- 交渉力とは?その概要を分かりやすく解説
- ビジネスで交渉力が役立つシーンとは?
- 交渉力が高い人の特徴は?
- 交渉力を高めるためのトレーニング方法とは?
- 交渉をスムーズに進めるコツ
- 交渉で役立つテクニック「Must/Want法」
- 交渉で役立つテクニック「人間関係の6つのパラダイム」
- 交渉の場でNGな言動とは?
- 交渉力を上げるならコミュニケーションスキルから
社内外を問わず、「本当は言いたいことがあったのに、うまく持ちかけることができなかった……」と後悔した経験はありませんか? そんなときに役立つ交渉力は、トレーニングによって高めることができます。
本記事では、交渉力研修で講師を務める松井裕志さんに伺ったお話を基に、交渉をスムーズに進めるコツや、交渉力を高める方法などについて解説します。
交渉力とは?その概要を分かりやすく解説
交渉力は、「Win-Win」の状況を生み出す能力であり、決して相手を打ち負かす力ではありません。
お互いが納得できるゴールを目指して話し合う力こそが正しい交渉力です。
ですから、交渉力にはさまざまなスキルが含まれます。例えば、相手の立場を理解すること、コミュニケーションスキル、柔軟性など。
その上で協力的かつ効果的に意見を交換し合い、最終的にはお互いが満足できる合意や解決策を見つけ出すことが何より重要なのです。
交渉力と折衝力の違いは?
交渉力と混同されがちな言葉に「折衝力」があります。折衝力とは、お互いの利害が一致していない状況で折り合いをつける力のことです。
一見似ていますが、焦点が異なります。
交渉の焦点は、お互いの利益を最大化すること。折衝の焦点は、お互いが納得できる解決策を探すことです。
ビジネスで交渉力が役立つシーンとは?
実際によくあるシーンを例に挙げ、交渉力についてさらに考えてみましょう。次の例のように、交渉力があれば事態を好転させられる可能性が高まります。
上司や同僚に提案したいことがあるとき
上司や同僚に対して提案したいことがあっても、認識や意見の相違がある場合、提案が拒否されたり不十分な形で実施されたりする恐れがあります。
そんなときこそ交渉力の出番。自分の考えを明確に伝えながら、共通の目的に向けて話し合いましょう。
結果、提案が受け入られやすくなることも。問題の本質を把握し、解決策を提案し合い、効果的な解決を図ることもできます。
取引先と円滑に話し合いを進めたいとき
社外での交渉はよりいっそう慎重さが求められます。
交渉が一見成立したようでも、お互いの納得が得られない結果だと、長期的にはパートナーシップが悪化する可能性があるからです。
適切な交渉により、取引条件などを調整し、お互いにとってメリットのある合意を形成できると理想的です。
プロジェクトチーム内で調整が必要なとき
チームでプロジェクトを進める場合、メンバー同士の意見の不一致や、要求の調整が難航することによって、進行の遅れや雰囲気の悪化を招くことがあります。
そんな事態を未然に防ぐためにも、交渉力は必須です。
メンバーの適切な役割分担、進行状況の調整に役立ちます。万が一、チームに混乱が生じても、交渉力を発揮すればプロジェクトへの影響を最小限に抑えられるでしょう。
チームを目標達成に導くリーダーシップを発揮することも期待できます。
就職・転職先と条件を擦り合わせたいとき
就職・転職では、キャリアアップや給与条件の最適化を望みたいところ。
交渉力がないと、不満や不安があってもなし崩し的に条件を受け入れてしまい、長期的な満足度やキャリアの成長に悪影響を及ぼしかねません。
交渉力を発揮できれば、満足できる条件を得やすくなります。自分の価値をしっかりとアピールし、求人元の企業と信頼関係を築くこともできるでしょう。
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交渉力が高い人の特徴は?
「ビジネスに役立つのは分かるけど、交渉力には自信がない……」という人は多いかもしれません。
そこで、交渉力アップのために、まずは交渉力が高い人の特徴を知ることから始めましょう。
コミュニケーション力が高い
コミュニケーションは交渉の基盤とも言えるもの。交渉相手との意思疎通を円滑に図ることで、誤解や不満を解消し、お互いにとって良い結果を導けます。
対人理解力が高い
対人理解力とは、交渉相手の立場やニーズを理解し、共感する力のこと。これにより建設的な対話が行えます。
交渉力の高い人ほど相手の視点に立って議論を進め、「Win-Win」の解決策を見つけられるでしょう。
目標志向と戦略思考を備えている
交渉では、はっきりとした目標を持ち、その達成に向けて戦略的に動くことが重要です。
交渉力の高い人は効果的な戦略を立て、柔軟に対応する力により、交渉相手と合意を作り上げていきます。
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交渉力を高めるためのトレーニング方法とは?
