【後編】アイデアマンの宝庫・老舗玩具メーカーバンダイに潜入!

今回は、『∞プチプチ』シリーズなど次々とヒット商品を企画した高橋さんに商品誕生の裏話や、ヒット商品のアイデアを考えるコツなどについて、高橋さんが手掛けた最新アイテムを紹介してもらいながらお伺いしました。

【後編】アイデアマンの宝庫・老舗玩具メーカーバンダイに潜入!

会社概要

 

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名称:株式会社バンダイ
本社所在地:東京都台東区駒形1-4-8
設立:1950年
社員数:1,162名(2013年4月末現在)
平均年齢:36歳(2013年9月末現在)

1950年7月に創業。玩具はもちろん、模型、玩具菓子、カプセルトイ、カードなどさまざまな事業を展開。ターゲットも子どもから大人まで裾野を広げ、今なおチャレンジし続ける国内の先進的企業。

バンダイの事業において欠かせない新商品開発。今回は、『∞プチプチ』シリーズなど次々とヒット商品を企画した高橋さんに商品誕生の裏話や、ヒット商品のアイデアを考えるコツなどについて、高橋さんが手掛けた最新アイテムを紹介してもらいながらお伺いしました。

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ネタの考案数、年間1000本。『∞プチプチ』を生み出せた背景とは?


--玩具メーカーに入社した理由は、やはり玩具が好きだったからですか?

「実は、特別好きだったというわけではないんです(笑)。ただ、自分は昔から一貫して『人を楽しませること』に興味を持っていました。大学時代も落語研究会に所属して、“笑い”について研究していました。就職先を考える際にも、人を楽しませる仕事とは何か、自分のアイデアを生かせる仕事とは何かを考えて、今の仕事を選んだんです」

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--一大ブームになった『∞プチプチ』シリーズを考案されたとのことですが、どこから着想を得たのでしょうか?

「単純に会社に荷物が届く際に梱包されている梱包材を見てですね。これを玩具にしたら面白いのではとひらめいたからです。誰もが小さいころプチプチを潰すことに熱中した経験があるはずなので、キーホルダーにして、いつでもどこでも気軽にプチプチ潰しができる仕組みをつくれば、かつてプチプチで遊んだ大人たちが買ってくれるのではないかなと思ったんですよ。ただ、この商品が生まれたのは、ボツネタ含めて年間1000本以上の玩具を考えていたからこそなんです」

--「それは一体どういうことなのでしょうか。

「新人時代、私は上司から月100本のネタを考えるよう指示されていました。ですが、自分が面白いと思えるものを提案しても、既に過去に販売されているものと似ていたり、新鮮さがないものが生まれてきてしまうのです。しかも毎月100個のアイデアを考えるためには、ずっと自分のデスクで頭を捻っていても、とてもじゃないけど間に合わなかったんです。でもなんとかしてネタを考えて、提案しないといけない。そうした厳しいトレーニングの中で、どうしたら企画の種を量産できるかについて考えたときに『目に映るもの全てを玩具のアイデアにしてやろう』と思いついたんです。そういうアイデア発想法が習慣的に身に付いていたから、プチプチを見たときに、瞬時にアイデアが思いついたんです。野球でいう1000本ノックをやって、自分なりのアイデア発想法が構築されたことで浮かんだアイデアなんですね」

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誰も見たことのないオモチャを作って、みんなを驚かせたい。



--現在のお仕事の内容を教えてください。

「今年から部署が移動になり、大人向けのガシャポンを企画しています。最近では、スマホのホーム画面などに貼ることができるシリコン製のくちびる型立体シール『スマートキッス』や、リアルな鼻をかたどった、人目を気にせず気軽に鼻をほじれる『ほじれるんです。』などを企画しました」

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10月から販売されている「スマートキッス」。触ったときの質感を本物の唇に近づけることに腐心したのだとか。

--これらの製品を発案した経緯とは何でしょうか。

「多くの人間が男女問わず一番触りたいと思っている身体の部分は何かを突き詰めて考えたところ、唇だという結論に至りました。唇を毎日の生活の中でも一番触れる機会が多いボタンである、スマートフォンのホームボタンにつけたら、触りたい潜在欲求が満たされるのではないかと考えたのです。『ほじれるんです。』も同様に、タブーでありながらも、実はみんなやりたいと思っているはずの“鼻をほじる”という行為を行えるツールとして、キーチェーン型の玩具が思い浮かんだんです」

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現在の部署で企画した大人向けガシャポンの商品。左の2商品「歌舞伎ハンカチーフ」「歌舞伎隈取根付」は、歌舞伎の人気演目に登場する隈(くま)取や衣裳、小道具をモチーフにしており、年配の方を中心に大人気のようです。

--こうした斬新かつユーザーに刺さるアイデアを発想するためには、どうすればいいのでしょうか?

「市場のデータを分析したり、競合品を意識してアイデアを考えすぎると、そこを狙った商品のみしか考えられないので、斬新なアイデアは生まれません。くだらないものでも気にせず、とにかくネタを量産することで、そのなかでいくつかは新鮮で市場価値があるものが見つかるんです。私は常日頃からアイデアの種になりそうなものを探し続け、それをメモする。そしてターゲットになりそうなユーザーやニーズを後で考えて膨らませて考えるというやり方を取っています。そして何より、『誰も見たことがないオモチャを作って、世の中の人を驚かせたい』という思いがいつも根底にあるから、ずっと熱中して企画を考え続けることができるのです」

商品のこととなると熱を帯びる語り口が印象的だった、高橋さん。情熱と遊び心を持って、仕事に熱中している社員さんが多いからこそ、大人も子どもも“面白い”と好奇心をくすぐられる商品が誕生するということがよく分かりました! バンダイの皆さん、ありがとうございました!

※「歌舞伎」は松竹(株)の登録商標です。
※「歌舞伎ハンカチーフ」は松竹(株)のデザイン企画・監修により製造されました。
(C)BANDAI

PROFILE

 

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氏名
高橋晋平(たかはし・しんぺい)
所属部署
ベンダー事業部 企画・開発第二チーム サブリーダー
略歴
大学卒業後、2004年に株式会社バンダイに入社。カプセル玩具の企画開発を担当し、ヒット商品を次々に送り出している。代表作である「∞(むげん)にできるシリーズ」(∞プチプチ、∞エダマメ)は、2008年の第1回日本おもちゃ大賞「トレンディー・トイ」部門大賞に輝き、国内外でシリーズ累計500万個以上を販売する異例の大ヒットを記録。現在は、大人向けガシャポンの企画を担当している。著書に『∞(むげん)アイデアのつくり方』(イースト・プレス)がある。

※この記事は2013/12/24にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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