実はよく分かっていない、お金のアレコレ。今さら聞けないという方もいるのではないでしょうか。 本連載は会社員が知っておきたいお金の「きほんのき」を分かりやすく解説します。
第3回目となる今回は、「ふるさと納税」について。毎年「やろう、やろう」と思っていてもできていない人も多いのではないでしょうか。
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第1回:手取りと額面ってどう違うの?
第2回:源泉徴収の仕組みとは?
【登場人物】
後輩:入社2年目の営業部員。やる気だけは人一倍だが、お金に関してはややルーズ。毎月、給料日前には財布の中がスカスカになるタイプ
先輩:入社以来、総務、経理を経て現在は業務推進部に所属するベテラン社員。同じ大学を出た後輩にとって、何かと頼りになるセンパイ
「ふるさと納税」は自治体への寄付による税金の軽減制度
今年ももうすぐ忘年会の季節がやってくるな……。
ほんと、1年はあっという間ですね。最近はセンパイにいろいろ教えてもらって、お金のことも勉強するようになったんで、前回聞いた住民税についても(第2回参照)、調べてみたんですよ。やっぱり、住民税は高かったですね。コレ、何とかならないですかね。
住民税の負担を押さえたいなら、「ふるさと納税」をするのが一番だな!
ああ、それなら同期の山田もやってるって言ってました。ふるさと納税って、そんなにいいんですか? そもそも、どういう仕組みになっているんですか?
ふるさと納税は、出身地の自治体や、個人的に応援したい自治体を自由に選んで寄付をする制度なんだ。すると、寄付した金額から2,000円を超えた分が控除されて、その年の所得税や翌年の住民税が軽くなるんだよ。
名前に「ふるさと」ってついているけれど、ふるさと以外の自治体でもいいんですよね。そこが、前からちょっと違和感あったんですけど。
そうだな、それで当初は誤解していた人もいたのは確かだ。もともとの発想は、地方で生まれ育ち、地元のお世話になっていた人たちが、成人すると都会に出て働き、そこで住民税を払うようになるケースが多いから、これを何とかしたいということで考えられた制度らしい。
地方と都会の税収差を少しでも解消するために、ふるさとへの寄付を拡大して、応援したい自治体をどこでも選んで寄付できるようにして、その分、住民税を中心に税負担を軽くしますよ、という仕組みなんだ。
そうすると、本来納める居住地の自治体の住民税は減少して、寄付を受ける地方の自治体は潤うわけですよね。やっている人はけっこう多いのかな?
平成27年度の改正で、一定の上限までは2,000円を超える部分の寄付が全額控除できるようになり、ワンストップ特例制度で確定申告の手間も省けるようになってから、毎年、すごい勢いで増えているよ。
改正前の平成26年度は191万件だったのが、27年度は一気に3倍以上になり、その後も増え続けて平成30年度は2,300万件を超えた。全国の寄付金の受入額も26年度の388億円に対し、30年度は5,127億円だから、10倍以上になっているね。
それって、寄付した自治体から送られてくる返礼品狙いの人が増えたからでしょ。肉とか海産物とか、果物とか、ギフト券やパソコンまであったらしいですね。
そうなんだ。自治体間での返礼品競争が激しくなって、それを見直すために、今年(令和元年)6月から制度が新しくなったから、そこに気を付けないとだめなんだよ。
これからする人は、ふるさと納税の対象になる自治体を要チェック!
どういうふうに変わったんですか?
改正前はすべての自治体がふるさと納税の対象になっていたけれど、 令和元年6月からは、3つの基準を守っている自治体が対象となるんだ。対象となる自治体は総務大臣が指定し、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で確認できるようになっている。
指定を受けるための3つの基準というのは、どういうものですか?
まず、一つ目がふるさと納税の募集を適正に実施していて、二つ目が返礼品は調達費用などを含めて寄付額の3割以下にしていること、 三つ目は返礼品を地場産品にすること、という基準になっている。ふるさと納税の本来の目的を考えて、過度な返礼品競争を抑制するために、見直したわけなんだ。
実際に3割以上の返礼品を出している自治体も多かったんですか?
