女性だから得意? 男性の仕事? 職場に潜むジェンダーバイアスに気付こう!

働く世代の多くの人は、小さな頃に何かと「男の子なんだから」「女の子なんだから」と言われ、怒られたり諭されたりして育ってきたと思います。今、令和という時代に突入し、性別によらない一人一人の価値観を認めていく考え方に変わり始め、企業によっては社員にダイバーシティ教育が行われるまでになりました。しかし、どれほど気をつけている人でも、「自分は全く性別による差別や偏見を持っていない」とは言い切れないのではないでしょうか。無意識な思い込みや偏見は、アンコンシャスバイアスと呼ばれています。日本労働組合総連合会が約5万人を対象に行った調査によると、実に95.5%の人が、アンケートの中でアンコンシャスバイアスを認識したとされています。今回は、何気ない職場に潜むアンコンシャスバイアスを振り返り、私たちに何ができるのか、キャリアコンサルタントの境野今日子さんに、ご自身の経験や当事者へのヒアリングを通して得たヒントを教えていただきます。

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根深く残る「女性が/男性がするものだ」という感覚。育児休暇は誰が取る?

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男女雇用機会均等法が制定されて36年。日本では、共働き世帯が専業主婦世帯を上回ってから20数年が経ちます。国連開発計画が行った調査によると、世界では男女の90%近くが女性に対して何らかの偏見を抱いているという結果が出ました。日本で働いている皆さんの実感として、女性は差別されることなく働けているでしょうか。

例えば、育児休暇や時短勤務は、女性のための制度だという空気が職場で流れていないでしょうか。出産直前・直後の産休は、法的に取ることが義務付けられていますが、育休は義務付けられていません。したがって、子供が保育園に入るまでの間、母親が仕事に復帰し、父親が育休をとって面倒を見てもいいはずですが、その選択を取る家庭は少ないと思います。保育園に入れた後も、母親がフルタイムで働き、父親が時短勤務を取る選択もできるはずですが、そのような家族を私はまだ一人も見たことがありません。この根底には、「育児は女性がするものだ」というジェンダーバイアスがあります。これは、働きたい女性を苦しめるだけでなく、育児をしたい男性を苦しめることにもなります。

「気付いていない」ところにも偏見がある。小さな気付きが職場の空気を変えていく

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また、女性が客先へ訪問した際に「男性を連れてこい」と言われたり、女性が電話に出ると「男性に代わって」と言われたりするケースもあります。いまだに、女性はお茶出しなどの雑用をやる人で、自分と商談や打ち合わせをする相手ではない、と思われてしまうことがあるようです。

ここまであからさまな差別はなくても、女性社員のことを「あの子たち」「この子たち」と、「子」を使って呼ぶ人もいます。私は何度かこの呼び方をしている男性に出くわしたことがあり、その都度「女性社員は子供ではないですよ」と指摘をしてきました。すると、全員が「気付かなかった」と言います。男性社員には「子」と呼ばないのに、女性社員に対してそう呼ぶのは明らかな差別ですが、それはわざとではなく無意識だったりします。「子」と呼ぶことについては、男女関係なく年齢や立場が下の社員にも使う人がいますが、いずれにせよ、会社で一緒に働く大人に対して使うべき言葉ではありません。小さなことですが、もし気付いた時はそっと教えてあげてください。一人一人の気付きが、空気を少しずつ変えていきます。

「女性だから/男性だから得意」という、固定観念に苦しむ人もいるということ

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職場によっては、冷蔵庫の掃除や花瓶の水替えなどを暗黙の了解として、女性にさせているところもあります。皆が無意識に、「こういうのは女性の方が得意」だと思っているのではないでしょうか。しかし、女性にも仕事があり、誰でもできる小さな雑用を押し付けていいわけではありません。こうした雑用を、得意とする女性もいれば苦手な女性もいて、それは男性と同じです。しかし、「誰かがやってくれるだろう」の、「誰か」が女性になっているのです。男女問わず気付いた人がやる、という文化を醸成できればベストですが、それがなかなか難しい場合は、これらの小さな雑用をリスト化して、皆で分担を決めるのもいいかもしれません。

他にも、取引先に持って行く菓子折りを選ぶのはなぜか女性だったり、社員が持ってきた出張のお土産を配るのも女性だったりする職場もあります。「これくらいの小さなことは、私やっちゃうよ」と思う女性もいるかもしれませんが、そのちょっとした業務も積み上げれば結構な時間になるはずですし、小さなことだからこそ、変えやすいことでもあります。何より、雑用を男女関係なくやったり、気付いたジェンダーバイアスを指摘し合ったりすることで、「景色を変えていくこと」が非常に大きな意味を持ちます。ジェンダーバイアスがあって当たり前の光景を常に目にしていると、組織はどんどん気付けなくなっていき、拭いても拭いても取れない「あか」のようになっていきます。それくらい、一度出来上がった文化や慣習を変えるのは大変なことです。社会が多様化しているにもかかわらず、会社が時代に逆行してそれを続けていけば、違和感を覚える社員も当然出てきますし、やがて離職にもつながるでしょう。

女性だけの問題ではなく、男性への偏見もある。気付くことが大切

男性だけが、または女性だけが行うことになっている、会社独特の文化や慣習があると思います。是非、職場の風景、同僚との会話などを振り返ってみてください。自分自身がやってきたことにもハッとすることがあるかもしれません。これが、アンコンシャスバイアスを認識する第一歩です。

文=境野今日子
編集=矢澤拓

<出典>
5万人を超える回答 アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)診断|日本労働組合総連合会(連合)
男女の9割は女性への偏見あり|UNDP

【プロフィール】
境野今日子
キャリアコンサルタント、ライター。中央大学卒業後、NTT東日本へ入社し、秋田支店にて法人営業を担当。その後、帝人の採用担当へ転職し、在籍中に国家資格キャリアコンサルタントを取得。会社のセクハラ・パワハラ問題や、夫の育休が拒否された経験について、記事やSNSを通じて発信している。

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