- 質問力とは?
- ビジネスにおいて質問力が重要視される理由
- 質問力を鍛えるメリット
- 質問の種類と使用例
- 良い質問と悪い質問の違い
- 質問力が高い人の特徴
- 質問力を鍛えるトレーニング法
- 質問する際に意識すべきポイント
- 【シチュエーション別】質問のコツ
- 昨今の変化目まぐるしいビジネスシーンを生き抜くには質問力が不可欠
近年、特にビジネスにおいて重要性が高まりつつある「質問力」。鍛えたいと思ったらどういったことを意識すれば良いのでしょうか。 本記事では、質問力の概要をはじめ、質問力の種類と使用例、鍛えるメリット、シチュエーション別の質問のコツなどを、やさしいビジネススクールの学長を務める中川功一さんに伺ったお話をもとに、わかりやすく解説します。
質問力とは?
質問力とは、質問を通して話し手の言葉の裏にある意図や真意を引き出し、対話や議論を活性化させるために必要な能力です。この能力をさらに掘り下げると、以下のような三つのスキルに分けられます。
①「質問設計力」:質問の意図に基づいて、相手が回答しやすいように質問を設計する力
②「質問選択力」:相手の立場や知識量、置かれた状況に合わせて最適な質問を選択する力
③「質問展開力」:相手の回答をもとに、その意図や真意を深掘りするために質問を展開する力
それぞれの力を高めることで、情報取集や課題解決の質を高める「質問力」が向上し、ビジネスパーソンとしての成長につながります。
ビジネスにおいて質問力が重要視される理由
ビジネスシーンで質問力が重要視される理由は主に三つあります。
一つ目は、ビジネスをとりまく環境が目まぐるしく変化しているためです。「こうすれば必ずうまくいく」と断言できる絶対的な正解がない時代だからこそ、自ら問いを立てて積極的な対話を促し、より良い解決策を模索するために質問力が求められます。また、近年は生成AIの活用が広まるなか、質問力によってAIから引き出せる回答の質に大きな差が生まれ、結果として業務効率の向上やクリエイティブにも大きな影響を与える可能性があることも要因の一つでしょう。
二つ目は、ビジネスシーンでは上司や顧客のニーズを把握し、その期待を超える成果を出すことが求められるためです。周りの指示やネット上の情報をただ鵜呑みにするのではなく、そこからさらに深掘りしていくためには質問力が重要になります。
三つ目は、さまざまな価値観を持つメンバーと協調性をもって働くためです。お互いに理解を深め、建設的な議論を交わすうえで質問力は欠かせません。
質問力を鍛えるメリット
質問力を鍛えることは、どのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
自分が求めている情報にたどり着きやすい
質問力を鍛えることで、自分が求めている情報にたどり着きやすくなります。例えば、新たなプロジェクトを始める際は、競合調査や関連情報を調べる必要がありますが、質問力があれば、社内外の詳しい人に最新のトレンドや過去の成功・失敗例などのより具体的な情報を聞き出せるかもしれません。こうして信憑性の高い情報を収集することで、プロジェクトの成功確率も一段と高まります。
課題の本質を見抜く力が養われる
質問力を鍛えると、課題の本質を見抜く力が養われます。例えば、自社の売上の伸び悩みが顧客からの課題として共有された場合、質問力があれば過去の売上との比較や競合他社との優位性などの具体的な質問をして根本的な原因に迫り、課題を明らかにしようとするでしょう。また、多角的な視点を持ち質問することで、課題に対する理解も深まり質の高いアウトプットにつながります。
相手から信頼してもらえる
良好な人間関係を築いて相手から信頼してもらうためには、質問力を鍛えることが効果的です。例えば、営業職であれば、相手のニーズや考え方をより深く理解するために「現在どのような課題を抱えているのか」「解決のためにこれまでにどのようなことを試してきたか」などの相手に寄り添った質問が求められます。さらに、相手の言葉に耳を傾けて共感を示すことで、「我々のことを理解しようとしてくれている」という安心感を与えられるので信頼感が高まるでしょう。
学びを深めて成長を加速させる
