仕事をはじめ、職場の人間関係に私生活での悩み事、現代人はストレスを避けて生活することが難しいもの。
そうして知らず知らずのうちに蓄積されたストレスのせいで、物に当たったり、勢いで誰かにきつい言葉を言ってしまったり、ネガティブな考え方しかできなくなってしまったり…気づいたら、だんだんと心のコントロールができなくなっていることも。
今回は100万人以上が使っている、ストレスチェックやお悩み相談サイト「ストレスケア・コム」の編集長であり、長年ストレスケアに関する研究・研修等をされてきた加藤貴之さんに、早い段階からのストレス解消法についてお話を伺いました。
なんだか最近心が疲れているかも…なんて方は、心の疲れ具合を知るためにも、ぜひセルフチェックを試してみてくださいね。
ストレスケアはセルフチェックが肝心
厚生労働省が行った「労働安全衛生調査」の最新版(平成28年)によると、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は事業所全体の「56.6%」にまで増加しているそうです。また、2015年12月1日からは労働安全衛生法の改正に基づき、従業員50名以上の事業所を対象とした「ストレスチェック制度」が施行されました。制度では年に1回、労働者に対する「ストレスチェック」と、労働者から申出があった場合には「医師による面接指導」を事業所に課しています。
とはいえ、会社によってはそもそもストレスチェックを行っていない、受けたい人だけ受けられるなど、それぞれ違いがある上に、自分の内面の悩みを申告するのは難しいというのが正直なところかもしれません。
けがとは違ってストレスは目に見えないもののため、自分で認識していなくても実は結構ストレスがたまっていたりすることも多いよう。
では、どうすれば早い段階で気づくことができ、対処できるものなのでしょうか。
ストレス反応は生存のために必要なものだった
そもそも「ストレス」の正体とは何なのでしょうか? 「ストレスケア・コム」編集長の加藤貴之さんは次のように説明します。
「ライオンに狙われるシマウマを想像してみてください。ライオンに追いかけられるとき、シマウマは即時的に心拍数を上げるなどの身体反応を起こして、ライオンから逃げようとします。このときの緊急反応がストレス反応です」(加藤さん、以下同)
私たちは、こうした反応を起こすときの“原因”のことを――「仕事のストレスが……」というように――通常「ストレス」と呼んでいますが、本来的にはそうしたストレスを起こす原因因子を「ストレッサー」といいます。
以下、ストレスの原因因子を「ストレッサー」、原因因子が心身に影響を与えている状態のことを「ストレス状態」、またそれによって起こる反応のことを「ストレス反応」と呼びます。
「本来、生き物にとってストレス反応は生存のために必要な反応です。しかし人間の場合、脳が発達しているので何かをきっかけに“思い出す”ことができます。
先ほどの例だと、シマウマならばライオンというストレッサーから逃れた後、平常の状態に戻すことができますが、人間は“思い出す”ためにストレス反応が慢性化してしまう。それが、体や心の病気につながっていくのです」
4つの側面から見るストレス反応とは?
現代人のまわりにあるストレッサー(ストレスの原因因子)には次のようなものがあります。
●ストレッサーの種類
物理的要因:寒冷、光、音、におい等
生理的要因:空腹、体調不良、疲労、睡眠不足等
化学的要因:アルコール、薬物、大気汚染等
社会的要因:人間関係、生活の変化等
心理的要因:生活・仕事に対する満足度、将来への不安等
このうち、社会人が晒されやすい「仕事のストレス」と呼ばれるものの多くが社会的要因に該当します。こうして見ると、ストレッサーを完全に避けて生活することがいかに難しいかがよく分かりますよね。日々、ストレッサーに囲まれながら私たちは生活しているわけですから…。
「アメリカの精神医学者によって開発されたストレッサーの大きさを測る尺度に『ストレスマグニチュード』(社会再適応評価尺度)という考え方があります。ストレッサーにも大小さまざまなものがあり、ストレスマグニチュードで一番大きいのは、配偶者や恋人との死別とされています。転職や引っ越しなどもストレッサーになり得ますが、そうした生きていく中で必要として起きるものに対しても、人間の場合は蓄積しますから、それがやがてストレス反応として現れるんです」
加藤さんによると、ストレス反応は4つの側面で考えることができるのだとか。
●4つの側面から見たストレス反応
体:疲労感、不眠、心身症(高血圧、潰瘍…)等
心:イライラ、怒り、憂うつ、悲しみ、うつ病、PTSD等
行動:暴言・暴行、遅刻・欠勤、引きこもり、ルール違反等
頭:創造性、判断力、意思決定、注意力、記憶力、視覚等
「このうち、どれか1つだけが起こるというよりも、連鎖的に起こるのが人間のストレス反応の特徴です」
ストレス状態が大きくなたっときの対処法は?
