- 自分の長所を知ることはなぜ重要なのか
- 仕事やキャリアアップに活かせる長所一覧と伝え方のコツ
- 自分の長所・強みを見つける方法
- 企業はなぜ長所を重要視するのか? 採用担当の意図から解説
- 長所を伝えるときの注意点とは
- 長所を発揮できる環境についての認識と感謝を
企業の面接を受けるにあたり、「あなたの長所はなんですか?」という質問をされたことはありませんか。長所や強みは、自分が組織のなかでどのように活躍できるかをアピールする一つの要素となります。同時に、自分の強みを知り、さらに鍛えることで、今後のキャリアを前向きに考えることができます。本記事ではキャリアコンサルタントの村井真子さんに伺った話を基に解説します。
自分の長所を知ることはなぜ重要なのか
自分のキャリアプランを組み立てたり、キャリアを見つめ直したりする際に、一般的に言われることが「自分の長所を知ることが自分の強みや可能性を発見する近道になる」というアドバイスです。
自分の長所を正しく理解することの重要な理由について解説します。
長所を活かしたキャリアプランを考えることができるから
キャリアプランは、日々の仕事において道標となるものです。今後なりたい自分を実現するための、具体的な行動計画とも言えるでしょう。
苦手意識のある「短所」を改善していくよりも、人より長けていたり、苦もなくできることである「長所」を見つめた方が、無理のないキャリアプランを立てやすくなります。特に社会人としての経験が浅く何がしたいかわからないという場合は、まず自分のできることから考えると整理しやすいでしょう。そうすることで、キャリアプランの道筋が遠回りにならずにすむ場合もあります。
自己効力感を得やすい領域を知れるから
自己効力感とは、「周囲の期待などに対し、十分に対応できているという確信・自信」です。自己効力感が高い状態で仕事に取り組むと、周囲からも「自信を持って仕事に取り組む人」と認識されやすくなります。そのため、さらにチャレンジングな仕事を任せられるなど、好循環が期待できるのです。
自分の長所を見極め、自己効力感を覚えられる環境に身を置くことは、自身のキャリアデザインにとって重要なポイントと言えるでしょう。
仕事やキャリアアップに活かせる長所一覧と伝え方のコツ
上司との面談や採用面接など、自分の長所を伝える必要がある際には、どのような観点から説明すればいいのでしょうか。
ここでは、2006年に経済産業省が提唱した「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を指す「社会人基礎力」を踏まえて、一般的に長所として挙げられるスキルと、そのスキルをアピールする際のヒントを紹介します。
「前に踏み出す力」
前に踏み出す力(Action)は、「主体性」「働きかけ力」「実行力」をまとめた能力のことを言います。自分の仕事に対して主体性と責任感を持ち、最後までやり抜く力といえるでしょう。
面接でアピールする際には、自身の強みを伝える際に我が強い、協調性が欠けているなどと捉えられないように、周りへの目配りもできていることを併せて伝えましょう。
ここでは各能力についての概要と、面接時にどのようにアピールしたら良いかを詳しく解説していきます。
主体性(当事者意識)
自分の仕事に責任感を持ち、主体的に取り組む姿勢や、「自分ごと」として受け取る意識を指します。当事者意識を鍛えるには、仕事での課題や物事に対し、自分がその課題の責任者であると仮定して考える癖をつけるといいでしょう。
面接では、当事者意識を発揮できたエピソードや、最初は自発的に取り組めなかった業務内容でも、結果的に当事者意識を持つに至った経験やその経緯などを伝えると効果的です。
【関連記事】当事者意識とは?身につけるメリットと高める方法について解説
働きかけ力(推進力)
業務の進捗管理や、メンバー間のやり取りにおいて、多角的な視点を持ち主体的に課題に取り組み、成果を上げる力です。推進力を鍛えるには周囲の意見を取り込み、協力してもらえるよう働きかけることがポイントです。業界の動向や経済のトレンドなど理解を深めながら、全ての業務を「自分ごと」として捉えて、総合的な視野を養いましょう。
面接では、組織内のさまざまな人たちの意見を傾聴し、問題解決に向けてどのように進行管理をしてきたか、業界知識やリーダーシップを活かしながら、どのようにプロジェクトを進行してきたかを中心に伝えましょう。
【関連記事】推進力とは?仕事で意識したいポイントや高める方法を解説!
