めんどうなルールは、変化のチャンス! 現場の若手が主導する「めんどくさい研究所」

営業なのに見積もり作成などたくさんの事務作業、進捗もなく内容も変わらないのに出席必須の定例会議、ちょっとした旅行でもお土産を選んで会社に持っていく暗黙のルール…どれもこれもめんどくさい!

めんどうなルールは、変化のチャンス! 現場の若手が主導する「めんどくさい研究所」

営業なのに見積もり作成などたくさんの事務作業、進捗もなく内容も変わらないのに出席必須の定例会議、ちょっとした旅行でもお土産を選んで会社に持っていく暗黙のルール…どれもこれもめんどくさい!

入社して数年。仕事に慣れて新鮮味がなくなった今、ビジネスシーンのさまざまなところで「めんどくさいなあ」と思うことがありませんか? 職場の各所にひそむめんどくさいことを正面からあらためて考え議論し、解決しよう。そんな目的で、とある社会人サークルが2017年4月に設立されました。

それがITコミュニケーションツールの開発を先導してきた、株式会社ネオジャパンが主催する「めんどくさい研究所」。その内容も気になりますが、IT企業がこんなにキャッチーな研究所を設立した理由はなんだったのでしょうか。

めんどくさい研究所の立ち上げを指揮したネオジャパンの山田志貫さんと、運営を手がける株式会社コンセントワークスの清水昂喜さんに「めんどくさい研究所」のセッションから見えた、現場からすべき働き方改革のアプローチについてお話を伺いました。

現場の働き方から変えたい。「めんどくさい研究所」とは?


「めんどくさい研究所」。

それは関わると厄介なことに巻き込まれてしまう研究所、ではありません。職場にひそむ「めんどくさい」を本気で考え解決することで、ポジティブな働き方を目指すことを目的とした社会人サークルのことです。

職場の問題を洗い出し、それを解決して働きやすい環境へと導くこと自体は、近年よく耳にする「働き方改革」とも取れるでしょう。実際に「めんどくさい研究所」の活動はネオジャパンの働き方改革に関連するものでもありますが、一番のポイントは「現場主導である」ということ。トップダウン方式で仕事の効率化や生産性の向上を掲げ、問題を一掃するのではなく、現場社員が議論することで導きだされた考え方を実際にアクションに移し、現場から問題を解決する姿勢が特徴です。


ネオジャパンは、なぜこのような現場を主体とした「めんどくさい研究所」を設立したのでしょうか?

「コミュニケーションツールの開発をしている中で、クライアント先のコミュニケーション担当の方と現場の様子について話したことがきっかけです。

働き方改革が広まってきたし、より仕事の効率化に結びつくツールを開発しようと働き方に関して話を聞いてみたところ、『トップが残業時間を減らせというから、最近は早帰りするようにしているんですよね』というような回答が返ってきたんですね。さらに話を聞けば、会社のトップの方は働き方改革に前向きなようですが、当の現場社員はどこか他人事にしか捉えておらず、社内に温度差がある印象を受けました。

その時『現場の社員は自分たちが行動を起こさないと実感もないし、結局働き方改革にも前向きになれないのではないか。じゃあ、会社が働き方を変えてくれるのを待つのではなく、現場主体で始められることはないだろうか』と考え、職場の問題を現場の社員が解決するこの活動をひらめきました」(山田志貫さん、以下、山田)

そうして浮かんだ「めんどくさい研究所」の構想。このユニークなネーミングには「職場のめんどくさいことを解決できれば、働き方やその環境をポジティブに再定義できるのでは」という思いが込められているそうです。

「現場がポジティブに働くためにはどうしたらいいのかを、まず考え始めました。社内外の現場の声に耳を傾けてみたら、煩雑な事務手続きとかちょっとした人間関係が働きにくさやストレスを生み、ネガティブの元になっているようだったのです。そんな働きにくさの原因を取り払えたら幸せに働けるかもしれない。そう思って、いろんなネガティブ要素を『めんどくさい』の一言に込め、そのすべてをポジティブに変換するための研究所、『めんどくさい研究所』を発足しました」(山田)

