後輩から信頼される“理想の先輩”の条件とは? ケース別新入社員への接し方

もうすぐ新入社員が入社する4月を迎えます。皆さんの新入社員のときを思い出してみると、「嫌な人だな」という先輩と、「この人についていこう!」と思える先輩の両方がいたのでは。

後輩から信頼される“理想の先輩”の条件とは? ケース別新入社員への接し方

もうすぐ新入社員が入社する4月を迎えます。皆さんの新入社員のときを思い出してみると、「嫌な人だな」という先輩と、「この人についていこう!」と思える先輩の両方がいたのでは。

さて皆さんは、新入社員にとってどちらの先輩になるのでしょうか?
今回は、他の誰よりも後輩から信頼されるような“理想の先輩”になれる新入社員への接し方を、人材教育コンサルタントの田中淳子さんから学びます。

信頼される先輩の5つの条件とは?

まずは後輩にとって、どういった先輩が信頼されるのでしょうか? その5つの条件を伺いました。

■明確なビジョンを持つ

「自ら『こうありたい』『この組織をこうしたい』という思いを持っていて、『誰かが言っていたから』や『上司から言われたから』ではなく、自分の言葉でそれを話せる人は、後輩からの信頼を集めます」(田中さん)

たしかに、しっかりとビジョンを持っている先輩は、頼りがいがありますよね。

■率先垂範

「率先垂範(そっせんすいはん)」とは、人の先頭に立って物事を行い、模範を示すこと。この言葉のように「人に言っていることをちゃんと自分でも実行していること」が信頼される先輩の条件だと田中さんは言います。例えば「納期を守ってね」と言いながら自分は納期を守らなかったり、マナーを注意する先輩のマナーがなっていなかったりすると、発言に説得力がなくなってしまうのだそうです。

■常に学習している

さらに、常に勉強し、成長し続けているということも後輩に信頼される条件。

「俺はもういいんだ」「私ももう年だから」などと言って、学び続けることをやめ、過去の貯金だけで生きているような人は尊敬されないといいます。

■明るく前向き

また、いつもポジティブであることも重要です。

「愚痴をこぼしたり、ため息をついたりとネガティブなオーラを出している人よりも、たとえどんな状況でもいつも前向きに仕事と向き合っている人は、信頼されます」(田中さん)。後輩に限らず、一緒に働きたいと思えるのは後者のような人ですよね。

■誰にでも平等

最後の条件は、平等であること。「相手を見て態度を変えることなく、誰にでも平等で、他者のサポートを惜しまない親切な人」(田中さん)。態度に裏表のない先輩になら、悩みも気軽に相談することができそうです。

ケース別新入社員への接し方

それでは、これらの条件を備えた理想の先輩になるためには、具体的に新入社員にどのような接し方をすれば良いのでしょうか。5つのケース別に見てみましょう。

(1)あいさつ ~あいさつは自分から~

「後輩からされるのを待つのではなく、自分からあいさつしましょう。後輩からあいさつされた場合は、ちゃんと目を見て、きちんと返事をすること。先輩があいさつできていなかったり、あいさつを返さなかったりすると、新人はそれをまねるようになります」(田中さん)

(2)仕事のフォロー ~説明は理由と例を添えて~

「何度も同じ質問をされても、丁寧に説明すること。初心者であれば1回で理解できないのも当然です。ある手順を説明するときには、“何を(What)”“どのように(How)”するかだけでなく、“なぜ(Why)”と“具体的には(For Example)”も添えると、受け手がより理解しやすくなります。
『例えば』と例を出すのが苦手な先輩は意外に多いのですが、それは自分もよく理解していない証拠だったりするので、自分の仕事を見直す機会にもなりますね」(田中さん)

(3)褒める、叱る ~良いことも悪いことも具体的に~

「褒めるときも叱るときも“具体的”に“行動”を指摘すること。『真面目だね』というより『きちんとした書類をつくってくれるね』、『消極的だね』より『会議で1回も発言していなかったね』と伝えるようにしましょう。また、『なぜ○○しないんだ』は責めている印象が強くなるので、『○○をしてほしい』と、期待する行動をリクエストとして伝えるのも有効です」(田中さん)

(4)慰める ~助言よりも傾聴と共感~

「まずは傾聴と共感が大切です。『そんなこと言ってないで、がんばれ』『気持ちは分かるが、仕方ない』『時間が解決するよ』などという言葉は、実は共感してくれていないと感じさせてしまいます」

「また、『こうすればいいんじゃない』とアドバイスをするのも、タイミングが早すぎると『アドバイスしてほしいわけじゃないんだけれど……』と思わせるだけだったりします。
ひたすら後輩の意見を聞き、『なるほど、◯◯と思ったのね』などと、言葉を繰り返してみます。その上で、自分も似た経験があれば、それを語ってあげる。『私も新人のころ、○○をしたことがあって、そのときは……』と語りかければ、後輩も『立派に見える先輩でも、同じ苦労をした日々があったのか』と、気持ちが楽になるでしょう」(田中さん)

(5)勤務外の場 ~距離を縮めるならランチから~

「『アフター5に誘われてなかなか断れない』と愚痴をこぼす新人もいます。新入社員にとって先輩との飲み会はハードルが高いので、誘うのは新入社員との間に十分な人間関係がつくれたと自信が持ててからのほうが良いでしょう。それまではランチで交流を持つのがおすすめ。もしアフター5に誘うのであれば、先輩は多めに払うこと。個人の連絡先を教え、『困ったことがあれば、メールしてね』などと言う先輩もいますね」(田中さん)


いかがでしたか? このように、後輩にとって信頼できる先輩とは、個人としても向上心を持ち続けながら、後輩を含む他者を尊重できる人のことのようです。

4月まであと少し。立派な先輩となれるように、今日から意識し始めてみてはいかがでしょうか。

識者プロフィール

田中淳子(たなか・じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク株式会社にて人材教育コンサルタント、産業カウンセラーを務める。企業の人材教育に携わり約30年。主に、若手育成を担うOJTトレーナー制度の支援やOJTトレーナー向けの育て方研修、社内講師育成講座などを担当。著書は、『はじめての後輩指導』(経団連出版)、『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)など多数。ブログ「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」、コラム「田中淳子の“言葉のチカラ”」「上司はツラいよ」など。


※この記事は2015/03/18にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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