実行力(行動力)
自主的に目的を設定し、達成するために行動する力です。行動力を鍛えるには、目標を立て、達成のための工程や所要時間、必要なスキルや巻き込むべき関係者を検討します。そして、段階的に行動に移していくといいでしょう。
面接では、過去に目標達成にあたり自分がどのような行動を起こしたかを中心に伝えましょう。その行動が結果的にうまくいかなかった場合であっても、そこで得た教訓やリカバリーをどのように行ったのかを伝えるとよいでしょう。
【関連記事】行動力、上げたくない?新たな仕事にすぐに取りかかれる、思考スキルとは
「考え抜く力」
考え抜く力(Thinking)は、「課題発見力」「計画力」「創造力」をまとめた能力のことを言います。業務をただこなすのではなく、自分で問題提起をして、それに対して課題解決の道筋を立てられる能力を指します。
面接でアピールする際には、自身の強みを伝える際に理屈っぽいなどと捉えられないように、臨機応変な対応が可能なことを併せて伝えましょう。
ここでは各能力についての概要と、面接時にどのようにアピールしたら良いかを詳しく解説していきます。
課題発見力(洞察力)
物事から本質の理解につながるサインを捉え、その意味を読み解く力や、現象に潜む意味を見出し、説明する力です。洞察力を鍛えるには、物事の前提となっている常識や考えに疑問を持ち、自分なりに検証することです。仕事や課題が思うように進まない場合、その表面的な理由だけでなく本質的な課題を探る癖をつけるといいでしょう。
面接では、相手の話を注意深く聞き、語られていない本質や課題に気づいたときの経験を伝えてみましょう。
【関連記事】洞察力とは? 身につけると見えてくる新たなビジネスフェーズ
計画力
課題解決に向けたプロセスを明らかにし、準備する力です。プロジェクト達成のゴールから逆算して工数を見積もる能力ともいえます。計画力を鍛えるには、飲み会の幹事など小さなことでもいいので、イベントや課題の全体統括に挑戦してみるといいでしょう。
面接では、担当した仕事において、スケジュール通りに計画がすすめられた経験や、スケジュールがずれた場合、どのように対応してきたかを中心に伝えてみましょう。
創造力
既存の案件における業務内容や情報を組み合わせ、新しい案件やチーム内の課題を解決するためのアイデアを発見できる力です。創造力を鍛えるには、視野を広げることが重要です。読書やセミナー参加など行動範囲を広げ、未知の分野を学びつつ専門性を高めましょう。
面接では、創造力を発揮したエピソードを伝えるなかで、どのように創造性や革新性を担保にしてきたかを中心に伝えることが重要です。具体的には業界の知識と自分の個人的な興味分野が合わさったアイデアを生み出した経験があればそれを伝えましょう。
【関連記事】創造力とは?どの職種にも求められる創造性とその鍛え方
「チームで働く力」
チームで働く力(Teamwork)は、「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」をまとめた能力のことを言います。所属している組織内にかかわらず、さまざまなステークホルダーの意見を聞き取り、協働ができる能力を指します。
面接でアピールする際には、リーダーシップを取って場をまとめたエピソードやチームで仕事をした際に自分の長所がどう活きたかにフォーカスしたエピソードを伝えましょう。
ここでは各能力についての概要と、面接時にどのようにアピールしたら良いかを詳しく解説していきます。
発信力
多様な人と関わる中で、自分の意見や考えをわかりやすく伝える力です。発信力を鍛えるには、自分の意見が論理的であるかどうか、無意識の思い込みなどがないかを意識することがポイントです。
面接では、仕事で協働するさまざまな立場の人に対し、自分の意見をどのように伝えてきたか、多様な意見をどのようにまとめてきたかを中心に伝えてみましょう。
【関連記事】発信力を高める方法とは? 相手ありきの発信は自分の可能性を広げる
傾聴力
相手の意見を丁寧に聞き取る力です。傾聴力を鍛えるには、相手を否定せず、自分と相手の価値観を切り分けて話を聞くことです。
