バズっているビジネスワード「OKR」はなぜ今、注目されているの?

GoogleやFacebookなど世界的企業が導入する目標管理フレームワークがあるってご存じですか? それが「OKR」。日本でもスタートアップ企業を中心に採用されています。なぜ多くの企業が採用するのでしょうか? その答えを聞くため、OKRのサービスを展開しているパーソルプロセス&テクノロジー株式会社の大島亜衣里さんと藤原美里さんの元へ。これからのビジネスの世界で主流となるかもしれない「OKR」について聞いてきました。

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コラボレーションやイノベーションを生むことを期待できるOKR

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左から大島亜衣里さん、藤原美里さん

――「OKR」とは何なのでしょうか?

藤原美里さん(以下、藤原)「『OKR』とは、インテルのCEOだったアンディ・グローブ氏が作った組織向け目標管理のフレームワークで、『Objectives and Key Results』の頭文字を取った略語です。『Objectives』は組織が成し遂げたいミッション、『Key Results』はミッション達成のための具体的な数値を指しています。ネットでの検索数も上がってきている、バズっているワードです」

――「OKR」の良いところは?

大島亜衣里さん(以下、大島)「私個人の意見になるんですが、『OKR』の優れた点は

  • ムーンショット型の目標を立てること(なお目標達成率は60~70%でよい)
  • 四半期ベースという短期間で見直しを図る
  • コラボレーションできる
  • 可視化できること

の4つだと思っています」

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――「ムーンショット」という言葉は初めて聞きました! どういった意味なんでしょうか?

大島「語源は『月に人類を着陸させ、無事に帰還させる』と言ったジョン・F・ケネディ大統領の言葉からきています。つまり人類を月に到達させるという『チャレンジングで困難だけど、実現不可能ではない』目標ということです。実現が難しいため、達成率100%は難しい。だから達成率は60~70%で良しとされています。それくらいハードな課題に挑むということは限界突破を目指すということ。それにより、企業に新しい“何か”が生まれることを期待できるんです。そしてその新しい“何か”がイノベーションを起こす可能性がある」

――目標の振り返りは四半期、つまり3カ月に一度。これは短いスパンですね。

藤原「そうですね。多くの企業は1年、または半年に一度、振り返りをするのですが『OKR』は最低でも3カ月に一度。短いスパンで実行している理由は、ビジネスの世界がよりスピーディーに動いているからです。ここ最近、急に出てきた企業が1年で有力企業になるという現象が起こっています。たった1年で世の中にインパクトを与えられる企業が生まれるということは、世の中はよりスピーディーに変化しているということ。そんななか、1年や半年という期間内で目標達成するのは遅い。だから3カ月ごとに見直す必要があるんです」

――優れている点の「コラボレーションできる」と「可視化できること」について説明をお願いします!

大島「『OKR』では組織の目標を全メンバーが閲覧できるようにしています。それにより自分が取り組んでいることが、組織の目標とどう紐づいているのを俯瞰して見られるんです。また他の部門の目標も見えるので、何に注力して取り組んでいるかが分かる。『Aの部門はこういうことをやっているから、うちの部門とコラボレーションできる!』といった共創も可能になるんです」 

仕事をやらされているのではない。自分のやるべきことを常に考える

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――可視化したことで社員の働き方に変化はありましたか?

藤原「弊社に来ていたインターンの学生が、会社全体の目標を見たことで視座が高まり、全体を意識して働くようになったと言っていました。業務を俯瞰的に見る力が手に入るのかもしれませんね」

――「OKR」を導入する企業はどんな課題を抱えているところが多いのでしょうか?

藤原「企業によって課題は千差万別なので断定はできないのですが、ある企業は『会社全体を統一したい』という理由で導入されました。『OKR』は下の画像のように会社、部門、個人ごとに階層構造で目標の設定をし、全体が一つの紐で繋がっているような形になる。そのため組織を統一させる効果が期待できます」

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――名だたる企業が「OKR」を導入していますよね。その理由は何だと思いますか?

大島「かつてないくらい世の中やビジネス状況の変化が早く、それに柔軟に対応していくために四半期ごとという短期間で目標をチューニングしていける『OKR』が求められているんだと思います。特にイノベーションなど新しい価値を作り出す0→1の工程などでは日々状況が変わっていきますから、それに合わせた柔軟な目標管理が必要になります」

藤原「意思決定の仕方が変わってきていることも理由だと思います。これまではトップダウンで意思決定がされていましたが、いま、専門知識がより求められる時代になっています。現場にいる技術者の声が正しい場合もあるため、経営陣も現場の声を聞きたいと思っている。『OKR』は可視化されているので、現場で切磋琢磨する社員の意見もオープンになっており、現場で何が起きているのかをダイレクトに知ることができるんです」

――なるほど。

藤原「会社のカルチャーに合わせてカスタマイズできることも導入しやすい理由だと思います。『目標を可視化すること』『ムーンショット型の目標を立てること』『四半期ごとに見直すこと』この3つを守っていればアレンジ可能なんです」

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OKRについて学ぶ合宿の様子

――導入を躊躇する企業はどんな理由で、思いとどまっていますか?

藤原「目標を考えるのが難しい、と言われますね。売上の数字を目標にする場合、社員たちは数字を叩き出すことに努めればいい。でも『OKR』の場合、なぜその数字を目標にしたのかと、明確な理由を提示しないといけない。つまりビジョンが見えないといけなんです。ビジョンを作るのって大変ですよね。また四半期という短いスパンで目標を変えていかないといけないので、悠長に構えていられない。常に考えないといけないんです」

――考えるのって疲れますよね(笑)。

大島「疲れるくらい考え続けるってことですね。考え続けることで思考の質や量が圧倒的に増えます。旧来型のトップダウン式の経営では上から言われたことをすればよかったのですが、『OKR』は可視化して全体を眺めることができるため、自分の目標と組織目標の繋がりを意識できる。すると自分の仕事に対して『これは何のための仕事なんだろう?』と迷うこともありませんし、上位の目標がわかれば自分のやるべきこともよりクリアになってきて、そこに疑問を持つこともあるはずです。トップから降りてきたものをやらされるのではなく、自分のやるべきことを常に考える! これが『OKR』のメッセージかもしれませんね」

取材協力=パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
取材・文=野田綾子
編集=TAPE

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