レジリエンス(逆境力)を持ったビジネスパーソンに“本当の”エリートが多い理由

“エリート”といわれるビジネスパーソンにとって必要な条件とは何でしょうか。

レジリエンス(逆境力)を持ったビジネスパーソンに“本当の”エリートが多い理由

“エリート”といわれるビジネスパーソンにとって必要な条件とは何でしょうか。

IQ(知能指数)、学歴、資格それとも人脈……。IQが高ければ仕事をスムーズにこなせるでしょうし、学歴もまたエリートにとって重要なステータスのように思えます。しかし、ポジティブサイコロジースクール代表の久世浩司さんによると……。

「“レジリエンス”を持った人こそが、本当に力のあるエリートです」

世界のエリートは、IQや学歴よりも“レジリエンス”を重視していると語る久世さん。では、そのレジリエンスとは何なのか、そしてどうすれば鍛えることができるのかを聞いてみました。

レジリエンスとはいったいどんな能力なのか


「レジリエンスとは、ストレスや重圧が高く、変化の速い状況でも、柔軟に対応し、失敗や困難を乗り越えて成功・成長へと導く力のことです。レジリエンスの高い人は一言でいうと『立ち直りの早い人』です」(久世浩司さん 以下同)

心理学的な側面から積極的に研究が進められているというこのレジリエンス。簡単に言えば、逆境や困難に対しての“たくましさ”にあたる、と久世さんは言います。

「打たれ強さは性格的なものですが、打たれ弱い人でも『立ち直りの早さ』は習得できます。それがレジリエンスを鍛えるトレーニングですが、欧米ではゴールドマン・サックスなどの一流企業で取り上げられています。学校でも、受験やスポーツ大会に絶大な力を発揮する能力です」

ビジネスでレジリエンスが問われるようになった3つの理由


それでは、なぜこのレジリエンスという概念が取り沙汰されるようになったのでしょうか。そこには、現代社会が抱える3つの背景があるのだとか。

理由(1):うつ病患者をはじめとした、ストレスを抱えるビジネスパーソンが増えているため


「職場では、ストレスや多忙で精神が疲労している人が増えています。心理的に落ち込んでもすぐに立ち直れる“折れない心=レジリエンス”の必要性が、イキイキと働き続けるために注目を浴びているのです」

理由(2):グローバル化する社会に対応するため


「今の日本は急速にグローバル化しています。多くの企業では多様性に柔軟に対応し、国籍を超えて活躍する人材がますます必要とされてきます。このグローバル化へ対応するためには、英語力やビジネススキルだけでは十分ではなく、変化に対応する力、そして失敗や試練に負けない“たくましさ=レジリエンス”が必要不可欠となるのです」

理由(3):自分だけのキャリアを築く時代になったため


「長期のキャリア展望を描くことが極めて困難な昨今にあって、人生やキャリアの節目にあたり、将来どう働くべきか迷っている人が増えています。他人任せではなく自力で自分だけのキャリアを開発するために、失敗に対して恐れないこと、つまり“逆境力=レジリエンス”が必要なのです」

レジリエンスを鍛えるために今日からできること


ストレスやプレッシャーの強い現代社会において、ビジネスで成功するためにレジリエンスが必要だということは分かりました。このレジリエンスという能力は、生まれ持った才能なのでしょうか?

「生まれながらにして打たれ強い人はいますが、レジリエンスについては鍛えていくことが可能です。レジリエンスを身に付ける際に最も重要なことは、失敗や挫折をしたときの“感情のコントロール”です。レジリエンスは失敗を避けるためのものではありません。失敗してもすぐに立ち直れる自信をつけ、失敗を恐れずに前進し、中長期的に成長し続けていくための能力なのです」

では、このレジリエンスはどのように身に付けたら良いのでしょうか?

トレーニング(1):感情のラベリングをする


「失敗をした後の嫌な気持ちをそのままにせず、名付けをする『ラベリング』をしましょう。ネガティブ感情は、『見える化』すると対処しやすくなります。『何となく不安』という曖昧な不安から自分がなぜ不安なのか解きほぐすことで、自分の感情をコントロールできるようになるのです」

トレーニング(2):ネガティブ感情の気晴らしをする


「ネガティブ感情は、避けられるものではありません。大切なのはネガティブ感情をいかに減らすかではなく、いかに晴らすかということです。エビデンスのある4つの方法は以下になります。『エクササイズ』、『音楽演奏・鑑賞』、『ライティング』、『ヨガ・瞑想(めいそう)』です。『エクササイズ』、つまり有酸素運動は、良性ホルモンであるβエンドルフィンを生成します。音楽は、快感ホルモン『ドーパミン』を適度につくり出し、多幸感を生みます。書く行為はセラピー効果があり感情の鎮静化作用が期待できますし、脳を鎮静化する伝統的な手法は、“抗ストレスの秘薬”と呼ばれる『セロトニン』を脳内に分泌させるのです」


人生やキャリアの節目で、ストレス・不安・重圧を感じて、悩んでいるビジネスパーソンは多いと思います。その中で、失敗を恐れて行動できない人も少なくないでしょう。常にチャレンジし続けるためにも、たとえ失敗してもすぐに立ち直ることのできるレジリエンスを身に付けておくのはいかがでしょうか?

識者プロフィール


久世浩司(くぜ・こうじ)
ポジティブサイコロジースクール代表。慶應義塾大学卒業後、世界最大の消費材企業P&Gを経て、国内初のポジティブ心理学の社会人向けスクールを設立。ポジティブ心理学をビジネスの現場で生かす人材の育成に関わる。3月に出版した初の著書『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方』(実業之日本社)が話題を呼んでいる。


※この記事は2014/06/12にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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