交渉力を高めるには、日ごろのトレーニングが重要です。ここでは5つのトレーニング方法をご紹介します。
交渉の基本概念を学ぶ
「そもそも交渉とは何か?」を理解し、実践することで、より効果的な交渉ができるようになります。
交渉の基本概念とは次の4点です。
<交渉の基本概念>
①利害対立と協力
利益や要求が違っても、共通の目的に向けて協力し、合意を目指す。
②譲歩と妥協
合意に達するために、一定の譲歩や妥協が必要なこともある。
③創造的解決策の追求
交渉は共通の目的に向けて解決策を創造するプロセスでもある。
お互いの利益を最大化し、関係を強化するために、第3の案を共同で導き出すことが重要。
④情報の収集と分析
交渉前には、相手や市場についての情報を集め、分析をする。
日常的に物事をロジカルシンキングで考える
ロジカルシンキングとは、論理的思考や分析能力のことです。
例えば、仕事で新しい提案をする場合、直感的な判断ではなく、データや事実に基づいて客観的な分析と論理的な推論を行うことがこれにあたります。
これを日常生活でも意識して使い、養うと良いでしょう。
感情のコントロールを意識する
感情の高ぶりや怒り、焦りなどは、交渉の障害となります。
ストレスを感じたら深呼吸をして気持ちを落ち着かせるなど、自分に合ったリフレッシュ方法を持っておくと良いでしょう。
感情をコントロールできるようになると、冷静な判断力や客観的な視点を保ち、相手との対話を円滑に進められます。
相手の感情にも敏感に反応し、コミュニケーションが適切に行えるようになるでしょう。
ロールプレイやシミュレーションに取り組む
交渉のシナリオを用意して場面をリアルに再現し、さまざまな状況に対応する訓練をしてみましょう。
実践的な経験を通して成功体験を積むことで、交渉力に自信が持てるようになるはずです。
また、ほかの人からフィードバックを受け、自分の対応を評価してもらい、改善点を見つけることもできるでしょう。
コミュニケーションスキルを向上させる
日ごろから意識的にコミュニケーションを取ってみましょう。積極的に話す、聞くことを意識する、フィードバックを受け入れるなどが効果的です。
これらを実践することで、自己表現能力や理解力が向上し、より良いコミュニケーションが可能になります。
積極的なコミュニケーションは、自信や誠実さを伝えるだけでなく、他者の視点を理解し、信頼関係を築くことにもつながります。
交渉をスムーズに進めるコツ
交渉には、いくつかのコツがあります。「交渉前」「交渉中」「交渉後」の段階ごとに、交渉をスムーズに進めるための7つのアプローチを見ていきましょう。
お互いに信頼関係を築き、効果的な協力関係を形づくるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
交渉前/相手について入念にリサーチする
相手を十分に理解するため、事前に相手の組織や個人の情報を集めると良いでしょう。相手の立場や背景、動機が分かると、コミュニケーションがより効果的に行えます。
交渉前/自分の目的を明確にする
自分が望む交渉の目標や結果をはっきりさせ、設定しておくのも重要です。
自分にとっての優先順位や最低限の条件を確認することで、焦点を絞り、交渉の効率を上げられます。
交渉前/複数の代替案を用意しておく
目的を明確にしつつも、交渉では柔軟性を保ちたいところです。
そのため、複数のオプション(選択肢)や代替案を準備します。これが交渉の余地を広げてくれます。
交渉中/まずは相手に話させる
まずは相手を理解することに徹しましょう。ただし、自身のポジションを明確に伝えることも必要。バランスを考えてコミュニケーションを取りましょう。
具体的には、先に相手に話してもらい相手の立場や視点を理解し、共感を示すことで信頼関係を築きます。
こうして建設的なコミュニケーションを促します。
しかし、交渉力が高い相手の場合は同じ戦略を取られる可能性も。その場合は、相手の立場を理解し、共通の目標を見つけることが重要です。
柔軟性を持ち、冷静に対応することで、建設的な解決策を見出すことができます。
交渉中/相手の最低条件を探る
建設的なコミュニケーションを図るなかで、相手の「最低条件」を把握するよう努めます。これが分かると交渉の範囲や譲歩の余地を見極めることができます。
交渉中/高い条件から先に提示する
相手の最低条件が分かったら、ようやく自分の条件を提示する番です。
