コミュ障は治る?コミュ障の特徴と克服する方法を解説

「コミュ障」という言葉をよく耳にしますが、コミュ障にはどんな特徴があるのでしょうか。また「コミュニケーション障害」とはどういった違いがあるのでしょうか。コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんにお伺いしました。

コミュ障とは?

自分がうまく話せなかった時につい「コミュ障なんで」と自虐してしまう場面があるかと思います。今回は話すこと・聞くことなどコミュニケーションが苦手な人に対して使われる「コミュ障」という言葉について解説します。

コミュニケーション障害とコミュ障の違いとは?

医学的根拠をもとに判断される精神疾患の「コミュニケーション障害」と、一般的に「会話下手」を指してカジュアルに使われる「コミュ障」。響きは似ているものの、両者には大きな違いがあります。

会話の中などでよく聞く「コミュ障」は、病気ではありません。会話下手という意味合いで、主にカジュアルな会話の中で使われる表現です。しかし、直感的にコミュニケーション障害の略だと感じて病気だと思っている人もいます。医学的根拠に基づいて判断される「コミュニケーション症群 / コミュニケーション障害群」とも響きが似ているので、混同して精神疾患だと思ってしまっている人もいます。

医学的な意味のコミュニケーション障害とは

「コミュ障」と響きは似ていますが、まったく違う疾患である「コミュニケーション症群 / コミュニケーション障害群」はあります。日本の精神疾患の診断基準として広く使われている精神疾患の国際診断基準であるDSM-5では、言葉を使うことに対して障害が発生する複数の疾患の総称である「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群」を指すもの、と定義されています。その疾患は、「言語症」「語音症」「小児期発症流ちょう症(吃音)」「社会的(語用論的)コミュニケーション症」「特定不能のコミュニケーション症群」の5つに分類されています。

コミュ障とは

一方「コミュ障」には深い意味はなく、比較的カジュアルに使われる表現です。そういった場合はネガティブなイメージの表現というよりは、会話が続かないような場で空気を和らげたいときや、話し方について謙遜して伝えるときなどにも使われる表現だと考えてよいでしょう。

会話下手なことをカジュアルに伝える時に使われることもあるため、好意的に受け止める人もいます。その一方で、からかわれているなど否定的に感じてしまう人もいるので注意が必要です。

「対人恐怖症」や「あがり症」とは違うの?

「コミュ障」と聞くと、対人恐怖症やあがり症の人を思い浮かべる人もいるかもしれません。こちらもまた「コミュ障」とは異なるので、その違いについて確認しておきましょう。

「対人恐怖症」は医学的には「社交不安障害」と言われる疾患で、人と話す場面や人前で何かをするときに不安を感じ、発汗・赤面・手足のしびれ・声が出せなくなるといった身体的症状がでるのが特徴です。社交不安障害は、「あがり症」と言われることもあり、特に人前で何か発表するといったシーンでの不快症状を指して使われるのが一般的です。

「コミュ症」と「コミュ障」の違い

また「コミュ“障”」と「コミュ“症”」との違いは、コンプレックスの有り無しであるという説や、程度の重さの違いであるという説、医学的根拠のある疾患であるかどうかという説などがあります。

そもそもネット発のスラング的に広まった表現であるといわれる「コミュ障(症)」。ネット上で使われている文を収集してみたところ、違いを押さえて使われているケースはまれで、単に会話が苦手だということを指してカジュアルに使われているケースがほとんどでした。このことから両者の違いは、今のところ「変換の好み」であり、意味的に大きな違いはないと思ってよいでしょう。

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コミュ障のタイプは大きく2種類に分かれる

筆者は、会話が苦手な人を「コミュ障」と呼ぶことに違和感を抱いています。会話は滑らかであるのが素晴らしいわけではありません。自分の話ばかりして人との会話のキャッチボールができない人もコミュ障といえるでしょう。

コミュ障のタイプ①自己主張が苦手なコミュ障

一般的に使われる「コミュ障」はこのタイプです。知らない人や初対面の人と話すことはもちろん、友人と話す時でも積極的に発言するのが苦手です。会話は基本的に受動的で、質問されたことには答えてくれますが、回答は短めです。

余計なことは話さない傾向があるので「暗い」「冷たい」といった印象を受けることがあるかもしれません。会話が苦手なせいで説明不足になってしまうこともあるので、発言内容を誤解されてしまうこともあります。

自分から質問することや、話題を振ることが苦手な性格は、会話の相手が「興味がないのかな」と思いやすいものです。そのため仲良くしたくないのだと勘違いされてしまうこともあります。

コミュ障のタイプ②自己主張が強いコミュ障

自分の話ばかりして人の話を聞けない人や、自分の意見をごり押しするのが癖になっているような人も、「スムーズなコミュニケーションがとれない」という意味ではコミュ障と言えるでしょう。会話量のバランスをとれないのが特徴で、発言が少ない人がいても気にすることなく、自分の好きな話や自慢話を続けがちです。

自分から話題を振って主体的に話すのが得意なタイプです。場面によっては「社交的」「リーダーシップがある」などポジティブな印象を持たれることもあります。一方で人の話を聞くのが下手という特性のために「人を大事にしない」「自分勝手」と誤解されてしまうこともあります。

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自己主張が苦手なコミュ障の克服方法

1. 聞き上手を目指す

コミュニケーションスタイルを変えようとして、無理にたくさん話すよりも「この人と話していると心地いい」と思われるような人を目指しましょう。無理なくデメリットをメリットに変えることができます。

