集中力を高める方法とは? 続かない原因は脳の働きと環境

「今すぐ! 集中力をつくる技術」(祥伝社)の著者で行動習慣コンサルタント®︎の冨山真由さんに、「集中力をつくる・持続するコツ」を教えていただきました。集中できない原因から、すぐに実践できる10のコツ、さらには「ここぞ」という時に使えるとっておきのメソッドまで、わかりやすく解説。

今すぐ集中できる10のコツ

「集中して仕事に取り組みたい!」。そんな気持ちとは裏腹に、気づいたら手が止まっている、別のことに意識が飛んでいる……なんてことはありませんか? 今年こそ集中して業務に取り組み、最短で成果を上げられるようになりたいと願うビジネスパーソンも多いはず。

そこで、「今すぐ! 集中力をつくる技術」(祥伝社)の著者で行動習慣コンサルタント®︎の冨山真由さんに、「集中力をつくるコツ」を教えていただきました。

仕事や勉強に集中できないと悩む人は必見の内容です。このコツを実践するだけで、すぐに仕事のパフォーマンスが上がるはず!

人はなぜ長時間集中できないのか?その原因

 

開口一番「人は集中することができない生き物だということが前提にある」という冨山さん。一体どういうことなのでしょうか。

人の脳と集中力の関係

子どもは集中することができないけれど、大人は集中することができる、というのは、学習して集中することを身につけた、という状態。前頭葉が集中するかしないかの指令を司っていて、これは幼少期に訓練した方が良いのだそうです。脳の構造は80%が0歳から3歳までに構築され、残りの20%も10歳までに構築されるとのこと。

大人になってから脳の訓練をすることは難しいため、脳を訓練するよりも、「集中できる環境を整え、コントールする」ことが重要だと冨山さんは話します。

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特に集中力を妨げるのはこんな時

冨山さんによると、「人は常に集中力を妨げられている」そうです。例えば、仕事に取り組んでいるときでも、ふとタイピングする爪を見て爪が気になってしまったり、窓の外の車の音が気になってしまったり。考えたくないと思えば思うほどに、別のことを考えてしまうというジレンマが生まれてしまいます。では、特に集中力が妨げられてしまうのはどのような時なのでしょうか。

睡眠不足のとき

集中できないとき、というのは脳が正常に働かないときです。睡眠不足の時は脳が正常に働かない状態と言えるそうです。そのため、集中したいのであれば、まずは睡眠をとることがとても大切です。

食事をとりすぎたとき

食事を取りすぎると、必然的に眠くなってしまいます。睡眠不足とは異なりますが、食事によって眠い状態になってしまうと集中力を持続することは難しくなります。

他の作業に追われているとき(マルチタスク)

人は基本的にシングルタスクをこなすことを得意としています。今やっていることとは別の用事が急に出てくると、脳がパニック状態になり集中力が妨げられてしまうことがあります。

静かすぎる環境にいるとき

さまざまな説があり一概には言えないそうなのですが、静かすぎる環境も集中力の妨げになってしまう場合があるようです。人間は胎児期に耳が発達しますが、お腹の中ではある程度の雑音が常にある状態。そのため、静かすぎる環境でいると集中力の妨げとなる場合もあるそうです。

ただし、脳科学ではなく行動学の見地からは、「静かすぎる」ではなく「なるべく静かな環境」が望ましいと言われています。

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集中力は日常の行動が作る

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集中力を高めるために必要なことは、「才能」ではなく「行動」。冨山さんは、「意識や根性だけでは物事は継続できない」とズバリ話します。

「楽しいときに悲しくなれないように、集中したいときにパッと集中するのは不可能に近いこと。人間の性質を分析する行動科学の観点では、集中できないのはその人が持つ性質ではなく、集中するための行動ができていないからだと考えます。言い方を変えれば、集中できない人は1人もいないということです。誰でもコツを知って行動に移せば、集中力を上げることができるのです」

好きなことをしているときは、いつの間にか集中状態になっていることがありますが、「仕事に置き換えると、それは当てはまらない」と冨山さん。

「よく『ゾーンに入る』と言うように、好きなことをしていると時間を忘れて夢中になれると思います。ですが、仕事では好きなことだけをやるというわけにはいきませんよね。だから、集中するための行動を習慣化させることが大事になります」。

集中することを特別なことと捉えるのではなく、日常の習慣にする。そうすることではじめて結果につながるのだそう。

集中力を高めるための「環境づくり」とは?

