パンケーキ店はなぜ増え続けるのか? 流行から学ぶ飲食店経営のキホン

最近よく街で目にするパンケーキ専門店。ブームの火付け役となった有名店はもちろん、その他のお店もいまだににぎわいを見せている様子。これだけ増えているということは、「もしかしてパンケーキ店ってもうかるのかな?」と思った人も多いのではないでしょうか。

パンケーキ店はなぜ増え続けるのか? 流行から学ぶ飲食店経営のキホン

最近よく街で目にするパンケーキ専門店。ブームの火付け役となった有名店はもちろん、その他のお店もいまだににぎわいを見せている様子。これだけ増えているということは、「もしかしてパンケーキ店ってもうかるのかな?」と思った人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、税理士・社会保険労務士の横山成明さん、パンケーキ専門店「58cafe」宮下元司さんにお話を聞き、「パンケーキ店はなぜ増え続けるのか?」そして「パンケーキ店はもうかるのか?」、率直な疑問をぶつけてみました。

もうかる飲食店とは?


まず「パンケーキ店はもうかるのか?」を検証するにあたって、もうかる飲食店のポイントについて、横山さんに伺いました。

「どこの飲食店にも共通して重要になってくるのが仕入れに関する費目でしょう。何をどれだけ仕入れて、どのくらい売上げたら利益がいくらになるのかということを綿密に計算しておく必要があるのです。つまり、仕入れや支出だけでなく在庫管理も大切なポイントになってきますね。そうすることで無駄を減らすことができますし、その分、利益につなげていくことができるからです」(税理士・社会保険労務士 横山成明さん)

なるほど、仕入れを安くするだけでなく、いかに無駄をなくすかという在庫管理の部分も成功する飲食店の大切な条件なのですね。では、パンケーキの仕入れ、在庫管理はどうなのでしょうか?

パンケーキ店の仕入れの実際


「パンケーキは一品の値段が1000円~といったものが多いです。主婦のランチには少々高め。ですからOLのように働いている方をターゲットとすることが店舗展開の基本です。仕入れのメーンとなるのは小麦粉で、もっとも多く使う材料でもあり、それだけ仕入れ値もかさんでくる費目ですね。この仕入れ値をどれだけ抑えるのかは後々の利益を考えたときに大きく影響してくるところだと思います。パンケーキというものは、作り置きをして半製品化し保存する商品ではありません。そのため廃棄が出ることがないんです。つまり、そうしたロスがない分、仕入れ値が利益に大きく影響してくるのです。

ただ、使っている材料の内容は店によってさまざまです。弊社のパンケーキはモッチリ食感のものですが、どういった粉を選択するかはその店舗が選ぶ問題。そのため一概に小麦粉といった表現をしてしまうのは、あまり正確ではないかもしれません」(パンケーキ専門店「58cafe」 宮下元司さん)

パンケーキの材料は小麦粉といっても、パンケーキの味が各店で違うように、その詳細については各店異なります。当たり前ですが、いかにおいしく、安価な材料を見つけるかが鍵となるようです。ただ、廃棄が出ないというのは、在庫管理において、大きなメリットといえそうです。

なぜパンケーキ店は増え続けるのか?


しかし、それだけでは「パンケーキ店はなぜ増え続けるのか」、まだまだ納得がいきません! 他にパンケーキ店のメリットはないのでしょうか?

「なんといっても、パンケーキ店の魅力をあげるとすれば『イメージ』でしょう。『Eggs'n Things』のような有名店が今でも行列をつくり続けていることが大きな要因となっていると思います。また、日常の食事だったパンケーキが、さまざまなアイデアを盛り込んだ結果『ハレの日』の食事にランクアップしたというイメージ変化も重要だったと感じています。ただ、急激にパンケーキ店が増え続けているわけではないんですよ。パンケーキは立地に大きく左右されるため、有名店でもバンバン新たな店舗を出しているところは少ないと思います。パンケーキ店といっても経営の考え方は他の飲食店と一緒ですからね」(パンケーキ専門店「58cafe」 宮下元司さん)

やはりブームとともに訪れたパンケーキのイメージの転換が、なによりのメリットの様子。とはいえ、「パンケーキ店を始めれば、ボロもうけ」というわけではなく、そこにはたゆまぬ経営努力が必要なようです。また横山さんも成功するお店と失敗するお店について、以下のように語ります。

「店舗の立地は非常に大事です。家賃が安いからといって安易に店を決めてしまうとあとで必ず後悔する結果になるのです。決める際は、平日、土曜日、日曜日で朝から夜までの人の流れと近隣の繁盛店をよく研究する必要がありますね。周りの客層とかその店の平均単価、席の回転度合とかその場所の特色を自ら調べて下さい。

また、お店のメニューですが、大切なのは品数ではなく、その店の特長を出すようにしないといけません。決してリーズナブルではなくていいのです。雰囲気、メニューの質、従業員のサービスなどどれをとっても特長的で、他の店と差別化され、これなら満足できる、という内容になっていることが大切なのです」

ついつい「絶対にもうかる」というお墨付きを欲しがってしまう私たちですが、商売に必勝法はないということが、よく分かりました。もし、あなたの街に繁盛しているパンケーキ店があったとしたら、それはそのパンケーキ店の経営努力のたまものなのです。そしてそんな数々の経営努力が合わさって、長きにわたるパンケーキブームを下支えしているというわけですね。

<店舗紹介>
パンケーキ専門店「58cafe」(運営:株式会社58ジャパン)
2010年、同社がカフェ業界で培った18年のノウハウを生かし、武蔵浦和の二等地にオープン。「半熟パンケーキ」、「アサイーボウル」、「自家焙煎コーヒー」といったキラー商品を提供する傍ら、従業員教育やおもてなしを重視することで、20~50代の女性を対象に地域口コミによる新しいマーケットの開拓に成功している。関東地区を中心にフランチャイズパートナーも募集。

(識者プロフィール)
横山成明(よこやま・なりあき)/大田区に横山税理士・社会保険労務士事務所を開業。国税局・税務署に33年在籍し、合わせて500社を超える法人や個人の税務調査を行った経験を持つ。その経験を生かし、飲食店のほか比較的小規模の会社、個人事業主専門の税理士として、税務申告や税務相談といった税務調査対応を請け負っている。


※この記事は2014/07/25にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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