
- 「物怖じしない」とは?
- 物怖じしない人の心理とは
- 物怖じしない人の特徴
- ビジネスシーンで物怖じしないメリット
- 物怖じしない人になる方法は?
- 物怖じしないことを長所としてアピールする方法
- 物怖じしない姿勢をビジネスで実践する際の注意点
- 自分の感情と向き合い、できることから行動に起こすことが重要
「物怖じしない」と聞くと、物事に対して積極的にチャレンジしようとするポジティブなイメージを抱く人も多いのではないでしょうか。物怖じしない姿勢はビジネスシーンでも強みになるケースが多く、組織に変革をもたらす効果も期待できます。
本記事では、公認心理士の川島達史さんにお話を伺い、物怖じしないことの心理学的な意味や特徴、仕事に与える影響や実践方法、注意点について解説します。
「物怖じしない」とは?

「物怖じしない」とは、そもそもどのような意味なのでしょうか。物怖じしないことの本来の意味や言い換え表現、心理状態について解説します。
「物怖じしない」の意味
「物怖じしない」とは、周りの目や評価を気にしすぎず、不安や恐怖を感じるような状況でも落ち着いて行動できることです。
心理学的に見ると、不安や恐怖を感じると私たちの体は緊張し、行動が制限されがちです。しかし、物怖じしない人は、そうした感情を上手にコントロールし、自分の意思や判断に従って行動する力を持っているといえます。
「物怖じしない」の言い換え表現
「物怖じしない」は、別の表現で言い換えることができます。例えば、同じ意味合いとして、以下のような表現で用いられることがあるでしょう。
「恐れず堂々としている」
「緊張せず落ち着いている」
「不安に動じない」
「肝が据わっている」
「度胸があり、滅多なことでは動じない」
ビジネスシーンにおいては、例えば「彼は物怖じせず役員に意見し、チャンスを掴んだ」、「海外出張で物怖じせずに交渉し、商談を成功させた」などのように使用します。
物怖じしない人の心理とは

物怖じしない人の心理としては、大きく分けると2つのタイプが考えられます。1つ目は「不安や恐怖といった感情を感じにくいタイプ」で、2つ目は「不安や恐怖をコントロールできるタイプ」です。
不安や恐怖を感じにくいタイプ
このタイプは、失敗より成功のイメージが強く、不安や恐怖を感じにくい傾向があります。過去の成功体験が豊富で、「自分ならできる」という確信を持っています。
これは心理学でいう「自己効力感」が高い状態で、自分が必要な行動を遂行できるという自信を指します。
自分の考えや行動に自信があるため、困難にも前向きに挑戦でき、新しいことにも臆せず飛び込むことができるのです。物怖じしない性格は、こうした自己効力感に支えられているといえるでしょう。
不安や恐怖をコントロールできるタイプ
このタイプは、感情を完全に感じないわけではなく、不安や緊張をうまく扱えるのが特徴です。例えば、緊張する場面でも冷静に準備し、本番では堂々と行動できます。その背景には後述する「マインドフルネス」などの実践があり、自分の感情や思考を客観視する力が養われているからです。
不安に飲まれず冷静に対処できるため、結果として物怖じしない人という印象を与えられるでしょう。
物怖じしない人の特徴

物怖じしない人には、どのような共通点があるのでしょうか。物怖じしない人の主な特徴を4つ紹介します。
失敗の確率を気にしない
物怖じしない人は、「失敗したらどうしよう」と考える前に、「成功したら何が得られるか」に目を向ける傾向があります。失敗の確率ばかりにとらわれず、成功によって得られるメリットや経験を想像し、わくわくした気持ちで行動に移すのです。
「やってみなければ何も得られない」という前向きな姿勢が根底にあり、結果よりも挑戦そのものに価値を感じています。リスクを恐れすぎず、可能性にかけて動けることが、物怖じしない人の強みです。
ネガティブな状況を新たな視点で解釈する
失敗しても自分を責めすぎず、次の機会に活かそうとすることも物怖じしない人の特徴です。この背景には、「認知の再評価(cognitive reappraisal)」という心理的スキルが働いています。認知の再評価とは、出来事を前向きに捉え直す力のことです。
「失敗=学びの機会」と再解釈できるため、感情的なダメージを最小限に抑え、すぐに立ち直ることができるのです。
加点方式の思考を持っている
困難にも臆することなく挑戦する人は、自分の挑戦そのものを肯定的に評価する「加点方式」の思考を持っていて、たとえ失敗しても、「行動できた自分」を認め、積極的に自分自身を励まします。減点方式ではなく、小さな前進に価値を見出すため、挑戦を続けるモチベーションをキープできるのです。
明確な目的意識がある
物怖じしない人は、自分が「何のために行動しているのか」という目的が明確です。このような強い目的意識は、心理学でいう「アイデンティティ(自我同一性)」の確立と深く関係しています。
自分が大切にしたい価値観や目標がはっきりしているため、「多少の失敗よりも、自分の信じる道を進むほうが重要だ」と考えます。この信念が、迷いや恐れを打ち消してくれるのです。
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ビジネスシーンで物怖じしないメリット