質問は学びを深めて成長を加速させるための重要なツールです。質問力があれば、単に相手からのアドバイスを聞いて終わりではなく、「日々どのようなことを意識すれば良いのか」「例外的にこんな場面ではどのように対応すれば良いのか」などと質問して、アドバイスを深掘りして理解を深められます。その結果、実践につなげるためのヒントが得られるだけでなく、これまでに思いつかなかったアイデアや新たな発見が見つかることもあるでしょう。
質問の種類と使用例
一口に質問といっても、さまざまな種類があります。ここでは、質問の種類と使用例について詳しく見ていきましょう。
オープンクエスチョン
オープンクエスチョンとは、相手に自由に回答させる形式の質問のことで、相手の潜在的なニーズや本音を引き出す際に役立ちます。例えば、「御社の業務でどのような課題を感じていますか?」という質問は、相手に思考を促し、現在抱えている課題やニーズを引き出すきっかけになるでしょう。
クローズドクエスチョン
クローズドクエスチョンとは、「はいorいいえ」もしくは複数の選択肢から回答する質問のことで、事実確認やスムーズな意思疎通において役立ちます。例えば、「先日依頼したタスクは完了しましたか?」という質問は、スムーズな進捗確認を可能にし、「この案に賛成ですか?反対ですか?」という質問は、迅速な意思決定を可能にするでしょう。とはいえ、クローズドクエスチョンに頼りすぎると、相手の思考を止めてしまう可能性もあるので、オープンクエスチョンとうまく使い分けることが大切です。
過去質問・未来質問
過去質問とは、過去の出来事や経験に関する質問のことで、原因究明や現状分析に役立ちます。例えば、「スケジュールがタイトで大変だったと思うけど、何が原因だったと思いますか?」という質問は、問題点を明らかにして現状の課題を検討できるでしょう。
一方で未来質問とは、将来の展望や目標に関する質問のことで、目標設定や計画立案に役立ちます。例えば、「3ヵ月後の売り上げ目標はどれくらいに設定したい?」という質問は、自ら目標を考えて達成するための行動計画を定めるきっかけになるはずです。ビジネスシーンでは、現状や原因の分析をして改善策を検討することが多く求められるので、過去質問と未来質問を組み合わせて質問することが重要になります。
肯定質問・否定質問
肯定質問とは、相手の意見や行動を肯定的に捉え、さらなる情報を引き出すための質問です。例えば、「その提案はとても良いですね。具体的にどのような点を工夫しましたか?」という質問は、相手の思考を深掘りして成功要因を詳しく分析するために役立ちます。また、「御社の製品は使いにくい」といった意見をもらった際には、「どのような点が使いにくいと感じましたか?」と質問することで、製品をアップデートするための貴重な意見が引き出せるでしょう。
逆に否定質問では、課題や問題を明確にするために、あえて否定的に質問します。例えば、「御社の製品は使い心地が良い」という意見をもらった際には、「もっとこうしたら良くなると思うようなことはありますか?」と質問してみることで、思わぬアイデアや改善点に気づけるかもしれません。
サトルクエスチョン
サトルクエスチョンとは、直接的な表現や伝え方を避けて、遠回しに情報を引き出す質問のことで、相手に警戒心を与えず、本音を聞き出したいときに役立ちます。例えば、「サービスを導入するうえで、どのような点を一番重視しますか?」という質問は、相手の要望や条件を間接的に把握でき、自社のサービスの強みを的確にアピールできます。
なお、サトルクエスチョンは相手の心理的な障壁を下げる効果もありますが、過度に使用すると相手に不信感を与える可能性もあるので注意しましょう。
良い質問と悪い質問の違い
質問には良い質問と悪い質問があるとよく言われていますが、具体的にどういった違いがあるのでしょうか。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
良い質問
良い質問とは、単に自身の疑問や不明点を解消することだけでなく、相手に思考を促し、対話や議論を活性化させるものです。例えば、「私はこういったリスクがあると考えていますが、他にも懸念事項はありますか?」という質問は、相手の意見を引き出して積極的な議論を促そうとしています。こうした良い質問は、相手の思考を掘り下げお互いに理解を深めながら信頼関係を築くことができるでしょう。
