そもそも「コミュ力」ってなに? 専門家が解説する、コミュ力の定義&ソーシャルスキル強化の極意

経団連が発表した「2018年度新卒採用に関するアンケート調査結果」では、80%を超える企業がコミュニケーション能力を選考時に重視するポイントとして回答。雑誌やテレビ番組で「コミュ力」が取り上げられる機会も多く、昨今の日本社会においてとても重要視されていることがわかります。では、そもそもコミュ力とは具体的にどのようなスキルを指すのでしょうか。非常にあいまいなコミュ力について、コミュニケーション研究家の藤田尚弓先生に日本でのコミュニケーション評価基準やケース別のコミュ力強化テクニック、オンラインコミュニケーションのコツを教えていただきました。

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ビジネスシーンでの「コミュ力」の重要性が高まったのは、平成16年頃から

若者を中心に広く使われるコミュ力、いわゆる「コミュニケーション能力」が重視されるべきスキルだと認識されたのは、人間が言葉を操り始めた頃まで遡ります。言葉によって文明の発展を遂げてきた人間にとって、非常に重要なスキルだったんですよ。

ビジネスシーンで必要なスキルと一般的に認識されてきたのは、企業が採用にあたって重視する能力としてコミュニケーション能力をあげるようになってきたことが影響していますね。個人の見解としては、平成16年発表の厚生労働省「若年者の就職能力に関する実態調査」で採用にあたり重視する能力においてコミュニケーション能力が1位になったのが決定的だったと感じます。他項目の責任感・積極性・外向性・資格取得・行動力・ビジネスマナーなどをおさえて、多くの企業が学生のコミュニケーション能力を採用可否の大きな柱にしたのです。

日本で重視されるコミュ力は「文脈を読む力」

コミュニケーションにおいて、日本と海外で大きな相違が見られるのをご存じでしょうか。もっとも明確な相違が「コンテクスト」です。

日本は典型的なハイコンテクスト文化で、文脈を読む力が重要視されています。たとえば、音楽を大きな音でかけているルームメイトに対して「明日は試験なんだ」と伝えれば、日本人同士の場合はボリュームを下げてくれることも多いでしょう。しかし、ルームメイトが海外の人である場合には「へぇ、そうなんだ。試験頑張ってね!」という返事が返ってくるだけのケースもしばしば。このように、日本ではその時々の状況から相手の言いたいことや伝えたいニュアンスを推察する能力が求められているのです。

コミュ力あり/なしの定義は、業界・業種・立場によって変化する

さきほど解説したように、日本では文脈を読んで相手の言いたいことを推察する「ハイコンテクスト文化」が根付いています。しかし、その他にも共通認識・価値観・嗜好性などもコミュニケーション評価に関連しているため、求められるコミュニケーション能力の定義は自分の所属する組織やグループごとに違いが出るというのが現実です。

また、コミュニケーション能力のあり、なしの定義は業種や業界によっても大きく異なります。たとえば、IT企業で働く職人肌のプログラマーと銀座のホステスを比較してみてください。企業や取引先からプログラマーに求められるコミュニケーション能力と、お客さんやスタッフがホステスに求めるコミュニケーション能力はまったくの別ものですよね。加えて、プログラマーであっても「取引先の潜在的なニーズを言語化しなければならない立場」と「職人肌で実直に仕事に向き合う立場」では、周囲から求められるコミュ力が変わってきます。

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では、業種や立場によってコミュ力の定義が異なるのを前提としたうえで、一般的な企業を想定して少し強引に定義づけしてみましょう。下記の4項目がコミュニケーション能力を体得するなかでひとつの基準になるものです。

1.推察力 相手の伝えたいことを文脈も考慮して推察できる
2.説明力 事実・推測・感想を分けて、相手の知識レベルに合わせて説明できる
3.まとめ力 起きたこと、学んだことなどを自分の言葉で要約できる
4.関わり力 適切なタイミングで自らコミュニケーションをとりにいける

「自分の所属している会社やチームから求められる能力を身につけたい!」と努力することは前向きで、すばらしい姿勢です。とはいえ、コミュニティや接する相手が変われば必要な能力も変化するもの。たまたまその場で求められているレベルに達していないからといって落ち込む必要はありません。

専門家だからこそ抱く、「コミュ障」への違和感

「コミュ力」が人と関わるうえで必要となる「ソーシャルスキル」を指していると考えた場合、対人関係を円滑にするためのソーシャルスキルトレーニングを通じて向上が見られた事例は少なくありません。先行研究でも、トレーニングを通じて以前よりスキルが向上したケースがいくつか発表されています。しかし、専門領域をまたいだシンポジウムなどでは遺伝要素や生育歴などが要因・障害となり、トレーニングをしてもなかなか改善しないという主張も耳にします。さまざまな意見があるなかで、個人的な見解としては“程度の問題はあるもののトレーニングによって改善できる”と考えているんです。

