貯金がないのには理由があった!?お金のプロに聞く、20代から100万円を貯めるコツとは?

毎月、気づいたら給料が入った分だけ使い果たしている……。そんな現状を改善するためには、貯金のアクションが必要です。とはいえ、好きなことを我慢しすぎると、お金より先にストレスが溜まってしまいます。本記事では、ファイナンシャルプランナー(FP)の井戸美枝さんに20代から知っておきたい基本的なお金の使い方、貯め方について教えていただきました。

お金がないため慌てている人

20代のリアルな貯金事情は?

支出した額を計算する人

「令和5年の『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]』によると、20代の金融資産保有額、つまり貯金額は平均値が121万円、中央値が9万円です(金融資産非保有世帯を含む)。

金額だけ見ると貯金できている人が多いように思えてしまいますが、金融資産を保有していない人、つまり貯金0の人が43%を占めていて、溜めている人はすごく貯めているけれど、そうではない人は全然貯金ができていないというような個人の意識によって差が出てきているという現状が読み取れます。

20代の金融資産保有額_円グラフ

図:20代の金融資産保有額を基に作成 
※一部補足:700万円-1,000万円:2.2%
1,000万円以上:1.6%
出典:「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]令和5年」(金融広報中央委員会)

お金を貯めた方がいいとわかってはいるものの、友人や同僚がどれくらい貯めているものなのか、知る機会もあまりないので、どのくらいを目安にすればいいかわからないという人は多いのではないでしょうか。20代の貯金の目安について井戸先生に聞いてみました。

20代は100万円を目安に、まずは貯金スタート!

「20代はまず100万円を目安に貯金を始めてみましょう。なんとなくお金を貯めようと思ってもモチベーションが続かないので、ひとまず100万円というわかりやすい目標を立てると貯金をするきっかけにもなるかと思います。それに、現実的にも100万円あれば、急に仕事を辞めることになっても数カ月は暮らしていけますし、病気やケガで入院することになっても安心です。入院すると、まとまったお金が必要になりますからもしもの時のためにも貯金がないと大変ですよね」(井戸先生・以下同)

STEP1:まずはお金の「使い方」を把握する

自分のお金の使い方を理解している人

100万円という目安を決めた後は具体的にどういった方法でお金を貯めていけば良いのでしょうか。井戸先生によると、まずは毎月の「収入」と「支出」を可視化させて、自分のお金の「使い方」を把握することが重要だそうです。

知っておきたい「給与明細書」の正しい見方

「まずは、月々の収入をしっかりと把握して、何にどのくらい使えるのか、支出の予算を決めることが大事です。そのためにも給与明細書の見方を理解しておく必要があります。

一般的には給与明細書の中身は下の表にもあるように、『勤怠』『支給』『控除』の3つに分かれています。

給与明細書_勤怠_支給_控除

※書籍内の図を参照にイメージを作成。

いわゆる手取額というのは、給料の総支給額から、総控除額を引いた金額のことをいいます。基本給(支払額)を基準に考えて、住宅ローンや車のローンなどを組んでしまう人がいますが、そうするとローン返済に追われて、貯金がまったくできないといったことに陥りやすいので、気を付けてくださいね。手元に入ってくるお金は、基本給(支払額)から25~30%引いた額だと覚えていてください」

給与明細書のイメージ

※書籍内の図を参照にイメージを作成/社会人9年目の給与明細モデルケース。実際は会社によって形式や項目が変わります。
(協会けんぽ【全国健康保険協会】<東京都>の場合)

固定費:変動費:貯金は、4:4:2の割合がベスト

手取額について正しく把握することができたら、次は毎月、何にどれくらいお金を使えるのか、しっかり予算を決めることが大事だそうです。

「収入に応じてベストなバランスで、月々の予算を決めましょう。まずは手取額をベースに次の割合を算出してみてください。

  • 固定費(住居費・水道光熱費・保険料・通信費・自由に使えるお金):4割
  • 変動費(食費・日用品代・被服費・娯楽費・交際費・その他):4割
  • 貯蓄費:2割

理想の支出割合図

※書籍内の図を参照にイメージを作成。一人暮らしの女性を想定した支出割合です。

こちらはあくまでも理想の割合ですので、無理をしてこの割合にすることはありません。ただ、何も基準がないと予算を決めるのは難しいと思うのでなるべくこの割合に近づけることを目標としてみてください。

まずは固定費にいくら、変動費にいくら使っているのか書き出すこと。毎月の手取額から2割を貯蓄額に回せているか確認してみましょう。それが難しい場合は、生活費の見直しが必要となってきます」

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STEP2:お金が「貯まる」仕組みを作る

マイホーム取得を目指して貯蓄するイメージ

お金が残ったら貯金しようと考える人は多いかと思いますが、実は先取り貯金をしてお金が「貯まる」仕組みを作ることが大事だと井戸先生は言います。

真っ先にするべきは、先取り貯金

「一番やってはいけないのは、“余った分を貯金にまわす”こと。貯金分が残るようにお金を使おうと思っても、簡単ではありません。そのやり方では“余らない”と肝に銘じて、最初から貯金分を別の口座に入れる“先取り貯金”をしてください。貯金分が差し引かれた金額で、毎月のやりくりをする。そうすれば、必ず貯まります。

その場合、普通口座に入れておくのではなく、積立預金として銀行に預けるのがおすすめです。これは毎月一定金額を積み立て、満期日にまとめて受け取る仕組みです。半年~年単位で期間を決めることができるので、計画的に貯めたい人にぴったり。積立額の増額や期間の延長もできますから、収入の変化や貯金の目的に応じて決めましょう。