悪い質問
悪い質問とは、相手の思考を停止させたり、不快感を与えたりするものです。例えば、「こんな企画は絶対成功しないと思います。なぜこんなアイデアを考えたのですか?」といきなり否定的な質問をしてしまうと、そこで対話が行き詰まり相手のモチベーションアップを低下させてしまいます。一方的な決めつけは信頼を失うだけでなく、人間関係も悪化させてしまうので気をつけましょう。
質問力が高い人の特徴
質問力が高い人には、どのような特徴があるのでしょうか。冒頭部分で解説した、質問力を構成する三つのスキルのどれに該当するのかもふまえて詳しく見ていきましょう。
① 質問設計力 |
② 質問選択力 |
③ 質問展開力 |
質問の意図に基づいて相手が回答しやすいように質問を設計する力 |
相手の立場や知識量、置かれた状況に合わせて最適な質問を選択する力 |
相手の回答をもとに、その意図や真意を深掘りするために質問を展開する力 |
質問の目的をはっきりさせている(①質問設計力)
これは質問設計力に該当しますが、質問力が高い人は「なぜこの質問をするのか」という質問の目的を明確にしています。さらに、質問を通じて自分が学びや発見を得るだけでなく、相手に何かしらの気づきを与えて成長を促すことも意識しているでしょう。
質問の「引き出し」が豊富にある(②質問選択力)
これは質問選択力に該当しますが、質問力が高い人は質問の引き出しを豊富に持っており、状況に応じて使い分けることができます。例えば、プロジェクトで問題が発生した場合、「問題が発生しそうな予兆はあったか」という過去質問に、「どのくらい対応に時間がかかりそうか」という未来質問をうまく組み合わせながら多角的な視点から問題を捉えることで、より最善な解決策を模索しようとするでしょう。
相手の目線に合わせられる(②質問選択力)
これも質問選択力に該当しますが、質問力が高い人は相手の目線に合わせて質問のレベルを調整する能力に長けているでしょう。自分の知識や経験をひけらかして自己満足するのではなく、相手の置かれた状況を理解し尊重しようとする姿勢を大切にしています。
観察力に長けている(③質問展開力)
これは質問展開力に該当しますが、質問力が高い人は細かな表情や態度の変化を察知することが得意です。たとえ相手が「特に問題ありません」と発言しても、ほんの少し表情が曇っているのに気づくと、「何か気になることや不明点はありますか?もしあれば遠慮なく教えてくださいね」という質問を重ねて、言葉の裏にある意図や真意を汲み取ろうとします。質問力が高いと、非言語コミュニケーションからも質問につなげることができるのです。
質問力を鍛えるトレーニング法
質問を鍛えるには、日々の生活や業務のなかでどういったことを実践していけば良いのでしょうか。質問力における三つのスキルのどれに該当するかもふまえて詳しく見ていきましょう。
話の内容を要約して反復する(①質問設計力)
相手が話した内容を要約して反復する練習は、質問設計力を鍛えるのに効果的な方法です。例えば、「今お話しいただいた内容は、営業で契約がなかなか取れず、解決策を模索しているという理解で合っていますか?」という相談内容を要約する質問は、認識の相違を防ぎ、適切なフィードバックを可能にします。日常的に相手の話を要約して反復する習慣をつけることで、質問力が高い人に共通する傾聴力の向上につながるでしょう。
<関連記事>要約のコツとは?注意点や要約力を高めるコツについて分かりやすく解説
質問に対する回答内容を振り返る(①質問設計力)
質問に対する相手の回答内容を振り返り自分の質問力を客観的に分析することも、質問設計力を鍛えるには効果的でしょう。例えば、昇給制度について確認する際、「どうすれば給料が上がりますか?」と質問した場合、「とにかく頑張ればいいんだよ」と求めている回答が得られなかったとします。そこで、「給料を上げたいと思っているのですが、昇給の基準について確認させてください」と質問していれば、相手の回答内容も変わっていたはずです。
日ごろから質問と相手の回答内容を振り返り分析することで、質問の癖や改善点が発見でき質問力の向上につながります。
意識的にさまざまな質問を使い分ける(②質問選択力)