先述したようなストレス反応が現れる前に「今、自分のなかでストレス状態が大きくなっている」といち早く気づくことが、ストレスケアの第一歩。
以下は、加藤さんに作成いただいたストレスチェックシート(簡易版)です。ぜひ今すぐチェックをしてみてください。
☆最近1カ月のあなたの状態で、当てはまるものをチェックしてください。
1.体が疲れやすい
2.眠れない日が多い
3.食欲がない日が多い
4.食べ過ぎてしまうことが多い
5.首や肩がよく凝る
6.イライラすることが多い
7.何もやる気がしないことが多い
8.投げやりな気持ちになることが多い
9.集中できないことが多い
10.憂うつな気分が続いている
11.仕事や生活でミスが増えた
12.身だしなみを気にしなくなった
13.規則やルールに違反することをしてしまった
14.金遣いが荒くなった
15.外出するのが億劫になった
0~5 平均以下
6~7 標準
8~12 高め
13~15 非常に高い
「該当するものが0~7であれば、まだストレス状態は低いといえるでしょう。ただし8個以上なら要注意。13個以上なら早めに専門家に相談してください」
では、もしも自分がストレス状態にあると分かった時、どのような対処をすればいいのでしょうか?
「上記の結果により、ストレスが~12個に該当する状態であれば、やはり“気分転換”が一番。認知行動療法というものがありますが、基本は気分転換と同じことで、考え方を変えたり、行動を変えたりすること。自分がクヨクヨと悩みを抱えるタイプなのか、すぐに切り替えのできるタイプなのか、はたまた1人でいたいタイプなのか、人と一緒にいたいタイプなのか……。そうした自分のタイプを自覚し、それぞれのタイプに合ったストレスケアを講じるのが、初期段階の最適な対処法です」
クヨクヨ悩むタイプ
・行動を伴うストレス解消
・手を使う、足を使う
すぐに切り替えられるタイプ
・頭の中で別のことを考える
・新しいことを考えてみる、仕事以外のことを考える
・好きな言葉を唱えたり、頭の中でつぶやく
1人でいたいタイプ
・本を読む、音楽を聴く、映画を見る、ゲーム、1人カラオケ
人といたいタイプ
・人と話してみる、外に行って遊ぶ、友達とカラオケ
加藤さんご自身が運営している「ストレスケア・コム」では、全国約120万人のデータをもとにした、より詳しいストレス判定を公開しています。
「先ほどの4つの側面に対応するかたちで、体、心、行動、頭に関する設問が各10項目、そして人間関係上の要因、仕事関係上の要因、行動や思考に関する対処法に関する設問と、全部で80項目の設問を用意しています」
より詳しくセルフチェックをしたい方は、ぜひこちらも試してみてください。
●簡易ストレス診断によるストレスタイプのチェック
ストレスで心が重たくなってきたら……
最後に加藤さんはこう付け加えます。
「気分転換をしてもストレッサーがそれよりも大きい、あるいは多ければ、ストレス状態は解消されません。気分転換をしてもまだストレス状態が大きいと感じたら、まずは“休息”をとること。そして、それでも心身の不調がなくならないのなら“専門家に相談”ということを忘れないでください」
少しでも自分の心に異変を感じたら、それはストレスのせいかもしれません。
こまめなセルフチェックで自分の心と体の変化に気づき、早めに対処するように心がけましょう。
キャリアコンパスでは20代のビジネスパーソン300人を対象に「ストレスに関するアンケート」を実施しました。同世代の皆さんのストレス解消法も載っていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
(取材・文:安田博勇/編集:東京通信社)
※この記事は2017/11/10にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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