その一方で、「本当に改善する必要はあるのだろうか?」とも……。私は世間で広く使われている「コミュ障」という言葉自体に違和感を抱いているんです。コミュニケーションがスムーズでない人を「コミュ障」というのであれば、流暢に話す人たちの何割かは“話し過ぎ”のコミュ障とも言えます。コミュニティによって求められる能力や「普通」の定義は大きく異なるので、中央値から外れた人を「コミュ障」と呼ぶのは不自然ですよね。話ベタだからといって「自分は普通とは違う、改善しなくては」と焦る必要はまったくないんです。

コミュ力を強化するためのコツ

コミュ力がない場合の症状は人によって異なります。一般的に多いと思われる現象を例に挙げながら、有効的な対処法をチェックしていきましょう。

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【ケース1.職場で話が分かりづらいと指摘される】

話を伝える意思はあるのに、相手に伝わらない場合「会話の構成」を見直すとよいでしょう。ビジネスシーンで「PREP法」と呼ばれているもので、POINT(結論)→REASON(理由)→EXAMPLE(事例)→POINT(結論)の順番で文章を組み立てていきます。ひとつの事柄について具体的に詳しく伝えられるので、相手に“なにを伝えたいのか”を発信しやすくなりますよ。

<例文>
私は、A案を提案します。理由は消費者ニーズの高さにあります。○○の調査でも~~というデータが出ており、最近のニュースでも頻繫に取り上げられていました。以上の理由から、私はA案を提案します。

【ケース2.説得力がない】

「説得力に欠けている」と指摘を受けた経験をお持ちのビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。自分の提案や考えに説得力を持たせるためには、具体的な数字やデータを使うのが効果的です。関連する情報を探し、説明時に合わせて紹介することで主張に厚みが出ます。

<例文>昨年、我が社のサイトにおけるスマートフォン閲覧は全体の34.1%でした。それに対し、今年は前年度比50%増の82.5%となりました。早急にレスポンシブ対応を進めるべきだと考えます。

【ケース3.人とうまく付き合えない】

「いつも人付き合いがうまくいかない」「もっと積極的にコミュニケーションをとりたい」と考えている方は、ムリに仲良くなることを目標にしなくてOK。相手と深い付き合いになる必要はないので、サッと話せる「挨拶+雑談のような一言」を実践してみると良いでしょう。“こうしなきゃ”と決めすぎずに、自分のペースに合わせてコミュニケーションをとっていきましょう。

<例文>
おはようございます。今日も蒸し暑いですが、梅雨の晴れ間はちょっと嬉しいですね。
お先に失礼します。今夜は夏の大三角形がきれいに見られるみたいですよ。

若手ビジネスパーソンが身に付けたい「傾聴の姿勢」

上司や取引先とより良い関係性を築きたい場合、ムリに取り入る必要はありません。「若手は目上の人を褒めるもの」と思っている人もいるかもしれませんが、褒めや迎合がなくとも良い関係性は築けます。なにより大切なのは「相手の話を、興味を持って聞くこと」。傾聴していると表現するためにも、メモをとる・気になることを質問する・頷いて共感することを意識してみてくださいね。また、なにかレクチャーやアドバイスをうけた場合にはお礼と報告を忘れず行いましょう。

オンライン会議の“話しづらさ”は、お互いさまの精神で乗り切る

現在、テレワークや在宅勤務を利用しているビジネスパーソンも多いですよね。オンラインミーティングはシステムの関係でほんの少しのタイムラグが発生してしまうため、話者交替のタイミングが分かりづらくなってしまいます。「うまく会話を進められない」と感じることもあると思いますが、話すきっかけを掴みづらいのはお互いさま。誰しもが感じていることなので心配する必要はありません。発言の重なりも起きやすいですが、「オンラインでは当たり前のことだ!」と割り切って、気にしないようにするのがおすすめです。

チャットやメールを使う場合には、相手が理解しづらいことを前提に具体的な伝え方をするよう心がけましょう。対面コミュニケーションと比べて使用語彙が少なくなる傾向があるので、いつも以上に丁寧な説明を意識してください。

また、表情や仕草が見えない分、強すぎる文面にならないように要注意。相手が文面をどう捉えるのかを考えた上でやり取りすると良いでしょう。反対に、チャットでの相手の言動に違和感を覚えた場合も「コミュニケーション特性の問題である可能性」を差し引いて考えると気持ちも楽になります。深刻に悩んだり、傷ついたりする必要はないのです。

「コミュ力を身に付けたい」と、努力で改善を目指すことは素晴らしいことです。しかし、文脈によって回答や受け取り方が変わるようなコミュニケーション下で、“完璧”を目指すのは難しいもの。うまくコミュニケーションできないからといって、自分と他者を比較して深く悩みすぎないようにしましょう。「昨日の自分より、少し良くなればよし!」のスタンスで、自分らしいコミュニケーション方法を探してみてください。

【監修】
藤田尚弓●株式会社アップウェブ代表取締役、コミュニケーション研究家、コラムニスト。さまざまな領域に散見するコミュニケーション研究の調査整理、アウトリーチ活動を行う。また、テレビ出演・監修、雑誌などへのコンテンツ提供も多数。著書に『銀座で学んだ稼ぐ人のシンプルな習慣(総合法令出版)』『NOと言えないあなたの気くばり交渉術(ダイヤモンド社)』など。
https://naomi-fujita.com/

文=山本杏奈
編集=五十嵐 大+TAPE

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