意識的にさまざまな質問を使い分ける練習は、質問の引き出しを増やし、質問選択力を鍛えるには効果的です。例えば、ニュース記事を読んだときには、「この記事で一番重要だと思うことは何ですか?」という質問をもとに、「日本における出産率の低下について、前年比でどのくらい落ち込んでいますか?」という質問を重ねて理解を深めます。このように普段から一つのトピックに対して、さまざまな質問を使い分けることで、次第に質問の引き出しが増え、状況に応じて適切な質問ができるようになるでしょう。
「なぜ」を繰り返して思考や要因を深掘りする(③質問展開力)
日ごろから疑問や興味を感じることがあったら「なぜ」を繰り返し、要因や思考を深掘りすることで、質問展開力が養われるでしょう。例えば、ある会社の売上増加をニュースが報じたとします。「なぜ売り上げが増加したのか」「なぜ競合他社より優れているのか」などの質問を重ねて要因を深掘りするのです。「なぜ」を繰り返すことで、物事を表面的な情報だけで捉えず、その裏にある背景や意味も含めて深く考察する習慣が身につきます。
質問する際に意識すべきポイント
では、質問する際には具体的にどういったことを意識すれば良いのでしょうか。質問力における三つのスキルのどれに該当するかをふまえて詳しく見ていきましょう。
目的意識を持つ(①質問設計力)
これは質問設計力に該当しますが、質問する前には、「なぜこの質問をするのか」という質問の意図を明確にしましょう。「プロジェクトの課題を洗い出すため」「顧客のニーズを把握するため」などの目的を念頭に置いておくと、質問の軸が定まりやすくまず何から聞けば良いかわからないということも防げます。
例えば、「既存のサービスについて現場での温度感を伺いたいのですが、実際にどういった声が多いでしょうか?」などの質問をすることで、顧客のニーズを把握するためのヒントが得られるはずです。このように、目的意識を持った質問は表面的なやり取りにとどまらず、コミュニケーションの質を高めてより有益な情報を引き出しやすくなります。
質問する背景や意図を相手にきちんと伝える(①質問設計力)
質問の目的を明確にしたとしても、それが相手に伝わらないとどのように答えるべきか回答に困ってしまいます。これも質問設計力に該当しますが、相手に安心して回答してもらうためには、あらかじめ質問する背景や意図を相手にきちんと伝えることも大切です。
例えば、「今回の出張費の請求方法について知りたいのですが」「このプロジェクト案についてご意見をお聞かせいただきたいのですが」などと質問の意図を伝えることで、相手にとってもどんな回答を求められているのかわかりやすいでしょう。
「仮説」を立てる(①質問設計力)
主に質問設計力に該当しますが、質問する際は、「仮説」を立ててみるのもおすすめです。例えば、友人と食事に行った際、「この店がいつも混んでいるのはコスパが良いから」という仮説を立てたうえで検証のために、「この店が人気な理由ってコスパだと思うんだけど、どう思う?」と質問するのです。仮説を立てることで質問の解像度が上がり、コミュニケーションも活性化するでしょう。
相手の立場や経験を考慮する(②質問選択力)
上司か部下なのか、あるいは新人社員か中堅・ベテラン社員なのかによってどんな質問をするべきか異なります。例えば、まだ経験が少ない若手社員に対して業界用語や専門用語を多用した質問は誤解を招く可能性もあるので、まずは、「最近、業務で何か困っていることや不明点などはないですか?」などの質問を投げかけて、相手の業務に対する理解度を大まかに把握するのがおすすめです。
このように、相手の立場や経験を考慮した質問を心がけることで、質問選択力を鍛えることができます。
クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンをうまく使い分ける(②質問選択力)
これは質問選択力に該当しますが、クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンをうまく使い分けることも大切です。例えば、「この提案で気になった点はありますか?」とクローズドクエスチョンで聞いたうえで、「もしある場合はどのような点を改善すれば良いか、その理由も合わせて教えてください」というオープンクエスチョンを重ねることで、相手の意見や考え方を引き出しやすくなります。