この「めんどくさい研究所」の研究員(参加メンバーのこと)は、管理職ではない入社5年以内の社歴・配属歴の短い会社員の方(年齢制限ではなく、現組織になじみの浅い方)で構成されています。現在の研究員は全員、外部の企業から公募で集ったメンバーだそうです。


「入社5年目くらいといえば、仕事に慣れて部下や後輩もできる世代。周りの状況も見えてくると同時に、会社のルールや伝統に『なんでこんなことしなくてはいけないの?』という葛藤を抱えている年齢でもあります。社会と会社に染まりきっておらず、『そういうものだから仕方ない』と割り切ってもいないんですよね。

そんな彼らにこそ、『めんどくさい』ことについてしっかり考えてもらいたいです。この活動を通じて、無駄だと思っていたことの裏にある大切な理由に気がつけるかもしれない。それは大きな収穫だし、その結果として彼らの働き方もポジティブな方向に変わるかもしれないでしょう? 何より、考えてみて本当に無駄なことだと思ったなら、今後それを変えていける可能性がある世代でもあります。若さとパワー、そして将来性があり、今後の企業風土を作り上げる存在ですから」(山田)

ポジティブな働き方へとシフトするアクションを起こす


では、これまで「めんどくさい研究所」で交わされたテーマを見てみましょう。

2017年4月に開催された第1回目のセッションテーマは、「会社に行くのってめんどくさい」。あまりに根本的な問題だけど、確かにそうだ、と納得してしまう方もいるかもしれません。

「研究員たちには、会社に行きたくなくなるほどめんどくさいこととは、一体どんなことなのか洗い出してもらいました」(清水昂喜さん、以下、清水)

“仕事量が多すぎて、退社するのが難しい”

“基本給が安いため、残業をして稼がなければいけない”

“上司が社内に遅くまで残っているため、先に帰ることができない”

勤める企業や業種がバラバラの研究員たちが集まることで出そろった、さまざまな「めんどくさい」。このストレスの元を愚痴で終わらせず、「なぜ?」を繰り返して議論を深めていきます。そうして、あらゆる問題から共通項を探り出し、最終的には「仕事の人間関係に原因があるのでは」というレベルにまで落とし込む。それに対してどんなアプローチをすれば解決できるのかを考え、実行するまでがゴールです。

「第1回目のセッションで、集まってくれた研究員たちは本気で職場の問題をなんとかしたいと思っているのだと確信できました。そこで、彼らが解決へのアクションを起こせるように、議論を導いてくれる方がポイントになると考えました。そうして第2回からは特別研究員として、経済入門書作家でTVコメンテーターとしてご活躍されている木暮太一氏をディスカッションにお招きしたんです」(清水)

木暮氏は、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートなど、多くの現場でご活躍され、働き方に関する書籍も出版されています。働き方をポジティブに変えるべく集った研究員たちに、自身の会社員時代の経験を交えながら考えるためのものさしをあたえてくれるキーパーソンなんだそう。

特別研究員として「めんどくさい研究所」に携わる木暮太一氏



「第2回は『会議のための、会議ってめんどくさい』というテーマで開催。会議の量を減らして質を高めていく、という考え方にシフトしつつある現在なので、研究員たちからも活発な意見が出ましたね。『事前に会議を行わないと、本会議が進展のない内容になってしまう』という意見や、『本会議には目的意識の低い参加者が多い』という、それぞれの会社が抱える問題点が見えてきました」(清水)

これらの意見に特別研究員の木暮氏が提示したのが、会議における役割分担の重要性。「会議は裁判と一緒で、何かを決定するなら物事の決断を行う“裁判官”としての役割が、情報を集めて判断材料を作るなら“証人”としての役割が必要になってくる。しかし、会議のほとんどは、そのような役割が不明確なことが多いのでは」という木暮氏の指摘を受けて、研究員たちは「役割分担を周囲と共有する方法」など具体的な解決に向けて話を展開していったそうです。

