※心臓の弱い方は閲覧注意※ ホラー×テクノロジーで恐怖体験を仕掛ける、株式会社 闇って?

暑さが続くこの時期だからこそ楽しめるエンターテインメントといえば、背筋がゾクッとあわ立つ「お化け屋敷」や「ホラー映画」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?

※心臓の弱い方は閲覧注意※ ホラー×テクノロジーで恐怖体験を仕掛ける、株式会社 闇って?

暑さが続くこの時期だからこそ楽しめるエンターテインメントといえば、背筋がゾクッとあわ立つ「お化け屋敷」や「ホラー映画」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?

今回ご紹介するのは、2015年に設立された「ホラー×テクノロジー」をコンセプトとする株式会社 闇。設立と同時に公開された企業ホームページが「怖すぎる!」とSNS上で一気に拡散し、1日で10万PVを達成、Facebook上で1万いいね!を獲得するなど話題をさらいました。

人が幽霊に扮(ふん)して驚かせるようなお化け屋敷など、従来のホラーコンテンツに最新のテクノロジーをプラスすることで、今までにない恐怖体験を生み出すことを最大の強みとしている同社。幼いころからホラーに魅了され、株式会社闇を生み出した代表取締役の頓花聖太郎(とんか・せいたろう)さんに、ホラー事業に懸ける思いを伺いました。

ホラーの概念を覆す!? ホラー×テクノロジーの魅力とは


2015年4月1日、閲覧中に次々と恐怖体験が襲いかかる、闇の企業ホームページが大勢の人々を震撼させました。まずは、その公式ホームページをご覧ください。PCサイトよりもよりリアルな体験ができるため、スマホでの閲覧を推奨します。(くれぐれも、心臓の弱い人はご注意を……!)


「お化け屋敷のようなWEBサイト」をコンセプトに制作された同サイト。自分がホラー現象に巻き込まれてしまったかのような怖さに、最後まで閲覧できなかったという人もいるのでは? 同サイトをはじめとした、最新のテクノロジーと掛け合わせ、背筋が凍るような恐怖体験を次々と生み出している闇の事業について、頓花さんはこう話します。

「弊社はホラーを専門領域としていて、ホラー関係のWEB事業やイベントプロデュースをメインに手掛けています。最近ですと、脱出イベントのディレクションやホラーゲームのプロモーションなどの実績があります。設立から2年ちょっと経過したところですが、おかげさまで順調に業績が伸びていますね」(頓花聖太郎さん:以下同じ)


頓花聖太郎さん ギョロっとした目玉だらけのPC、背後から骸骨がしがみつくTシャツなど、オカルト装備な頓花聖太郎さん



ホラーと相性がいいテクノロジーを巧みに組み合わせて、これまでにない恐怖体験を提供する同社。闇が手掛けた案件は、どれも大きな反響を呼んでいるそう。

「たとえば、リゾートバイト紹介サイトのプロモーションとして制作した無料のホラーゲーム風サイトは、スマホやPCのスクロールやタップで操作しながらゲームを進めていくのですが、かなり本格的な恐怖体験ができるゲームとして若者を中心に拡散しました」


サクヤサマ 呪われたリゾートバイト 「サクヤサマ 呪われたリゾートバイト」のプロモーションサイトより



「また、毎年MBSさんと五味弘文さんがプロデュースされているお化け屋敷事業に、当社は今回、技術協力という形で参加していますが、こちらも大好評で。今年は大阪にあるひらかたパークで4~5人がチームになり、閉園後のパークをタブレットを持って歩き回る『呪われた夜の遊園地』というナイトツアーを開催しています。いくつか仕掛けがあって、例えば脈拍数を計測する腕輪を全員につけてもらい、脈拍数が一定値を超えるとブザーが鳴ってお化けが近寄ってくるとか。これなら自然とチームが盛り上がるし、絆が生まれますよね。

このお化け屋敷の一番のおもしろさは、複数人で一つの試練を達成することで、メンバー間のドラマを作ることです。ただ怖いだけじゃない奥深い楽しさを感じていただけると思います」


呪われた夜の遊園地 「呪われた夜の遊園地」公式ホームページより



一度聞いたら忘れないインパクト抜群の「株式会社 闇」という名前については、「いかにもヤバそうな印象を与えたかった」と頓花さん。2015年のエイプリルフールに公式ホームページを公開したことにも、ある思惑が込められていました。

