不安で心がザワついて治まらないときの「食べる瞑想」のススメ【食べて、こころとからだを整える】

新型コロナウイルス感染に対する恐れに加え、慣れないリモートワークによるイライラや今後の経済面への不安などで、落ち着かない日々が続いています。そうすると、目の前の仕事や家事に集中しにくくなり、心のザワつきは治まりません。そんなときは「マインドフルネス」! 今回は一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事・荻野淳也さんに、「食べること」でできるマインドフルネスの方法を教えていただきました。

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マインドフルネスは「今」に対する注意力を鍛え、集中力を高めるための訓練です。人は普段、過去や未来について絶え間なく考えています。その多くが不安に基づき、私たちはリスクを回避するためにわざわざ先のことを心配したり、過去にしたことを悔やんだりしがちです。すると、次第に「今」への注意が散漫になり、ネガティブな感情に支配されやすくなり、モヤモヤを抱えてしまいます。

荻野さんによると、今は3種類のモヤモヤを抱えている方が多いそうです。

(1)感染に対する恐れ
「新型コロナウイルスに対する不安や恐れです。自分がすでに感染しているのではないか、また家族や友人にうつしたらどうしよう、と落ち着かない状態を過ごしている方は多いでしょう。不安なのでニュースやSNSで情報を集めるものの、集め過ぎてかえって不安を増長させていることもあります」

(2)慣れない仕事環境へのストレス
「慣れないリモートワークや在宅勤務によって、仕事のペースがつかめずに心身ともに疲弊しているケース。自宅で仕事をするためにはセルフマネジメントを高める必要がありますが、それには慣れも必要です。特に子どものいる家庭は、思うように仕事がはかどらずにストレスを抱えがち。また、オンライン会議にもコツがいるので、不慣れなリーダーの下で会議をするとイライラが募り、心が乾いてしまうことも」

(3)先の見えない将来への不安
「新型コロナウイルスによる自粛モードが続くうち、多くの会社が危機的状況を迎えることになります。そうなると『自分の会社は存続できるのか?』『これからも雇ってもらえるのか?』『給与は無事に支払われるのか?』など、先の見えない未来に対する不安が募って、ネガティブな感情に振り回されてしまいます」

この3つが絡み合い、自分が自分ではないような状態で過ごしている人が多いと、荻野さんは言います。

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荻野淳也さん

その人らしさが保てない状況が普通になっている今こそ、マインドフルネスによるセルフマネジメントが必要です。感染や解雇などに対する不安がちらつく気持ちは分かりますが、まだ起こっていないことを心配しても仕方ありません。今の私たちにできるのは、リスクに備えて身を守る準備をしつつ、今やるべきことに集中すること。不安や恐れを抱えたままでは、未来に対する良いアイデアも浮かんでこないし、注意力が散漫になって仕事もはかどりません」

マインドフルネスを訓練すると、私たちは「今、ここ」に生きている感覚が鋭敏になります。その感覚が続くと、考えても仕方のない不安や恐れに苛まれている自分に気付くことができ、ネガティブな感情に支配されることがなくなり、幸せで前向きな気持ちが続くようになります。そのうちに心に余裕が生まれ、自分を適切にマネジメントすることが可能に。目の前にある「やるべきこと」に集中できるようになる上、将来を考えるために必要な発想もできるようになります。

五感をフル活用して「食べる」ことで得られる、振り回されない自分

マインドフルネスというと座禅を組む瞑想を思い浮かべる方は多いのですが、そのやり方は実にさまざま。今回は五感をフル活用しながら“食べる”ことで、心を整える方法をご紹介しましょう。

「私たちは普段『味わっている』つもりでも、無意識のうちに口を動かして食べていることが多いものです。人と話しながら、考え事をしながら、お酒を飲みながら、TVやスマホを見ながら、漫然と箸を口に運んでいませんか? これは衝動に任せて反応しているだけ。自ら、意識的に『食べる』という行為を選択できていない状態です。しかも、満腹中枢が反応する前に衝動的に食べてしまうので、過食にもつながってしまいます。ストレスで過食しがちな方は特に注意です」

食べるときに口だけでなく、目や鼻、耳、手などから伝わる五感をフル活用して、じっくりと料理を味わう方法は「マインドフル・イーティング」と呼ばれます。この状態になると、体の内側から「食べたい!」という欲求が湧き上がり、今のあなたの心と体が本当に欲しているものを、適切な量で食べられるようになります。それは、衝動的な感情に振り回されない自分を養うことにもつながります。

■「マインドフル・イーティング」のやり方

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1:椅子に座骨を立てて座り、背筋をまっすぐに伸ばします。脚は組まず、両足裏をしっかり床につけたら、ゆったりと3回呼吸します。
2:目の前にある料理をじっくり観察し、盛り付けや色合い、食材の数、調理方法などに思いをはせます。
3:最初に口に運ぶものを決めたら、箸やフォークなどで取り上げ、その重さや硬さ、触ったときの感覚、色などを観察します。
4:次に、においをかいでみましょう。自然と食欲が湧いてきたら、口に含みます。すぐに噛まず、舌触りや口の中に広がる味、鼻に抜ける香りを楽しみます。
5:ゆっくりと30回ほど噛みながら、味だけでなく歯ごたえ、食感の変化、噛む音などの変化に集中します。最後に、喉を通過する感覚とともに、一口を終えます。

「マインドフル・イーティングを繰り返すと、いつもの半量くらいで満腹になる人が多いです。体にとって本当に必要な食事量が分かるので、心の状態だけでなく、体の状態も自然と整っていきます。食べている最中は、食べることに集中します。雑念が頭をよぎっても、それを深追いせずに流すこと。時間がないときや慣れないうちは、最初の一口だけでも試すと、心がスッキリと整うのを感じられるはずです」

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なお、マインドフル・イーティングの最中はスマホの電源はOFFに! 着信音が鳴ると瞬間的に手を伸ばしてしまいますが、それではいつまでも「今」に集中できず、心の状態が整いません。自分が持つ集中力すべてを目の前の食べ物に注ぐ気持ちで行ってください。

ずっと家にいて発散できず、不安や恐怖に飲み込まれそうになったり、ソワソワと落ち着かない日が続いたりしたときは、日々の食事を通して心の軸を整えましょう。その癖がつけば、セルフマネジメントできるようになり、自粛モードが解除された後もスッキリとした心で動き出せるはずです。

取材・文=富永明子(サーズデイ)
編集=村田智博(TAPE)

<プロフィール>
荻野淳也
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。外資系コンサルティング会社、ベンチャー企業役員を経て起業。Googleで生まれたリーダーシッププログラムSearch Inside Yourselfの数少ない認定講師で、リーダーや組織の課題解決や変容を支援している。近著に『マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる―脳科学×導入企業のデータが証明!』(かんき出版)などがある。

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