内向的じゃダメなの? 外向的性格にはない内向的性格のメリットと強み

あなたの性格は「内向的」? それとも「外向的」ですか? 最近では、外向的な性格にはない「内向的な性格」の人が持つ優れた特性がクローズアップされています。メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんに内向的な性格のメリットについてうかがいました。

「内向的」とは

人間の性格はいくつかの特性にカテゴライズできますが、中でもよく耳にするのが、「内向的」「外向的」という二つの対極的な性格です。内向的な性格とは大人数でいることよりも少人数を好んだり、ひとりで業務をこなす方が得意だったりする性格のことを指します。一方、社交的で話好き、コミュニケーションをとるのが得意というのが外向的な性格の人です。 

ビジネスにおいては従来、社交性やプレゼンテーション力が重んじられてきたため、そのような場面で活躍するためにも、外向的な性格であることが望ましいと考えられてきました。

もちろん外向的であることも重要ではありますが、近年は、複雑な社会的課題を熟慮して対応する力が求められるようになり、内向的な人が持つ優れた特性もクローズアップされるようになりました。

内向的な人の特徴

内向的な人は短絡的に行動せず、一人でじっくりと思索し、考察することを好みます。一つの事柄に集中し、着実に質の高い仕事をこなすことに喜びを見いだします。派手な自己アピールを好まないため、集団の中で目立つことはありませんが、人の話をじっくり聞き、相手の深い心情や考えを理解することに長けています。

外向的な人の特徴

外向的な人は、一人で考えることに時間をかけるより、まず他者と意見を交換し、活発にディスカッションを重ねていくことに喜びを見いだします。初対面の人が集まる会合にも躊躇なく参加し、積極的に意見を述べ、交流を楽しみます。行動がとてもスピーディーであるため、集団の中で目立ちやすく、素早くイニシアチブをとります。

「内向的」と「外向的」に向いているはたらき方は?

内向的な人も外向的な人もそれぞれに良さがあり、どちらにも優れた面があります。内向的な人は、一人で考えを深める時間を大切にするため、パーソナルスペースが確保されたはたらき方が向いています。外向的な人は、話し合いを重ねながら仕事を進めていくことを好むため、チームのメンバーや顧客と頻繁に顔を合わせるはたらき方が向いています。

両向的な性格とは

内向的と外向的の両方の特性をバランスよく兼ね備えた人は、「両向的」な性格の持ち主と呼ばれています。普段は一人でじっくり仕事に集中し、社交的な場面でも自ら人に語りかけ、交流を楽しめる人。営業やプレゼンテーションをバリバリとこなしながらも、デスクワークを丁寧に進められる人。このように、内向的と外向的の両方の良い特性を兼ね備えていると、ビジネスでの活躍の幅が格段に広がります。

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内向的な人の4つの強み・メリット

内向的な人には、ビジネスを進めるうえで優れた特性があります。中でも次の4つの特性は、内向的な人が持つ素晴らしい資質と言えるでしょう。それぞれの特性について解説します。

1.集中力を発揮し、質の高い成果を出せる

内向的な人は新しい事柄を次々にさばいていくより、一つのことに没頭し、深く考えながら遂行することに向いています。そのため、頭角を現すまで時間がかかりますが、集中してじっくりと職務にあたるため、質の高い成果を出すことができます。中途半端なクオリティに甘んじることを好まないため、納得のいくレベルの成果が出るまで、粘り強く取り組みます。

2.傾聴力に長けたリーダーになれる

部下の気持ちに寄り添い、意見を引き出すタイプのリーダーになれるのが、内向的な人です。それは、人の話をしっかり傾聴するためです。話をじっくり聞きながら、相手が何に困り、どんなサポートを期待しているのか見いだそうとします。また、サポート役に徹することができるため、部下が主体性を持ちやすくなります。そのため、職場の雰囲気が良くなり、部下が意見を述べやすくなります。

3.冷静な判断でリスクを回避できる

「動く」より先に「考える」のが、内向的な人の特徴です。失敗する危険性の高いことには安易に手を出さず、メリットとデメリットを慎重に検討し、冷静に判断することができます。リスクについても十分に想定し、リスクを冒してまで挑戦する価値のあるテーマかどうか、熟慮したうえで結論を出そうとします。

4.多角的な視点と洞察力で複雑な問題解決ができる

内向的な人は、一つの物事を多角的な方向から検討しています。そのため場の雰囲気に流されることなく、必要性や将来性、コストパフォーマンス等を十分に考慮したうえで、複雑な課題の問題の解決方法を検討していきます。また、相手の言葉の奥にある感情や意図を深く観察し、洞察するため、表面的な営業トークや褒め言葉をうのみにせず、慎重に判断していきます。

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内向的な性格は直すべき?

