信頼関係を築くには?仕事における重要性や築き方を解説

職場の人や取引先と信頼関係を築きたいと考えている人は多いのではないでしょうか。本記事では、信頼関係のそもそもの意味や重要性、信頼関係を築くための具体的な方法や注意点などを解説します。

信頼関係が築き上げられているチームのイメージ

仕事を円滑に進めるために欠かせないのが「信頼関係」。前向きに仕事に取り組むためにも、職場の同僚や上司、取引先との信頼関係を深めたいと考えている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、キャリアコンサルタントで産業カウンセラーの平井厚子さんに伺った話をもとに、信頼関係のそもそもの意味や仕事における重要性、築くのが得意な人の特徴のほか、深めるメリット、信頼関係を築く方法などを分かりやすく解説します。

信頼関係とは

ビジネスで信頼関係を築く過程

「信頼関係」とは、相手の言葉や行動、その意図に対して安心感を抱き、お互いに頼れる関係性のことを指します。お互いに心を許し、どんな状況であっても「あの人なら大丈夫」と信じ合える関係ともいえるでしょう。

仕事における信頼関係の大切さ

信頼関係は、家族や友人、恋人との良好な付き合いに限らず、仕事を円滑に進め、前向きに取り組むためにも欠かせないものです。

周囲の人と信頼関係が築けていると、率直な意見を交換できるので、誤解や疑念が生じにくく、ミスやトラブルが発生したとしてもお互いに協力し合いながら課題を解決できます。そのため、お互いにモチベーションを高め合いながら、効率良く仕事に取り組むことができるのです。

特に昨今では、リモートワークやプロジェクト単位の業務も増えているため、短期間でも信頼関係を築けるスキルが求められています。

信頼と信用の違い

「信頼」と似た言葉に「信用」がありますが、両者にはどんな違いがあるのか、整理しておきましょう。

まず、「信頼」は、人間関係の中で時間をかけて育まれるもので、相手の人間性や普段の言動に大きく左右されます。一方、「信用」とは、過去の実績や客観的なデータに基づいて人や組織などを評価すること。特に、金銭が絡む契約や取引などの場面で重視されるケースが多いでしょう。

例えば、「この会社は過去に納期を守っているから、今回も契約しよう」「この企業は決算書が健全なので融資を提供できる」といったケースが信用にあたります。

仕事で信頼関係を築くのが得意な人の特徴

信頼関係を築くのが得意な人のイメージ

では、仕事で信頼関係を築くためには、どんな要素が必要なのでしょうか。まずは、仕事で信頼関係を築くのが得意な人に共通する特徴について見ていきましょう。

正直で誠実

まず挙げられるのが、「嘘をつかない」「約束を必ず守る」といった誠実さです。

正直で誠実な人は、「この人は裏切るようなことはしない」と周囲の人から思われやすく、長期的な信頼関係を築けます。たとえミスをしたとしても、すぐに謝罪して修正するなど、誠実な対応ができるので、信頼関係がさらに深まることも多いでしょう。

一貫性がある

正直さに加えて、一貫性があるのも、信頼関係を築ける人の大きな特徴です。

例えば、有言実行できない人や相手によって態度を変える人は、たとえ能力が高くても、「頼りにならない」「信用できない」と思われてしまい、信頼を得られないこともあるでしょう。

反対に、言動と行動が一致している人や裏表がない人は、周囲から信頼を寄せられることが多く、多くの人と良好な関係性を築けます。

共感力が高い

次に挙げられるのが、高い共感力を持っている点です。

相手の立場や状況を察知してサポートできると、「自分のことを理解してくれている」と相手が安心し、頼られる場面が増えます。すると、「いつも助けてもらっているから」と、自然と手助けしてもらえる機会も増えていき、信頼関係がさらに深まります。

仕事の質が安定している

信頼関係は、人柄や態度だけでなく、仕事の質にも大きく影響を受けます。そのため、仕事の質が高く安定している人は、周囲の人と信頼関係を築きやすいのです。

例えば、仕事に誠実に向き合っていても、仕事の質が低かったりムラがあったりすると、「この人に任せて大丈夫かな?」と不安を持たれてしまうこともあるでしょう。反対に、安定したパフォーマンスを発揮できる人は、周囲から信頼され、重要な仕事を任されることが増えていきます。 

ビジネスパーソンが信頼関係を深めるメリット

チームの信頼関係を深めていく様子

職場の人や取引先と信頼関係を深めると、具体的にどんなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、信頼関係がビジネスパーソンに与える良い影響を4つ紹介します。

仕事をスムーズに進められる

周囲の人と信頼関係を深めておくと、自分の意見が比較的通りやすくなり、依頼したことを快く引き受けてもらえる場面が増えます。その結果、仕事がスムーズに進むようになります。

また、「この人の判断なら大丈夫」とお互いに思えるようになるので、疑念や不安が減り、細かいチェックを省けるようになることも。人は期待されるとその期待に応えようとする傾向があるため、信頼関係が深まると仕事のパフォーマンスも上がりやすくなります。