新しい基準になる前の平成30年度の調査で見ると、全自治体の合計で、寄付の受入額に対して返礼品の調達にかかった費用は35.4%で、送料とか広報、事務関係の費用も合わせると55%になっている。
寄付額の半分以上が、返礼品を出すためにかかっていたとすると、せっかく寄付した金額が、あまり活かされていないことになる。それはやっぱりヘンですよね。
そうだよな。 それで昨年から新基準を発表していたんだけれど、それに反する方法で3月まで多額の寄付を集めていた4つの自治体が、今回の指定から外された。
ほかにも、指定対象期間が6月から9月末までで、10月以降については新制度への取り組み状況を見て、指定を継続するかどうか判断された自治体もたくさんある。
ふるさと納税をするときは、最初にその時点で指定対象になっているかを、ポータルサイトや各自治体のホームページで確認することが必要だ。
2,000円を超える分が全額、住民税から控除されるには?
ところで、はじめに聞いた住民税が軽くなるというメリットですが、たくさん寄付をすればするほど、税金は軽くなるんですか?
2,000円を超えた分が税金から全額控除されるには、年収によって寄付額の上限があるんだ。自治体が提供している返礼品は、寄付額によって選べるものが違うから、いいものを狙ってたくさん寄付したほうが得だと思っている人もいるけれど、一定の上限を超えた分は控除の対象にはならないから、注意が必要だぞ。
といっても、キミはそんなにたくさん寄付はできないだろう?
そうですね、せいぜい1万か2万円くらいかな……。
たとえば、独身で年収350万円なら、2,000円を除く全額が控除になる寄付の上限は34,000円くらいが目安。仮に2万円のふるさと納税をしたら、2,000円を超えた分の18,000円が税金から控除される。ワンストップ特例制度を使えば、この分はすべて翌年度の住民税から差し引かれるんだ。
だけど、5万円の寄付をしたら、上限を超えた分の金額は控除の対象にならないから、住民税と所得税を合わせて軽減額は35,000円くらいだな。総務省のポータルサイトや民間のふるさと納税サイトでは、自分の年収や家族構成による上限の目安もわかるし、税金の控除額のシミュレーションもできるから、試してみるといいよ。
民間のふるさと納税サイトは、クレジットカードやコンビニ払いなど、寄付する方法も選べるんですよね。それで、実際の申告なんかはどうするんですか?
確定申告の必要がない会社員だったら、5カ所までのふるさと納税は、寄付した自治体にワンストップ特例制度を利用するための申請書と必要書類を提出するだけでいい。申請を受けた自治体が住所地の市区町村に必要な情報を連絡し、翌年の住民税から控除してくれる。だけど、今年中にしないと来年の住民税には間に合わないぞ。
おおっと、そうだった。どんな返礼品があるか、さっそく調べてみないと。
自治体によって、寄付金の使い道を選べるところもあるし、地域の課題を解決するために資金を集めるクラウドファンディング型の寄付もある。災害時の復興支援にもふるさと納税が役立っているから、そういうところも探してみたらどうかな。
なるほど、それもいいですね。どうせなら、今、本当に支援を必要としている自治体に寄付をしたいなぁ。それで自分の税金も軽くなるなら、もう十分に満足です。
そのとおり! 返礼品はあくまでもおまけと思って、目的を勘違いしちゃいけないぞ。
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第1回:手取りと額面ってどう違うの?
第2回:源泉徴収の仕組みとは?
マネージャーナリスト┃光田洋子
出版社の雑誌編集部などを経て、編集者・ライターとして独立し、編集事務所インタープレスを設立。現在は家計全般、住宅、保険、税金などの生活まわりのお金について、MOOKや雑誌などの編集・取材を担当するほか、新聞・情報サイトなどにも執筆している。
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