仕事でキャパオーバー…危ないサインに気付き適切な対処をしよう!

業務をスムーズに進めるうえでキャパオーバーにならないようにすることは、仕事におけるとても重要なセルフマネジメントです。キャパオーバーに陥りやすい状態とそのサインや原因に気づき、対処法と予防法を押さえておくことで、キャパオーバーのリスクを上手に軽減していきましょう。

キャパオーバーってどんな状態?

キャパオーバー(キャパシティオーバー)とは、ある物事に対処する際に自分の心身のキャパシティ(許容量、許容範囲)を超えてしまう状態のことを指します。受けている業務量が多過ぎて時間内に終わらない状態、仕事の内容が精神的に負担となり情緒が保てない状態の2種類に分かれます。

受けている業務が時間内に終わらない状態

業務量が多すぎていくら頑張っても時間内に終わりそうもない状態になると、キャパオーバーになってしまいます。この状況では十分な休息もとれずに業務を遂行せねばならず、一人の力では対処不可能になります。そのため疲労は確実に蓄積し、心身の健康がむしばまれてしまいます。睡眠リズムも乱れやすくなるため、疲れを翌日に持ち越しやすくなってしまいます。

精神的に負担がかかり情緒が保てない状態

取り組んでいる業務が自分の適性に合わなかったり、業務の内容にまったく関心を持てなかったりすると、その業務に嫌気が差し、仕事を続けていく気力が湧かなくなってしまいます。この状態のまま仕事を続けると、ストレスが蓄積し過ぎてしまい、胃痛や吐き気、頭痛や腹痛などの身体症状が生じることもあります。それでも我慢して続けていくと、適応障害などの精神疾患の発症につながってしまうこともあります。

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キャパオーバーになっている時のサイン

業務量が多過ぎて対応しきれない場合、あるいは業務の内容により精神的に負担が大きく対応しにくくなっている場合には、心身のキャパシティを超えてしまいます。すると下記の三つのサインが現れますが、これらのサインに気づいたら、できるだけ早く自分が置かれている状況を振り返ってみましょう。

仕事が終わらず残業時間が増える

残業が常態化しているのは、業務量が多過ぎてキャパオーバーになる状態の最も重要なサインです。長時間の残業が続くと、睡眠時間や睡眠の質に影響が表れ、疲れを翌朝に持ち越すようになります。すると、翌日の仕事のパフォーマンスが低下するため、定時までに仕事が終わらず、毎日のように残業が続いてしまうという悪循環に陥りやすくなります。

ミスが増える

精神的な負担が重すぎてキャパオーバーになると、過剰なストレスによって注意が散漫になり、ミスが目立つようになります。期日を忘れたり、書類の不備が増えたり、計算間違いが生じたりというように、うっかりミスが増えてしまいます。軽微なミスであれば、すぐに修正して挽回することができますが、気づかずにいると重大なミスに発展し、周囲の人に多大な迷惑をかけてしまいます。

すぐにイライラしたり情緒不安定になる

気持ちが落ち着かず、ちょっとしたことにイライラしたり情緒不安定になるのは、業務量が多過ぎる状態、精神的な負担が重過ぎる状態のいずれにも当てはまるサインです。業務量が多過ぎる状態の場合、目標を達成できないことからいら立ちが募りやすく、ついイライラを人や物にぶつけてしまうことがあります。精神的負担が重すぎる場合、仕事が嫌でたまらないという思いから、憂鬱(ゆううつ)な気分になることがあります。

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キャパオーバーになってしまう原因

キャパオーバーになってしまう原因はいくつもありますが、特に業務量の見積もりができずに引き受けてしまう、NOと言えずに上手に断れなくなっている、ストレスが多過ぎて精神的に余裕がなくなっているという三つの原因は、ぜひ把握しておきたいポイントです。具体的にみていきましょう。

原因①業務量の見積もりができていない

決められた期間のなかで自分がどれだけの量の仕事をこなせるのかが分からず、頼まれた仕事を次々に引き受けていると、キャパオーバーになってしまいます。また、業務の工程や作業スケジュールをきちんと検討せず、受け取った仕事から行き当たりばったりに進めていたり、一つの仕事にかかりきりになり、他の仕事を同時進行で進めていくことができない状態が続くと、業務量は一向に減らずキャパオーバーな状態がいつまでも続いてしまいます。

原因②NOと言えない

キャパオーバーを自覚しているのに、その状況を上司や取引先に相談せず、言われるままに仕事を引き受けていると、いまよりもさらにキャパオーバーが進んでしまいます。相談できないのは「業務遂行能力が低い」と評価されるのを恐れているせいかもしれません。あるいは「上司の指示は絶対だ」という思い込みが「NO」と言えない原因になっている可能性もあります。

原因③精神的に余裕がない

担当している仕事が性に合わなかったり、業務内容に関心が持てなかったりすると、その仕事に対しポジティブな気持ちになれず、アイデアが浮かびにくくなってしまいます。また、職場の人間関係がストレスになっている場合にも精神的な余裕がなくなってしまうため、キャパオーバーになりやすくなります。その他、プライベートで心配事やストレスを抱えていると、目の前の業務に集中しにくくなるため、精神的にキャパオーバーになってしまうこともあります。