面接ではさまざまな立場の人、ときには自分と意見や立場が対立する人に対しても耳を傾け、結果的に全員の意見を尊重しながらプロジェクトを推進させた経験を伝えてみましょう。
【関連記事】「傾聴力」ひとつで、好印象に!コミュニケーションが円滑になる、話の聞き方
柔軟性
自分の意見に固執せず、良いと思う意見を素直に取り入れ、変更を受け入れる力です。柔軟性を鍛えるには、未経験の分野への挑戦や新たな趣味をはじめることが効果的です。小さなことでも習慣に変えることで、変化が期待できるでしょう。
面接では、変化や挑戦に対する適応力を強調したエピソードを紹介しましょう。新しい経験で戸惑った際に、どのように克服したかというエピソードも添えると具体性が増します。
情況把握力
自分と周囲の人々、物事の動きや関連性を理解する力です。情況把握力を鍛えるには、まず周囲に対して関心を持つことです。チーム内の人間関係や部署同士の利害関係を含め、誰がどんな意見を持っているのか意識してみましょう。
面接では、素早く情報を整理し、適切な判断をおこなった経験を伝えてみましょう。双方の要求を整理し、問題解決につなげたエピソードなどが効果的です。
規律性
定められたルールや方針、プロセスに従い、一定の基準で一貫した行動や能力、態度をとる力です。規律性を鍛えるには、規律がある理由を理解し目的達成に向けて行動することを意識してみましょう。
面接では、規律を作った経験やその理由を紹介してみましょう。その必要性を周囲に周知し、理解してもらうに至った経験なども添えると、よりエピソードが深まります。
ストレスコントロール力
ストレスを感じたときに、その影響を最小限に抑え、心身のバランスを保つための方法や技術を活用する力です。ストレスコントロール力を鍛えるには、適度な運動やマインドフルネスを取り入れ、ポジティブな思考を持つことが効果的です。仕事中でも、自分が今抱えているタスクや悩みを書き出してみる、上司やメンターに相談するなどの方法でストレスを可視化し、コントロールすることにつながります。
面接では、過去の業務で実際にストレスを感じたとき、どのように冷静に対処しパフォーマンスを維持したかを伝えましょう。
その他の長所一覧
上記以外でも、「まいにちdoda」では「長所」に関連した記事を発信しています。こちらもぜひ自分の長所を見つける際の参考にしてください。
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自分の長所・強みを見つける方法
若手のビジネスパーソンの場合、まだ長所やアピールポイントが見つかりにくいという人もいるかもしれません。自分の長所や短所を見つけるには、どのような方法があるのでしょうか。
家族や友人などからフィードバックを求める
家族や友人・同僚など、自分以外の親しい人に聞いてみることで、自分では気づかない強みを見つけられる可能性があります。
自己分析に利用する心理学モデルの一つ「ジョハリの窓」には、「盲点の窓」と呼ばれるものがあります。これは、他人からは見えているけれど、自分が気づいていないところを指します。自分のいいところや強みについて他者にフィードバックを求めることは、自分の隠れた強みを見つけることにつながるのです。
過去の成功体験を振り返る
自分が過去に成功した経験や、達成した体験を振り返ることも長所や強みの発見につながります。その際、どのような工夫や働きかけによって達成したかを考えることで、強みを見つけることができるでしょう。また、それらの経験のなかでの考え方や行動の仕方の共通項を見つけられれば、自分の思考の癖や強み、今後長所としてさらに伸ばしていくべきポイントがみえてくるでしょう。
情熱を注ぎやすい領域を棚卸しする
人は、自分が情熱や興味を持っていることに対しては、自然とエネルギーを注ぎ努力を惜しまないものです。自分が何に対して情熱を持っているのか、どのような活動やトピックに引き付けられるかを探求してみましょう。それによって強みを見つけやすくなります。
日常的に意識していることに目を向ける
普段から何気なく続けていること、努力していることに長所が隠されている場合があります。たとえば、遅刻せずに仕事に取り組むことは、勤勉性があると言えるでしょう。謙虚さや慎重さ、他人と協調して仕事に取り組むなど、こうした些細な要素にも目を向け、自分の強みとして認めることも大切です。
