「保留」が大切? 会社の飲み会を上手に断る方法

上司や同僚からの飲み会をどうしても断りたいとき、あなたはどうしていますか?

「保留」が大切? 会社の飲み会を上手に断る方法

上司や同僚からの飲み会をどうしても断りたいとき、あなたはどうしていますか?

「断ったら相手の気分を害するのでは……」と思いがちですが、うまく断ることができれば人間関係に波風も立たず、上司や同僚の評価もかえって上がるかもしれません。今回は、ホテル運営や大学の講師、接遇アドバイザーなどを務める接遇のプロ・飯野智子さんに、飲み会や仕事の上手な断り方を伺いました。

飲み会に参加するメリット


飲み会を断る前に、飲み会に参加することのメリットを考えてみましょう。「よほど頻繁に開催される場合は別にして会社の同僚や上司に誘われる飲み会は、仕事上の関係だけでなく、人間としての付き合いを深めるためのもの。飲み会に参加すると、スムーズに連携を取って仕事を進めることができるようになります」と飯野さんは言います。

皆さんも、「会社では怖い上司の意外な一面を、飲み会の席で目の当たりにした」という経験はありませんか? 仕事を一緒にしている人たちの、仕事をしているときでは知り得ない側面を知り、関係が深まるのが飲み会という場なのです。「飲み会の誘いを断るということは、そうしたメリットを自ら失うことになります」(飯野さん)

とはいえ飲み会のメリットは知りつつも、どうしても都合が悪くて断らなければならないこともあります。どうすれば誘ってくれた上司や同僚の印象を悪くせず、うまく断ることができるのでしょうか?

人からのお願いを断るときのコツ


まずは断り方の基本から学びましょう。

飲み会に限らず、仕事であっても、人からのお願いであっても、どうしても断らなければならないこともあります。「断るときにはコツがある」と飯野さんは言います。

それは、「声をかけてくれた相手を尊重する」こと。

具体的には、「相手が納得する理由を用意して、しかるべき行動をとること」だと言います。自分に声をかけてくれたということは、それだけ自分に何かを期待しているということ。断るとしても、その厚意を裏切らないことがポイントなのです。もし相手からの期待に応えられないのであれば、「申し訳ない」という気持ちを持つことで、次につなげることができるのだと飯野さんは言います。

飲み会のダメな断り方


それでは以上のような断り方の基本を踏まえて、どのように飲み会の誘いを断ったらいいのでしょうか。まずは「ダメな断り方」から見てみましょう。

【ダメな断り方(1)】飲み会に参加しないという意思表示をせず、だらだらと引き延ばす


「断りづらいと、どうしてもだらだらと答えを引き延ばしてしまい、飲み会前日になるまであいまいにする、という人は多いのではないでしょうか。しかし、これでは幹事さんに迷惑をかけてしまいます。『参加できない』という意思表示はできるだけ早くするのがポイントです」(飯野さん)

【ダメな断り方(2)】「金欠なので」「お金がかかるので」とお金を理由に断る


「お金を理由にすると、誘ってくれた相手に『他にどこにお金を使っているの?』と思われてしまいます。さらにその飲み会が、人間関係を深め、チームが一致団結するための催しであれば、『お金の方が大事なの?』と思わせてしまいます」(飯野さん)

【ダメな断り方(3)】「明日早いので」「明日の仕事に支障が出るので」など、翌日の仕事を理由に断る


「仕事を理由にするのは正当のように思えますがNGです。誘ってくれた相手に対して、まるでその飲み会が『仕事に支障が出るような会合』であると言っているようなものだからです」(飯野さん)

このなかのいずれかにギクッとした方も多いのでは? どの断り方も、「声をかけてくれた相手を尊重する」という断り方の基本に反していますよね。

飲み会を上手に断る方法


では、飲み会を上手に断るためにはどうすればいいのでしょうか?

ステップ1:飲み会に誘われたら、「予定を確認してみます」「今、手元に手帳がないので」とその場で回答せず「保留」にする

ステップ2:遅くとも当日中に、相手が納得するきちんとした理由を相手に伝えて断る

気の進まない飲み会に誘われると、とっさに「ちょっと家庭の事情で……」と、苦しい言い訳をしてしまいがち。しかし、いったん「保留」にすることが実は有効なのです。「その場で適当にうその理由を答えてしまうと、あとでつじつまが合わなくなることも。そこで、相手の納得の行く理由をきちんと考えて伝えるためにも、一度保留にするのをおすすめします」(飯野さん)

しかし、「保留にしても、遅くとも当日中には行けない旨と理由を伝えましょう」と飯野さんは付け加えます。やむを得ず翌日に伝えることになった場合、「スケジュール調整ができるか確認していた」というスタンスで伝えるといいそうです。

上手に断るための理由


それでは、上手に飲み会を断るための理由としては、どのようなものがあるのでしょうか。飯野さんは以下のようなものを挙げます。

断る理由の例)
・「大学時代の恩師に会う予定がある」(目上の人と先約があることを伝える)
・「小さいころからかわいがってくれていた親戚が、地方から出てきている」
・「仲のいい友人が、もうじき海外に行ってしまう」
など

このように、「そういう理由であれば、仕方がないな」と相手が納得できるような理由を提示することが大切なのですね。

飲み会を断るときの注意事項


いったん保留にして、相手が納得できる理由を考えて、その日のうちに断る。そうしたステップを踏んでいるから、何度断っても大丈夫! というわけではありません。飯野さんいわく、同じ人の誘いを断るのはせいぜい1~2回まで。それ以上になると、相手に「本当は参加したくないのだな」「嫌われているのかな」と感じさせてしまうからです。

それに加えて、上記の例はあくまでプライベートに近い飲み会の断り方。会社の忘年会などの公の意味合いの濃い会の場合には、このように簡単に断るのはNGだと飯野さんは言います。会合の主旨をよく理解した上で、適切な対応をすることが、評価を下げないためには重要なことなのです。


いかがでしたでしょうか。「誘いを断る」というのは、ある意味自分本位の行動。だからこそ、誘ってくれた相手を思いやった断り方を心がけることが、ビジネスで良好な人間関係を保つためには大切なのです。皆さんもぜひ、誰からも嫌な感情を持たれない「断り上手」を目指してみてはいかがでしょうか。

識者プロフィール


飯野智子(いいの・ともこ)
有限会社Faith Up代表取締役、ホテルショコラ函館総支配人、恵泉女学園大学、はこだて未来大学非常勤講師。株式会社ホテルオークラ東京に在職中、上海勤務、セールスマネージャー等を経て、客室予約課長として宿泊販売管理やお客さまへの接遇を担当する。2005年3月有限会社Faith Upを設立し代表取締役に就任。現在では、ホテルショコラ函館の運営を受託し、総支配人として現場に立つ一方、自治体、各種企業向けに日々の経験を生かしたホスピタリティやコミュニケーションを題材とする研修や講演を行い年間60回以上登壇している。


※この記事は2015/01/23にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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