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キャパオーバーになった時の対処法

自分の限界を感じキャパオーバーになった時には、無理をしてそのまま突き進まないことが肝心です。遂行中の業務を振り返って優先順位をつけてみたり、周りの人に相談して一人で抱えないようにしたり、あえて休むことで心のゆとりを作ってみたりすることが必要です。具体的なやり方を把握しておきましょう。

自分の業務を細かく因数分解し優先順位を整理する

現在抱えている業務を細かく分類し、整理してみましょう。以下のように3段階に優先度を分けることが大切です。

(1)優先度が高くすぐに終わらせるべきもの
(2)できるだけ早めに進めたほうがよいもの
(3)当面は手をつけなくても大丈夫なもの

いま抱えている仕事が上記のどのカテゴリに入るのかを検討してみましょう。整理してみることで、優先度が高くすぐに終わらせなくては、と思っていた業務の中にも、いますぐに手をつける必要がないものがあることに気づけることがあります。そうすることで、実はキャパオーバーだというのが思い込みだった、ということもあるかもしれません。

上司や同僚に相談し、業務を分散する

キャパオーバーなのに我慢して続けて疲弊し、パフォーマンスが低下していくより、「これ以上できそうもない」と感じた段階で相談したほうが、周囲に迷惑をかけるリスクを減らすことができます。上司や同僚に相談できれば、締め切りを伸ばしてもらえたり、協力を得られたりするチャンスが増えていくものです。一人で抱え込むことによって、結果的に周囲に迷惑をかけてしまうより、相談することによって合理的に業務を遂行する方法を探っていくほうが、自分にも周囲にもメリットが大きくなります。

意識的に休暇をとる

キャパオーバーを感じると過剰に焦り、無理に頑張ろうとしてしまう人は多いものです。しかし、その焦りによって業務のミスが多発すると、さらにキャパオーバーが進んでしまいます。したがって、キャパオーバーを感じたときにこそ、あえて「休む」ことが必要です。「早く進めておきたい」という思いがあっても、休日には1日ゆっくり休んでみましょう。しっかり休むと心のゆとりができ、合理的な解決策を考える余地が生まれます。すると、キャパオーバーを解決しやすくなるでしょう。

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キャパオーバーにならないようにするには?

キャパオーバーは小さな工夫を積み重ねることによって、できる限り未然に防いでいくことが重要です。そのためには、一つの作業にかかる時間を把握しておくこと、自分のタスク量を周囲と共有しておくこと、無理をして新たな仕事を引き受けないことが必要になります。それぞれどのように取り組めばよいか具体的に理解しておきましょう。

一つの作業に対してどれぐらい時間を要するか把握しておく

すぐにキャパオーバーになってしまう場合、一つ一つの作業にかかる時間を把握しきれていないことが原因となっているのかもしれません。慣れない仕事を引き受ける場合、想定しているより長い時間を要してしまうことがあります。また、たくさんの仕事を同時進行している場合、そもそも業務遂行にかかる時間を長めに設定しておくことが必要です。自分が一つの作業をどのくらいの時間でできるのか、業務の種類ごとに大まかに把握しておくことが大切です。

自分がいま持っているタスク量を周囲も把握できる工夫をする

たくさんの仕事が舞い込み、キャパオーバーになっている場合、自分のタスク量を周りの人と共有できていない可能性があります。オンラインのカレンダーやタスク管理のアプリを活用して、職場のメンバー間で遂行中の業務を閲覧しあえる状態にしておきましょう。すると、忙しいときに次々に仕事が舞い込むような事態を防ぐことができますし、手が空いている人を把握することができるため、業務をサポートしてくれそうな人を見つけることもできるでしょう。

余裕がない場合は無理に新たな仕事を受けない

「これ以上引き受けたらキャパオーバーになる」そう思ったときには「断る勇気」も必要です。ただし、断る際には一方的に拒絶するのではなく、代案を用意しておくことが大切です。忙しい自分の状況を説明し、仕事が片付いた段階で新しい仕事に参画することを約束したり、補佐役としての協力を提案したり、キャパオーバーにならない範囲でできることを伝えていくと、協力的かつ前向きな気持ちで業務にあたることができます。

まとめ

キャパオーバーは誰にでも起こり得る現象です。キャパオーバーになった時の自分を想定し、そうならないための心の準備を行っておくことが大切です。また、キャパオーバーになってしまった時に落ち着いて行動できるよう、対処法も把握しておくことが必要です。上記でお伝えしたポイントを参考にしながら、自分の心身に過度な負担がかからないようにマネジメントしていきましょう。

【プロフィール】
大美賀 直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持つ。「こころと人生と人間関係のベストバランス」をテーマに、カウンセリング、講演、執筆活動を行う。働く人のメンタルケアに関する造詣も深く、テレビ、新聞、雑誌、インターネットを中心に情報を発信。企業研修でも好評を得ている。『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』『サイボーグを目指さないことにした働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『どうして会社に行くのが嫌なのか?』(アスキー新書)などの仕事に関する著書も出版。
大美賀直子|メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 - 大美賀直子(メンタルケア・コンサルタント)の公式HP (mentalcare555.com)

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