「ホームページを見た人に『企業サイトなのに明らかにおかしい。本当に実在する会社なの!?』という疑問を与えて、話題にしてもらおうと考えました。エイプリルフールだといかにも嘘っぽいじゃないですか。実際、いたずら電話がひっきりなしにかかってきましたけど(笑)。

前述のとおり、当時は1日10万PVを超える勢いで、サイトの開設1時間後に仕事の依頼があったほどです。しかも、僕が昔からずっと憧れていたお化け屋敷プロデューサーの五味弘文さんから! いきなり夢がかなっちゃったよ、みたいな(笑)。このときのご縁から、ひらパーのお化け屋敷でもお仕事でご一緒させていただいています」

公開直後1時間で、憧れの方との仕事を呼び込んだ闇のホームページ。そのあまりの完成度の高さからSNSで反響を呼びましたが、実はなんとたった2週間で制作し、公開まで踏み切ったのだとか。この短期間でそれほどのものを作り上げるホラーへの情熱は、一体どこからやってくるのでしょうか?

ホラーの可能性に懸けてみたい! 周囲を説得し、新会社の設立へ


幼いころから遊園地やお化け屋敷などのエンタメが好きで、各所のお化け屋敷に1人で通いつめていたという頓花さん。キャリアのスタートはグラフィックデザイナーだったそう。

その後、もともと好きだったテクノロジーを扱ってみたいという気持ちが強くなり、イルミネーションを使った演出などデジタルインスタレーション(*)を得意とする株式会社STARRYWORKSへ転職。まるで魔法のような体験をつくり出す同社の技術に惹かれていた頓花さんですが、5年ほど勤務したのちに湧いてきたのは、抑えきれないホラーへの情熱でした。

*デジタルインスタレーション…テクノロジーを用いて、場所や空間を作品として体験できるアート作品や展示のこと

「STARRYWORKSが持つテクノロジーを武器にしてもっとおもしろいことができないかと考えたときに、ホラーとテクノロジーは相性がいいのではとひらめいたんです。いろいろと調べてみたら、ホラーとテクノロジーを掛け合わせたサービスを提供している企業がほとんどないことが分かりました。そこでプレゼン資料を作って『ホラー事業を新規でやりましょう』と社長に持ちかけたのですが、ホラー嫌いの社長にはまったく響かなくて(笑)」

それでもホラーとテクノロジーの未知なる可能性を信じていた頓花さんは「紙資料で説得できないなら、イベントをつくって体験してもらおう!」と思いついたのだとか。そうして頓花さんは社内で募った有志メンバーとともに、これまでにない斬新な肝試しを企画。一週間、ほとんど不眠不休で作業しながらイベントをつくり上げ、社員旅行で実行しました。すると、ホラー事業に反対していた社長の考えが一変したそうです。

「僕がそのとき考えた肝試しは、チームメンバーと一緒にスマホを使って謎を解きながら進む、ゲーム性のある肝試しでした。メンバーが持つスマホの位置座標を見ながら、僕たちがメールで次々と指示を出します。例えばスマホをひっくり返したり、イヤホンを差して2人で片耳ずつ音楽を聞いたりするとクイズの答えが分かるような仕組みをいくつも仕掛けて。

エンディングはグッドエンドとバッドエンドの2つを用意していました。グッドエンドは囚われた女の子を救済できますが、バッドエンドはセーラー服を着たおじさんが襲ってくる(笑)。怖いでしょ? そんな関西ノリも功を奏して、社長をはじめ社員たちにすごく好評だったんです」

社長自身がホラー×テクノロジーのおもしろさを実感したこと、そして頓花さんのホラーに懸ける熱量の高さを体験して感じたことで社長の気持ちが動きます。ただ、所属していたSTARRYWORKSは子ども向けのアプリや絵本の制作を手掛けていたこともあり、それらとホラーコンテンツを分けるため、別会社として闇が設立されるに至ったのです。

一度断られても手段を考えて、仲間を集め再びがむしゃらに挑戦してみる。そうしてつかんだ漫画のような逆転勝利で、頓花さんが見つけた本当に「好き」な仕事への第一歩が開かれたのです。

株式会社 闇 名刺before “闇”の名刺は会社の名前そのままのように、一面真っ黒だが…

 

