旅人と企業をつなぐ注目の旅人求人サイト 誕生の背景にある思いとは?

旅先での出来事を記事にしたり、写真に収めたりすることで、企業からの報酬を得ながら旅をすることができる……。

旅人と企業をつなぐ注目の旅人求人サイト 誕生の背景にある思いとは?

旅先での出来事を記事にしたり、写真に収めたりすることで、企業からの報酬を得ながら旅をすることができる……。

そんな旅人たちの夢をかなえる旅人求人サイト「SAGOJO(サゴジョー)」は、2016年3月下旬ごろ予定のオープン前から多くの注目を集めています。


いったい、このサービスはどのようにして生まれたのか、また、サービスの誕生によって「旅と仕事」の関係はどう変わっていくと考えているのか、SAGOJOを立ち上げた新拓也さん(編集者)と清水一貴さん(グロースハッカー)に伺います。

能力を生かしながら旅をすることで問題を解決する



--SAGOJOとはどういったサービスなのでしょうか?

新拓也さん(以下新):「旅」を仕事にできる新しい仕組みです。初期は、企業のコンテンツ制作のニーズと旅人のリソースをマッチングしていきます。サービスの登録者は、旅先でコンテンツ制作の仕事をすることで、企業からの報酬として、金銭、物資、チケット(宿泊券・割引券など)といった、旅の出発・継続に必要なリターンを得ながら旅をすることができます。

SAGOJOは企業と旅人をマッチングさせる場を提供するだけでなく、両者の間に入って企画立案から編集まで参加することで、旅人にやりがいのある仕事を用意しつつ、旅人の納品物(コンテンツ)のクオリティーを担保できる仕組みになっています。

SAGOJOの仕組み



つまり、クラウドソーシングとしての場と、より面白いものを生み出すという編集プロダクションの視点を掛け合わせたサービスと考えると分かりやすいかもしれません。長期的には、コンテンツだけでなくさまざまなジャンルの仕事へ広げていきたいと考えています。

--登録者は具体的にどのような仕事ができるのでしょうか。

清水一貴さん(以下清水):たとえば文章を書くことが好きな人は、企業のコンテンツ、オウンドメディアに流すコンテンツの制作などがあると思います。例を挙げれば、世界中のおばあちゃんに取材して、各国のおばあちゃんの生活の知恵を集めて記事にまとめる、といった企画が現在既に進行中です。

文章執筆が好きな人の仕事例



また写真を撮るのが好きな人は、企業の「Facebook投稿用の素材として世界中の写真が欲しい」という要望や、「自社の製品がいろんな絶景や民族に囲まれて写っている写真が欲しい」という要望に応えて撮影を行うという話もあります。

写真撮影が好きな人の仕事例



他にも、映像を撮ることが好きな人に向けた仕事例として、企業から「凱旋門を隅々まで撮影してきて欲しい」といったような資料映像の撮影の相談もありました。そうした場合は映像のアート性よりもしっかり撮るということが大切なので、映像のプロでなくても参加しやすいのではないかと思います。

動画撮影が好きな人の仕事例



新:ライターやカメラマンを本業としていない旅人の場合、編集者の役割・負担は大きくなりますし、時には事業として割に合わない大変さもあるかと思いますが、「旅×仕事」という世界観を実現するためには積極的にそのコストは担っていこうと考えています。

SAGOJOは企業が抱えるコンテンツ制作へのニーズと、旅人が抱えるお金や物資といったニーズ、双方を満たすことにつながりますし、利益が出る・出ないにかかわらず、取り組む価値があることだと思っています。

旅人のアウトプットを通して旅の価値を伝える



--SAGOJOが生まれるまでの経緯についてお聞かせください。

清水:初期の構想は2013年の4月ごろにはありました。ただ当初は、企業からの出資を受けて旅をしたい旅人と、出資をしたい企業のマッチングを想定していて、旅人への仕事の依頼については考えていませんでした。

新:そんななか、僕自身はウェブの編集の仕事をしながらコンテンツ制作のニーズの高まりを感じるようになったのですが、一方で、最近のウェブ上では取材をしなくても書けるような、似たような記事があふれてきていることも感じていました。

たとえば僕は世界の働き方について知りたいと思いますし、そんな記事があったら参考になると思うのですが、これまでは、ライターやカメラマンをおさえて海外に行こうとするとどうしても足代がかかってしまうので、そうした企画の実行は難しいことが多くありました。でも僕自身、旅行好きだったこともあり、旅人のリソースを活用すればそうした企画もできるのではないかなと思ったんです。

そして、それなら出資する企業に旅人が助けてもらうという構図ではなく、きちんと企業とコンテンツ制作者である旅人を対等な立場にし、企業にも明確なメリットを返していけるほうが「旅」の価値が高くなるのではないかと考え、今のコンセプトに至りました。

旅には3つの力がある



--お二人はご自身の旅行経験からどういった旅の価値を発見しましたか?