2. 質問に答えた後は自分も質問をする

主体的に話せないのは変えなくても大丈夫。相手からの質問に答えた後に、何か相手にも質問をしてみましょう。質問が思い浮かばない時には「〇〇さんはどうですか?」というセンテンスを使ってみてください。会話が続きます。

3. 相づちリアクションを増やす

「そうなんですね」「さすがですね」といった相づちのほか「すごい!」「面白そう!」などリアクションを増やしてみましょう。自分が話さなくても、会話にしっかり入っているような印象を持たれます。好感度も上がるのでお勧めです。

4. 相づちが難しい人はうなずきを使う

相づちやリアクションも苦手だという人はうなずきを意識して使いましょう。面白い話の時は軽めのうなずきを多めに、深刻な話の時はゆっくりとしたうなずきを少なめに使います。相手に話を聞いていること、話しに興味があることを伝えられます。

自分の意見はあるのに、突然話を振られるとうまく話せない。流ちょうに話せるようになりたい

自己主張が強いコミュ障の克服方法

1. 印象がマイルドになる話し方を心がける

コミュニケーションスタイルを無理に変えようとするよりも、今の話し方で持たれる印象を少しマイルドにしてくれるテクニックを取り入れましょう。話し過ぎのデメリットをメリットに変えることができます。

2. 話者交替のタイミングに気をつける

発言をする人が変わることを「話者交替」といいます。食い気味に話しだしてしまうと、相手の話に割り込んだ印象になってしまうので、話者交替のタイミングに気をつけましょう。最後までしっかり話を聞き、一拍置いてから話し出せばOKです。

3. 発言は短くして質問で終える

自分の話はなるべく短く切り上げるように気をつけます。相手との会話量のバランスをとれない人でも、発言の最後を質問にすることでバランスの悪さを改善できるようになります。相手に話を振ることに慣れましょう。

4. 否定の言葉を使わない

話す量が多くても、否定の言葉を使わないようにすると主張が強い人という印象をマイルドにできます。「それは違うよ」といった否定の言葉を使いたくなった時には、代わりに「そんな考えもあるんだね」を使ってみてください。

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コミュニケーションが苦手な人と上手に仕事を進める方法

オンライン化が進んだこともあり、対面でのコミュニケーションが苦手だと感じる人は増える傾向にあります。そんな人たちと仕事をする上でどんな点に気をつければよいのでしょうか。この機会に確認しておきましょう。

自己主張が苦手なコミュ障の人との接し方

積極的に話すのが苦手な人と仕事をする場合には「確認」がポイントになります。嫌なことがあってものみ込んでしまったり、スケジュールの調整が難しいなど仕事に影響が出そうな場合でも、なかなか自分からは言い出せないことを頭に入れておきましょう。

確認する時のポイントは、まとめて聞かないこと。打ち合わせが終わった後に「大丈夫ですか?」と一括で聞くのはNGです。期日の話など、ひとつのトピックごとに確認するのがよいでしょう。

コミュニケーションが苦手な人は、天気の話といった雑談をどのように返していいか迷いがちです。雑談は仕事に関することや、相手が答えやすい内容を質問形式でするのがよいでしょう。

質問する時には「はい」か「いいえ」で答えられるようなクローズクエスチョンといわれる聞き方から始めるのがお勧めです。その後で「ほかにも抱えている案件はありますか?」など、相手が自分の言葉で話さなければならないオープンクエスチョンで聞くようにすると、スムーズに話しやすくなります。

自己主張が強いコミュ障の人との接し方

自己主張が強い人と仕事をする場合には、疲弊しないよう自分の気持ちを守りながら接するのがポイントになります。長々と話されると自身の負担になりますので、雑談が長くなりそうな時には相づちを少なめにしましょう。それでも長くなってしまう場合には「急ぎの用事があるのでそろそろ失礼します」など、途中で失礼するためのセンテンスを事前に考えておくとよいでしょう。

意見のごり押しをされることに備えて、流されないようにあらかじめ返答を準備しておくのも大切です。基本的な対応としては「持ち帰って上司と検討します」など、その場で返事をしないことが一番。決定を迫られてしまった場合には「私の一存では決められないので」など、決裁権がないことを伝えてみてください。

それでも決断を迫られたときには「無理に決めてしまうと、逆にご迷惑をおかけしてしまうことになりますので」といった断り文句を使ってみてください。「逆にご迷惑をおかけしてしまうので」というセンテンスは様々なシーンで活用できますので、イザという時に覚えておくと便利です。

コミュニケーションタイプを知ってできることから始めよう

ここまで、「コミュ障」のそれぞれの特徴や克服方法について触れてきました。あまり話さないことも、話しすぎてしまうことも「コミュ障」という意味では、同義で語られる傾向があるので、自分がどっちのタイプなのか見極めることができればスムーズなコミュニケーションへの第一歩になるでしょう。

【プロフィール】
藤田尚弓(ふじた なおみ)
株式会社アップウェブ代表取締役、コミュニケーション研究家、コラムニスト。さまざまな領域に散見するコミュニケーション研究の調査整理、アウトリーチ活動を行う。また、テレビ出演・監修、雑誌などへのコンテンツ提供も多数。著書に『銀座で学んだ稼ぐ人のシンプルな習慣(総合法令出版)』『NOと言えないあなたの気くばり交渉術(ダイヤモンド社)』。近著に『いい人間関係は「敬語のくずし方」で決まる(青春出版社)』。

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