環境を整えることが集中力を高める第一歩

集中力を高めるために、まず変えるべきは「環境」です。環境要因を整えることが、集中力UPの第一歩だと冨山さんは力説します。

「行動科学マネジメントでは、環境設定をとても重要な要素だと考えています。集中できる環境には多少の個人差があります。まずは、自分にとってベストな環境を知りましょう。ガヤガヤしている場所を好む人もいれば、静かな場所がいいという人もいます。意識的にいろいろな環境に身を置いてみて、自分が最も集中できる環境を見つけてください」。

集中力を妨げるものを排除することが環境を整えるコツ

集中をジャマするものは排除するのが環境設定のコツなのだとか。

「スマートフォンや必要のない資料は、カバンや引き出しにしまいましょう。パソコンのデスクトップも不要なフォルダを整理してスッキリさせておくこと。自宅で集中したいときはテレビのリモコンや漫画など、自分を誘惑するようなものも目に入らないように。とにかく今目の前にあることだけに向き合う環境をつくるのがコツです。もし、周囲がうるさくて集中できないならイヤホンをする、席を移動するなどしましょう。人は集中していると周囲の物音は気になりません。うるさいと感じるのは集中できていない証拠です」。

この方法は反応妨害法とも呼ばれ、自分で集中力の妨げになってしまうことを排除していくことがとても大切だとのこと。集中力をUPするには自分が集中できる環境を知り、その環境を自らつくり出すことが先決なんですね。

リモートワーク時に集中力を持続させる「環境づくり」のポイント

テレワークが浸透した昨今では、自宅が仕事場になるため、環境の整え方も出社していたときとは異なります。今回は、冨山さん自身が実践した環境づくりについて教えていただきました。

ただしご紹介する方法はあくまでも冨山さんの方法。大切なのは「自分にとって何が集中力を持続するために必要な行動か」を自身で考えて、実践してみることです。

これからすることに合わせて複数場所を用意する

安心安全な場所を、用途に合わせて用意するということが大切だと冨山さんはいいます。例えば、資料を読むときはソファの上、仕事するときは環境が確保された個室のデスク、大人数で発表するときには会議室を借りるなど。自分がすることに合わせて集中できる環境を決めておけると良いとのことです。

周りを片付ける

リモートワークでは仕事環境が自宅になるため、家族がいると環境がなかなか整いません。朝の習慣に「片付け」を入れて、子どものおもちゃを全て片付けて隠す、ということを行っているそうです。

換気し、掃除機をかけ、コーヒーを淹れる

出社が当たり前だった頃は通勤が「仕事モード」への切り替えのスイッチだったそうですが、リモートワークになると切り替えがなかなか難しいですよね。そのため冨山さんは、「換気して掃除する」という行動を仕事をする前に入れることによって、モードの切り替えを行っているそうです。

「念入りに掃除する、ということではなく、気持ちを切り替えるための行動として、換気して掃除する、ということを行っています」

その上で、最後にコーヒーを淹れ、パソコンを立ち上げる、という一連の流れを作っているとのことでした。

業務開始時に「今日も頑張ろう」と言葉に出す

「出社していた頃は、朝会社へ行けば同僚と挨拶をすることになりますが、リモートワークでは月曜の朝礼からは朝の挨拶をする機会がありません」と冨山さん。職場で同僚と言葉を交わすことで仕事に向き合う気持ちを高められていたときとは違い、リモートワークでは仕事を集中して開始するきっかけとなるコミュニケーションがなかったものの、言葉に出すことによって、気持ちをコントロールすることができるようになるとのこと。集中の妨げとなるものがたくさんある自宅での仕事では、「よし、今から集中するぞ」という口に出すことも大切だそうです。

