最小限のモノで最大限の人生を…「ミニマリスト」という生き方とは

近年、話題を集めている「ミニマリスト」。いったい、どんなライフスタイルやどういう考え方をそう呼ぶのでしょうか。

最小限のモノで最大限の人生を…「ミニマリスト」という生き方とは

近年、話題を集めている「ミニマリスト」。いったい、どんなライフスタイルやどういう考え方をそう呼ぶのでしょうか。

そこで今回は『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』の著者である佐々木典士さんに、ミニマリストとしての生き方や仕事の向き合い方について聞いてみました。

佐々木さんのミニマリストな生活とは


実はもともとモノが大好きで、CDや本など、モノを大量に所有していたという佐々木さん。2013年に「ミニマリスト」という言葉を知ったことをきっかけに興味を持ち、そこから1年ほどかけてモノを減らし始めたそう。その金額は総額数百万円以上というから驚きです。

1Kのマンションに暮らす佐々木さんの部屋にあるのは、机と椅子、そして布団のみ。クローゼットの中には同じ白いYシャツと黒いパンツが3着ずつ。これを基本に寒くなれば上着を重ねていきます。仕事や外出先には小さなリュックひとつで出かけるそうです。中には、PCやノートなど必要最低限のモノだけで「1泊2日なら着替えだけ放り込んで、このまま行けます」(佐々木さん、以下同)とのこと。


ちなみに短髪のヘアスタイルは、16年前からバリカンでセルフカットしているそうです。佐々木さんはモノを減らすことで、どんなメリットがあったのでしょうか。

ミニマリストのメリットとは

 

1.時間ができる


服でいうと、私服を「制服化」することで、買い物で迷う時間や朝起きたときに何を着るかなど、迷う時間を節約できます。スティーブ・ジョブズ、オバマ大統領、マーク・ザッカーバーグなどがいつも同じ服というのは有名な話ですよね。

「モノを減らすと、まず整理したり探したりする手間が省けて時間もできます。『人は1日10分、一生で150日探し物をしている』っていう話があって、僕はそういう無駄な時間がなくなりました」

2.生活コストが下がる


家があれば、その家に合うモノが欲しくなりますよね。すると次は買ったモノに合わせて「アレもコレも…」と欲しくなってしまい、モノがモノを呼んでお金も飛んでいきます。

「モノが少なければ保管する場所がコンパクトで済みますので、大きな家に住む必要もなくなります。引っ越しも安く済みますよね」

3.好きな仕事を選べる


そして家賃などの固定費が下がるということは、「好きなことができる」と佐々木さんは話します。

「生活するコストが小さく済むと、収入にこだわらないで、やりたい仕事、好きな職業を選びやすくなると思います」

佐々木さんが考えるミニマリスト


そんな「ミニマリスト」ですが、そのイメージは極限までモノを持たない人……と想像してしまいがち。しかし、佐々木さんが考えるミニマリストは少し違うようです。

「僕も最初はスーツケースひとつのモノだけで暮らす……とかイメージしていたんですけど、いまは“それぞれの生き方で最小限を探している人”だと考えているんです。

ミニマリストの中でも、地方で農業をしている人、家族をもっている人、いろいろな人たちがいます。それぞれ大事なものがあって、それぞれ必要なモノは違いますよね。ですから、それぞれのステージで自分らしく生きるためにモノを減らしていく人たちがミニマリストだと思うんです」

ミニマリストは資格ではないので“ここまでモノを減らしたからミニマリスト”という定義はありません。むしろ、そのようなことに意味はなく「モノを減らしていく中で、自分にとって大切なものを問いかける価値観が肝なのでは」と佐々木さんは話します。実際、佐々木さんは現在、モノを減らすこと自体にはあまり興味がないそうです。

モノから離れて変わった価値観


以前は、モノや収入などがステータスだと思っていた佐々木さん。ミニマリストになって、その価値観が大きく変わってきたといいます。

「モノから離れると、“お金はすごく大事”という気持ちが少し弱まってくるというか……。そうすると価値観が変わってきますよね。選択肢が広がるんです」

佐々木さんは普段、編集者として好きな企画の仕事に携わり、プライベートでは最近ハマっているというキャンプに出かけ、自然と触れ合う時間を大切にしているそうです。

「できるだけ苦手な時間、嫌な時間、つらい時間を減らして、好きなことを楽しむ時間に割りあてたいと考えています」

仕事も「シングルタスク」でミニマムに


ミニマリストの考え方は仕事にも生かされているという佐々木さん。仕事机には、ほぼモノがありません。書類はスキャンでPDFにして、ストレージに保存しておくなどデータ化しているためです。

「以前、机が汚かったときは、モノから『片付いてないよー』と言われているような気がしたり、何かタスクが机の上にあるような気がして仕事に集中できなかったんです。いまは座ると何もないので、パッと仕事に手をつけるのが早くなりましたね」


また、マルチタスクではなく、「シングルタスク」を意識しているという佐々木さん。

「昔は、メールがきたらポップアップで通知設定しておいてすぐ返信、終わったらまたタスクに戻る…みたいなことを意識してましたけど、いまはGmailのアプリはスマホから外してますね。注意力が散漫になってしまうので、メールを確認する時間やスケジュールを決めて、なるべく目の前の仕事に集中するようにしています」

そんな佐々木さんが好きな言葉は、「無駄なことを効率よくやるのが一番非効率」。

「ライフハック的なことっていっぱいあるじゃないですか。でも、それを突き詰めてやっていくことって、実は重要じゃないと思うんです。大事じゃない小さな仕事をうまくこなすと、ちょっと何かできた気になってしまう。“メールの返信が早いだけ”“キーボード打つのが速いだけ”とか……。

だから何が大事か、どの仕事がどれだけインパクトが大きいのかを見極めることが大切。

僕の仕事でいえば、やはり“企画”が大事だと思うので。そこに力を注ぎたい。そういう仕事に対しての価値観も、モノを減らす中で変わっていきました」

小さく暮らして、大きく生きる


高度経済成長期には、家や車などのモノが“幸せ”の象徴でした。しかし、現在は価値観や生き方が多様化し、物質的に豊かなことと幸福は必ずしもイコールではなくなってきました。

“断捨離”の延長のように「モノが少ない」ことに注目されがちですが、大切なことはモノを減らす中で気付く価値観の変化のようです。モノという外的要因を減らすことで、自分の思想という内的欲求に向き合うことができるのでしょう。ミニマリストという生き方には、最小限のモノで最大限に人生を楽しむ…つまり“小さく暮らすことで、大きく生きられる”。そんないまの時代にマッチした生き方のヒントが詰まっているのではないでしょうか。

身の回りにあるモノを最小限にすることで、集中力を最大限に高め、優先すべき仕事に意識的にとりかかることができるのでは。あなたも試しにデスクの上から、“ミニマリスト”整理術を実践してみてはいかがでしょうか?

 

識者プロフィール


佐々木典士(ささき・ふみお)
編集者/中道ミニマリスト
1979年生まれ。香川県出身。学研『BOMB』編集部、INFASパブリケーションズ『STUDIO VOICE』編集部を経て、現在はワニブックス所属。すべてを保存し、何も捨てられない元マキシマリスト。


※この記事は2016/07/25にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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