20代からの老後資産形成 いま始めないと5000万円以上足りなくなる!?

老後のお金のこと、きちんと考えていますか? 20代だと、「いまから老後のことまで考えても」と思ってしまいがちです。

20代からの老後資産形成 いま始めないと5000万円以上足りなくなる!?

老後のお金のこと、きちんと考えていますか? 20代だと、「いまから老後のことまで考えても」と思ってしまいがちです。

でも、今の若い世代は5000万円以上の老後資産を自分で用意することが必要になる場合もあるそう。あとで困らないために、20代のうちから老後のことまでしっかりと見据えることが必要なのです。

そこで、20代のうちから老後資産を貯める必要性とノウハウを、フィデリティ投信株式会社フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史さんに伺いました。

老後資金5800万円を自分で用意しなくちゃいけない?


たとえば60歳で定年退職した後、どれくらいのお金が老後に必要になるのでしょうか?
野尻さんは「個人差があるので一概にはいえませんが、一つの目安としては、退職直前の年収の7割程度が、退職後の1年間ごとの資金として必要だと推定しています」とのこと。
(フィデリティ退職・投資教育研究所による2009年の家計調査の結果を参照)

●退職後に必要になる推定資金(退職直前年収が600万円の人の場合)

退職直前年収の約7割(400万円)が、退職後の1年間毎に必要
↓つまり
60歳から95歳までの35年間で、400万円×35年⇒1億4000万円が必要に

「厚生労働省の『年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)平成23年』によると、年金を受給している方の平均額は男性が179.4万円、女性が94.3万円。つまり夫婦で公的年金を受け取れる金額は、年平均273.7万円です。65歳からの受給を想定すると、30年間で8211万円となり、この例の場合、1億4000万円引く8211万円で、約5800万円不足することになります」

自分で用意しなければならない巨額の老後資金。とても貯めることができない金額に思えてしまいますね。

老後のことを考えたくないからこそ、今から資産形成を


野尻さんは、このように自分で用意することが必要なお金が巨額であるからこそ、20代のうちから意識すれば、少ない努力で資産形成することができると言います。

「よく、『こんなに若いうちから老後のことを考えてどうするの?』という声を聞きます。確かに、20代のうちは、老後のことなんて気にせず、収入から自由にお金を使いたいものですよね。でも、老後のことを普段から考えたくないからこそ、収入に対して、はじめから投資の額を引いてしまい、残りで必要に応じて消費するという方法をおすすめしているんです」

近い将来、苦しい思いをしないためにも、20代から資産形成を始めておくことが大切なのです。では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

給料から投資分を天引きするのが簡単


「まずは考え方を変えましょう。日々節約し、毎月余った額を貯蓄していくのではなく、先ほども紹介したように、収入から投資分をあらかじめ差し引いておき、残りを消費に回すという考え方です。いわゆる、給料から毎月、投資分を天引きしてしまうということです」(野尻さん)

つまり「節約をすることでお金を貯める」のではなく、「毎月の給料から一定額を投資に回す」というのが、最もシンプルでやりやすい方法なのです。

●節約型より積み立て投資型が有効
節 約 型:収入―消費=貯蓄

積立投資型:収入―投資=消費

確定拠出年金とNISAがオススメ


では、投資はどのようなしくみを選べばいいのでしょうか。

「どうせ毎月一定額を投資に回すのなら、使ってほしいのが『確定拠出年金』と『NISA』です。この2つは、どちらも非課税のメリットがあるからです。確定拠出年金では、60歳まで引き出せませんが、掛け金に対して所得税や住民税がかからず投資収益にも課税されません。NISAでは投資収益である譲渡益、配当・分配金が毎年100万円まで5年間非課税になります。これらを賢く使うことが大事です」(野尻さん)

税金のことを知っているかが資産形成できるかに関わる


最後に、野尻さんに20代のビジネスパーソンに向けて、一番伝えたいメッセージをいただきました。

「いろいろなアンケート調査を行っていると、税金の知識を持つことが大切だと感じることがあります。例えば、非課税制度の典型的な例です。確定拠出年金のことを知っている人の方が資産額が多かったり、投資をしている人の比率が高かったりします。ですから、日頃から税金のことにもっと敏感になることが大事です。老後の資産形成がうまくできるかどうかにも関わってきますよ」

もし、税金についてあまり関心がなかった方がいたら、ぜひ興味を持って勉強してみてください。そして定年退職後を幸せに生きるために、賢く資産形成を行いましょう!


識者プロフィール
野尻哲史(のじり・さとし)/フィデリティ退職・投資教育研究所所長。大学を卒業後、国内外の証券会社調査部を経て2006年からフィデリティ投信株式会社に勤務、2007年より現職。各種アンケート調査をもとに投資家動向を分析し、それをもとにした資産運用に関する啓蒙活動を行っている。CMA、証券経済学会・行動経済学会などの会員。著書には『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)、『定年に備えるお金の教科書』(学研パブリッシング)、『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)など多数。

※この記事は2015/03/02にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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