プレゼンを成功させるポイントとは?効果的な構成や、やりがちな失敗を分かりやすく解説

ビジネスにおいて、よく行われるプレゼンテーション。苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。本記事では、プレゼンの目的や成功させるポイント、やりがちな失敗やその対策について解説します。

プレゼンをする講師のイメージ

ビジネスパーソンの中には、プレゼンを成功させたいと考えている人も多いと思います。そもそも「良いプレゼン」とはどのようなものなのでしょうか。プレゼンを成功させるためのポイントや、ありがちな失敗例とその対策について、経済学博士の中川功一さんに伺い、分かりやすく解説します。

良いプレゼンとは?その意味を解説

自信を持ってプレゼンする人

ビジネスでよく行われるプレゼンテーション(以下:プレゼン)。取引先や社内会議などで企画を知ってもらうために行うイメージですが、そもそもプレゼンとはどのようなものでしょうか。詳しく見ていきましょう。

そもそもプレゼンテーション(プレゼン)とは?

プレゼンとは、話し手が深い理解をもって、聞き手の行動の変容をも促せるように、その話の内容を伝えることです。よく「相手の脳内のスクリーンに、自分の話の内容を投影する」とたとえられます。プレゼンは自分が基点になって意見を述べる「発表」とは異なり、聞き手が基点。

つまり、プレゼンは、聞き手の脳内に自分の話を再現することを目指し、人を説得するものなのです。

良いプレゼンとは何か

例えば、プレゼン相手に企画の売り込みが成功するものが「良いプレゼン」と考えがちですが、本来、良いプレゼンとは双方にwin-winをもたらすものです。聞き手に向けて、強硬な意見を主張し、屈服させたとしても、それはプレゼンの成功とは言えません。

さらに、一方的に譲歩することも、プレゼンの狙いを達成できたとは言えないでしょう。聞き手が理解できるような言葉で、承諾しやすい提案を出す、つまり、プレゼンの内容を正しく聞き手に伝え、合意を目指すことこそがプレゼンのゴールです。このゴールのために試行錯誤したプレゼンは良いプレゼンと言えます。

プレゼンはビジネスシーンに限ったものではなく、実は身の回りのいたるところにもあふれています。例えば、友人や家族に大切な相談をするときや、初めて会った人に自己紹介をするとき、教育の場でカウンセリングやコーチングをするときなども、広い意味ではプレゼンです。そのため、プレゼン力を磨くことはビジネスではもちろん、それ以外の日常生活においても重要となります。

基本的なプレゼンの流れは?

プレゼンの導入部分のイメージ

基本的なプレゼンの流れは、「STAR法」「Why-so」「So-What」の3パターンがあります。それぞれ解説します。

STAR法

Situation(現状)、Target(目標)、Action(やるべきこと)、Result(結果)の頭文字をとって、「STAR法」と呼ばれます。具体的な流れとしては、頭文字の順番に、「現在の状況は●●ですね」(現状)→「目標は××ですよね」(目標)→「であれば、今やるべきことは▼▼ですね」(やるべきこと)→「それを実施したならば、○○という結果が得られるはずです」(結果)となります。

これは、コンサルティングや、客先営業などでは基本形とされています。この方法では、聞き手との間に、現状や目標についての共通理解をSTARのそれぞれの段階ごとに作っていくことがポイントです。

Why-so

Why-soとは「なぜそうなるのか?」と意味する言葉で、「結論から先に話す」方法のことです。最初に結論を述べると、聞き手は「なぜそうなるのか?」と疑問を持ちます。そこで、理由を述べると、「結論→理由」という流れが出来上がります。ビジネストークでは、結論が見えない中で会話をするとストレスがかかるため、原則として、結論から述べたほうが良いでしょう。

また、アカデミアや学会発表などでは結論を先に話すのがグローバル・スタンダードとなっているほか、一部の有力コンサルファームでは、新人にまずこの話法をトレーニングする傾向にあります。

So-what

So-whatとは「だからどうしたの?」、「それで何が言いたいの?」といった意味の言葉です。こちらは、最初に問いに対する根拠を並べていき、それらに基づいて結論を最後に示すという「理由から話すパターン」です。終わりまで話を引っ張れることから、プレゼンの初心者はこちらを選びがちですが、ビジネスシーンでは基本的に、先ほどご紹介した「Why-so」の要領で、結論を先に話すのが良いでしょう。

