よくある転職理由の一つに「職場の人間関係がうまくいかない」が挙がるように、特に上司と良い関係性を築く能力は、社会人にとって欠かせないスキルといえます。
20代の若者はいかにして上司と付き合っていくべきか。馬が合わない上司に対して、どう接していくべきか…。『「バカ上司」その傾向と対策』の著者である古川裕倫さんに、上司操縦力というテーマで聞いてみました。
【メソッド1】苦手意識のある上司をカテゴリー別に分類しよう。
非の打ちどころがない、素晴らしい上司ばかり---そんな職場はありません。多かれ少なかれ、不満に思える部分があったり、どんな職場でも苦手意識を抱く上司はいるもの。上司との関係で悩みがある人は、苦手意識を抱いている上司が下記の3つのカテゴリーのどれに当てはまるかを冷静に分析してみましょう。
1.怒りやすい、暗い、威張る、人をバカにするなど、主に「性格」に問題があると思われる上司。
2.話を理解できない、説明がちゃんとできない、決断できない、言い訳ばかりをしているなど業務を遂行する上で「能力」に問題があると思われる上司。
3.聞く耳を持たない、責任を取らないなど、仕事への「姿勢」に問題があると思われる上司。
【メソッド2】性格に問題のある上司には「受け流すスキル」と「冷静さ」が必要不可欠。
一つ目に挙げた、性格が暗い、威張る、怒りっぽい、人をバカにする、いい格好をする、自己中心的、ワガママなど、本人の性格に起因する問題がある上司に対しては、「自分だけが被害者ではない」という認識を抱き、ある程度受け入れ、冷静に対処することが必要不可欠です。そういう上司を必要以上に相手をしたり、「上司に恵まれないから、自分は仕事がうまくいかない」と思い、仕事に対して不誠実になるのでは、都合のいい口実を与えてしまうようなもの。叱責(しっせき)された場合にも、「おっしゃる通りですね」などと言って受け流し、自分の仕事を粛々と行うべきなのです。考え方としては、苦手意識のある上司の上司や同僚、さらには顧客までがその人柄を問題視していると思えば、上司の顔色ばかりを気にすることなく、目の前のやるべき仕事をしっかりとこなせるようになるでしょう。
【メソッド3】仕事の要領を得ない上司には、傾聴力を持って応じよう。
二つ目に挙げた社会人としての能力に疑問を持つ人を上司に持った場合、上司を育てるつもりで接すると確実に自身の能力アップにつながります。成長できる好機だと発想を転換するようにしましょう。
例えば、部下の提案や報告などを聞きはしても、それが頭に入っていない上司がいます。その手の上司には、説明する内容の要点が絞り込まれているかを常に整理しながら端的に話す必要があります。また、口下手で、部下への説明が大切だと分かっていても、うまく伝えることができない上司には、アイコンタクトや、あいづち、おうむ返しなど、こちらが真剣に上司の話を傾聴していることを示してあげることで、相手が気持ちよく話すことができ、自信を持って説明してもらいやすくなるでしょう。
また、言っていることがその時々によって違う上司を持った場合、「ほう・れん・そう」をいつも以上に意識することがとても大切です。「念のため確認ですが、○○の案件はこのように進めて問題ございませんか。何か付け足すものや変更点があれば、補足いただけますでしょうか」といった具合に上司と近況をシェアし、マイルストーンを打ちましょう。そうすれば上司の意見にズレが生じても、あるべき方向に戻せたり、上司のプロジェクトに対する認識や当初抱いていた目的を思い出させることにつながります。「仕事はあまりできないけど、報告が多い部下」と、「仕事はできるが報告が少ない部下」の二者択一なら、前者の部下の方が上司には好かれやすいもの。後で、「こうじゃなかった」と上司から怒られるリスクを避けるためにも、積極的に報告をすることを心掛けましょう。
【メソッド4】会社全体の士気や評判を下げる上司には、戦う勇気も必要。
コンプライアンス違反やサービス残業の強制など、会社のためにならないことや法令に引っ掛かること、士気を下げる行為をしている上司に対しては、時として戦う姿勢も必要です。ただ、相手が上司である以上、言い方に留意しなくてはなりません。意見をする場合、「自分はこう思う」ではなく、「○○さんの行いは会社の理念や方針と合致するでしょうか」といった具合に主語を「会社としての立場」で述べること、つまり「上司 対 部下」で話すのではなく、「上司 対 会社の一員」として話すことが大切です。そうした立場で意見をすることで、「個人的感情で反対しているわけではない」と、相手に伝えることができます。もちろん、大きなトラブルに巻き込まれたり、自分が不利な立場に立たされないために、周囲に伺いを立ててコンセンサスを取ったり、上司の上司に相談した上で意見を立てるべきだということも覚えておいてください。
【メソッド5】批判の目を等しく自分にも向ける。
自責と他責の違いを知る。
さて、自分自身を成長させ、成果を残せる人材になりたいのであれば、覚えておくべきことがあります。苦手意識のある上司と毎日の業務で接さないといけなくなった場合、とかく環境のせいにして仕事の愚痴をこぼす人がいます。しかしこれでは、うまくいかない理由を他に転嫁しているにすぎません。人間は自分以外の問題をすらすら列挙できても、自分の問題要因は挙げにくいもの。それでも、自分の足りないところをきちんと自分の落ち度として認める覚悟が必要です。こうした自責と他責を混同せず解釈できている人こそが、相手からも自責を引き出すことができる人間なのです。上司に自らの間違いや失敗を認めてもらうためには、まずはこちらの自責をきちんと認める姿勢を見せなくてはならないことが大前提なのです。
全ては自身の成長のために。
今の20代は、必要以上に遠慮をしたり、何かをやり過ぎて失敗することはしない、とてもバランス感覚が取れた人が多いです。しかし、それと同時にあまり大きな失敗をせず、人から叱責を受けてこなかったためか、打たれ弱いという弱点があるように思います。上司との人間関係につまずいたときは、その上司のためだけに働いているわけではなく、会社全体のため、社会のため、そして自分自身のために働いているということに気付く必要があります。目的意識や志を高く持って、苦手な上司に直面しても、全てに投げやりになってしまうのではなく、「恵まれない上司に恵まれた」と思って、成長の糧にするくらいの気概を持って社会を生き抜いてほしいですね。
PROFILE
古川裕倫/1954年生まれ。早稲田大学卒業後に三井物産に入社し、23年間勤務。その間、ニューヨーク、ロサンゼルスで通算10年の海外勤務を体験。2000年、総合エンターテインメント企業のホリプロにヘッドハンティングされ、取締役執行委員を務める。現在、日本駐車場開発株式会社、情報技術開発株式会社社外取締役。株式会社多久案代表。一般社団法人彩志義塾代表理事。著書に『できる人はすぐ決める!』(大和書房)、『「バカ上司」その傾向と対策』(集英社新書)など。
※この記事は2014/02/12にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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