最初にハードルの高い条件を提示し、交渉の方向性を決める「アンカリング効果」を狙いましょう。
これにより、こちら側が不利な条件で合意してしまうことを防げます。
交渉後/交渉内容を文書化する
交渉で合意された内容や重要なポイントを文書にまとめることを忘れずに。
透明性を確保し、お互いの理解を深め、合意の履行を促すことができます。後日の確認や認識のずれによる揉め事の防止にも役立つでしょう。
だんだんと交渉のイメージがつかめてきたでしょうか。では、ここまでの基本を押さえたうえで、さらに交渉に役立つ上級者向けテクニックを2つご紹介します。
交渉で役立つテクニック「Must/Want法」
「Must/Want法」は、交渉において相手との議論や合意形成を進めるのに役立つテクニックのひとつ。
相手の要求や提案を「必須条件(Must)」と「希望条件(Want)」に整理して区別することで、より効果的な交渉を狙うという手法です。
必須条件(Must)とは、自分や相手が交渉において、絶対に必要な条件です。希望条件(Want)はそれ以外の条件や提案で、議論や妥協の余地があります。
こうして条件を整理し、交渉の焦点が明確にできたら、あとは交渉戦略を策定すれば良いのです。
戦略は、必須条件の達成を目指しつつ、希望条件の実現にも努めていきます。
交渉で役立つテクニック「人間関係の6つのパラダイム」
人間関係は6つのパラダイム(捉え方や価値観)に分けられる、という説があります。
そのうちの1つが「Win-Win」の考え方で、自分だけでなく相手も利益を得られる提案や解決策を模索する、というものです。
相互協力をすることで得られるメリットがある場合におすすめのテクニックといえます。
しかし、時と場合によっては別の考え方で交渉を進めるほうが最適な場合も。
例えば、競争的な状況にあるときには「Win-Lose」(何があっても相手に勝つ)という考え方でも良いかもしれません。
ほかにも「Lose-Win」(私はいつも踏み台にされる)、「Lose-Lose」(自分が勝てないなら、相手も勝たせない)、「Win」(自分さえ勝てれば、相手の勝敗は構わない)、「No-Deal」(双方が納得する案が見つからなければ、取引しない)などがあります。
交渉の場数を踏んでいない状態では少し難しいかもしれませんが、今後のためにも一通り知っておくと良いかもしれません。
交渉の場でNGな言動とは?
交渉の雰囲気を悪くし、協力関係の構築を妨げてしまう言動がいくつかあります。特に、次のような言動は慎むべきでしょう。
- 攻撃的な態度や口調……侮辱するような言動も避けましょう。
- 嘘や不誠実な行為……信頼関係が失われると、合意形成や協力が困難になります。
- 過度な譲歩や妥協……逆に、相手を圧倒しようとするような態度や姿勢もNGです。
- 一貫性の欠如……矛盾した発言や行動は、信頼性や説得力を失う可能性があります。
- 過度な感情の表出……冷静な判断や効果的なコミュニケーションを妨げます。
交渉力を上げるならコミュニケーションスキルから
今回ご紹介したように、「交渉力」とは、ひとつのスキルではなく、冷静な判断力やリーダーシップなどのさまざまなスキルを束ねたものです。
では、そのような要素が盛りだくさんな交渉力を向上させるためには、何から始めれば良いのでしょうか?
それはずばり、コミュニケーションスキルの向上です。
交渉とはお互いの意見や要求を明確に伝え、理解し合うプロセスです。
優れたコミュニケーションスキルがあれば、効果的に交渉を進め、相手との信頼関係を築くこともできるでしょう。
まずはコミュニケーションスキルの向上に取り組み、じっくりと交渉力アップを目指してみてください。
監修:株式会社 夢育 代表取締役 松井裕志
株式会社リクルートでのプロジェクトマネージャーなどを経て、2010年に経営コンサルタント・講師として独立。2014年に株式会社夢育を創業。エグゼクティブコーチング(経営者・組織長)、組織開発グループコーチング(ビジョン策定、戦略策定、人財活用 等)、プロジェクト支援に関する研修(プロジェクトマネジメント、チームビルディング 等)などを得意とする。また、各種スキルを育成する研修の経験も多数(管理職研修、部下育成、キャリアデザイン、コーチングなど)。
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