また、単なる賛否だけでなく、その理由や背景を理解しようとする姿勢は、相手との積極的な対話を促し、建設的な議論を生み出す効果も期待できるでしょう。
質問を構造化する(③質問展開力)
主に質問展開力に該当しますが、時系列や具体的な事例に沿った質問は相手の思考を整理し、的確な回答を引き出しやすくなります。例えば、プロジェクトの振り返りでは、「計画段階でどのような課題がありましたか?」「結果をふまえて改善すべき点は何ですか?」と時系列に沿って質問するのが良いでしょう。
このように質問を構造化することは、回答の漏れを防ぎ、情報収集の効率化を高めるだけでなく、問題を多角的に捉えるうえでも役立ちます。原因を体系的に分析することで、問題の本質を突き止め、より効果的な改善策を導き出せるのです。
質問から学びを得る(③質問展開力)
質問からの学びを得る姿勢は、質問力を最大限に引き出せます。主に質問展開力に該当しますが、質問する際は相手の回答から学び、自身の知識や視野を広げる機会と捉えることが大切です。さらに、疑問や不明点があれば質問を重ねて回答を深く掘り下げることを意識しましょう。
例えばプレゼンを聞いた際には、ただ感想を述べるだけでなく、「プロジェクトの成功のために日々チーム内でどのように目標を共有しましたか?」と質問することで、自身のマネジメントスキルを高めるヒントになります。質問から学びを得る姿勢は、相手と関係性を深めるだけでなく、周りの人にも良い影響を与え組織全体の学習意欲の向上につながるでしょう。
ポジティブな雰囲気を作る(③質問展開力)
これは質問展開力に該当しますが、質問を通してポジティブな雰囲気を作ることも重要です。特に相手に否定と思われかねない質問をする際には、未来志向かつポジティブな質問を重ねましょう。
例えば、「この企画は欠陥があると考えますが、これは誰が考えましたか?」という質問はネガティブな雰囲気を生み出しかねません。そこで、「企画を成功させるには、どのような工夫が必要だと思いますか?」という質問を重ねることで、建設的な議論を促せます。相手を責めるのではなく、質問の意図をポジティブな方向に向けて一緒に課題を解決する意識を持つことが大切なのです。
【シチュエーション別】質問のコツ
転職面接やクライアントとの打ち合わせなどのさまざまな場面で、具体的にどういった質問を心がけるべきなのでしょうか。シチュエーション別に詳しく見ていきましょう。
転職の面接での質問
多くの場合、転職の面接では逆質問が求められます。逆質問は、応募者の疑問を解消するだけでなく、企業への理解度を深めつつ、企業に志望度の高さを示すことが大切です。
例えば、「御社ではどのような人が活躍されていますか?」という質問は、その企業に対する興味関心を示すほかに、入社後の働く姿をイメージするうえで役立ちます。また、「入社後3年以内に管理職に就きたいと思っているのですが、これまでに御社でそういった事例はございますか?」という質問は、自身の成長意欲を強くアピールできるでしょう。
上司との面談での質問
上司との面談では、自身の成長を促し、より良い成果を残すためのヒントが得られる質問を心がけましょう。
例えば、「私の強みを活かすためには新たにどういったことに挑戦すべきでしょうか?」という質問は、上司から的確なアドバイスをもらい視野を広げるきっかけになります。また、「メンターを経験してマネジメントスキルを身につけたいと考えていますが、将来のためにどのような経験を積んでおくべきでしょうか?」という質問は、上司の意見や体験談を引き出しキャリア形成のヒントが得られるかもしれません。
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部下との面談での質問
部下との面談では、すぐに答えを教えるのではなく、部下に思考を促して新たな学びや発見が得られる質問が適切です。
例えば、部下がミスをした場合は、「なぜミスをしたと思う?」と質問して原因を言語化させましょう。そして、「このミスから何を学んだ?」「どのような対策をすべきだった?」などとさまざまな角度から質問することで、部下の成長にとって必要なサポートが求められます。反対に、「なぜこんなことができないんだ」と感情的に叱ることは部下を萎縮させ、相談しにくい雰囲気を作り出してしまうので控えましょう。
