知的財産管理技能士とは?
知的財産管理技能士(以下、知財技能士)を知るために、そもそも「知的財産」とはどんなものか知っておきましょう。知的財産教育協会は以下のように説明しています。
こうした知的財産を保護する法律には、「著作権法」「商標法」「特許法」などがあり、それらを総称したのが「知的財産法」となります。
それでは、知財技能士とはどんな資格なのでしょうか。
知的財産教育協会によると、知財技能士は「企業や団体の中にいながら知的財産を適切に管理・活用して、その企業や団体に貢献できる能力を有する人」のことを指します。(引用:『はじめての方へ』知的財産教育協会)
先ほど挙げた「知的財産法」について学び、試験によって知的財産を管理できる能力を認められると、知財技能士の資格が与えられます。
この資格は、弁護士や会計士といった業務独占資格(資格がなければ、その業務を行うことが禁止されている資格)ではないため、資格を取得したからと言って法律に関わる専門業務ができるというものではありません。
例えば、「TOEIC」などのように、資格=スキルの証明として考えると分かりやすいかもしれません。
知財技能士は何ができる?
「知的財産を管理」するって、どういうこと?と思われた方もいるかもしれません。具体的に、ビジネスの現場でどのように役立つのでしょうか。
知的財産教育協会によれば、「会社で就業時間後に勉強会を開くために1冊参考書を買って皆でコピーして利用していいか」「Tシャツに流行のキャラクターを入れて売っていいか」「自社のコンテンツが無断で別の会社に利用されていたときにどうすればいいか」といった、知的財産権に関わる幅広い事柄についての問題を、判断、解決できるスキルを身に付けることができるそうです。(参考:『はじめての方へ』知的財産教育協会)
知財技能士の各級には、細かく受検資格が定められており、受検者は自分に合った段階の級を選択することができます。今回お話を伺う2級知財技能士・五味大輔さんは、以前ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントに所属し、映画・テレビのプロデュース業に就いていました。映画の配給に必要な契約書を作る仕事をしていたときに、著作権の知識が培われ、「せっかくならば」ということで受検を決めたそう。
通常、試験は3級から順に受けますが、五味さんは、著作権法に触れる仕事に就いていたため、「2級の受検資格(知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者)」に該当したとのことです。
仕事で知的財産を扱うなら取っておきたい資格
「知的財産管理技能士」(以下:知財技能士)は、年々増加しており、ニーズも増えているそうです。コンテンツ産業に携わってきた五味さんは、その経験から、「コンテンツ産業に少しでも関わる人は資格を取るべき」と話します。
というのも、知識がないままビジネスで知的財産を扱うと、次のような問題があるそう。
「知的財産法の知識のない人は、言葉の使い方を間違えている場合がとても多いんです。
例えば『あるキャラクターの“商品化権”が欲しいんです』と言う人がいますが、そもそも“商品化権”という権利は知的財産法上ありません。言葉から考えると、『あるキャラクターのグッズを作る全権利が欲しい!』と聞こえますが、よく話を聞くと、そのキャラクターがついたTシャツを一枚作りたいだけだったりするのです。
このケースは権利を取るのではなく、権利者に許諾を受ければいいだけの話です。しかし弁護士や法務担当者が、“商品化権”という言葉の意図を間違って受け取ったら、余計な手間や費用をかけて不要な権利を取得してしまうなど、大混乱を起こしますよね。法律的にとても危険なだけでなく、成立したはずの素晴らしいアイデアやビジネスが潰れてしまうことにもなりかねません」
例えば、どんな業種の企業であっても「この写真を会社案内に掲載したい」「このキャラクターを入れてサイトを作りたい」ということはあるでしょう。しかし知識がないまま掲載した結果、後から訴えられて大混乱!ということも起こり得ます。仕事で知的財産を扱う機会があるならば、知財技能士の資格を取得する意義は大きいでしょう。
知財技能士になるメリットって?
知財技能士の資格を取得するメリットをまとめると、以下のような事柄が挙げられます。
◎ネット上での不正流用トラブルから身を守れる
SNSなどでついやってしまいがちな、映像、画像、音楽などの不正流用のトラブルから身を守ることができます。
◎就職・転職に強い
今はどんな企業、行政も情報発信をする時代。一方で正しく情報を発信しないと企業の信用問題に関わるため、知的財産について知識を持つ人材は多くの企業で求められるでしょう。
◎ビジネスチャンスをつかむことができる
五味さんによれば、コンテンツ業界では、動画サイトでの映画やドラマの違法アップロードなどの問題が起きている一方、特許や著作権など本来法律で守られるべき部分をあえて公開することで、業界や分野の活発化などを狙う『オープン&クローズ戦略』という手法もとられることがあるそう。
そのような、法律とビジネスの境目の判断をするためには、知的財産法の正しい知識が必要であり、知財技能士の資格を持っていることが重要になるのだと五味さんは言います。
まとめ
今回お話を伺った五味さんから、20代のビジネスパーソンに向けてこんなアドバイスをもらいました。
「知的財産権について学ぶことを、ただの『勉強』だけにとどめないでほしいです。ぜひ法律の知識を覚え、実際に自分のやりたいことのために利用し、仕事を楽しんでください」
勉強をして、資格を取得できればゴールということではなく、得た能力や知識を駆使してこそ、資格の価値は発揮されます。その意味では、知財技能士はビジネスの現場にすぐ生かすことのできる資格です。何か仕事に役立つ資格を取りたいと考えている人は、知財技能士の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
(参考記事)
「国家試験 知的財産管理技能検定」知的財産教育協会
「知的財産権について」特許庁
著者プロフィール
五味大輔(ごみ・だいすけ)
二級知的財産管理技能士。AIPE認定知的財産アナリスト。スカパーJSAT株式会社グループ WAKUWAKU JAPAN株式会社 編成・放送運行部 編成・制作チーム担当主幹。一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構事務局。大学卒業後、1998年4月よりコンテンツの製作・買付け、音楽ライブ中継、イベントプロデュース業などに関わる。その後、コンテンツの開発・製作・投資事業や、海外マーケットを視野に入れたコンテンツの製作出資などを経て現職。一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構を兼務。
※この記事は2015/10/23にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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