業務効率を低下させる花粉症……医師に聞く「最善の対策」

春の気配に心が浮き立ちますが、花粉症の季節の訪れに戦慄を感じている人もいるでしょう。くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどに襲われて、仕事どころではなくなってしまう“花粉症”。正しく向き合う方法を遠藤耳鼻咽喉科・アレルギークリニックの遠藤朝彦先生に教えていただきました。

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そもそも花粉症とは?

スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネ、シラカバなどの花粉が体内に入り、鼻や目などの粘膜に接触することで発症する花粉症。くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こすアレルギー性鼻炎や、目のかゆみなどを引き起こすアレルギー性結膜炎などを総称し、一般的に“花粉症”と呼ばれています。日本人にはスギ花粉やヒノキ花粉によるアレルギーを持つ人が多く、スギ花粉が飛び始めるころから、街では花粉症らしき人を多く見かけるようになります。

2020年の花粉は少ない? 毎日の花粉量や風向きをチェックして、花粉の多い日は外出しない!

昨年、大型台風が千葉県などを襲ったのは記憶に新しいところ。これらの台風や太平洋側の地域の日照不足などの影響で、今年はスギ雄花の花芽の生育状況が地域ごとに大きく異なるようです。東北北部、北陸、山陰などは昨年より生育状況がよく、関東甲信、関西地方などは昨年より生育状況が悪いよう。花芽の生育がよければ花粉の量もその分多くなります。

花粉の飛散量は、その発生地や風向きになどによって日々変わってくることが予想されます。花粉症を自覚している人は、日々風向きや、自分の住む地域や職場のある地域の花粉量などをチェックし、備えることが必要です。

まずは検査で自分の“花粉症”を知ろう

「自分は花粉症だ」という自覚がある人は多いですが、自分が何の植物の花粉症なのか、正確に知らない人も多いようです。一般的には日本ではスギ、ヒノキの花粉を原因とする花粉症の人が多いと言われていますが、アレルゲンとなる植物の花粉は他にもたくさんあります。どの植物の花粉症を持っているかによって、発症する時期なども変わってきます。

花粉症の自覚がある人は、まず耳鼻咽喉科やアレルギークリニックなどの医療機関で、どんな花粉に反応しやすい体質なのか、検査を受けましょう。

最大の花粉症対策とは、花粉を体内に入れないこと!

花粉症はアレルゲンとなる花粉が体内に入ることで発症するアレルギーです。花粉症対策に一番大事なことは、“花粉を体内に入れないこと”。花粉が多く飛散している日は、外出しないことが一番の花粉症対策と言えます。

とはいえ、ビジネスパーソンにとっては職場や取引先に出かけることは避けられないもの。外出しなければいけない場合は、花粉を取り込む量が少しでも少なくなるよう、マスクやメガネなどを装着しましょう。

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マスクは、顔にフィットし横に隙間ができないものを選ぶことが大切です。マスクの内側に湿らせたコットンをガーゼで包んだ「インナーマスク」を入れることで、99%の花粉をカットすることができます。室外に出てからマスクを装着する人もいますが、これでは逆効果。マスクの内側に花粉が入り込んでしまう可能性があります。マスクは室内でしっかりと装着してから、室外に出るようにしましょう。

室内に花粉を持ち込まない、舞い上がらせない。クリーンな環境が業務効率をアップ

外出先から帰ってきた時、コートなどの上着から花粉を払う人がいますが、これは花粉を舞い上がらせるだけで、逆効果。かえって花粉を吸い込むリスクが高くなります。上着を脱ぐ時は、払ったり叩いたりせずにそっと脱ぎましょう。花粉は床に落ちてしまえば、ふたたび舞い上がることはありません。

また、室内は清潔に保ちましょう。家では、なるべく窓の開け閉めを少なくし、洗濯物などは室内に干すようにしましょう。花粉は水溶性のため、床の雑巾掛けと乾拭きをすることで、花粉のない状態にすることができます。オフィスなども、なるべくほこりのない状態を保つのがベスト。花粉症の人の7割が同時にほこりアレルギーを持っているとも言われています。花粉やほこりのない室内で快適に過ごしましょう。

花粉症の症状が出た場合に効果的な対策は? 薬は処方薬がベスト!

どんなに花粉を体内に入れない努力をしても、100%防ぐのは難しいもの。90%の花粉を防いだとしても、花粉の飛散量が多い日に外出せざるを得ない場合などは、花粉症の症状が出てしまう場合があります。そういった場合は、薬で症状を抑えるようにしましょう。

ただし、薬といっても市販の薬をむやみに飲むのはおすすめしません。医療機関で自分の症状に合わせた薬を処方してもらい、必要な時に飲むようにしましょう。「薬を飲むと眠くなる」というイメージがありますが、最近では眠くなりにくい薬もあります。医師に相談すれば、眠くなりにくい薬を処方してくれるはず。

ただし、薬を飲んでも花粉症の根本治療にはなりません。薬はあくまでも応急処置。自分の症状にあった処方薬を選んで服用しましょう。

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花粉症は免疫療法で治療できる!来年の春を快適に過ごすために

花粉症は一朝一夕で治るものではありませんが、まったく治療できないものでもありません。近年は治療薬を皮下注射する「皮下免疫療法」や、舌の下に治療薬を投与する「舌下免疫療法」なども登場しており、長期にわたってアレルギー症状を抑えることができるようになりました。これらの治療はアレルギークリニックなどの専門医療機関で実施することができます。

来年、再来年の花粉症シーズンを快適に過ごすためには、まず医療機関を受診して自分の花粉症を知りましょう。そして医師と相談しながら、長いスパンで免疫療法などの治療を進めれば、今後の花粉症シーズンを快適に過ごすことができるはずです。

文=松村知恵美
編集=五十嵐 大+TAPE

監修
遠藤 朝彦 先生
遠藤耳鼻咽喉科・アレルギークリニック 院長。
日本アレルギー学会認定指導医・専門医。元東京慈恵会医科大学講師。環境省委託花粉観測システム検討委員会委員。元文部科学省委託スギ花粉症克服に向けた総合研究推進委員。

【参考記事】
服装を変えるだけで、花粉症は軽くなる!? コーディネートの5つのコツ

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