「職場で生理を打ち明けられず、つらかった」8割以上
7.7万フォロワーをもつハヤカワ五味さんのTwitter。生理についてのアンケートを実施したところ、こんな結果が得られました。
アンケートにご協力ください(1/3)📣(byスタッフ)
— ハヤカワ五味 (@hayakawagomi) March 1, 2020
今度受けるインタビューの参考にさせていただきたく、アンケートにご協力ください。全部で3問あります。
生理を理由に、仕事を休んだことがありますか?
生理で仕事を休む人は3割ほどしかいないにもかかわらず、体調不良を打ち明けられずにつらい思いをした人は8割以上! 「男性の同僚にはもちろん、バリバリ働いている女性の上司にも、同じくらい言いづらい」という声も聞こえてきます。つらい症状も「痛み(56.8%)」「イライラ(20.2%)」「汚れ・におい(18.9%)」「発熱」「眠気」など、多岐にわたりました。
生理はただの身体現象だと、割り切ること
アンケートによると、生理と仕事を両立するのが困難な方は、どうやら少なくないよう。ハヤカワさんは「いまの社会は、生理がない人向けの仕組みになっている」といいます。
「いまのような生理用品が登場したのは、1960年代のこと。なんとカラーテレビよりも後なんですね。それ以前の女性たちは、布を当ててなんとか対応していたか、もしくは隠していたか……はたらくにも、職業や労働環境が限られていたと思います。なのに生理用品の誕生によって、女性も男性と同じようにはたらけるようになっちゃった、というか。解熱剤を飲めば、熱があってしんどくても出勤はできる……みたいなことと、ちょっと近い気がします。まず男女ともにそういう前提を知っておくと、自分や周りの女性が生理で思うようにはたらけなくても、すこしは気が楽になるのではないでしょうか」
では、社会を「生理がある人にとってもここちよい場所」に変えていくには、どうすればいいのでしょう? ハヤカワさんは「生理をただの身体現象だと割り切ること」が大切だといいます。
「いまは“生理”というものが、特別視されすぎているんですよね。だからそれがない男性には特に話しづらかったり、反対に男性からもタブーのように見えたりしてしまう。でも本当は『排せつ』とか『生まれ持った頭痛』とか、そのくらい普通のこと。それにまつわる体調不良があるなら、ことさら隠す必要はありません。そういう認識になれば、もっと生理についてオープンに話せるようになると思います。
そうしてお互いが会話するうちに『生理にはいろんな症状や付き合い方がある』という認識も広まっていく。もちろん、話したくない人は話さなくたっていいんですよ。でも“話したいときに話せる社会”なら、職場でも相談しやすいはずです」
女性のなかにも「生理について話せる人/話したくない人」がいるように、男性のなかにも「ふつうに聞ける人/聞きたくない人」がいるでしょう。「男性は」「女性は」でひとくくりにせず、目の前の人と向き合うのがポイントのようです。
「生理中の選択肢」を増やすことで、じわじわと社会を変える
生理をむやみに特別視しないで済むように、ハヤカワさんはさまざまなビジネスを展開しています。
「新しく“メッセージ性の少ない生理用品”を開発したいなと思っているんです。いまはパッケージにでかでかと『漏れない』『ニオイを吸収』などと書いてあるから、それを選ぶと『あの人、漏れやニオイを気にしてるんだ』って思われちゃう。『乳首が透けない!』と謳っているTシャツブランドがあるとして、その商品を着ている男性がいたら、この人は乳首が透けたくないんだなぁって思いますもんね。だから、ティッシュや絆創膏のように買える、フラットな生理用品をつくりたいんです」
そんな製品開発を進めるかたわらで、既存の生理用品を紹介するECショップ『illuminate』もオープンしました。
「月経カップや生理ショーツ、オーガニックなタンポンなどを扱っています。生理中のかぶれや漏れって、使うアイテムを変えれば意外と解決できたりする。だから、illuminateでいろんな生理用品の選択肢を届けたいんです」
でも、布ナプキンや月経カップのような製品は、初心者には少々ハードルが高いもの。多くのユーザーに届ける難しさも感じています。
「たとえば『洗って使える月経カップはエコ』というアピールだと、環境問題を意識していない人には届かないんですよね。でも『彼氏の家でナプキンをどう処分すればいい? 月経カップなら洗ってバッグにしまうだけ!』と言えば、カジュアルに試してもらえるかもしれない。いきなり『健康のために経血の様子をチェックしましょう!』『身体に負担の少ない製品を選びましょう!』と言っても響かないので、さまざまなアプローチを考えて、間口を広げていきたいです。
医療や健康の専門的な話は、ほかの方々がしてくれます。でも、それを多くの人に広めていくためには、ビジネスの知識が必要。ずっと小売りの仕事をしてきた私だからこそ、仕事として取り組めるのが大きいと思っています」
私は、楽しいからはたらいているだけ。モチベーションは人それぞれ
生理というものの在り方を変えてゆくこと。それは、女性のハンディキャップをなくすことであり、ひいては男女をフェアな状態に持っていくことにつながるのではないか……と、ハヤカワさんは語ります。社会的にも意義のある活動だけど、ハヤカワさん自身がはたらく理由は、実はとてもシンプルでした。
「私は、楽しいからはたらいているだけなんですよね。ゲームが好きなので、試行錯誤して結果を出す過程が楽しいんです。だから、ゲームをすると満たされちゃって、はたらく気が失せちゃう(笑)。もしも仕事が楽しくなかったら、ずっと家にいると思います」
はたらくモチベーションは、高くなくたっていい。とはいえ食べていくには、ある程度うまく仕事と付き合っていかなくてはいけません。ハヤカワさんは、そのための2つのコツを語ります。
「ひとつは『いやだったら転職すればいい』と考えること。いまは売り手市場で人材が足りていないから、そこはすこし強気でいていいと思います。
もうひとつは『実力とは別に相性がある』と知ることです。どこかの企業でなにかの仕事がうまくいかなくても、単に相性が悪いだけかもしれない。むやみに主語を大きくして『はたらくことに向いていない』と落ち込む必要はありません。
人間の脳って、主語を大きくして、一般化するようにできているんですよ。たとえばこのジュースを見て、いちいち『これは本当にジュースなのか』と疑っていたら、脳がパンクしちゃう。虎を見て『これはなんだろう?』なんて悠長なことを考えていたら、食われるわけです(笑)。だから、これまでの経験に基づいて一定のラベルを貼るんだけど……もし自分がつらい思いをしているのなら、一度その“思い込み”を疑ってみてもいい」
男女問わずここちよくいられるように、社会はすこしずつ変わりはじめています。そんな時代に楽しくはたらくには、むやみに主語を大きくしないこと。生理の症状も、仕事への向き合い方やはたらく喜びも、人によって違います。自分がいきいきできる答えを探していきましょう。
(文章/菅原さくら カメラ/玉村敬太 編集/黄孟志)
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