仕事に対するモチベーションが高まる

仕事に対して安心感が生まれ、「この人たちとなら頑張れる」とモチベーションが高まるのも、大きなメリットです。人には「他者と良い関係を築きたい」という欲求があるため、その欲求が満たされることでモチベーションが向上するという面もあります。

他にも「自分はここで必要とされている」と感じられることから、承認欲求が満たされたり、自己肯定感が上がったりするのもメリットの一つです。

自身の成長につながる

上司や同僚、取引先との信頼関係を深めておくと、相手のフィードバックを素直に受け入れられるので、スキルアップしやすくなります。

また、失敗を恐れずに新しいことにも挑戦しやすくなるため、自身の可能性も広げられるでしょう。難易度の高い仕事や責任のある仕事を任されることも増えるので、経験値もさらに向上していきます。

キャリアアップにつながる

「この人になら安心して任せられる」と評価してもらいやすくなり、昇進や推薦の対象になりやすいのも、信頼関係を築く大きなメリットです。

さらに、周囲から「あの人を紹介したい」「あの人の意見を聞いてみたい」と思われやすくなり、他の部署や社外でも人脈が広がりやすくなります。そうした人脈を活かしてチャレンジする機会を増やせば、自身の成長につながるだけでなく、キャリアの選択肢も増えていくでしょう。 

信頼関係が築けないことで生じるリスク

では、信頼関係が構築できていない場合、どんなデメリットが生じるのでしょうか。ここでは、仕事で起こる可能性のあるリスクを3つ紹介します。

行き違いやトラブルが増える

信頼関係が築けていないと、連携がうまく取れなくなることで、誤解や行き違いが増えてしまうことも少なくありません。

また、「相手の成果物に間違いや不備があるのではないか」と無意識のうちに疑ってしまい、細かいチェックが必要になることで、仕事の効率が下がってしまう場合もあります。さらに、何か問題が発生したときに報告をためらうことで大きなトラブルに発展してしまうケースもあるでしょう。

働きづらくなる

上司や同僚と信頼関係を構築できていない場合、チームに溶け込めず、孤独感が強まることもあるでしょう。

また、周囲の人に相談したいことがあったとしても、「取り合ってもらえない」と感じてしまい、さらにコミュニケーションが減ってしまう場合もあります。結果的にお互いに不信感が募ることで人間関係がギスギスしたり、仕事がスムーズに進められなくなったりして、働きづらくなる可能性も考えられます。

キャリア形成に悪影響が出る場合も

人は、信頼できる人を「仕事もできるだろう」と高く評価し、信頼できないと感じる人に対しては「仕事を任せられない」と評価する傾向があります。そのため、周囲の人と信頼関係がうまく築けていないと、スキルアップにつながる機会やキャリアアップのチャンスに恵まれにくくなる可能性もあるかもしれません。

信頼関係を築くには?具体的な方法を紹介

報告連絡相談の徹底により信頼関係を築く様子

信頼関係を築くことの重要性やメリットを整理してきましたが、実際に築いていくためには、具体的にどうすればいいのでしょうか。すぐに実践できる効果的な方法を6つ紹介します。

約束を必ず守る

まずは、「この人の言うことなら信頼できる」と思ってもらえるよう、会議の時間や提出期限、納期など、スケジュールは厳守することが重要です。

万が一守れない場合は、早めに報告をして謝罪するなど、誠実に対応するようにしましょう。また、現実的なスケジューリングを行ったり、スケジュール管理の方法を見直したりして改善していくことも大切です。

<関連記事>「誠実」とは?誠実な人の特徴や見分けるポイント、身につける方法を解説

報連相(報告・連絡・相談)を徹底する

人は進捗が見えないと不安になりやすい傾向があります。そのため、「報連相(報告・連絡・相談)」を徹底すると、「この人はしっかり仕事を進めている」「仕事を任せても安心」と、信頼されやすくなります。特に問題やトラブルが発生したときは、先延ばしにせず、早めに報告することが大切です。

報連相を行う際は、忙しいときでも相手がすぐに理解できるよう、結論や主題を先に伝えるようにしましょう。また、報告できるような進捗がない場合でも、前回の報告から時間が空きすぎた場合は、進捗がない旨を報告しておくと、相手も安心でき、信頼関係の構築につながります。

傾聴力を高める

人は相手に理解されていると感じると、その相手に好意を持ちやすい傾向があります。そのため、「傾聴力」を高めて、相手の気持ちや真意を理解できるようにするのもおすすめです。

具体的には、相手が話しているときは口を挟まず、目を見て聞くことに集中しましょう。アドバイスしたり否定したりせず、相手の感情に目を向けることが大切です。

そして、最後まで聞いたら、相手の話を要約して「つまり、○○ということですね?」と確認したり、共感の気持ちを示したりすると、しっかり聞いていることが伝わり、安心感を与えられるでしょう。