社内ミーティングや会議での質問
社内ミーティングや会議では、積極的な議論を促し、より良い意思決定をするための質問を心がけましょう。
例えば、プロジェクトメンバーを決める議題では、「若手主体のチーム編成が良いと思いますが、皆さんはどう思われますか?」とまずは質問して議論の焦点を明確にしたうえで、「若手主体のチームにした場合は、具体的にどのようなリスクが考えられますか?」と問題提起を行います。その結果、「製作物の質が担保しにくい」という回答がなされたとしたら、そのリスクに対して参加者がさまざまな意見を出し合って具体的な対応策を検討できるでしょう。
クライアントとの打ち合わせでの質問
クライアントとの打ち合わせは、相手のニーズを深く理解し、お互いに信頼関係を築くための質問を心がけましょう。
例えば、「御社の業務効率化に関する課題のなかで、特に優先順位が高いものは何でしょうか?」という質問は、ニーズを具体的に把握し、最適な提案につなげる第一歩になります。
さらに、「会計・経理業務の簡略化を解決するためにこれまでどのようなことを試されましたか?」という質問は、クライアントの取り組みを理解したうえでより効果的な解決策を提案するヒントになるはずです。
また、「会計・経理管理システムを導入することでどのような成果を期待しますか?」と質問することで、クライアントが求める成功イメージを把握しておくことも忘れてはいけません。
研修での質問
研修では、その場で学んだ知識や考え方を深掘りして、実践につなげるための質問を心がけましょう。
例えば、「今回学んだSNSマーケティングのコツを日々の業務のなかで実践するには、具体的にどのようなことから始めたら良いのでしょうか?」という質問は、理論を実践に落とし込むヒントになります。また、「〇〇株式会社の事例とは別に成功した事例はありますでしょうか?」という質問は、知識の幅を広げて学びを深める機会になるはずです。ひいては、他の参加者の学びを深め研修全体の質向上にもつながるでしょう。
上司から仕事の相談や依頼を受けたときの質問
上司からの仕事の相談や依頼は、業務の目的や自分に依頼する理由を明確にして、期待以上の成果を出すための質問を心がけましょう。
例えば、「基礎力向上が依頼する目的とのことですが、プレゼン資料を作成するうえで意識すべきことはありますでしょうか?」という質問は業務の目的を明確にしつつ、自身の行動指針を定めるうえで役立ちます。そのうえ、「AIを用いた業務効率化を意識してほしいとのことですが、資料を作成する時間の目安はありますでしょうか?」という質問は、上司が求める成果を把握し、業務を円滑に進めるために効果的です。
もし、自分一人で業務を進めることが難しいと判断した場合は、なるべく早く「〇〇さんの協力を得てもよろしいでしょうか?」と上司に伝えるようにしましょう。
昨今の変化目まぐるしいビジネスシーンを生き抜くには質問力が不可欠
ここまで見てきたように、昨今の変化目まぐるしいビジネスシーンを生き抜くためには質問力が不可欠です。質問力における3つのスキル(質問設計力・質問選択力・質問展開力)を鍛えることで、情報収集や課題解決の質を高め、クライアントや上司・同僚との信頼を深めることができます。今回ご紹介したトレーニング法や質問する際に意識すべきポイントを参考に、日々の生活や業務のなかで実践しながら自身を成長させ、活躍できる人材を目指しましょう。
監修:やさしいビジネススクール学長 中川功一
経済学博士(2009年、東京大学)。「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。学長を務めているオンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作などで経営知識の普及に尽力している。 主な著書に『感染症時代の経営学』『ど素人でもわかる経営学の本』『戦略硬直化のスパイラル』など。
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