睡眠の質を上げるには? 眠りが浅い原因と質を高める7つの方法

みなさんは毎朝、起きた瞬間に「気持ちよく眠れた」と感じていますか? 十分な時間、眠ったはずなのに、目覚めがすっきりしていないという人も多いかもしれません。毎日、朝から夜まで働くビジネスパーソンにとって、体を休める睡眠は重要なもの。そこで本記事では「睡眠の質を上げる方法」を、『あなたを変える睡眠力』などの著書もある睡眠専門医・坪田聡さんに教えていただきました。

なぜ睡眠は「質」が重要なのか

必要かつ十分な時間だけ眠ることができて、睡眠の質も良いときに「ぐっすり眠れた」と感じます。ところが現代の日本では、仕事や趣味、家事などのために睡眠時間が削られています。しかも多くの人は、睡眠時間を増やすことができない状況にあります。そのため睡眠時間ではなく、睡眠の質を高めることが重要になっています。

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睡眠の質が高い状態ってどんな状態?

睡眠の質を正確に測るには、専門の医療機関に入院し、多くのセンサーを体に付けて検査しないといけません。しかし大まかには、寝床に入ってすぐに眠りにつき、途中で目覚めることなく、起床後「よく眠れた」と実感できれば「質が良い睡眠」を取れた状態と言えます。

どうして危険?睡眠不足のリスク

睡眠不足には、仕事の他、自身の健康に関してなど、さまざまなリスクがあります。それらのリスクについて紹介します。

パフォーマンスが低下する

睡眠不足の状態では、脳の働きが低下します。睡眠時間を普段より2時間削るだけでも、朝起きてから17時間経つ頃には、飲酒した状態のレベルにまで脳の働きが低下します。また、睡眠の問題で仕事の生産性が低下した結果、日本全体で年間15兆円もの経済的損失があると言われています。十分な睡眠を取っていないと運動能力も10%ほど低下してしまいます。

メンタル・体調の不調を引き起こす

睡眠不足や不眠は、脳と体に悪影響を与えます。継続的に不眠になった人は、その後3年間のうつ発症リスクが4倍になるという報告もあります。また、睡眠時間が短かったり不規則だったりすると体調不良を起こしやすく、肥満や高血圧症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病になりやすいことが知られています。さらに、質の良くない睡眠を続けていると、乳がんや前立腺がん、大腸がんになる確率も高まると言われています。

睡眠が浅くなる原因とは?

睡眠には、脳を休める「ノンレム睡眠」と、体を休める「レム睡眠」があります。さらに、ノンレム睡眠は睡眠の深さにより4段階に分けられます。浅い睡眠にも大事な役割がありますが、睡眠の質が悪くなると浅い睡眠の割合が増す傾向にあります。では、睡眠に影響を与える要因とはどういったものなのでしょうか?

仕事の悩みなどの心理的ストレス

ぐっすり眠るためには、心身ともにリラックスする必要があります。しかし仕事の悩みなどで心理的なストレスが強いと、心身ともにリラックスできず寝つきが悪くなることがあります。寝床の中で悩むと「悩む→眠れない→睡眠不足→パフォーマンスが落ちる→仕事の能率が落ちる・ミスする→寝床で悩む」という悪循環に陥ってしまいます。
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光の浴び過ぎ

夜に明るい光を見ると、私たちの脳は「昼だ」と勘違いして、睡眠ホルモンのメラトニンが減少します。そのため寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなったりします。特に「ブルーライト」と呼ばれる青い光は、睡眠に対する影響が深刻です。ブルーライトはテレビやパソコン、ゲーム機、スマホなどの電子メディアの画面からたくさん放出されているので、注意が必要です。

食生活の乱れ

朝食を取ると胃腸にある体内時計、いわゆる「腹時計」が目覚めます。そして血糖値が上がると、全身の細胞に組み込まれている体内時計がシンクロします。そのため、朝食を取らないと思うように午前中のパフォーマンスが上がりません。一方、夜の遅い時刻に夜食を食べると、胃腸が休まらないので熟睡の妨げになります。さらには、夜食を食べることで朝食時間に食欲が湧かず、どんどん食生活が乱れていってしまいます。

就寝に適さない環境

寝室の理想的な環境は年間を通して、室温が16度~28度、湿度が50~60%と言われています。エアコンや暖房器具、加湿器、除湿機、布団などを駆使して、ちょうどよい環境で眠りましょう。真っ暗が気にならない人は、なるべく暗くするのがおすすめです。暗闇がやや不安な人は、豆電球程度であれば付けたままでも問題ありません。音に関しては、一般的な図書館の静かさである「40デシベル」を超えると、睡眠に影響を及ぼすとされています。

今夜から実践! 睡眠の質を高める7つの方法

睡眠にとって良い生活習慣や寝室の環境もさまざま。しかし、すべてを一度にやる必要はありません。興味があるものや、簡単に始められそうなことから、トライしてみましょう。一週間ほどやってみて、あまり効果が感じられなければ、他のことに挑戦してみてください。

