上手な気持ちの切り替え方とは?ポイントや注意点を分かりやすく解説

仕事や日常生活において、「気持ちの切り替え」が上手くできないと悩んでいる人は多いのではないでしょうか。本記事では、切り替えの得意な人や苦手な人の特徴、切り替える方法、注意点などを解説します。

休憩時間に気持ちを切り替える女性

仕事のミスや嫌な出来事があった時、それを引きずっていつまでもモヤモヤしてしまうことはありませんか。ビジネスシーンにおいて、「気持ちの切り替え」は非常に大切です。今回は、気持ちの切り替え方のコツについて、公認心理師の川島達史さんに伺い、分かりやすく解説します。

気持ちの切り替え、上手くできていますか?

気持ちの切り替えができずぼんやりと仕事をこなす様子

「仕事で失敗してしまった」と落ち込んだり、「明日、プレゼンの予定でプレッシャーに押しつぶされそう」と不安になったりなど、仕事をはじめとした出来事をきっかけにネガティブな気持ちになり、それを引きずってしまうビジネスパーソンは多いです。

そのようなシーンで、上手く気持ちの切り替えができると、これから先にも続いていく仕事やプライベートに意欲的に取り組めるようになります。まずは、気持ちの切り替えが大切な理由から見ていきましょう。

気持ちの切り替えが大切な理由

業務に追われて頭がパンクしている様子

例えば、「仕事で失敗をして落ち込んでいる」「プレッシャーを感じて消極的になっている」「人間関係のいざこざがあり、イライラしている」など、ネガティブな気持ちをそのまま引きずってしまうと、メンタルヘルスが悪くなりやすいです。

気持ちを切り替えられず、ネガティブなことばかり考えてしまうこと(ネガティブ反芻)が続くと、抑うつ感が強くなることにもつながります。心に元気がなくなると、本来やるべき仕事に集中できず、仕事のパフォーマンスが落ちたり、仕事に行きたくないと休んでしまったりと、さらなる悪循環に陥ってしまいます。つまり、前向きに取り組むことや、創造性を持って仕事に取り組むためには、気持ちの切り替えが大切になるのです。

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気持ちの切り替えが得意な人の特徴

気持ちの切り替えが上手でいきいきと働く人のイメージ

気持ちの切り替えが得意な人にはどのような特徴があるでしょうか。詳しく解説します。

メタ認知力がある

気持ちの切り替えが得意な人は、まず、「メタ認知力が高い」という特徴があります。メタ認知力とは、自分自身を客観的に把握する力のことで、この力があると自分を分析し、冷静さを取り戻すことが可能です。一方、この力がない人は物事を客観視できず、そのまま感情に流されやすくなってしまう傾向にあります。

考え方の引き出しが多い

多様な考えができることも特徴の一つに挙げられます。複数の考え方を持っていると視野が広く、物事を多角的な視点で見ることができます。そのため、自分の気持ちが不安定な時でも、ネガティブに陥りすぎず、さまざまな視点で状況を解釈し、前向きに考えるので、上手く気持ちを切り替えられるのです。しかし、考え方の引き出しが少ないと、その分視野が狭くなるため、一度思い込んでしまうと、ネガティブな考え方に囚われやすい傾向にあります。

目的が定まっている

そもそも人間は生き物なので、感情が浮き沈みするのは仕方がないことです。しかし、そこで「なぜこの仕事をするのか」「どのような目標を達成したいか」「自分はこういう人生を歩みたい」などの目的が定まっていれば、多少気持ちが浮き沈みしたとしても、その目的に向けて迷わず行動できます。

つまり、ネガティブなことがあって落ち込んでも、強い目的意識によって突き進めるので、落ち込んだ状態から気持ちを切り替えられるのです。しかし、目的が定まっていない人は、気持ちが不安定になった時に、その気分のまま行動してしまう傾向にあります。

現在視点で動いている

今この瞬間にすべきことに集中できる「現在視点」で動いている人も、気持ちの切り替えが得意です。例えば、過去や未来の視点で考える癖があるタイプだと、過去のことを引きずったり、不確定な未来に不安を感じたりして、その感情に囚われてしまいます。その結果、気持ちの切り替えが苦手になってしまう傾向にあります。しかし、今すべきことに集中して動けると、過去の失敗や未来の不安要素などと現在の状況を分けて考えて、気持ちを切り替えられるのです。

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今すぐ気持ちを切り替える方法

リラックスして気持ちを切り替える様子

ビジネスパーソンの中には、今すぐに「気持ちを切り替えて仕事を頑張りたい!」と思っている人も多いのではないでしょうか。今すぐ気持ちを切り替えたい場合は、下記の方法を実践してみましょう。

思考中断法

「思考中断法」という名のとおり、思考を一時的に中断する方法です。ネガティブな考えから抜け出せないときに、簡単なきっかけを自分に与えることで思考を中断し、その分、生産的な時間を増やせます。具体的には、「頬をパンパンと軽くたたく」方法や、「ネガティブ思考終わり!」「十分落ち込んだ! おつかれさま!」などと声を出す方法があります。

自己観察する

自己観察は、メタ認知力を高める代表的な方法の一つです。「こう行動したから失敗したんだな」「自分は今、マイナスな方向に考え過ぎていたな」と自分の状態を俯瞰して観察することで、ネガティブな気持ちに囚われていることを認識できるため、一歩ひいて冷静になれます。具体的な方法は、紙に自分の考えていることなどを書き出してどんな気持ちか考えてみる、幽体離脱のように自分を観察するイメージを持つなどがあります。