テレビ番組やYouTube、映画、小説などでは、結論を引っ張るこちらの形式が採用される傾向にありますが、それは結論(オチ)が十分に面白いからできることです。よほど結論が面白いか、あるいは結論から入るとショックである場合(長年続けていた事業の撤退を促すなど)をのぞけば、So-whatは「面白く話すための話法」であって、ビジネストークとしてはリスクの高いものだと認識しておきましょう。

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プレゼンを成功させるポイント

プレゼンのために資料をまとめる様子

プレゼンを成功させるためのポイントについて、資料作りから、導入時、話し方、質疑応答までのまとめ方を解説します。

プレゼン資料を作る際のポイント

まずは、プレゼンに大事な資料作りのコツを紹介します。最初の準備段階なので、参考にしてみてください。

とにかく簡素に作る

資料はとにかく簡素に作るのがポイントです。背景も飾りも必要ありません。それらは、話への集中から目をそらさせてしまう邪魔な要素となります。絵面が寂しく感じるようであっても、四隅のどこかに企業ロゴが入っているくらいのシンプルさが資料としては正解です。

文字フォントとサイズ

資料を作る際には、以下の点を意識しましょう。

  • フォントサイズは24以上
  • 文字フォントはゴシック系

紙に印刷したり、大画面で表示したり、もしくはZoomなどで表示するにしても、フォントサイズは24ポイント以上であれば、たいていの人が読めるでしょう。多くの人がプレゼンで使用するOffice PowerPointのデフォルトは18ポイントなので、作成時には注意が必要です。

また、文字フォントは「MSゴシック」「Meiryo UI」「メイリオ」などのゴシック系がおすすめです。線が細すぎると、プロジェクターなどで投影した場合、線が消えたり見えにくくなったりします。ゴシック系は、どのような視覚的特徴を持つ方にも等しく見えやすく、すべての人の可読性を高めるために開発され進化を続けてきたフォントなのです。

こうした工夫も、些末なものとは思わない意識が重要です。聞き手に伝えるために最善を尽くそうと考え、良いプレゼンにしたいのであれば、フォントも誰にでも見やすいものにしたほうが良いでしょう。

プレゼンの導入時のポイント

プレゼンに向けてしっかりと準備してきたことを無駄にしないためにも、次のポイントを意識しましょう。

見た目に気を配る

プレゼンの導入は最も大切な時間です。人の第一印象に関わる法則として挙げられる「メラビアンの法則」によると、人は相手と接する際、視覚情報の影響を55%、聴覚情報の影響を38%、言語情報を7%受けているとされています。そのため、見た目で損をするような登場は避けるべきでしょう。

第一印象が決まるまでの時間については諸説ありますが、少なくとも5分程度話せば、目の前の人がどういう人物なのか聞き手から評価づけられてしまいます。

また、下品なトークなどから始めないようにも気をつけるべきでしょう。話し手が誠実な人物であり、情報を伝えるべく、しっかり準備と覚悟をしてその場にいる人なのだということを聞き手に分かってもらうよう意識して臨むことが重要です。

<関連記事>第一印象は何で決まる?良くするポイントを分かりやすく解説

友好的な雰囲気をつくる

最初に友好的な雰囲気をつくることも、とても大切です。笑顔で語り掛けるようにするなど、やわらかい雰囲気を醸し出すことで聞き手に好意を持ってもらえば、プレゼンは上手くいきやすくなります。

また、鉄板の自己紹介を用意しておくことも有効です。あまり長くならず、自分の人となりと魅力が伝わるような自己紹介を作っておけば、プレゼンの成功率はかなり安定するでしょう。

プレゼン中の話し方・発表方法のポイント

プレゼンの中盤にも注意すべきポイントはあります。詳しく見ていきましょう。

聞き手のストレスフリーを意識する

人間の脳は、一方的に話を聞くことに適していません。私たちの脳は「対話」を標準的なコミュニケーションのかたちとするようになっているため、他人のプレゼンを長々と聞くのは、その話がどれだけ魅力的でも、ストレスがかかることなのです。