ボーナスはつい使ってしまいがちですが、可能な限り全額を貯金するという考え方にシフトしていきましょう。貯金100万円の達成に近づきやすくなりますよ」

無駄遣いをしない行動を「習慣化」する

「お金の使い方は、習慣です。だから、無駄遣いの習慣を“無駄遣いしない習慣”に変えるのが一番です。例えば、いつもInstagramで見かけた洋服やコスメなどをどうしても買いたくなってしまうなら、物欲を刺激するようなアカウントはフォローを解除する。基本的に“ちょこちょこ買い”が無駄遣いの大きな原因なのです。被服費が月々5,000円だとしたら、3カ月に一度、1万5,000円分を買うなど調整しましょう。

コンビニに立ち寄って、お菓子や飲み物などをしょっちゅう買ってしまうのも、“ちょこちょこ買い”の習慣がついているから。スーパーに食材を買いに行くのも、週に1回まとめてすれば、余計なものを買わずに済みます。

毎朝、スタバでコーヒーを買って出勤しているのなら、10分早く起きて自分でコーヒーを淹れて持参してみましょう。私は週に1~2日、“お金を使わない日”を設けるようにしているんですよ。電車を使わずに歩くとか、飲み物は買わずに水筒を持つとか、お金を使わないのは、意外と気持ちがいいものです」

買う前に、「本当に必要か?」を考えるクセを

「サブスクで加入しているサービスや、自分の意識化にない消費(定期購入等)についても注意が必要です。いくつも加入している動画配信サービスや、月額制のアプリなども本当に必要なのか、フル活用しているのか見直して、いらないものは解約しましょう。ネットショッピングの“あと〇〇円で送料が無料”とか、“3つ買えば〇〇円引き”といったうたい文句にも要注意。初回だけ安くて、2回目以降は定価で送られてくる定期購入商品にも注意が必要です。必要なものを必要な分だけ、買うようにしてください。

クレジットカードを使うなら、基本的に一括払いが原則。2回払いまでなら利息がつかないことが多いですが、2回に分けなければならないほどお金を使うのは、賛成できません。

私は、ちょっと無駄遣いをしてしまったなと思ったら、それをメモしておいて、その分を数日でリセットできるように心がけています。寝坊してタクシーで移動したら、数日間は1駅分を歩こうとか。物を買った無駄遣いは案外覚えていられますが、食事や移動は忘れがちですから、メモの習慣はおすすめです」

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STEP3:長い目で見てお金を「増やす」工夫をする

お金を増やす工夫を考えている人

まとまったお金が手元に用意できてきたら、お金を増やす方法についても考えてみましょう。井戸先生に、無理なく継続できるお金の増やし方、生涯にわたって働き続けるポイントなどについても話していただきました。

無理なく少額から、投資に挑戦してみよう

「いざという時に使える100万円が貯まったら、将来のことを考えて投資も検討してみましょう。金額は金融機関にもよりますが、気軽に月々100円からでもスタートできる、新NISAから始めてみるのが良いと思います。余裕があれば、iDeCoも並行してやるのがおすすめです。新NISAは結婚や住宅購入、60歳まで引き出せないiDeCoは老後資金など、目的別に計画的に貯めていきましょう。」

キャリアプランを立て、「稼ぐ力」を身に付ける

貯金を増やすためには、収入を増やすことも一つの選択肢として考えられます。キャリアプランについてはどのように考えたら良いのか、井戸先生の実体験を踏まえて、最後に読者へのメッセージをいただきました。

「稼ぐ力を身に付けるのは、大切なことだと思います。そのためにはまず、今の仕事を一生懸命に頑張ること。もしかしたらピンとこないかもしれませんが、20代で会社に勤めている時期は、大チャンスなんですよ。

誰かに仕事を教えてもらいながら、毎月必ず一定額の収入を得られている。大変なこともあるとは思いますが、上司や先輩、お客様などいろんな人と触れ合って、人の見方や人との付き合い方を学んでいける。初めてのことに挑戦して、自分の得意不得意や好きな分野などがわかってくる。それをヒントに、突き詰めたい分野や職種を深掘りすると良いと思います。

私はFPをやっていて、お金に関するアドバイスをしたり、本を書いたり、講演をしたりしていますが、いわゆる適職診断の結果にFPはありませんでした。でも、あらゆる場面で細かく計算する作業がとても好きでした。ぜひいろんな経験をして、これをやっていると飽きないなとか、楽しいなと思えるものを見つけてください。今のうちにできることの引き出しを増やしていけば、将来、自ずとお金はついてくるものですよ」

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まとめ

遊ぶにも、学ぶにも、先立つものはお金です。やりたいことがあっても、お金がなくてあきらめてしまうこともあるでしょう。お金は選択肢を広げるために有効なもの。そう考えれば、貯めることへの意識が変わるのではないでしょうか。まずは、日々の安心材料としての100万円貯蓄にチャレンジしてみましょう。お金を上手に使うコツ、貯めるコツをさらに知ってみたい人は、井戸さんの『好きなことを我慢しないで100万円貯める方法 20代女子のためのお金の基本』を読んでみてはいかがでしょうか。

好きなことを我慢しないで100万円貯める方法 20代女子のためのお金の基本

話を聞いた人:井戸美枝(いど みえ)
神戸生まれ。関西大学社会学部卒業。 ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士・キャリアカウンセラーとして、相談、講演、執筆活動を行う。お金にかかわることを、かんたんに読み解く経済エッセイストとしても活動中。近著に『好きなことを我慢しないで100万円貯める方法』発売中。
公式HP:https://mie-ido.com/

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