規則正しい生活を送る

私たちのほぼすべての細胞に、体内時計が組み込まれています。そしてこの体内時計は、体温や血圧、脈拍、ホルモンの分泌、気分などをコントロールしています。睡眠と覚醒のリズムも、体内時計によってコントロールされています。規則正しい時間に寝たり起きたり、食べたり排泄したり運動したりすると、体内時計がうまく働いて体調が良くなり、睡眠の質も改善します。

適度に運動する

体が疲れると眠気が強くなります。疲れ過ぎるのは逆効果ですが、適度に運動しておくと睡眠の質が向上します。また、ウォーキングや自転車こぎ、水泳などのリズミカルな運動をすると、夜にメラトニンが増えて睡眠に良い効果をもたらします。

また、私たちは体温が下がるときに眠気が強くなります。眠る1時間ほど前に軽い運動をして体温を上げ、しばらくして体温が下がったときに寝床に入ると寝つきがよくなります。

夕食は就寝3時間前までに

食事をすると、眠たくなる人も多いでしょう。しかし夕食の直後に眠ると熟睡できません。それは消化のために胃腸が動いている時間帯は、一時的に体温が上昇するからです。できれば夕食は、眠る予定時刻の3時間前までに済ませましょう。残業などで夕食が遅くなるときは、夕方に軽食を取っておき、深夜の食事量を減らすことをおすすめします。

熱湯での入浴は避ける

お風呂に入ると、心身ともにリラックスできます。しかし、熱いお湯は交感神経を刺激するので、目が覚めてしまいます。入浴は眠る1~2時間前に、38~40度のお湯に10~20分間漬かると良いでしょう。入浴により一時的に体温が上がりますが、しばらくすると体温が下がってきます。汗が引くころに寝床に入ると、ぐっすり眠ることができます。

リラックスできる音楽を聴く

ストレスを減らすためにも、眠る前はリラックスできることをしましょう。手軽にできるのは、好きな音楽を聴くことです。一般的には、クラシックなどの静かな音楽が良いとされています。しかし、自分が好きでリラックスできる音楽なら、適度な音量で聴いてかまいません。音楽を聴きながら眠ることが多ければ、眠ってしばらくしたら切れるようにタイマーをかけておきましょう。

眠る直前のスマホやカフェインを控える

スマホからは、眠気を減退させるブルーライトがたくさん放出されています。ぐっすり眠りたいなら、できれば眠る1時間前、少なくとも30分前にはスマホを閉じましょう。特に、暗闇の中でスマホを見るのは厳禁。暗闇では瞳孔が普段よりも開いており、余計にブルーライトを目に入れてしまうからです。

一方、カフェインは脳の中で、眠気をブロックする働きがあります。カフェインが入ったコーヒーや緑茶、紅茶、ココア、チョコレートなどを口にするのは、眠る2時間前までにしておきましょう。

  • 快眠におすすめの飲み物は?

夜になったら、ノンカフェインの飲み物をとりましょう。具体的には、麦茶やハーブティーなどです。カモミールやラベンダーが入ったハーブティーは、その香りの効果でリラックス効果があります。寒い時期には、温かいミルクやしょうが湯もおすすめです。

自分とマッチした寝具を選ぶ

私たちは一晩に10~30回ほど寝返りをしています。うまく寝返りができないと、睡眠の質が悪くなります。そのため、寝返り重視の寝具を使うと良いでしょう。マットレスは十分な反発力があるもの、枕は上面がフラットなものがおすすめです。買う前に、自分に合うかどうか実際に試してみてください。

  • 枕選びのポイント

1.高さ
横向きに寝たときに、顔の中央を通る線と胸~腹の中央を通る線が一直線で、床と並行になるとちょうどよい高さです。上になった首が突っ張るなら低過ぎ、下になった首が突っ張るなら高過ぎです。

2.硬さ
次に、あおむけになって頭の後ろが痛い場合は硬過ぎる可能性があります。

3.体とのマッチ度
最後に、両手を反対の鎖骨に置き、両膝を直角に曲げたままスムーズに寝返りできれば自分の体にマッチしていると言えます。

まとめ

NHK放送文化研究所の調査によれば、1960年における日本人の平均睡眠時間は8時間14分ほど、それに比べて2010年は7時間14分ほどに変化しています。つまり、50年前から1時間ほど日本人の睡眠時間は短くなっているということです。

本来なら、もう少し睡眠時間を確保したいところですが、現代人は多忙のため、これ以上睡眠時間を長くするのは難しいかもしれません。そのため、少しでも睡眠の質を高められるようにしてください。先に述べたことを1つでも習慣にできれば、睡眠の質が良くなる可能性があります。これからはぐっすり眠って、充実した毎日を過ごしてください。

【プロフィール】
坪田聡(つぼた さとる)

医師、雨晴クリニック院長、日本睡眠学会会員、生活情報サイト「オールアバウト」睡眠ガイド。医師として診療に当たりながら、「快眠で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、予防にも重点を置き、睡眠の質を向上するための指導に努める。インターネットやテレビ、雑誌など多くのメディアで、睡眠に関する情報を発信している。
https://allabout.co.jp/gm/gp/3/

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