新:僕たちは旅をすることで得られる3つのことを「旅の力」として定義しているのですが、SAGOJOを通してそれらを伝えたいと思っています。

1つ目は「世界がより身近になる」ということ。たとえば以前パリでテロがありましたが、実際にパリを訪れたことがある人や、パリに友達がいる人にとって、あの事件はすごく自分事として捉えられると思うんです。

そして2つ目が「“みんな違ってみんな良い”を当たり前に捉えられるようになる」ということ。国や文化、人によって考え方は異なるので、たとえばイスラム圏の国の人たちと出会って話すと物事に対する考え方の違いが出てきます。しかし旅を経験することで多様性を受け入れられるようになるため、相手の意見に対して「それは間違っている」ではなく、「あなたはそう思うんだね」とリスペクトできるようになるんです。

最後の3つ目が、人それぞれの違いを感じながらも、同時に「人として共通している部分を感じられるということ」です。以前旅先のイスラム圏の人がとても親切にしてくれたので、「どうしてそんなに優しくしてくれるの?」と尋ねたことがあります。そうしたら「お前の血は何色だ?」と聞き返され、「赤色だよ」と答えたら、「俺も赤色だ。じゃあブラザーじゃないか」と言ってくれたんですよね。人との違いを感じる一方で、人として共通しているコアな部分に触れることができました。

清水:僕も以前はどちらかというと海外の人に対して怖いイメージを抱いていたのですが、語学学習サイトで出会ったタイ人に会いに初めて海外を旅したことで、国は違っても人間は似たようなものなんだと実感しました。

それまでの僕は正直、海外の出来事にあまり関心を持たないタイプでしたが、実際にタイに行って友達ができたことで、タイでクーデターが起きたときに心配になって連絡を取ったんですね。それで自分が変わったことに気付きました。タイを訪れたことで世界の問題を自分事として捉えられるようになったように、旅は世界の問題を解決するきっかけをつくれると思うんです。

旅人の長年の夢と時代の流れがマッチした



--SAGOJOはサイトのオープン前からすでに旅人の登録者が急増していますが、「旅×仕事」にこれほど関心が高まっている理由としてどんなことが考えられますか?

新:働き方がどんどん多様化するなかで自由な働き方を求める人が増え、それによってフリーのライターやカメラマンも増えてきていることは追い風だったと思います。また、自由な働き方に憧れてすでにフリーとして活動してはいたものの、結局いつも同じカフェで仕事をしていたりと、自分の働き方に疑問を抱いていたような人たちに対しても響いたのだと思います。

清水:それから、旅を仕事にすることに対する憧れって、実は長らく旅人の会話のなかで挙がっていたんですね。ただ今までは、それは特定の人にしかできなかったし、それを広げる仕組みもなかった。だからSAGOJOはそうした旅人の夢をかなえられるという点で注目してもらえたんだと思います。

--旅人の夢と、働き方が多様になったこの時代がうまくマッチしたのですね。

新:そうですね。そもそも旅人は自分が世界で得たことをより多くの人に伝えたいという発信欲が高いと思うので、それを仕事にして対価を受け取るという仕組みも相性が良かったのだと思います。

働き方の選択肢を世間に増やし、旅の社会的価値を上げる



--今後、旅と仕事をどのように変えていきたいですか?

新:旅に関しては、もっと社会的な価値を上げていきたいですね。「旅行=遊び・暇な人ができるもの・ドロップアウト」ではなく、「価値を生むもの・キャリア形成につながるもの」という社会の認識をつくりたいと思っています。

旅から帰ってきて再就職したいと思ったときにも、旅の期間が履歴書の空白として扱われるのではなく、その人の強みのひとつとして評価されるようになれば、旅に出ることを周りももっと応援できるようになるのではないかと思います。

あとは、境遇を問わず人が旅をできるようになれたらと思います。以前東南アジアの旅で、とても親切にしてくれた相手に、何気なく「君たちが今度日本に来たときは僕が東京を案内するよ」と言ったら、「俺はお金もないし行けないよ。世界を自由に旅できるお前がうらやましい」と言われ、ショックを受けたことがあります。その経験から、どんな境遇に生まれた人であっても、自分に熱意やスキルがあればそれを発揮して世界を旅できるような社会にできたらいいなと思うようになったんです。

清水:仕事に関しては今後もより多様化していくと思うので、このサービスで“旅人という働き方”を生み出して、働き方の選択肢を広げていけたらと考えています。ベンチャー企業での激務を楽しめる人もいれば、定時で上がって飲んで帰ることに楽しさを感じる人もいる。働き方の楽しさは人それぞれですが、どんな仕事も人生の時間の多くを占めるもの。その仕事を楽しめるものに変えることができれば、人生を豊かにしていけると思っています。

“旅人という働き方”が選択肢のひとつに?


これまで別物として考えられてきた「旅」と「仕事」を結びつけるサービスであるSAGOJO。「自分の好きなことや得意なことをもっと生かしたい」「せっかく世界を旅するならいつもと違った経験をしてみたい」という人にとって、“旅人という働き方”が選択肢のひとつとなる日はそう遠くないのかもしれません。

著者プロフィール
SAGOJO(サゴジョー) 中国の古典「西遊記」で三蔵法師や孫悟空を助けた沙悟浄にちなんで名付けられた「すごい旅人求人サイト」。登録者は旅先でコンテンツ制作の仕事をすることで、企業からの報酬として、金銭、物資、チケット(宿泊券・割引券など)といった、旅の出発・継続に必要なリターンを得ながら旅をすることができる。

※この記事は2016/02/05にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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