ITが飛躍的に発展する前のビジネスの場は、情報のスピードがさほど速くはなく、未来をある程度予測することが可能でした。だからこそチームワークが重視され、人とつながる力に長けた外向的な人が評価されていたのです。

そのため、内向的な人は外向的な人を見習って、社交性を伸ばすことを求められ、そのプレッシャーが内向的な人の創造性を阻害する原因にもなってきたと考えられます。

しかし本来、必ずしも外向的であることだけが良いことであると言い切れず、前述したように、内向的な人には外向的な人にはない強みがあります。内向的な性格を直すのではなく、活かしていく方が、ビジネスにおいてはたくさんのメリットがあると、昨今では注目され始めています。

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内向的な人に勧めたい本から学ぶ「内向的性格の活かし方」

内向的な性格がクローズアップされるようになった直接的な背景の一つに、二つの書籍の存在があります。一つは2012年にアメリカのスーザン・ケインが出版した書籍『Quiet』(邦題『内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法』/古草秀子訳/講談社)です。

そしてもう一つは、2018年に台湾のジル・チャンが出版した書籍『安静是種超能力』(邦題『「静かな人」の戦略書』/神崎朗子訳/ダイヤモンド社)です。これらの書籍の出版により、2010年代から内向的な人の持つ優れた能力が世界中で注目されるようになりました。次に、これら2冊の書籍の内容に触れながら、内向的性格の活かし方について紹介します。

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内向的性格の活かし方:『「静かな人」の戦略書』より

台湾で2018年に出版され、第23回フォワード・インディーズ「ブック・オブ・ザ・イヤー」特別賞を受賞するなど、世界中で話題を呼んでいます。著者はアメリカのプロスポーツ界、州政府、国際機関など、国際的な場で活躍をしています。

本書では、外向的な性格の人が評価されやすいビジネスの場において、内向的な性格特性を活かして活動の幅を広げるための「戦略」について具体的に指南しています。本書の中から、特にビジネスの実践面で参考にしたいポイントを三つ紹介します。

外向型の真似をせず、内向型らしさを活かしてはたらく

内向的な人は、外向型のワークスタイルを真似する必要はなく、内向型ならではの優れた特性を「戦略的」に活かしていくことが重要であることを本書では説明しています。

内向型には「あらゆる側面を考慮してから行動に出る」「話すよりも聞くほうが多い」「外的刺激をあまり必要としない」「広く浅くよりも、深く狭く」「ひとりでする仕事が好きで、向いている」といった優れた特性があり、まずはその特性を自己理解することが重要です。

その特性を活かして仕事に取り組むと、良い仕事の成果につながっていくということです。

仕事を通じてストレスにならない人間関係を楽しむ

「ちょっとした雑談」や「おしゃべり」に疲れを感じてしまうのが、内向的な人。とはいえ、内向的な人は傾聴力が高く、気の合う人とじっくりと会話し、深い付き合いをすることに長けていると本書では伝えています。そのため、仕事を通じて「本物の友人」をつくることができるということです。

人間関係を通じてトラブルが生じたときには、「気持ちを落ち着けるための時間を取る」「思いやりをもって相手の話を聞く」「コミュニケーションのチャンスにする」「引きずらない」といった「戦略」を試みることで、人間関係のトラブルに対応することができます。

内向的な性格を生かしたチームづくりとリーダーシップ

「スタープレイヤー」と呼ばれる外向型ばかりを集めず、内向型と外向型を組み合わせてチームをつくれば、「最強のチーム」ができると本書では伝えています。

内向的な人は、「謙虚さ」や「堅実な貢献」で着実に仕事をこなすため、チームにとって不可欠な存在になれるということです。強いカリスマ性はないものの、「傾聴」と「戦略的思考」の能力に恵まれた内向的な人こそ、リーダーに向いていると著者は説明しています。