株式会社 闇 名刺after いつの間にか、血にまみれて真っ赤な指の跡がくっきり…!? なんとこちら、手のひらの温度で色が変わる、ホラテクを駆使した名刺


ホラーは日常生活のスパイス? ノウハウが分かれば快感になる


闇の設立以来、次々と仕事が舞い込み、ホラー漬けの日々を送っている頓花さんは、「ホラーには恐怖に覆い隠された快感がある」と力説します。

「日常って退屈だから、みんな刺激を求めるじゃないですか。そんな中でホラーって、気軽に非日常を演出しやすいフォーマットだと思うんです。カレーの隠し味で使うスパイスみたいな。今のエンタメって脱出ゲームにしろ遊園地にしろ、いかに非日常を提供するかがテーマになっている。そこにホラーはピッタリ当てはまるんです。ホラーならではの非日常感が、僕はたまらなく好きなんですよね」

ただ一方で、「日本人はホラーを楽しむのが苦手」だと指摘する頓花さん。その元凶は、子どものころに皆さんが体験したかもしれない「肝試し」のイメージにあるといいます。

「肝試しは肝を試すゲームだから、驚いたらダメと言われるじゃないですか。でもそれって、本来のホラーの楽しみ方と真逆なんですよ。ギャーギャー言いながら思いっきり怖がるのが楽しいわけで。肝試しで怖がらないのは、お笑いライブを見て笑わないのと一緒。怖いという感情を素直に出せるようになれば、もっとホラーが楽しめるはずです。僕は1人でお化け屋敷を回るときも、ギャーギャー言いますよ(笑)」

キャリアコンパス読者の中にもホラーはちょっと苦手…という人がいるかもしれません。ちょっと意外ですが、闇の社員もみんながみんなホラーが好きなわけではないそう。ただ彼らは「驚かされる」ことは苦手でも「驚かせる」ことを楽しんでいて、ホラーのおもしろさにのめり込んで仕事をしているのだとか。

「アクションゲーム『深夜廻』のスペシャルコンテンツとして制作した『夜の街ではぐれたハルを探せ!』は、社員たちのこだわりが詰まった最高のエンターテインメントになりました。

実は公開日の前日にメイン担当の2人が、『もっとおもしろくするために、作り直したい』って言い出したんです。『さすがにそれは無理でしょ』って止めたのですが、散々説得されて作り直してもらうことに。彼らが寝る間も惜しんでがんばってくれたおかげで何とか間に合い、ユーザーからもクライアントからも大好評でした」

一つひとつの案件のクオリティにそこまでこだわるのは、頓花さんをはじめ社員の皆さんが純粋に仕事を好きだから。加えて、ホラーの奥深いおもしろさをたくさんの人々に伝えたい、という気持ちがあるからでしょう。好きなことに対して努力を惜しまない姿勢を頓花さん自らが貫いていたからこそ、築けた風土なのかもしれません。

深夜廻「夜の街ではぐれたハルを探せ!」 深夜廻「夜の街ではぐれたハルを探せ!」公式ホームページより


常識にとらわれて好きなことをあきらめるのは、もったいない


熱を込めて、ホラーの魅力を余すことなく語ってくれた頓花さん。最後にキャリアコンパス読者に向けて、心から好きなことを仕事にするために、こんなアドバイスを送ってくれました。

「何かやってみたいことがあったら、常識にとらわれてあきらめるのではなく、常識を取り払った上で一度できそうかどうかを自分自身で検証してみることが大事だと思います。僕もホラーを仕事にしたいと思ったとき、いろんな人に聞いたりネットで調べたりする中で、可能性を見いだしたので。また、小さなことでもいいので、一度、成功体験をつかむことも必要かもしれません。

僕の成功体験は社会人になりたてのころに、昔からの夢だったオーロラ鑑賞を達成したことでした。ずっと難しいことだと思っていたけど、実際に行動してみたら案外簡単にオーロラを見ることができた。その時にちょっと勇気を出せば夢はかなえられるんだって思って、その後も願いをかなえるために、自らの足で迷わず踏み出せるようになったんですよ」


簡単にあきらめてしまうのではなく、あらゆる角度から可能性を探り行動に移していったことで、ホラー専門の会社を設立するまでに至った頓花さんのストーリーに、勇気づけられる人も多いはず。

やりたいことがあるならば、固定概念にとらわれず柔軟な視点で可能性を探ってみませんか。あきらめない粘り強さがあれば、これまで見えなかった新たな道がひらけてくるかもしれません。


(取材・文:小林香織)

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識者プロフィール


頓花聖太郎(とんか・せいたろう)/株式会社 闇 代表取締役 1981年兵庫県生まれ。もともとはグラフィックデザイナー。2011年関西の制作会社STARRYWORKSにアートディレクターとして入社。大好きなホラーを仕事にすべく2015年、株式会社 闇を設立。

※この記事は2017/08/23にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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