ストレスがかかると聞き手はこちらの話や人格に対してマイナスな評価を持ってしまいます。そのため、いかにして、方法や資料、発話などを工夫してストレスフリーな場を作るかがプレゼン成功の鍵となります。

例えば、紹介したようなSTAR法やWhy-soを用いたり、資料をできるだけシンプルにしたりするほか、次に紹介するような話す時間を短くするなどです。プレゼンの基点が話し手ではなく聞き手にあることを意識し、聞き手がストレスフリーにいられることに配慮して挑みましょう。

話す時間を短くする

人が一方的な話を聞いていられる時間は約15分だと言われています。プレゼンというと、長々と話す必要があると誤解している人も多いですが、短いに越したことはありません。

15分を超えそうな場合は、質疑を入れるなど、聞き手が考えたり、発言したりする場を用意して、リズムを作るようにしましょう。プレゼン中に約5分程度、弛緩する時間をとることで、人は再び話に集中できるようになります。

話者はリスクフリーを心掛ける

プレゼンは、リスクを最小限に抑えて行うべきものです。ここで言うリスクとは、例えば、プレゼン資料の中に動画を組み込む、強い表現を使う、小ネタを差し挟むなどです。

プレゼン資料に動画や細かいアニメーションを組み込んだ場合、当日、通信回線やPCの処理能力が十分になく、もしフリーズしてしまったらプレゼンは失敗に終わるかもしれません。また、動作の安定しないプログラムやアプリを動かしたり、使い慣れない最新のマイクなどの機器を使ったりするのも同じ理由で避けたいところです。

加えて、聞き手が反論を持ってしまうような強い表現を使う、笑ってもらえるか分からない小ネタを差し挟むなども必要ありません。賛否のあるような時事ネタなどを入れるのも、リスクが高いです。プレゼンの目的を一番に考え、リスクのある行動をとらないよう気をつけましょう。

質疑応答〜まとめ方のポイント

プレゼンでは、質疑応答の時間もおろそかにしてはいけません。質疑応答からまとめまでのポイントを解説していきます。

疑問がしっかり解消されるプレゼンにする

満足感の高いプレゼンとは、聞き手の疑問がしっかり解消されるものです。例えば30分のプレゼン時間があるなら、25分説明して5分の質疑応答をするよりは、20分の説明と10分の質疑応答のほうが、相手の満足感が高くなる傾向にあります。

プレゼン資料は、おおよそ1枚につき3分程度を必要とします。この時間を前提に、資料を5〜6枚にまとめておくようにすれば、テンポのよい発表となり、引き締まった場にできるはずです。

それ以外の本筋から少しそれる部分などは、すべて参考資料としてもいいかもしれません。本来、本論として話すべきことも、質疑応答の時間に質問が来ることを念頭に、あえて参考資料に入れるのもテクニックの一つです。

質疑で聞き手を頭ごなしに否定しない

基本的には、どんな意見も肯定的に受け止めることが大切です。反論は、立場の違いからくる前提条件の違いに起因しています。お互いにどのような前提条件で、認識の違いがあるかを考え、自説を無理に通す必要もないということも知っておくと良いでしょう。

聞き手の意見を認めることで、プレゼンが崩壊するわけではありません。むしろ、聞き手の意見をしっかりと受け止められる話し手は、前向きに評価され、プレゼンの成功の可能性が高まる傾向にあります。

例えば、質疑できつい言葉で反論をする人が現れたら、「ラッキー」と思ってしまいましょう。その意見をうまく受け止めながら、反論する際には、相手の立場やプライドを尊重しつつ、異なる認識について整理し、解説します。そして「その考え方も一理ありますが、私自身の認識から判断すると、このように進めるべきだと考えます」という形でまとめるのです。

すると、聞き手は話し手のことをさらに評価してくれるばかりか、話し手の主張がどういう前提に立っているのか、話のポイントについても理解を深めてもらうことができます。このように、実は反論が来たときこそ、場を完成させるチャンスになり得るのです。

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プレゼンでありがちな失敗とその対策

プレゼンで失敗して慌てる様子

プレゼンのためにしっかり準備することは必要ですが、力をいれすぎて失敗してしまうこともあります。ここではプレゼンでありがちな失敗とその対策について紹介します。

失敗①:アニメーションを多用してしまう

プレゼンに慣れていない人がやりがちなのは「アニメーションの多用」です。画面を動かせるとなると、それだけで楽しくなり、印象的に説明ができるような気になります。

しかし、資料は質疑応答などの場で「行ったり来たりする」のが一般的です。流れによっては資料を飛ばしたりすることもあります。アニメーションを入れると、こうした柔軟な操作が難しくなるのです。