集中力に適用できる「ABC理論」

集中するために行動学では「ABC理論」というものがあるそうです。Aは「先行条件」、つまり環境条件です。行動を始めさせてくれる条件です。続いてBは「行動」。(A)ソファに座ったら(B)本を読む、という行動に繋がります。Cは「結果条件」。読書習慣を手に入れたという場合に、読書をしたら自身に対価を得られるようにする、というようなもの。例えば読書で1章読み終えたらチョコレートを食べる、というようなことだそうです。

こうすることによって、集中できる習慣を作り上げることができる、とのことです。

今すぐできる! 集中力を高める10のコツ

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続いては、「集中力を高めるための10のコツ」を伝授していただきました。とにかく簡単で、今すぐ実践できるものばかりです! 

1 「5分だけやろう」で集中力のスイッチオン

「集中したいのにできない一番の理由は、『面倒くさい』という気持ちがあるから。最初から『1時間やろう』なんて思わなくて大丈夫です。最初は『5分だけやろう』とハードルを下げて、まず作業に取り掛かるのが大事です。簡単なことを5分だけやって、集中力のエンジンをかけましょう」。

2 「15分→30秒休憩」を繰り返して集中力を持続

「5分やって集中しやすい状態をつくったら、その後は『15分作業→30秒休憩』を繰り返してください。一部の例外的なハイパフォーマーは別として、大抵の人は15分ほどしか集中力が続かないといわれています。15分に区切ることで、集中力を持続しやすくなります」。

3 気が散りそうになったら自分の手を3秒見つめる

「目の前にある仕事ではなく、過去の後悔や未来の不安など別のところに意識が飛んでしまっている状態から意識を戻すためのコツです。気が散って集中できないときは、手をジッと見つめることで自分の意識をコントロールしましょう」。

4 気分がのらないときは、机をコンコンと叩く

「気分がのらないときは、『のれない自分がダメなんだ』と考えがちですが、実は雑念にジャマをされているだけ。湧いては消え消えては湧いてを繰り返して集中を阻む雑念には、『机をコンコンと叩く』のが有効です。音を聞くことに注意を払い、意識を自分に戻しましょう」。

5 「もうちょっとやりたい」ところでやめておく

「エンジンがかかり長時間集中しているときは、『もっとやりたい』とハイペースになってしまうことがあります。ですが大事なのは『いつでも一定のパフォーマンスを上げること』。長時間集中しているときは『もうちょっとやりたい』と感じたあたりで中断すると、翌日もノリのいいままで仕事が再開できますよ」。

6 「今日やるべきこと」は紙に書き出す

「とくに、やりたくない仕事をしなければならないときに使えるコツがこれ。その日の予定は頭で考えるだけではなく『書き出す』のがベスト。今日やるべきことを紙に書き出して、『これだけは必ず』というものに丸を付ける。そうして無駄に脳が疲労することを防ぐと、集中力が高まります」。

7 仕事を終えたい30分前にアラームを設定

「たとえば18時退社であれば、17時半にアラームを鳴らすようにすると、その後の30分は飛躍的に集中力が上がることがデータで証明されています。逆に18時を過ぎてリミットがなくなってしまうと、気分がダレてしまい、長時間残業になりがち。効率的に成果を出すには、退社の30分前のアラームを有効活用してください」。

8 大きな仕事は細かく分けて達成

「大きな仕事を100%達成しようと思うと、誰でもうんざりしてしまうもの。たとえば100件の仕事であれば、20件×5に分けるなど小さなゴールを設定して、それをクリアした達成感を得て気分を上げる。この繰り返しで取り組むと、大きな仕事を効率良くこなすことができます」。

9 「集中タイム」を決めておく

「人はそもそも1日中ずっと集中しているのは無理です。自分が集中しやすい時間帯を計測し、その時間に重要な仕事を入れる習慣をつけましょう。集中する時間をあらかじめ決めて習慣化できると、自然とその時間帯に集中できるようになります」。