「議論が進むと、若手にはどうしようもない“規則や制度”の壁に当たり、途中から諦めてネガティブな意見が出てくるタイミングもあります。そこで終われば『めんどくさい』は解決できませんよね。木暮さんの実体験に基づくご指摘や、あらためてマインドセットをするため方法論は、研究員たちにとって非常にプラスに働いてくれました」(清水)


自分たちの職場にある「めんどくさい」をなんとかしたいというモチベーションを携えて集まったビジネスパーソンたち。そうした志を持つ若者たちは、アクションの起こし方さえ見つかればその方法にすぐにでもトライして、自分の働き方を変えてみる一歩を踏み出せるそうです。

「セッションの後には『ためになりました』『実践してみたい』など、前向きな感想をもらえています。この研究所の活動を通じて、現場社員のマインドがいい方向に変わってくれれば、いずれ会社が変わるきっかけにもなると思うんです。そうして自分たちでも何かを変えられることに気がついて、仕事のモチベーションがポジティブになるかもしれないですよね」(山田)

「めんどくさい」は20代の若手だからこそ気づける、ビッグチャンス!


現場の社員が集まり、議論を交わして問題の本質を発見する。話し合いを重ねることで見えたアイデアを持ち帰り、自身の会社でアクションを起こしてみる。そうして数人の社員が現場を変え、それが横へ、下へと広がりいずれ新たな風土となっていく。いくつもの「めんどくさい」に少しずつでもこうしたアプローチを繰り返していけば、将来的には現場で働く社員たちによる働き方改革が達成されていくかもしれません。

「将来的に働き方がさらに多様化していくのは、間違いないことでしょう。それとともに会社や上層部が決めた働き方ではなく、自分たちで働き方をデザインする自由と必要も生まれてきます。そんな近い未来を見越して、まずは受け身になりすぎず、自分で決めたことをしてみるのはいいことかもしれないと活動を通じて感じました。そういう工夫が楽しく働くことにつながっていくのではないでしょうか」(清水)

「今すぐに全部を変えるんじゃなくて、今は目の届く範囲で向き合ってみる。それくらいでいいと思うんです。いずれ自分たちが変えるんだ、くらいのポジティブさを持ち続けられたらいいですよね。いつかのどこかで、本当に変えられる立場になるかもしれないですから。その時まで『そういうものだから仕方ない』じゃなくて、『いつか変えてみよう』というマインドを忘れないでいてほしいと思います」(山田)

働き方改革に関する話題を聞いても、「大企業だから、働き方に選択肢があるんだ」「結局はトップが決めた制度だし、現場レベルで考えられた対策じゃない」、そんなふうに自分には関係のないことだと思う人もいるのでは。

20代の立場では、働き方を変えられないのでしょうか。しかし、日々感じている「めんどくさい」をあらためて見つめることで、仕事をする本来の意義、もしくは改善点に気がつけることもあるでしょう。その瞬間からあなたの働き方はポジティブな方向へと向かっているのかもしれません。

「めんどくさい」はきっと20代だからこそ気がつけた、あなたを取り巻く環境を変える最大のチャンス。今一度、職場にひそむ「めんどくさい」に向き合ってみませんか?

(取材・文・編集:東京通信社)

取材協力
株式会社ネオジャパン
グループウエア「desknet's NEO(デスクネッツ ネオ)」、ビジネスチャットシステム「ChatLuck(チャットラック)」、カスタムメイド型 業務アプリ作成ツール「AppSuite(アップスイート)」など、コミュニケーション活性化や業務効率化に効果を発揮する各種ビジネスソリューションを提供しています。日本の商習慣に合わせた製品開発に加え、誰でも使える「やさしさ」「わかりやすさ」を追求し、顧客満足度調査において3年連続で第1位を獲得しています。(日経コンピュータ2017年9月14日号 顧客満足度調査2017-2018グループウエア部門)一般企業から自治体・官公庁まで、業種、規模を問わず幅広いお客様の業務を支えています。
株式会社ネオジャパン:http://www.neo.co.jp
めんどくさい研究所:https://mendokusai-lab.com/

※めんどくさい研究所は年内をもって第一期が終了し、現在は、新規研究員の募集は行っておりません

※この記事は2017/10/24にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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