人はどうして「不安」になるの? 正体不明な「不安」について学ぼう【リニューアル2020〈1〉】

新年度は、環境が新しく変わる人や、変わらずとも「何か新しいことを始めよう」と考える人が多い時期。期待に胸を膨らませている人も多いはず。ただ、中には不安を覚えてしまう人も少なくありません。「新しい環境でやっていけるのだろうか……」「自分は変わらず、このままでいいのか……」と。そんな不安を解消し、新年度を快適に過ごすには、まず不安について知ることが大切です。ここでは、心理学・コミュニケーション学の専門家で、早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師の晴香葉子先生に「人はなぜ不安を抱くのか?」をテーマに、不安の正体について教えていただきました。

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そもそも不安とは?

人は、様々な場面で不安と向き合います。学生時代であれば受験勉強、社会人であれば大きなプレゼンや新しい分野へ挑戦するときなどが、最たる例でしょう。そんな不安の正体を分解してみると……。

・多くの人が人生の中で何度も体験する日常的な現象
・自分を脅かす事柄がきっかけで、心配や恐怖、気味の悪さなどを感じ苦悶すること
・ネガティブな状況だけではなく、幸せな状況、未知への期待からも感じてしまうもの

また、不安は「一過性で原因が明確なタイプ」と「ある程度持続的で原因が曖昧なタイプ」の二種類に分かれます。

例えば「乗り物酔いをするがバスに乗らないといけない」という状況から生まれる不安は、「一過性で不安の原因が明確なタイプ」です。「乗り物に酔いやすい」という原因が明確で、かつバスに乗る行為自体が一過性と捉えられるためです。

一方、「このままでいいのかな」「なんとなく」といった不安は、「ある程度持続的で不安の原因が曖昧なタイプ」です。具体的な原因については不明なものの、未来予測的な心配が、不安感情を引き起こすためです。

では、新年度に対する不安は、どちらに当てはまるのでしょうか。

一見、「先が見えない不安」から「ある程度持続的で不安の原因が曖昧なタイプ」と捉えられるかもしれません。しかし、「初対面が苦手」「新しいことを始めるのが苦手」「早起きが苦手」といった原因が明確な事例も挙げられます。そのため、どちらの要素も絡んでいると考えられるのです。

ちなみに不安は、個人差はありますが、「ミスを恐れない」「楽観的」な人よりは、「慎重でミスを避ける」「完璧主義」な人のほうが、強く感じやすい傾向にあります。

自分が「変わっていない」ことへの不安を覚えるのはなぜ?

「環境が変わることへの不安」を覚える人がいる一方、「変わらないことへの不安」を覚える人もいます。

日本は、偏差値教育が普及した競争社会という面があり、人と比べて「変わらない自分は劣っている」という思想や状況を生みやすい社会。そのため、「変わらない自分」が強い不安感へと結びついてしまうこともあるのです。

一つ、例を挙げてみましょう。例えば、会社に同じくらいの営業成績でありながらも、自分を成長させたいと努力している人と、今のままでいいと考えている人がいたとします。

前者は日々自分を成長させる努力を重ね、営業成績を倍以上に伸ばしました。後者の成績はそう悪くはないとしても変わらずです。すると、当初は「今のままでもいいや」と思っていた後者も「あの人と比べて、自分はこのままでいいのかな……」と不安を感じるようになってしまうのです。

このように、人が他者と比べて「変わっていない」ことへの不安を覚えてしまうのは、日本に競争社会という面があり、人と比べる状況を生みやすいということも一因となっています。

不安を覚えることは悪いことではない

一見、不安を覚えることは悪いことだと思うかもしれません。しかし、不安は人間にとって重要な感情で、既知の危険を回避することや、将来起こり得る問題に備えることなどに役立っています。つまり決して悪いことではなく、むしろ私たちの人生や社会生活にプラスに働いているのです。

ただ、プラスに働くのは日常的にある程度の不安を覚えている場合のみ。

個人差はあるものの、頻繁に不安を覚えたり、コントロールができないほど強い不安に襲われたりする場合は、「動悸」「めまい」「頭痛」「胸痛」「食欲不振」「不眠」「消化不良」といった様々な体調不良につながる恐れがあります。ときには、行動面や心理的な面に障害をもたらす「不安障害」にまで発展することもあるため、注意が必要です。

不安は誰でも経験する現象で、決して悪いことではない。不安の正体をこう捉え、あまり自分を追い込まないようにしましょう。

文=トヤカン
編集=五十嵐 大+TAPE

【監修】
晴香葉子●作家、心理学・コミュニケーション学の研究者。企業での就労経験を経て心理学の道へ。研究を続けながら、さまざまな角度から情報を提供。執筆、講演、監修などの活動を続けている。

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