元コミュ障の吉田尚記アナが伝授する、今日から使える(秘)コミュニケーションテク

“元コミュ障”という実体験を活かし、著書『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)を上梓したニッポン放送のアナウンサー・吉田尚記さん。ご自身の経験を元に編み出した、若手ビジネスパーソンがすぐに実践できる「会話を盛り上げるスゴ技」を教えていただきました。コミュ力で悩んでいるあなたに、効果てきめんです!

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アナウンサーなのに超コミュ障⁈ 共演者にダメ出しされた過去も

――アナウンサー=喋り上手のイメージがありますが、元コミュ障って本当でしょうか?
吉田尚記さん(以下、吉田):いや、それはもうバリバリのコミュ障でしたよ。学生時代は男子校に通っていたのですが、女の子がたくさん遊びに来てくれる文化祭でもコミュ障っぷりを存分に発揮していました。コミュ力の高い友達がどんどん声をかけるなか、結局6年間1度もきちんと話せなかったなぁ……。勇気を振り絞って話しかけたこともあったのですが、今考えると「いやそれ向こうからしたら、絶対NGだろ……」というアプローチばかりでしたね。

――そんな吉田さんが、アナウンサーを目指したきっかけは?
吉田:就職案内の掲示板にニッポン放送の募集案内が載っていたから、という単純な理由です。マスコミの選考タイミングが他の職種より早かったこともあり、タダだから受けておこう! と軽い気持ちで受験したら運よく合格できたんです。通常の面接の他に控室で渡された原稿を練習してから読む+難読漢字のある差し込み原稿を読む、いわゆるマイクテストがありました。今考えると、コミュ障だとバレる可能性が高いインタビューテストがなかったから受かったんだと思います。

――アナウンサーとして働くなかでコミュ障が原因で苦労したことは?
吉田:いろいろありますね……! なかでも、共演者の方から「吉田アナは絡みづらい」と言われたのは、アナウンサーとしては致命的でものすごくショックを受けました。1年目だったのでギリギリ許されましたが、場合によっては部署変更があるレベルですよね。

ですが、毎日インタビューの仕事があるので落ち込んでばかりはいられず、「克服しないと仕事にならない、やる以外の選択肢がない」という状態でした。アナウンサーってインタビューが面白くなかったとしても、そのまま世間に公開されちゃうんです。普通のコミュ障の人は「コミュニケーション大変だ、もう嫌!」って会話に消極的になっていくと思うんですけど、僕の場合は仕事だったからそうもいかず……。とにかく必死でコミュニケーション関連の本を読み漁りました。

――いい本はありましたか?
吉田:いやぁ、出合えなかったですね(笑)。なんとかするしかないと思って読んだんですが、「コミュニケーションは金も雑談も引き寄せる!」みたいな会話以外に目的がある本が多く、「いや自分が知りたいことはそうじゃない」と。あとは解決策として「適切な質問をする」「自信をつける」なんて結果論が書いてあるんですけど、いやそれが出来たら苦労しないよ! と何度思ったことか。

どの本にも具体的に試せるテクニックが書かれていなかったので、自分でずいぶん試行錯誤しました。今回発売した書籍には、自分がなんとかラジオパーソナリティを20年続けられるぐらいにはなれた、すぐ実行に移せるテクニックだけを書いています。

若手ビジネスパーソンの悩みを解決! こんな時どうする?

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悩み1.オチが作れない、話が紆余曲折して上手に話せない

吉田:オチのある話をしようとするときって独善的で、「私の考えてきた話を発表しますよ!」というテンションになると思うんです。でも、コミュニケーションの目的は自己表現ではないので、会話にオチをつける必要はありません。むしろオチがついたら話が終わってしまいます。

会話は協力型のゲームのようなもので、会話中に気まずい沈黙が訪れなければ参加者全員の勝利。

その協力プレイをクリアするためには、相手に“パス”を出すのが最適解です。

例えば、天気の話をするときに「今日はいい天気ですね」で終わっちゃうと、「そうですね」で会話が止まってしまいます。同じ天気の話でも、「今日、家出るときって晴れてました?」と質問、パスにしてみるとどうでしょうか。相手の家の情報や通勤前のエピソードなど、天気の話からどんどん話が広がっていきそうじゃないですか?

悩み2.相手の話にうまくリアクションできず、気まずい雰囲気に……。

吉田:まずは、相手に興味を持って話を聞くことです。「この人はどういう人なんだろう」「こういうときはどうするんだろう」という興味を持って接して下さい。立場を置き換えると分かると思いますが、自分が話しているときに相手が前のめりになって話を聞いてくれると嬉しいですよね。

また、「えっ⁉」「あっ!」という相づちをどんどん打って行きましょう。驚くのは失礼、なんて思ってるかもしれませんが、そんな心配はいりません。自分が話しているときに、相手が驚いてくれたら、嬉しくないですか? “リアクションは愛”ですから、どんどん反応してください!

<NG例>
相手:この前、旅行で○○県に行ったんです。
自分:へー、旅行いいですね。

<OK例>
相手:この前、旅行で○○県に行ったんです。
自分:あっ! そこって△△が有名な場所ですよね/えっ! 私も行ったことあります。△△は行きましたか?

悩み3.相手との会話を盛り上げるトークテーマが分からない

吉田:定番として、「木戸にたちかけし衣食住」という言葉があります。「気象・道楽(趣味)・ニュース・旅・知人・家族・健康・仕事・衣・食・住」をまとめた言葉ですね。この世に関係ない人はいない事柄がきれいにまとまっています。

ただ、ここで重要なのは、「良いお天気ですね」と天気の話題を出すだけじゃなくて、「寒くなってきましたけど、冬服はもう出しましたか?」と質問にすること。話題って考えると何を話せばいいのかわからなくなるかもしれませんが、常に大切なのは「質問」なんです。相手に興味を持つのは失礼どころか、最大の礼儀です。どんどん、相手のことを知ろうとしてください。
一見興味がなかった相手を、俄然好きになったりすることがあるのが、会話の醍醐味ですから。

【プロフィール】
吉田尚記(よしだ・ひさのり)●ニッポン放送アナウンサー。ラジオ番組でのパーソナリティのほか、テレビ番組やイベントでの司会進行など幅広く活躍。またマンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、「マンガ大賞」発起人となるなど、アナウンサーの枠にとらわれず活動を続けている。2012年に第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。著書に『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)など。
@yoshidahisanori

取材・文=山本杏奈
編集=五十嵐 大+TAPE

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