内向型のリーダーの一例として、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットなどの優れた実業家が紹介されています。

『「静かな人」の戦略書』
著者:ジル・チャン、翻訳:神崎朗子
出版社:ダイヤモンド社
発行年:2022年

 

内向的性格の特性と意識したいこと:『内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法』より

2012年にアメリカで出版されて以来、すでに40言語に翻訳され、アメリカではベストセラーとなっています。本書では、内向的な人の優れた能力と可能性について、心理学、脳科学など数々の科学的根拠をもとに解説しつつ、ビジネスにおける実態の取材、専門家へのインタビューを織り交ぜながら、説得力を持って説明しています。

「内向型人間」である著者自身が弁護士として活動してきた経緯から、内向的な人が低く評価され過ぎている現状について疑問を感じ、内向型の能力がいかにビジネスに貢献しているか、深い考察をもとに論じています。本書の中から、特にビジネスの実践面で参考にしたいポイントを三つ紹介します。

「新集団思考」に内向型の才能をつぶされないようにする

チームワークを優先し、社交性から創造性や知的業績が生み出されるとする考え方を本書では「新集団思考」と呼び、本書ではこの考え方が内向型の才能を阻害していると警鐘を鳴らしています。

内向型人間は、じっくり思索しながら自分のペースで仕事を進めるワークスタイルが向いており、そのため著者は「孤独は革新の触媒となりうる」と論じています。内向型人間が創造性を発揮するためにも、一人になれる時間と場所を確保したはたらき方が認められるべきだということです。

内向型は「フロー」の状態に入ることで仕事をとても楽しく感じる

内向型人間が仕事に求めているものは、成果によって得られる「報酬」への期待ではなく、仕事という行動そのものへの「集中」であるということを本書では説明しています。その根拠として、ミハイ・チクセントミハイによる「フロー理論」が紹介されています。

フロー状態になれる、すなわち時を忘れて集中できる仕事に取り組めるようになるために、著者は「いつも自分らしくしていよう」と提案しています。周囲への競争心に気を取られないようにし、「ゆっくりとしたペースで着実に」物事を進めていくことが重要だということです。

「コア・パーソナル・プロジェクト」に取り組んで性格特性を超える

内向型人間にも、ときに外向的に振る舞わなければならない場面があります。無理をせずに外向的になるには、「自分にとって重要な事柄」に取り組むことが必要だと本書では説明されています。

その根拠として、著者はブライアン・リトルが提唱した「自由特性理論」における「コア・パーソナル・プロジェクト」に取り組むことの重要性を指摘しています。コア・パーソナル・プロジェクトを見つける方法として、著者は「子供の頃に大好きだったことを思い返してみる」「自分がどんな仕事に興味があるか考えてみる」「自分がなにをうらやましいと感じるか注意してみる」という3つのステップを踏むことを提案しています。

『内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法』
著者:スーザン・ケイン、翻訳:古草秀子
出版社:講談社
発行年:2020年

 

内向的な人も外向的な人も、自他の個性を認めて活かし合おう

内向的な性格は、従来ネガティブな捉え方をされることが多かったですが、上記でお伝えしたように、近年その性格の持つパワーが注目されるようになってきました。内向的な人も外向的な人も、まずは自分の個性を認めてその個性をビジネスに活かしていきましょう。自分とは異なる個性を持つ人の力も認め、互いに欠けている部分を補い合い、互いの強みを参考にしながら協力して仕事を進めていきましょう。

【プロフィール】
大美賀 直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持つ。「こころと人生と人間関係のベストバランス」をテーマに、カウンセリング、講演、執筆活動を行う。働く人のメンタルケアに関する造詣も深く、テレビ、新聞、雑誌、インターネットを中心に情報を発信。企業研修でも好評を得ている。『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』『サイボーグを目指さないことにした働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『どうして会社に行くのが嫌なのか?』(アスキー新書)などの仕事に関する著書も出版。
大美賀直子|メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 – 大美賀直子(メンタルケア・コンサルタント)の公式HP (mentalcare555.com)

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