あなたの作業効率はもっと上がる! 鍵となるワーキングメモリーとは?

仕事において、記憶力や創造性、判断能力などをつかさどる脳のパフォーマンスはとても重要です。

あなたの作業効率はもっと上がる! 鍵となるワーキングメモリーとは?

仕事において、記憶力や創造性、判断能力などをつかさどる脳のパフォーマンスはとても重要です。

「脳のパフォーマンスのなかでも『ワーキングメモリー』を強化すれば、さまざまなことを同時進行で処理することが可能になる」と語るのは、脳の活性化について詳しい医学博士の米山公啓さんです。

そこで今回は、脳の記憶領域である「ワーキングメモリー」を、米山さん監修のもとご紹介します。ワーキングメモリーは簡単なエクササイズで強化することができるので、皆さんもぜひチャレンジしてみてください。

ワーキングメモリーは頭の中の黒板


まず「ワーキングメモリー」とは一体なんなのでしょうか。

「『ワーキングメモリー』とは何か目的を持って作業する際に機能する記憶のことです。そのため“作業記憶”と呼ばれることもあります。

このワーキングメモリーの機能を例えるなら、頭の中の黒板といえるでしょう。受け取った情報やその情報に沿って引き出される自分の記憶を、板書して保存する黒板なのです。

人と会話をしている際や文章を読んでいるときも、さまざまな情報がワーキングメモリーに保存され、行動に関与しています。『100円の物を2つ買ってきて』と言われれば、ワーキングメモリーには『100×2=200』という数式や発言者の立場、意図、物、そこから導き出される自分の決断が浮かんでいるのです」(米山さん:以下同じ)

ワーキングメモリーを強化することで得られる3つのメリット


ワーキングメモリーとは作業する上での重要な情報を並べ考える「黒板」であることが分かりました。しかし、ワーキングメモリーを鍛えることでどのようなメリットが得られるのでしょうか。

「ワーキングメモリーは前頭前野にあるのですが、この部分の機能を鍛えることでワーキングメモリーのキャパシティーを広げることができると考えられています。

いうなれば黒板を大きくして作業スペースを充実させるということですね。また、ワーキングメモリーを鍛えるメリットとしては以下の3つが挙げられるでしょう」

(1)決断が速くなる


「決断というのは、外から入ってくるさまざまな情報と、自分の脳にしまい込まれた情報とを比較して、答えを出していく作業のことです。

外から入ってくるさまざまな情報を、より多くの自分の記憶と比較対象できたほうが答えを導きやすいため、黒板の役割を持つワーキングメモリーはより広い(強力な)ほうが有利なのです」

(2)創造性が豊かになる


「創造は、情報と情報とを組み合わせる脳内の編集作業によって生まれます。ワーキングメモリーが強化されれば、自分の持っている脳内の情報を一度にたくさん取り出せるので、たくさんの情報と組み合わせが可能になり、創造性が豊かになります」

(3)複数のタスクが同時進行できるようになる


「ワーキングメモリーは黒板の役目をするのですから、黒板が広くなれば同時進行でいろいろなことをこなすことが可能になります。また、それぞれのタスクの処理スピードも上がるでしょう」

ワーキングメモリーを強化するトレーニング方法


このように、私たちの作業効率を高めてくれるワーキングメモリーを、日々の仕事や生活で強化するためにどのようなことができるのでしょうか。

方法1:電車の中吊り広告でトレーニング


電車の中吊り広告を見てから視線をそらし、書かれていた文章の単語を4つ思い出す。

方法2:カラオケでトレーニング


カラオケで自分のお気に入りの曲や十八番を歌うときは、画面に表示される歌詞をなるべく見ないで歌う。

方法3:会話でトレーニング


会話中はすぐに反論するのではなく、相手の話を記憶する意識を持って聞く。

方法4:一文字漢字日記でトレーニング


毎日、睡眠前に今日起きたことで印象的だったことを4つ思い出し、それぞれの出来事を一文字の漢字に表しノートに書く。

方法5:料理でトレーニング


普段つくっている手慣れた料理ではなく、新しいレシピで新しい料理に挑戦する。

トレーニングのポイント


「記憶というのは、『嫌だ、したくない』と思うと一気に成果が減少します。そのため、まずは自分の好きなものでトレーニングして、楽しい気持ちが持続するようにしましょう」

ワーキングメモリーはゲーム感覚でトレーニング


一時期、「脳トレ」をうたうゲームソフトが流行しましたが、これらはワーキングメモリーの低下を防止する内容であったそうです。


皆さんも、何気ない瞬間を活用してゲーム感覚でワーキングメモリーを強化してみてはいかがでしょうか?

著者プロフィール


米山公啓(よねやま・きみひろ)
1952年山梨県生まれ。作家、医師(医学博士)、神経内科医。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。開業医の傍ら作家活動を続け、現在までに280冊以上を上梓。主な著作に『「健康」という病』(集英社新書)、『もの忘れを90%防ぐ法』(三笠書房)などがある。趣味は世界中の大型客船に乗ること。


※この記事は2015/10/09にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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