ここまで、「物怖じしない」の意味や特徴について紹介してきましたが、ビジネスシーンにおいてはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、物怖じしないことがもたらす5つのメリットを紹介します。
多くの経験値を積むことができる
物怖じせずに積極的に行動すると、行動量が多い分、失敗も多く経験します。しかし、それこそが貴重な学びになるのです。試行錯誤を繰り返すうちに成功パターンが蓄積され、結果的に良い成果を生み出しやすくなります。
組織に変革をもたらす
上司や組織の慣習に遠慮せず意見を伝えられるため、既存のやり方に風穴を開ける存在になることができます。建設的な提案や率直な発言は、組織の硬直化を防ぎ、変化を促す重要な原動力となるでしょう。
人脈が増える
臆することなく行動することで、さまざまな人に声をかけたり関わったりする機会が自然と増えていきます。こうして築かれた人間関係は、「社会資本(social capital)」と呼ばれ、仕事や生活における貴重な支援源となるでしょう。
中には思わぬ影響力を持つ人物との出会いもあるなど、結果的に人脈が広がり、大きなチャンスにつながることがあります。
自己効力感が高まる
物怖じせずに挑戦し続けることで、「自分はできる」という感覚=自己効力感(self-efficacy)が育ちます。自己効力感の高まりは、心理的資源が強化されている状態であり、困難な課題にも自信をもって挑めるようになるでしょう。その結果、ビジネスシーンにおける成長のスパイラル(好循環)が生まれます。
レジリエンスが鍛えられる
失敗を恐れず行動を重ねる人は、自然と「レジリエンス(resilience=心理的回復力)」が育ちます。レジリエンスが鍛えられることで、困難に直面しても立ち直る力が強まり、ストレス耐性が向上する効果が期待できます。
ビジネスシーンではプレッシャーを感じる場面も多いですが、レジリエンスが育まれると柔軟かつ冷静に対応できるようになるでしょう。
物怖じしない人になる方法は?

物怖じしない人になるためには、いくつか方法があります。ここでは、今すぐ実践できる方法について、具体例を交えながら紹介します。
小さな行動から始めることを意識する
小さな行動、つまり「スモールステップ」とは、大きな目標の前に小さな目標を複数設定し、1つずつ達成していく方法です。いきなり大きな挑戦をせず、まずはできる範囲の小さな行動から始めてみましょう。
心理学では「不安階層表」という、恐怖の段階に応じたチャレンジシートを作ることもあります。不安の強さが低い順に行動目標を設定し、達成しやすいものから始めていくことです。
【具体的な行動例】
物怖じしない人の特徴の1つに、「人脈が増えること」があります。しかし「人と話すのが苦手で、物怖じしない人になるのは難しいかも」と感じる人もいるかもしれません。
その場合は、まずは人間関係を構築することを目標に、以下のような手順で行動してみるといいでしょう。
段階2:質問をしてみる
段階3:自己開示(自分自身の情報の共有)を30秒する
スモールステップのポイントは、行動を明確に設定することです。曖昧な目標では不安が勝ってしまう可能性があります。目標を具体化することで脳が処理しやすくなり、行動に移しやすくなります。目標は、シンプルかつ現実的なものにしましょう。
マインドフルネスを実践する
物怖じしない人は、不安や恐怖をコントロールする、「マインドフルネス」を実行している人が多いです。マインドフルネスとは、今目の前で起こっていることに集中し、ありのままを受け入れる心理状態のことを指します。
例えば、緊張や不安を感じたときに、呼吸に集中してみると、マインドフルネスの効果を発揮します。自分の呼吸に集中し、「今この瞬間」に意識を向けることで、過去や未来への不安にとらわれず、落ち着いて行動できるようになるでしょう。
マインドフルネスは毎日1分でも継続すると、効果が高まります。
【具体的な行動例】
・朝起きた後に、1分間瞑想する
・人と会話をする前に、3回深呼吸をする習慣を取り入れる など
不安や緊張に気付いたら、その感情を否定せず「今、自分は緊張しているな」と受け止めるだけでも落ち着きます。自分の感情を観察することが、物怖じしない心の第一歩です。
マインドフルネスとは? 瞑想の実践方法や仕事の合間に取り入れる効果を解説
物怖じしないことを長所としてアピールする方法

