"あるある上司"と円滑に仕事を進める方法。放任する上司との付き合い方

「上司が指示をくれない」「細かい指示ばかり出してくる」「複数の上司がそれぞれ別のことを言ってくる」――などなど、上司に対する不満は人それぞれ。部下である私たちは、上司を選ぶことはできません。それぞれの性質を持った上司と、ストレスなく仕事を進めていくには……。本連載は「行き場をなくした部下たちの叫び。あるある上司との付き合い方」と題し、人事コンサルタントの小笠原隆夫先生に、さまざまな上司との付き合い方を教えていただきます。

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仕事を進める上で「上司」との関係は重要です。「良い上司」と一緒に仕事をすることには多くの学びがあり、自身の能力向上にもつながります。ただ、世の中の「上司」は、必ずしもそういう人ばかりではありません。部下の立場では、そんなさまざまなタイプの上司と、うまく付き合いながら仕事を進めていく必要があります。

今回は「放任する上司」との接し方を考えてみましょう。

上司との良い関係作りは「自分のため」

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まず上司のタイプを問わず、共通して考えなければならないことがあります。上司の指示命令や行動、態度について、納得できない、気が合わない、理解できないといったことは少なからずあるはずです。成果が上がらない、チームがまとまらないなど、仕事上の問題が起こっている場合、より上司の責任の方が大きいことは間違いありません。部下として、上司に対し不満を持つのは仕方ないことでしょう。

ただ、それを上司のせいだと他責思考でいては、結局自分の学びはなく、経験は身につかず、評価は上がりません。仕事の成果を得るために、部下の立場からできることはあったはずです。

もし自分にとっては好ましくないタイプの上司でも、その人と良い関係を築くのは「自分のため」と割り切って向き合ってみましょう。

信頼している? 丸投げ? 「放任」の中身をよく見極める

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ここで、よく見掛けるタイプの「放任する上司」ですが、それがどういう形の放任なのかという中身をよく見ていく必要があります。

大きくは二通りに分けられ、一つは「部下を信頼して任せている」という場合と、もう一つは「責任感がない丸投げ」という場合です。部下としては、どちらも上司が直接関与してくることが少ない感覚を持つでしょうが、その中身は大きく異なっています。

前者は部下の能力を見極め、育成のことも考え、その上で適切な権限移譲の下に仕事を割り振っているので、これができるのは良い上司の典型例の一つだと言えるでしょう。上司は意図をもった上で部下に仕事を任せているので、部下との距離の取り方もしっかり考えています。

これに対して後者は、仕事内容を理解していないので指示ができない、もしくは指示することが面倒、自分はやりたくないなどの理由で、部下に仕事を投げつけているだけの場合です。その仕事に対して上司としての責任感を持っていないことが、そういう姿勢を取る大きな原因でしょう。「放任」というより「丸投げ」なので、仕事内容はろくに吟味しておらず、計画性もないままにただ素通りで業務指示をしている場合が多いでしょう。

「放任する上司」がこのどちらにあたるのかは、上司の日常的な態度や言動、行動によっておおむね把握できるはずです。この見極めに基づいて具体的な接し方を考えていきましょう。

部下からアクションを起こして上司の意図を確かめる

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上司の放任の意図が「信頼して任せている」という場合、上司にアドバイスを求めれば必ず反応があり、適切にコミュニケーションを取ってくれます。時には自分で考えるように突き返されることもあるでしょうが、それも部下が自力でできると判断した上でのことです。

これに対して「無責任な丸投げ」では、上司は基本的に何も考えていないので、そもそも部下から何か投げかけても適切な反応ができません。自分で判断しようとしなかったり、判断を先延ばししたりする傾向もあります。部下がこれを真に受けていると、結局何も決められないまま、後になってからただ右往左往するだけになってしまいます。

「放任する上司」に対する接し方として、共通するのはまず部下の側から積極的にコミュニケーションを取って、上司の意図を確認していくことです。そこで「信頼して任せている」上司とわかれば、積極的なアクションを続けることで、いろいろなアドバイスや情報が得られて、自身の成長につながります。

もしも「責任感がない丸投げ」上司の場合は、さらに部下の側からのコミュニケーションを増やして、必要な決定や判断を促していくことです。先延ばししようとしても催促する、こちらから「これで良いですか?」と提案した上で確認していくといったことも必要でしょう。部下からさまざまな突き上げをすることで、上司も自分が判断しなければならない意識を持つようになり、責任感を高めていくことも考えられます。また、こういう部下からの行動を、上司が嫌がることはあまりなく、逆に喜ばれることの方が多いはずです。上司からの指示を待つのではなく、自らが責任をもって主体的に、上司を巻き込んで指示を求めていくというくらいの姿勢で良いでしょう。

「放任する上司」には、その上司の意図に応じたコミュニケーションで、部下の側から積極的に働きかけていくことを心掛けましょう。

文=小笠原隆夫
編集=矢澤拓

【プロフィール】
小笠原隆夫
人事コンサルタント。IT企業で開発SE職を務めた後、同社で新卒中途の採用活動、人事制度構築と運用、ほか人事マネージャー職などに従事。二度のM&Aでは責任者として制度や組織統合を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表に。以降、人事コンサルタントとして、組織特性を見据えた人事戦略や人事制度策定、採用支援、CHRO(最高人事責任者)支援など、人事・組織の課題解決に向けたコンサルティングをさまざまな企業に実施。2012年3月より「BIP株式会社」にパートナーとして参画し、2013年3月より同社取締役、2017年2月より同社代表取締役社長。

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