自己診断ツールを利用してみる
なかなか自分の長所や短所を判断・整理できない場合は、自己診断ツールを利用してみましょう。下記の記事でさまざまなツールを紹介しているので、まずは気になったものから試してみてはいかがでしょうか。思いがけない自分の強みが見つかる可能性もありますよ。
【関連記事】仕事の悩み解消のきっかけに!自分の長所・短所を知る、「はたらく診断」を一挙紹介
企業はなぜ長所を重要視するのか? 採用担当の意図から解説
企業の採用面接などでは、自分の長所に関する質問をする傾向があります。採用担当者が面談時に長所を聞く理由、相手の長所から判断する評価点などを解説します。
企業が長所を聞く理由
面接での長所は、採用後にその人材が組織で活躍する姿をイメージするための材料とも言えます。
長所を聞くことで、相手が企業にどのような価値をもたらしてくれそうか。今までの成功体験やスキルを希望する組織内でも再現可能か、環境が変わっても能力を発揮できるかを確認します。
企業が長所を通して評価している点
採用担当者は、面談時に相手が「自分の長所を、どの程度正確に理解して、客観的に伝えてくれるか」を見ています。さらに、その長所をどのように今までの経験や業務内容に活かしてきたのかを聞きたいという気持ちがあるのです。
長所と短所は表裏一体です。その点をどの程度理解し、カバーしているかを確かめるという側面もあります。つまり、「総合的な自己理解の深さ」と「長所を組織内でどのように活かしていけるのか、その具体的なイメージをもっているのか」を確認しています。
長所を伝えるときの注意点とは
長所はその人の人柄を語る上で欠かせません。嘘や誇張があると信頼が揺らぐことはもちろんですが、事実だけを語るのでは相手に伝わりにくくなります。ここでは、長所を伝える際に注意すべきポイントを紹介します。
具体的なエピソードとともに話す
長所を伝える際は、長所を証明する具体的なエピソードを紹介しましょう。どのように長所を活かしたかを、具体的な過程や結果を整理し、数字を用いて伝えると、アピールポイントが明確になります。
職務内容と関連付けて話す
採用面接の場合は、応募先の職務内容や求められている人物像・スキルを考慮したうえで、自分の長所のどの部分を特にアピールすべきか判断する必要があります。その職場で活躍できるイメージを面接官が持てるようなエピソードを具体的に説明できるとよいでしょう。
短所と捉えられる側面もきちんと伝える
自分の長所を客観的に捉え、受け取られ方によっては短所にもなり得るということを誠実に伝えるようにしましょう。もしそのことで過去に失敗したことがあれば、その事実も素直に伝えることで、自己認識の深さと誠実さが伝えられます。
長所を発揮できる環境についての認識と感謝を
自分の長所を見つけることは、自分自身のキャリアの棚卸しにもつながります。なかなか長所が見つからないという人は、自分の仕事への取り組み方にも注目してみましょう。日々仕事に取り組む中で、自分の長所となるヒントが隠れているはずです。
また長所を説明する際は、その長所を発揮できる環境を調えてくれた存在にきちんと感謝を示すことが大切です。先輩や両親など、長所を活かしてくれるきっかけとなる存在がいるはずです。面接や面談でもその点に言及することで、チームワークを重視しながら仕事ができる人間だというアピールにもつながるでしょう。
監修:村井社会保険労務士事務所 代表 村井真子
社会保険労務士/キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA)。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。LGBTQ+アライ。行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』、監訳に『バウンダリーレス・キャリア上巻』『組織と従業員の間で変化する心理的契約』『経営心理学』など。
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