の進め方や、ついやってしまいがちな行動について解説します。
コミュニケーションコストが高い
コミュニケーションコストとは意思疎通や情報伝達にかかる時間のことを指します。具体的には人の発言に対して冷笑的な態度をとる、揚げ足取りや悪口を言う、感情的に話をすることなどです。これらをついやってしまう人は、職場でのコミュニケーションが難しくなり周囲と良い関係を築くのが難しくなってしまいます。
仕事仲間に対して非協力的
チームのメンバー間で協力体制を取れないと人間関係の悪化や業務の滞りにつながりかねません。例えば、関係者が複数いるプロジェクトで、自分が知っている情報や進行状況を共有しないことや、報告や連絡を怠ることなどが挙げられます。
基礎的なことではありますが報告・連絡・相談をこまめに行い、何かあったらすぐにフォローしあえる関係を取れないと、人間関係の悪化につながってしまう可能性があります。
時間に追われ、いつもイライラしている
時間に余裕がないと、小さなことでもすぐに苛立ちやすくなってしまいます。その結果、周りの人にもつい攻撃的な態度をとってしまい、人間関係が悪化する要因となりかねません。時間に余裕を持てるよう逆算してタスクを整理する、もしくは業務のキャパシティを超えている状態が続いているのであれば上司に相談してみるなどの対策をとることが大切です。
職場の人間関係の悩みを解消する方法とは?
では、職場での人間関係に悩んでしまったら、具体的にどうすればよいのでしょうか。公認心理士の川島さんに伺った、すぐにできる対処法や考え方について解説します。
相手の「心」に常に目を向けるようにする
人間関係の基本は、「相手の心に配慮すること」です。もし悩みを抱えているのであれば、まず職場で接する人それぞれに「心」があることをしっかりと意識しましょう。
通常、ビジネスで大事にされるのは、どうしても利益や納期などに偏りがちですが、その前提として働く人の「心」が健康でなければ、仕事はうまく回りません。
人間には「心」があるのを前提に、相手に配慮をするという意識を持つことが大切です。
仕事仲間との何気ない会話を大切にする
仕事仲間の人となりを知ると距離が縮まり、心理的安全性が高まります。人間はロボットではないため、効率だけを重視して雑談をゼロにしたら仕事がはかどるというわけではありません。1日3分でもよいので軽い雑談を取り入れることで、緊張がほぐれリラックスした気分につながり、仕事もしやすくなります。
自分の意見をきちんと主張する
職場によっては、若手社員がどうしても自分の意見を発言しにくいということがあるでしょう。しかし実は、ベテラン社員もまた、風通しが悪いままでは組織が発展しないという危機感を持っていることも多いです。
まずは少しずつ、自分の意見や質問を挙げてみる機会をつくっていきましょう。そうすることで徐々にコミュニケーションの活性化につながります。
職場の中でも関係性を広く持つようにする
日ごろから、チーム内の同僚や上司との関係性に終始するのではなく、社内で職種や関係性にこだわらない、幅広いネットワークをつくることを意識しましょう。職場の人間関係を含むさまざまな情報が入ってきやすくなり、何かあったときに相談もしやすくなります。
無理をせずに環境を変える
職場での人間関係を円滑にするために努力することは大事ですが、どうしてもこれ以上は難しいという、自分の限界値を見定めておくことも大切です。
趣味や好きなことに目がいかなくなる、うまく笑えなくなるなどの「心」のサインを見逃して無理をするといつか心が壊れてしまいます。その場合は無理せず、転職などで環境を変えることも手段の一つと考えましょう。
そのほかに知っておきたい!人間関係がうまくいくためのポイント
ここからは、職場の人間関係を円滑にするためのポイントを紹介します。明日からでも実践できそうなことを紹介するので、ぜひ試してみてください。
笑顔であいさつをする
当然のことと思うかもしれませんが、あいさつと返事はしっかりしましょう。仕事上のスキルが足りていなくても「おはようございます」「承知しました」などの言葉を元気に言える人は、嫌いになりにくいです。また、笑顔での挨拶は相手に親しみやすさや信頼感を与えることにつながるため、良い関係を築く手助けになります。
身だしなみや姿勢などにも気を配る
服装や身だしなみ、姿勢や笑顔からも、周りの人への非言語メッセージは伝わっています。どんなに会話が上手でも、猫背になるなど姿勢が良くない人、身だしなみがきちんとしていない人はマイナスの印象を与えてしまいます。たまに鏡を見て、自分の身だしなみを確認することも大切です。
積極的なコミュニケーションを取る
まずは自分から積極的にコミュニケーションを取るように意識してみましょう。人間関係が良くなると、意見やアイデアを発信しやすくなり、チーム全体の士気も上がります。また、情報共有の漏れや抜けが減り業務効率向上にもつながります。
心理的に難しいと感じてしまう人は、決して友達のように仲良くなるためではなく、「業務を遂行するための効果的な方法の一つとして、コミュニケーションを取る」というように意識を変えてみるとよいかもしれません。
【無料診断】いまの仕事に対する満足度は?仕事探しの軸がわかる
いい関係を築くという気持ちを大切に
職場での人間関係は退職理由にもなるほど、多くの人を悩ませる原因になっています。しかし、ちょっとした気配りや態度で、良好な関係を築くことにもつながります。今回紹介した対処法やポイントを参考に、少しでも前向きに環境を整えてみてください。
会社員として働くことは、チームで動き、目標に向かって力を合わせること。人間関係によって仕事がし辛くなることもありますが、喜びや感動を誰かと共有できることも大きな醍醐味です。ぜひそのプロセスを楽しんでみましょう。
監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行っている。
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