<関連記事>「傾聴力」ひとつで、好印象に!コミュニケーションが円滑になる、話の聞き方

感謝や気遣いを言葉で伝える

感謝の言葉は、シンプルですが信頼関係を深める強力なツールです。

「〇〇の件、ありがとうございました」「▲▲さんのおかげで、助かりました!」といったように、小さなことでも普段から感謝を伝えるようにすると、相手を肯定でき、ポジティブな関係を築けます。

「最近忙しそうですね」など、相手を気遣う話題を投げかけるのもおすすめです。さらに、周囲の人に「▲▲さんのサポートのおかげで上手くいきました!」とシェアするようにすると、信頼関係が広がり、人間関係も良好になっていくでしょう。

周囲の人をサポートする

信頼は、「この人は自分を助けてくれる」と思う相手に対して自然と生まれます。そのため、ギブアンドテイクの精神で周囲の人をサポートするようにすると、信頼関係はさらに深まるでしょう。

例えば、困っていそうな人に「何か手伝えることある?」「大丈夫?」などと声をかけたり、自分の仕事が早く終わったら、チームの業務をサポートしたりするのも良いでしょう。ちょっとした気遣いが信頼につながるので、自分にできる範囲で周囲の人を気遣うことが大切です。できれば求められる前に動くと、印象がさらに良くなります。

オンラインでのコミュニケーションを工夫する

リモートワークやオンライン会議、チャットツールを使った業務が増えている現在、オンラインでのコミュニケーションを工夫することも大切です。

オンラインでは、表情や声のトーン、ジェスチャーといった「非言語コミュニケーション」が伝わりにくく、対面よりも信頼を築くのが難しいといわれています。そのため、相手が安心感を感じられるような工夫を行うようにしましょう。

例えば、会議ではカメラをオンにすると、顔が見えることで心理的距離が縮まりやすくなります。チャットやメールなど、テキストで連絡を取る場合は、言葉のニュアンスやトーンに注意を払ったり、相手によっては絵文字などを使ったりするのもいいでしょう。ミーティングの際にアイスブレイクの時間を取ったり、チャットでこまめにコミュニケーションを取ったりするのも効果的です。

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信頼関係を築く際の注意点

注意点を示したイメージ

信頼関係を築く際には、いくつか注意が必要なポイントがあります。最後に、特に注意したいポイントを3つ紹介します。

ミスやトラブルを隠すのはNG

「相手に信頼してもらうためには、失敗してはいけない」と考える人もいるかもしれません。しかし、信頼を得るためにミスやトラブルを隠すのは、避けた方がよいでしょう。場合によってはさらに大きなトラブルに発展するだけでなく、事実を隠していたことがあとで発覚した場合、信頼を失ってしまいます。

信頼は「完璧な人」に対してではなく「ミスをしても誠実に対応する人」に対して生まれるものです。ミスをしたら正直に報告や謝罪をし、早めに対処しましょう。そのとき、チェックリストを作るなど、具体的な改善策を伝えることも大切です。「どうすればいいか分からないので、アドバイスをください」と正直に話すのもいいでしょう。

ネガティブな言動は避ける

職場でのネガティブな言動にも、注意が必要です。

同僚や業務への愚痴、会社への批判ばかりを職場で話すと、「この人はいずれ、自分のことも悪く言うだろう」と周囲の人から警戒されて信頼を失ったり、自分の評価が下がったりする可能性もあります。愚痴を言いたくなったら、このことを念頭に置いて一度考え直してみましょう。

また、普段からポジティブな言動を意識的に増やすことも大切です。不満やストレスを感じることがあれば、建設的な改善案を提案したり、上司との面談で相談したりすると、状況の改善につながり、周囲からも信頼されやすくなります。

短期間で信頼を得ようと焦らない

「信頼してほしい」と強く思っていると、無理に親しくしようとつい話しかけすぎてしまったり、相手に同調しすぎてしまったり、自分の行動が不自然になってしまうことも少なくありません。そのため、短期間で信頼を得ようと焦らないことも大切です。

信頼とは、相手から得るものではなく、自分が継続的に積み重ねていくもの。このことを意識しながら、時間をかけて相手が安心感を感じるような行動を積み重ね、徐々に関係を築いていくことが大切です。

完璧でなくても大丈夫。時間をかけて信頼を積み重ねていこう

信頼関係は、自分のがんばりによって得るものではなく、周囲の人との関係性の中で育まれるものです。相手に信頼されることばかりを目的にせず、一緒に成長できる関係を目指し、お互いのためになる行動を積み重ねていきましょう。

また、信頼関係を築くのに必要なのは、完璧さではなく、誠実な態度です。ミスをしてしまったときも無理に取り繕わず、自分の弱点を素直に認めて改善していくと、信頼関係も自然と深まっていくでしょう。

監修:Officeまいとれいや代表 平井厚子
国家資格キャリアコンサルタントをはじめ、1級キャリアコンサルティング技能士や産業カウンセラーなどの資格を持つ。数々の企業で人材育成やキャリア開発を行い、2012年よりキャリアコンサルタントとして就職支援や就職後の定着支援を実施。2020年には「可能性を広げて納得できる働き方を!」を理念に60歳で起業。現在ではフリーで、就職・キャリア相談や研修講師などを行っている。

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