物怖じしないことを周囲にアピールする場合は、いくつかポイントがあります。ビジネスシーンでは性格や人柄が評価に影響することもありますが、効果的に伝えるためには具体性かつ説得力をもたせることが重要です。
具体的なエピソードや成功例を交えて説明する
実体験を交えて話すことで、説得力が増します。例えば、「初対面の顧客にも臆せず提案し、商談をまとめた」など、行動と成果をセットで示すのが効果的です。
面接で物怖じしない性格をアピールする場合は「どのように行動したのか」と「どんな結果が出たのか」の2点を簡潔に伝えると、行動力を示す根拠になります。
「行動力」「積極性」など、別の言い方で伝える
「物怖じしない」という言葉は抽象的な表現なため、「行動力」「主体性」「チャレンジ精神」など、別の用語に置き換えたほうが伝わりやすくなる場合があります。面接では、「課題を自ら見つけ、提案・実行した経験」などより具体的に話すと、面接官に物怖じしない性格であること印象付けることができるでしょう。
心理的安全性への貢献を語る
物怖じせずに発言できることは、「心理的安全性(psychological safety)」の高い職場づくりにもつながります。心理的安全性とは、発言しても否定されない安心感のことです。
「会議で積極的に発言し、周囲も意見を出しやすい雰囲気をつくった」といった実績があると、組織適応力や協調性の高さもアピールできます。
物怖じしない姿勢をビジネスで実践する際の注意点

ここまで、物怖じしないことのメリットを中心に紹介してきましたが、物怖じしない性格の人はビジネスシーンにおいて注意すべき点があります。
過信せず、リスクを考慮する
物怖じしない姿勢は強みですが、過信はせず、計画性と思考性を伴うことが重要です。自信過剰になって無謀な行動をとってしまうと、健康や金銭面でのリスクにつながりかねません。自分自身やチームに大きな負担がかからないか、最低限のリスクマネジメントを意識しましょう。
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TPOをわきまえ、周囲への配慮を忘れない
物怖じしない人は、自分の意見をしっかり持ち、流されない強さがあるところが魅力的です。ただし、時に場の雰囲気への配慮が足りないと受け取られてしまう可能性があります。あえて空気を読まないことが求められる場面もありますが、TPO(時・場所・場合)に合わせた言動を心がけましょう。特に、社内外での人間関係構築には状況や相手に応じた配慮が必要です。
慎重な意見にも耳を傾ける
物怖じしない姿勢を実践しようとすると、慎重な意見を軽視しがちになってしまうこともあります。そうならないために、周囲の意見にもしっかりと耳を傾けることが大切です。これによってより質の高い意思決定につながり、チーム全体のバランスを保つことにつながるでしょう。
自分の感情と向き合い、できることから行動に起こすことが重要
ビジネスの現場では、初対面の相手との交渉や重大な決断など、「物怖じせずに挑むべき場面」が多くあります。ここで重要なのは、「物怖じしない=怖くないこと」ではなく、「怖くても行動すること」です。
恐怖心は決して「悪い感情」ではなく、挑戦の証でもあります。「怖いからやらない」ではなく、「怖くてもやってみる」姿勢を大切にしてみてください。恐怖と共に進めることが物怖じしない人の大きな強みです。
監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行なっている。
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