部下から上司へのパワハラも!? 立場の差を利用したハラスメントに要注意

職場で注意すべきハラスメントの一つに「立場を利用したもの」があります。上司や先輩から部下に対するハラスメントはもちろん、中には部下や後輩から上の立場の人間に対して行われるものもあるとか……。長年にわたりハラスメント問題に取り組む山田・尾﨑法律事務所に所属する脇まゆこ弁護士に、立場の差を利用したパワハラ、セクハラについてお聞きしました。

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行き過ぎた指導・教育はパワハラに。強い叱責や暴言に注意

発言や行動によって他者に不利益を与えたり、不快な思いをさせたりする「ハラスメント」。職場では優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動で労働者の就業環境を害するパワーハラスメント(以下、パワハラ)が発生することがあります。

最近その傾向は弱まりつつありますが、日本の会社では年功序列の風潮はまだまだ残っています。先輩が後輩を指導したり、上司が部下へ教育したりする際に、行為者が意図する・しないに関わらず、パワハラが起こる場合があります。

相手を長時間立たせたまま叱責する、大勢のいる前で強く叱責する、過剰な業務の遂行を命じて部下ができないと叱責するなどといった行為はパワハラになる可能性が。

行為者が「指導の一貫だった」「成長してもらおうと思ってあえて厳しく指導していた」というつもりでも、叱責の方法が不適切だったり、叱責される人に恐怖を与えたり、職場全体の雰囲気を萎縮させたりすれば、それはパワハラ。「やればできるはずだ」「できないのはさぼっているからだ」「できないなら会社を辞めてもらって構わない」などの叱責は行き過ぎた教育、指導と言えるのです。

こんな言動はパワハラ・セクハラに。NGワードにも注意!

行き過ぎた叱責、過剰な指導などの他にも、部下に仕事を与えない、業務上共有すべき情報を伝えない、無視をする、必要な業務指示や指導をしないといったこともパワハラと言えます。

暴言や人格を否定するような言葉を使って、部下や後輩を不快な気持ちにさせるのももちろんNG。具体的には「バカ」「できそこない」「給料泥棒」「小学生からやりなおせ」「親の顔が見たい」などといった表現は、決して使ってはいけません。

また、部下や後輩に対してのセクハラも大きな問題です。酒席で隣に座らせる、体を触る、私的な食事に執拗に誘う、私的なメッセージを送る、私的な食事を断った部下をプロジェクトから外したり無視したりする、といった行為はセクハラにあたります。

職場で容姿に関する言葉や、服装やメイクに関する言葉も、セクハラと言われる場合があります。「美人だね」「スタイルがいいね」「今日はかわいいね」など、ほめ言葉のつもりであっても、口にするべきではないでしょう。

「部下が上司の指示を無視」下から上へのハラスメント事例も

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職場において発生するハラスメントは、上から下へだけではありません。例は少ないですが、後輩から先輩へ、部下から上司への行為であってもハラスメントとなる場合があります。

転職も盛んになった今では、上司より部下の社歴が長かったり、年齢が上だったりすることもよくあります。上司より業務経験が長く、専門的知識もある部下が、新しい上司の業務指示に全く従わない、などという事例もありました。また、部下が一切報告を上げないために、上司の業務に支障が生じるといった事例や、所属するアルバイト全員で正社員の上司を無視する、などといった事例もあり、これらはすべてハラスメントに該当しうると言えます。

ハラスメントを受けたらどうすれば? 拒否の姿勢を明確に

立場の差を利用したハラスメントを受けた時、もしもその場で直接拒否できるのであれば、その態度を明確にすることが大切です。

直接拒否することが難しい場合には、信頼できる同僚や上司に相談し、状況を変えるための協力を得ましょう。同僚や上司の協力が期待できない場合には、会社が設置しているハラスメントの相談窓口などに相談してください。

厚生労働省の総合労働相談コーナーやNPO法人労働相談センターなど、パワハラの相談を受け付けてくれる窓口もありますし、ハラスメントの問題に取り組む弁護士への相談も有効です。

ハラスメントが発生したら、被害者のケアと再発防止が重要

パワハラなどの訴えがあった場合、当該会社のハラスメント規程に則り、当事者や関係者へのヒアリングや客観的な資料の精査等を行って、ハラスメントの有無を調査します。調査の結果、ハラスメントがあったと認められた場合には、被害者には職場復帰のために必要な対応や精神的なケアなどを、加害者には適切な処分を行うことになります。

また事後には、ハラスメントの再発防止のため、社内報などを利用して、個人の特定につながらないよう配慮した上で、社内でハラスメントが発生したこと、会社はハラスメントを許さないこと、ハラスメントを起こさないために注意すべきこと等を従業員に周知させることが必要です。

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【監修】
山田・尾﨑法律事務所 脇まゆこ●1975(昭和50)年生まれ。第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2006年、弁護士登録。山田・尾﨑法律事務所勤務。2012年~2016年、東京家庭裁判所 家事調停官。企業法務や労働事件、一般民事事件、離婚、相続などの家事事件、犯罪被害者支援、破産事件などを中心に弁護士活動を展開している。

文=松村 知恵美
編集=五十嵐 大+TAPE

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