20代で身に付けておきたい“ポータブル・スキル”とは?

「何年か社会人を経験して、スキルも身に付いてきた!」。そう実感している方も多いはず。しかしそのスキル、あなたの会社でしか通用しないものではありませんか?

20代で身に付けておきたい“ポータブル・スキル”とは?

「何年か社会人を経験して、スキルも身に付いてきた!」。そう実感している方も多いはず。しかしそのスキル、あなたの会社でしか通用しないものではありませんか?

若者の雇用をめぐる状況が変わってきたいま、「ポータブル・スキル」の重要性が指摘されています。いったいポータブル・スキルとは何なのでしょうか。今回は、現代の若手ビジネスパーソンなら誰もが知っておくべき、ポータブル・スキルについて学んでいきましょう。

ポータブル・スキルとは?


「ポータブル・スキル(portable skill)」は直訳すると「持ち運び可能な能力」。キャリア論のなかでは「業界や職場、企業が変わっても通用するスキル」のことを指して使われる言葉だそうです。(一般社団法人人材サービス産業協議会の定義による)

株式会社インテリジェンスのキャリアコンサルタントである中谷正和さんは、ポータブル・スキルが重要である理由について、「持ち運び可能な能力なので、何かの原因で業界や会社、仕事が変わっても能力を発揮でき、仕事の選択の幅が広がる」と語ります。

ポータブル・スキルが重要なのは転職希望者だけではない


こうしたポータブル・スキルが重要になってきたのは、どうしてなのでしょうか。

かつての日本では、終身雇用が一般的でした。働く人が企業を移る必要があまりなかったので、持ち運び可能なスキルもそこまで重要視されてこなかったのです。他の業界や職場、企業では役に立たないスキルでも、社内で役に立てば、出世や報酬アップにつながっていました。

しかし近年になって、終身雇用の制度が崩れ、転職をすることが一般的になりつつあります。また産業構造の変化に伴い、自らが所属する会社の産業が縮小し、成長産業に移る必要があったり、グローバル化による競争激化の影響で会社が倒産や合併をされてしまったり、というような理由で、会社を移らざるを得ない場合が増えてきました。「そのような環境の変化により、個人のキャリアの不確実性が増したことで、ポータブル・スキルが大切になってきた」と中谷さんは指摘します。

ポータブル・スキルを意識すべきなのは、転職を考えている人だけではないと中谷さんは付け加えます。「転職を視野に入れている人でなくても、転職をせざるを得ない状況になるかもしれないし、同じ会社の中でも環境が変わって、別の業務をしなくてはいけなくなる可能性がある。そういったときにどこの企業、職場でも通用するスキルを持っていることが重要だということです」。

ポータブル・スキルに誰にでも当てはまる正解はない


「ポータブル・スキルが重要なのは分かった。じゃあ、具体的には何を身に付ければいいのか教えてほしい!」と思いますよね。しかし中谷さんは、「ポータブルスキルは、『身に付けるべきスキルはこれだ!』『これをやれば身に付く!』というものではない」と指摘します。つまり「何を身に付ければいいのか」「どう身に付ければいいのか」という問いに対して、技術や資格のように、誰にでも当てはまる正解はないのです。

大切なのは、自分にとってのポータブル・スキルを自分で探し、伸ばしていくこと。「自分のスキルを『分解・整理』をして、『強み・弱み』を把握する。さらに、『強み』をどう生かすのか・伸ばすのか、また『弱み』とどう付き合っていくのかを考え、『今の仕事で』『部署異動で』『転職で』等の手段を用いて、自分でスキルを開発していく」。それがポータブル・スキルとの向き合い方だと、中谷さんは言います。

ポータブル・スキル把握の助けになる2つのこと


誰にでも当てはまる正解がないとすると、自分にとってのポータブル・スキルを探す作業は大変なものになりそうですよね。なかなか自分で自分の強みや弱みを把握することは難しく、把握できたとしても、どうしたらそれらを伸ばしていけるのかを把握することも難しいものです。

そこで有効なのが、「客観的な意見を取り入れること」と「分類例を参考にすること」です。

その1.客観的な意見を取り入れる


就職活動での自己分析のときに、「私の強みって何かな?」と他人に意見を聞いた方も多いはず。自分のポータブル・スキルを把握し、伸ばしていくときにも、客観的な意見を取り入れて、独り善がりにならないことが大切です。
客観的な意見を取り入れるためには、具体的には「客観的に見ている・評価している立場である上司に意見を聞いてみたり、市場を客観的に知っている立場であるキャリアコンサルタントに相談するといい」と中谷さん。

このとき注意したいのが、家族や友達などに相談してしまうこと。身近な人の意見は必ずしも客観的なものであるとはいえないので、できれば上で挙げたような、客観的な立場に立った意見をくれる上司や専門家に相談するのがいいそうです。

その2.分類例を参考にする


自分のポータブル・スキルを探そうと思っても、何も参考になるものがないと困ってしまいます。ポータブル・スキルに正解はないですが、自分のポータブル・スキルを把握するときに参考になるツールとして、スキルの分類例があります。ここでは、一般社団法人人材サービス産業協議会による、ポータブル・スキルの分類を紹介しましょう。


中谷さんによれば、こうした分類を参考に、「自分はこういうことができる」「逆にこういうことが弱い」「こういうスキルを伸ばしていこう」と考えるのがいいそうです。

いかがでしたでしょうか。「ポータブル・スキルを自分自身で把握し、開発をしていかなければならない」と聞くと、ちょっと大変そうに思ってしまうかもしれません。でも、ポータブル・スキルは私たちのキャリアの可能性を開いてくれるもの。そう考えると、大変な作業もワクワクしながらできそうですね! ぜひ一度、「自分の強み・弱みは何だろう」と、自らのポータブル・スキルについて考えてみてください!

(参考サイト)
JHR 人材サービス産業協議会
(参考資料)
人材サービス産業協議会 求人ヒアリングシート一式(PDF)

識者プロフィール


中谷正和(なかたに・まさかず)/キャリアコンサルタント。明治大学法学部法律学科を卒業後、新卒では大手ハウスメーカーに就職。注文住宅の営業職に従事をする。その後、株式会社インテリジェンスに転職をし、現在はキャリアコンサルタントとして転職希望者の転職支援に従事。主に、業界・年齢を問わず、営業職に従事をされている方の転職支援を担当。年間約300名の転職相談を受け、その支援を行う。

※この記事は2015/02/27にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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