今さら聞けない!お金のアレコレ┃第2回:源泉徴収の仕組みとは?

給料から自動的に引かれているため、会社に勤めている人は目にすることの多い源泉徴収。しかし、それが何を表しているのか実はよく分かっていない、という人もいるのではないでしょうか。 そこで今回は、源泉徴収とは何なのか、その仕組みについて分かりやすく解説します。

今さら聞けない!お金のアレコレ┃第2回:源泉徴収の仕組みとは?

 実はよく分かっていない、お金のアレコレ。今さら聞けないという方もいるのではないでしょうか。 本連載は会社員が知っておきたいお金の「きほんのき」を分かりやすく解説します。

第2回目は、「源泉徴収」。今回も、入社2年目、お金にルーズな「後輩」に総務、経理経験者の頼れる「先輩」がやさしく手ほどきしてくれました。

【登場人物】

後輩後輩:入社2年目の営業部員。やる気だけは人一倍だが、お金に関してはややルーズ。毎月、給料日前には財布の中がスカスカになるタイプ

先輩先輩:入社以来、総務、経理を経て現在は業務推進部に所属するベテラン社員。同じ大学を出た後輩にとって、何かと頼りになるセンパイ


入社2年目からは引かれる税金が倍増⁉

 


後輩センパイ、聞いてくださいよ。このあいだ、ちょっとショックなことがあって……。

先輩なんだ、なんだ? キミでもショックなことなんか、あるのか?

後輩それがですね、たまたま部の新入社員同士で話しているのを小耳に挟んだら、給与の手取りが2年目のボクらとあんまり変わらないというか、下手すると新入社員のほうが多いんじゃないかと思って、ショックなんですよ……。

先輩それは仕方ないな、なんせ新入社員は住民税を引かれていないから。

後輩えーっ、何でですか? センパイはこの間、会社員は所得税と住民税の2種類の税金が給与から引かれるって言ってましたよね(第1回参照)。

先輩基本はその通りなんだけど、住民税というのは前年の所得に応じてその年の税額が決まるから、前年に所得がなかった新入社員の場合、1年目はゼロで、給与から天引きされるのは所得税だけなんだ。

後輩だから、手取りがボクらとあまり変わらないのか。じゃあ、新入社員も来年になったら、2種類の税金を引かれて手取りはガクンと下がるわけですね。

先輩だろうね。住民税が天引きされるのは2年目の6月からだから、そうすると4月に多少昇給があっても、6月以降は1年目より手取りが下がる場合もある。

後輩そうか、理由が分かって、ちょっと安心しました。たしかに、住民税って結構高いですもんね。会社員は給与から自動的に天引きされるから、今まであまり意識してなかったけど……。


会社員の税金は源泉徴収だから、申告の手間なし!

 

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先輩給与から税金が自動的に引かれることを「源泉徴収」というんだ。会社が本人に変わって税金を徴収し、国や地方自治体に納めてくれるシステムだな。
これがあるから、自分で税務署に1年分の所得を申告して、自分で税金を納める手間が省けるんだ。会社員にとっては便利な仕組みなんだぞ。

後輩たしかに、自分で税金の計算なんかできっこないし。でも、所得税と住民税って納める先も違うし、税率とかも違うんですよね。

先輩所得税は国に納める税金で、その年の課税所得によって税率は5%から最高45%で課税され、復興特別所得税が加算される。個人住民税は居住地の都道府県と市区町村に納める税金で、前年の所得に対して税率は一律10%になっている。

後輩ちょっと待ってください。所得税はその年の課税所得によって税率が決まるなら、まだ1年経ってないのに、今引かれている税額はどうやって出しているんですか? 会社がテキトーに、これくらいって決めて引いているんですかね?

先輩そんなわけないだろっ(笑)! でも、キミにしてはいいところに気が付いたな。所得税の場合は、毎年税務署から送られてくる「源泉徴収税額表」に基づいて、会社が従業員の給与やボーナスから天引きしているんだ。

後輩その書類に、「給与がこの金額なら、所得税はいくら」というのが書かれていて、1年分の所得が決まっていなくても、月ごとに決められた金額を天引きするんですか。

先輩まあ、だいたいそういうことだ。正確に言うと、その月の給与から社会保険料等を除いたあとの金額で、なおかつ扶養親族等の数によっても源泉徴収する税額は違う。

月の給与がこれくらいなら、年収はこれくらいというのも分かるから、それに応じて税額表は作られていて、最終的には1年分の年収が確定した後に、あらかじめ源泉徴収した金額と、最終的な所得税額を照らしあわせ、年末調整で精算する仕組みになっているんだ。

後輩なるほど。よく考えられている仕組みなんですね。

先輩そうだろ。 1年経ってから、まとめてドカンと税金を納めるより、毎月の給与やボーナスから少しずつ源泉徴収されるほうが、支払うほうの痛手も少ないからな。国や自治体にとっても、税金の取りっぱぐれを防げる便利な仕組みが給与からの源泉徴収というわけだ。

 

年末に受け取る源泉徴収票で、自分の税額をチェックしよう

 

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後輩ボーナスについても、給与と同じように会社は源泉徴収税額表を見て一人ひとりの税額分を天引きしているんですね。

先輩所得税については、そのとおり。ただ、住民税はボーナスからは引かれない。

後輩そうなんですか……!?

先輩なんだ、今まで気づかなかったのか。住民税は、年末調整や確定申告で前年の所得が確定してから、各自治体で税額を計算し、会社に通知がくる。それを基に年間の税額を12等分して、6月の給与から翌年5月にかけて給与から天引きする。

だから、6月だけ端数が違うことはあるが、基本的には毎月同じ金額で、ボーナスからは引かれていないんだ。6月の給与明細に、住民税の決定通知も入っているから、それをちゃんと見れば、月々引かれる金額も分かるはず。

後輩そういえば、書類がなんか1枚、付いていたような気もするけれど、今まできちんと見たことがなかったかも。引き出し、探してみようかな(苦笑)。

先輩所得税については、年末調整が終わったあとの12月の給与のときに、個人の源泉徴収票も配布されることが多いから、毎年しっかり見るんだぞ。それで年収も分かるし、年間で納めた所得税、社会保険料も分かる。

後輩住民税の通知と、所得税の源泉徴収票を見比べたら、それぞれどれくらい引かれているかが分かるんですね。

先輩年収が低いうちは、所得税は5%、住民税は10%だから、住民税の負担のほうが重いけれど、年収が高くなると、所得税は超過累進課税で一定額を超えた分が、10%、20%、23%と高くなっていくから、所得税のほうが重くなるんだ。部長くらいになると、源泉徴収票を見て所得税の金額にため息をついているよ。

後輩それだけ年収が高いってことだから、ボクらも早くそうなりたいですね!

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執筆者プロフィール
マネージャーナリスト┃光田洋子
出版社の雑誌編集部などを経て、編集者・ライターとして独立し、編集事務所インタープレスを設立。現在は家計全般、住宅、保険、税金などの生活まわりのお金について、MOOKや雑誌などの編集・取材を担当するほか、新聞・情報サイトなどにも執筆している。
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