プログラマー・エンジニア、数学者、建築家、デザイナー、アニメーターなど、さまざまなスペシャリストのメンバーがプロジェクトごとにチームを組み、イノベーティブなものづくりをし続けているチームラボ。
『ウルトラテクノロジスト集団』を自称する彼らは、天才集団かと思いきや「個人としては欠陥だらけ」と語るのは、カタリストの中村洋太さん。欠陥だらけ?の集団が次々とイノベーションを生み出せるのはなぜなのでしょうか。その秘訣に迫りました。
プロジェクトマネージャーやディレクターが偉いとは限らない
―まずは中村さんのカタリストとしての仕事の中身を教えてください。
「クライアントから発注された依頼事項に対して、弊社内でチームを組成してプロジェクトを進める役割をしています。通常の制作会社で言うところのディレクターに近いのですが、必ずしも僕がプロジェクトマネージャー(=PM)になるのではなく、案件に応じて招集したデザイナーやエンジニアに兼任してもらうことも少なくありません。僕の仕事はクライアントとの窓口となる業務と、その意見をチーム内に落とし込んだり、社内のスペシャリストのメンバー同士をつなげることが中心です」
―カタリスト(触媒)という名の通り、それぞれのメンバーの間に立ってアウトプットが高まるように、チームの在り方を臨機応変につくっていく役割をしているということなんですね。チームビルディングの上で、工夫しているポイントがあれば教えてください。
「通常のチームって、PMとなる人が偉くて、手を動かすプレーヤーはその意思のもと働く、上意下達のシステムが一般的だと思うのですが、弊社の場合、チーム内の力関係に上下はないんですよね」
―通常の制作会社では、制作物の方向性を決定づけるディレクターがチームの上に立って全体を統括していて、さらに納期を守るための進行管理や品質を担保するプロジェクトマネージャーがいて、その下に手を動かすプレーヤーがいるというシステムが一般的だと思うのですが、チームラボの場合、そうではないと。
「はい。それは僕自身何かをつくれるわけじゃないし、スペシャリスト1人だけでもクライアントの要望を満たすものができないという認識が共有されているからなんです。逆に僕自身がPMになったときも、多忙ですごく気を使うエンジニアとかもいますし(笑)。 それにクリエイティブなものをつくる場合、必ずしもPMになった人の意見が正解じゃないし、チーム外のメンバーでも『これはこの人に聞いた方が詳しい』『任せたほうがいい』というのは往々にしてあるんです」
「できないこと」より「聞かないこと」のほうが問題
―得意分野が違うし、それぞれがスペシャルな能力を持っているからこそ、委ねる部分も増えるということですかね。
「解釈としてはその逆だから、委ねる部分が増えるのかもしれません。つまり、僕たちには『個人だとすごいサービスをつくることができない』って認識がそれぞれにあるんですよ。エンジニア1人でもダメだし、デザイナー1人でもできないことがあると分かっている。僕自身、デザインもエンジニアリングもできないけど、それぞれをつないだりすることは得意だと。自分にはこれしかないって思っているからこそ、チームとしてのアウトプットの質にこだわるんです。 極端な話、『自分はこのジャンルは得意なんだけど、他はできないんだ』っていう割り切りがある人の方が、すっぱり人に任せることができるんですよね。だから、人に頼らないで自分だけで考えたって分かるものは怒りますね。『なんであいつに意見を聞かなかったんだ!』って」
―それは面白いですね。普通、「なんでお前これできないの?」って怒るような気がするんですけど。“誰かに頼らなかったこと”を怒ると。
「はい。例えば、ある課題に対してAさんは5まで解決するノウハウを持っていたとします。しかし、プロジェクトにあてがわれたBさんはノウハウを持っていないため、1から積み上げていかないといけないとします。そしたら、Aさんに相談に乗ってもらうことで、一気に5まで教えてもらえるんですよ。それをしないことってすごく非効率だし、アウトプットの質が下がるじゃないですか。だから怒るんです」
個人の成果ではなくチームのアウトプットの質にプライドを持つ
―ただプライドが邪魔して、他人に相談できない人っていますよね。“絶対に一人でやり遂げるんだ!”と。
「本当にプライドのある人は、アウトプットにプライドを持っているので、“聞くこと”がダメだと思っていなくて、“アウトプットが低いこと”がダメだと思っています。だから『人に聞けよ!』って怒られても心折れないものなんです」
―なるほど、それは的を射ている気がします。
「それに、基本的にどこで評価されるかよく分からない会社だから(笑)、とにかく面白いものをつくっていこうという部分に関しては共通している認識だと思いますね」
―チームのアウトプットの質を高めることで、ひいては会社全体のソリューションの質が担保されるわけですものね。チームラボのチームビルディングを分かりやすく例えるとどのような言い方ができますか?
「漫画の『ワンピース』ってダメ人間の集まりじゃないですか。海賊王になりたいやつが泳げないってどういうことだと(笑)。だけど、それを支える料理人であったり、剣術の達人や航海士がいて。…それぞれが欠陥を持っているけど、チームだとすごく強い。それと同じでチームラボも(欠陥があっても)それぞれができることをそれぞれの持ち場でやりきっているだけなんですよ」
各人が自分にできることとできないことを認識していて、チーム内外に相談し合うことが善とされる環境で働いている。そして個人の成果より、チームのアウトプットの質が評価される環境で働いているからこそ、革新的なイノベーションが生まれているということが分かりました。
会社で経験を積むにつれて、チームのリーダーを任される場面も増えてきます。そんなとき「イノベーションを生み出すチームをつくりたい!」と思ったら、チームラボのチーム論をぜひ参考にしてみてください。
【チームラボより、イベントのお知らせ】
これまで発表してきたアート作品と遊園地を一度に体験できる世界初の企画展『チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地』を、日本科学未来館(東京)にて開催。チームラボのデジタルアート7作品と「チームラボ 学ぶ!未来の遊園地」の7作品を日本科学未来館にて同時公開。
『チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地』
会期:2014年11月29日(土)~2015年3月1日(日)
会場:日本科学未来館(〒135-0064 東京都江東区青海2―3―6)
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週火曜休館。但し、2014年12月23日(火・祝)2015年1月6日(火)は開館。
年末年始休館:2014年12月28日(日)~2015年1月1日(木)
料金:
前売料金
大人(19歳以上)/1,600円 中人(小学生~18歳)/1,000円(土曜は920円)
小人(3歳~小学生未満)/700円
当日料金
大人(19歳以上)/1,800円 中人(小学生~18歳)/1,200円(土曜は1,100円)
小人(3歳~小学生未満)/900円
チームラボについて
チームラボは、プログラマー・エンジニア(UIエンジニア、DBエンジニア、ネットワークエンジニア、ハードウェアエンジニア、コンピュータビジョンエンジニア、ソフトウェアアーキテクト)、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者など、スペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。サイエンス・テクノロジー・アート・デザインの境界線を曖昧にしながら活動中。
※この記事は2014/11/28にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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