今ここ法

「今ここ法」とは、今この瞬間に集中する意識を持つために、とにかく体を動かしてしまう方法。例えば、ネガティブな気持ちの状態であっても、仕事で使うパソコンの電源をつけてメールを見る、今日やるべきタスクを書き出すなど、やるべきことに取りかかってみるというやり方です。すると、目の前のことに没頭するあまり、気がついたらネガティブな気持ちが薄れ、いつの間にか気持ちが切り替わっていたという状態に持っていきやすくなります。

このとき、自分にとって難易度の低いものでは効果があまり期待できないため、「何時までに〇〇を終わらせる」と時間制限を設けるなど、難易度が少し難しい業務に取り組むのがおすすめです。

運動や入浴をする

身体と心はつながっているので、体の緊張がほぐれると気持ちも切り替わりやすいです。例えば運動をするなら、腕立て伏せやスクワットなど強制的に体の緊張状態をつくり出してから、その後に休憩などを取ってみましょう。すると、交感神経から副交感神経へ切り替わるので、よりリラックスできます。また、お風呂に浸かるなどしっかり休むことも有効です。

じっくり時間をかけて気持ちを切り替える方法

コーヒーを飲んでリラックスする様子

今すぐにというわけではないけれど、「根本的に気持ちを切り替えられるようになりたい」という人も多いでしょう。ここからは、意識することで継続的な効果が期待できる、言わば「気持ちの切り替え力」を鍛える方法をご紹介します。

考え方を増やす意識を持つ

考え方を複数持つことは、気持ちを切り替えるのに有効です。「ほかの人ならどう考えるだろうか」「前向きには考えられないだろうか」「別の見方はないか」などのように、一つの考えに固執せず、さまざまな考え方や視点を持つように普段から意識することで、気持ちを切り替えられるようになります。

目的を明確にする

人間の感情は変わりますが、いちいちその感情に流されていると、特に仕事ではパフォーマンスを維持するのが難しくなります。そこで、現在の気分に左右されないためには、達成したい目的をしっかりと明確にすることが大切です。

具体的な方法としては、自分の思考に向き合い、言語化、可視化する時間を持つことが効果的なので、日記を書くことがおすすめです。自分と向き合う時間を定期的にとり、日記には目的を考えた理由や効果測定を記しておきましょう。自分の頭の中で瞬間的に考えただけでは、目に見えないばかりか、振り返ることもできないので忘れてしまいがちです。日記には、自分の気持ちの機微なども書いておくと気持ちがどう動くのか、その傾向をつかめるというメリットもあります。

ルーティンをつくる

ネガティブな気持ちになりやすい状況があらかじめ分かるケースもあります。例えば、大きな案件の商談やプレゼンの前などは、緊張やプレッシャーからネガティブな気持ちになりがちでしょう。その際は、軽く背伸びをして頬をパンパンと叩く(思考中断法)など気持ちを切り替えるためのルーティンをつくり、その時間を設けることも有効です。つまり、気持ちを切り替えるルーティンをあらかじめ設定しておき、ネガティブな気持ちから切り替えるための対策をするのです。

気持ちの切り替えのNG方法は?

仕事で失敗をして落ち込む男性

気持ちを切り替える際、「失敗過敏」になるという意識はあまり良くありません。失敗過敏とは、例えば「恥をかいてはいけない」「緊張であがらないようにしなければ」などと、失敗に対して過剰に恐れてしまうことです。

このような考えから気持ちを切り替えようとすると、さらに緊張が高まったり、失敗につながったりしがちです。しかし、どうしても失敗が怖いと考えてしまう場合は、「発表は緊張するけど、自分らしく話そう」という意識を持つと気持ちが軽くなりやすいです。

ネガティブな気持ちも利用できる?

ネガティブな気持ちを利用して仕事に活かすイメージ

ビジネスにおいて、気持ちを切り替えることは大切ですが、実はどんな感情にもメリットがあります。例えば、ポジティブな気持ちであれば物事に前向きに取り組みやすくなりますが、ネガティブな気持ちであっても、将来のリスクを考えるようなタスクをしている時に、その不安感や心配からリスクを考えやすい傾向にあるので、とても役立つのです。

そのため、ネガティブな感情でもそれを利用できる機会はあり、「ネガティブな気持ちを絶対に切り替えるべき」とは言えません。むしろ「ネガティブな気持ちを利用してやろう」という意識があっても良いでしょう。

とはいえ、「ネガティブな気持ちから切り替えたい!」と思っているのであれば、紹介した方法などを用いて、気持ちを切り替えていくのが良いでしょう。

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気持ちの切り替えを上手く活用する

「今すぐに気持ちを切り替える方法」、そして「じっくりと気持ちを切り替える方法」を、気持ちの切り替え上手になるメリットとともに解説しました。人間は感情がある生き物です。感情は行動するためのガソリンのようなものなので、気分がネガティブになっているとエンジンが動かず、物事を前向きに進められなくなってしまうことも多くあります。仕事に限らず、プライベートにも前向きに取り組みたいのであれば、上手く気持ちを切り替えていきましょう。

監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行っている。

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