また、うっかりボタンを押して、意図しないタイミングでアニメーションを動かしてしまうこともあるので、アニメーションは基本的に使わないほうが無難と言えます。 

失敗②:ただ用意した原稿を読むだけになってしまう

「原稿を用意したほうがよいのか」と気になる人も多いと思います。初心者の場合は「片手に収まるくらいのメモを用意しておく」ことがおすすめです。原稿を用意すると、読むだけになってしまい心をこめにくく、また、原稿に縛られてしまいます。その一方で原稿をまったく使わないと、大切な内容を伝え忘れてしまうリスクもあります。

そこで、手元に「伝えるべき要点や伝え方の要点、流れ、時間などを簡単に記したメモ」を用意し、そのメモに沿って話しましょう。こうすることで、原稿の棒読みにならず、自分なりのスタイルで話すことができます。

ある程度プレゼンに慣れ、自分に備わった言葉に自然な感情を乗せる力を信じられるのであれば、メモを無理に使わなくても問題ありません。

失敗③:時間配分をミスする

慣れない間は、どれだけリハーサルをしても、本番の環境では時間が狂ってしまうことがあります。この場合は、とにかく何が起こっても絶対に終わる長さにプレゼンを組み立て、制限時間の5分前には終わるようにしておきましょう。短く終わる分には質疑応答を長くとれば良いですが、終わらないのは致命的と言えます。

時間配分が上手くいかない場合の最も有効な対策は、プレゼンを短く作ることです。短くするためには、資料枚数を削ることが一番です。全体の構成を変えずに、話すスピードや内容を短くしようとしても、まずうまくいきません。全体の構成を見直し、資料の量を減らすことを心がけましょう。

失敗④:緊張してうまく話せない

プレゼンの大敵は緊張かもしれません。しかし、緊張はそれだけその場を大切な場だと理解しているということです。もちろん緊張によって話すべきことがまったく話せなかったケースもあると思いますが、聞き手に話し手の意気込みや一生懸命さが伝わったならば、きちんと話せなかったことを補うくらいのプラスの効果があります。

緊張は誰でもするものですから、緊張している人の様子をみて、決定的に悪い評価をする人はあまりいません。大切な場で緊張することは、それ自体が普通のことだと思ってしまえば良いのです。

プレゼンの緊張に勝利するためのポイントは、自分をフロー状態に持ち込むことです。スポーツでは「ゾーンに入る」と呼ばれますが、「緊張して頭が真っ白になった」とは、同時に処理すべき複数のことがあり、一度に処理できなくなった状況を指します。

瞬間的にたくさんのことを考えなければならないとき、超一流スポーツ選手でも、意識的な思考でやり切ることは難しく、ゾーンに入っているからこそ、無意識のうちに一瞬で処理をすることができます。

ゾーンやフローというと、常人にはめったに起こらないことのようですが、そうではありません。例えば、コンピュータゲームをしているとき、日常の仕事をしているときなども、何度かフロー状態に入っているとされています。

そのため、自己分析を行って、自分がどんなときにフロー状態に入るかを理解しましょう。その思考のスイッチや、身体の状態を再現できるようになれば、緊張とは無縁なフロー状態でのプレゼンを行うことも可能になります。

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聞き手基点でプレゼンを工夫する

プレゼンの資料作りから導入、話し方、質疑応答までさまざまなポイントを紹介しました。聞き手が飽きずに話を聞いてくれるよう、聞き手基点で資料を工夫したり、構成を練ったりして臨みましょう。また、プレゼンそのものに慣れることも成功の秘訣です。そのためにも、リハーサル、本番と経験を重ね、多くの改善点や学びを得て、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目と成長していきましょう。

監修やさしいビジネススクール学長 中川功一
経済学博士(2009年、東京大学)。「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。学長を務めているオンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作などで経営知識の普及に尽力している。 主な著書に『感染症時代の経営学』『ど素人でもわかる経営学の本』『戦略硬直化のスパイラル』など。

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