10 達成できたら「ごほうびタイム」

「集中力は動機づけと密接に関係していて、『集中すればいいことがある』と脳が認識すれば、脳が勝手に集中してくれます。そのために、集中できたときは自分にごほうびをあげましょう。面倒な仕事を終えたらおやつタイムを設けるとか、契約が取れたら欲しかったモノを買うなど、いくつかのごほうびを設定しておくといいですね」。

「ここぞ」というときに集中力を高めるメソッド

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最後にご紹介するのは、プレゼンなど「ここぞ」というときに集中できる、とっておきのメソッド。単に集中できるだけじゃなく、緊張をほぐす効果も得られます。勝負をかけたいときは、このメソッドをぜひ活用してみてください。

●鏡の前で笑顔をつくる

「人は緊張すると顔がこわばり、声が震えたりしますよね。その震えた声を聞くことで『自分は緊張しているんだ』と認識し、余計に緊張感が増してしまうのです。無理やりでも笑顔をつくれば、『私は楽しいんだ』と認知を歪め、脳に思い込ませることができます」。

●うずまきを見る

「人は想像以上に視覚からの影響を受けています。弊社のクライアント企業様が行った実証実験で、うずまき柄には人が焦点を合わせる効果があることが実証されています。心を落ち着けて一点集中したいときは、うずまきの中心をジッと見つめてみてください。自然と集中モードに入れるはず」。

●「何のためにやっているんだっけ?」と問い直す

「私たちは、つい目的と手段を混同してしまいがち。たとえばプレゼンはそれ自体が目的ではなく、契約を取るための手段ですが、プレゼン=目的と認識してしまうと必要以上に緊張してしまいます。ここ一番の仕事を前にして頭が真っ白になってしまったときは、『何のためにやっているんだっけ?』と自分に問いかけてみてください。目的が明確になれば、淡々とやるべきことに集中できるようになります」。

集中力を高めるためのキーワードは「認知転換」と「行動」

私たちは「よし、集中するぞ!」と気合いを入れて取り組むものの、思ったように集中できないと、そんな自分を卑下してしまいがち。でもそれは自分が悪いわけではなく、集中力を高めるためのコツを知らないから。単純に気合いに頼っているだけでは、自分が苦手な仕事を前にしたときには限界があるかもしれませんね。

「大きな仕事や面倒な仕事を前にして、『気が重い』『やりたくない』と思うのは誰でも同じです。でも、きっと『資料はつくりたくないけど、良いプレゼンをして顧客を獲得したい』とか、どんな仕事にもプラスの動機はあるはず」。

「そうやって目先のことに捉われず『~したい』という気持ちに転換することを、私は『認知転換』と呼んでいます。この認知転換とともに、集中力を高めるための行動を取り入れ習慣化させることで、がんばらなくても集中できるように変わっていきますよ」。

集中するためのキーワードは「認知転換」と「行動」。お伝えした10のコツのうち、自分が取り入れられそうなことからはじめてみましょう。小さなゴールでも「できた」という達成感を得ることができれば、その快感が次の行動を後押ししてくれるはずです。

(取材・文:小林香織/編集:東京通信社)

識者プロフィール


冨山真由(とみやま・まゆ)
行動習慣コンサルタント®︎


1984年生まれ、神奈川県鎌倉市出身。大学で行動変容理論を学ぶ。人間の感情ではなく行動に焦点を当てた技法を専門とする。元は医療分野と教育分野で行動習慣の指導士として活動をしていた。現在は、人材育成のコンサルティング会社で企業の管理監督者の方向けに研修を導入している。年間の登壇数は120回以上。主要メーカーをはじめ保険業界や製薬業界までサービス業全般。
代表書籍に『めんどくさがる自分を動かす技術』(永岡書店)、『めんどくさがる相手を動かす技術』(永岡書店)、『1%の素敵な人だけが実践している「なりたい自分」になる方法』(あさ出版)、『今すぐ! 集中力をつくる技術』(祥伝社)。最新書籍『効率・時間・スピード すごい習慣力』(三笠書房)が好評発売中。

※この記事は2018/02/15にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
※更新日=2022年11月16日

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