僧侶に聞いた!「自分をコントロールするのは自分だけ」周りに流されてしまう人が自分らしく生きるための思考術

「周りに流されたくない」。そう思っていても、つい流されてしまう人は少なくないでしょう。そんな自分に嫌気がさすこともあるはず。今より自分らしく生きてゆくには、どうしたら良いのでしょうか? 今回は、書籍『お寺の掲示板』(新潮社)の著者で、浄土真宗本願寺派僧侶・江田智昭さんに「周りに流されず、自分らしく生きるための考え方」について伺いました!

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周りに流されてしまうのは、他人の目を気にしすぎているから

―周りに流されてしまう人が持つ要因は何でしょうか?

江田さん:おそらく、周りの目を気にし過ぎているのだと思います。「周りの目が気になるから人と違う行動をとるのは避けよう……」と考える人は多いんじゃないでしょうか。
現代は、SNSを開くと他人の行動や考えがなんとなく見えてしまう時代です。だから「自分も見られているかも……」と感じるのは不自然ではありません。

ただ私が思うに、人はそこまで他人に興味はないし、見てもないんですよね。自分のことで精一杯。だから周りの目はほぼ気にしなくていいと思っています。

―周りの目が気にならなくなる方法はありますか?

江田さん:まずは「自分は周りから気にされるほど大した人間ではない」と自覚することが大切です。そうすれば「周りに見られている」という自意識は捨てられるんじゃないかな。

また「他人と自分は違って当たり前!」と思うことも大切です。生まれた場所も育った環境も違うわけですから、考えや価値観は異なって当然なんですよね。このことに気付ければ、周りの目が冷たく感じたとしても「そうか、この人の考えは自分と違うんだな」のように、軽い気持ちで捉えられるでしょう。

―SNSに関してはどう対処すれば良いですか?

江田さん:見ても構いませんが、人の行動と自分を比較しないことが大切です。比較しても生まれるのは劣等感やマイナスな感情だけですから。もし比較してしまいそうになったら、SNSと距離を置いてみてください。

お釈迦様の言葉にも「他人のしたこととしなかったことを見るな、ただ自分のしたこととしなかったことだけを見よ」とあります。要するに、人のことを気にする余裕があるなら自分のことをもっと気にしようという意味です。自分のことに集中できれば、SNSも気にならなくなるでしょう。

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周りの人に流されることは悪くない! でもバランスが大事

―そもそも、周りの人に流されることは悪いことですか?

江田さん:私は悪いことではないと思います。ずっと周りに流されず生きるのは大変ですから「たまには流されてもいいや」と思える、心の余裕はあった方が良いでしょう。
ただ、何でも周りに流されてしまうのは好ましくありません。流されるときと流されないようにするときのバランスはとるべきです。

―なぜバランスが大事なんでしょうか?

江田さん:自分で自分をコントロールすることを忘れないためですね。お釈迦様の言葉にも「自己こそ自分の主」というのがありまして、自分をコントロールするのは自分しかいないと教えてくださっています。周りに流されすぎていると、自分で自分をコントロールする感覚を忘れてしまうんです。

―両者のバランスをとるのは難しそうですね……

江田さん:確かに難しいですね。なので最初は「流されてもいいこと」と「流されてはいけないこと」を具体的に区別すると良いかもしれません。あらかじめ区別できていれば「この話は流されてもいいことだ」「この話は流されずに自分で決めよう」と迷わず選択できるので、難しくないはずです。

―「流されてもいいこと」と「流されてはいけないこと」を区別する基準はありますか?

江田さん:決まりはありませんが、私は「死ぬ時に後悔するかどうか」を基準にしています。自分の死が近づいてきて、ふと人生を振り返った時「やっぱり違う道を選んでおけば良かった……」と思うのってすごく辛いじゃないですか。僕は死ぬ時に満足したと思える人生を送りたいので、選択に迷ったときはそう考えるようにしています。

志の中に「利他」の精神があるか、常に問いかけよう

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―「周りに流されずに生きる」と決めた人に、アドバイスはありますか?

江田さん:「常に『利他』の精神があるのか確認しよう」と伝えたいですね。「利他」とは「他者に利益を与えること」という意味で、この精神が欠如していると周りから「自己中心的な生き方」と判断されてしまいます。「周りに流されない生き方」は、ややもすれば「自己中心的な生き方」に捉えられがちなんです。

―「利他」の精神を持ち続けるためのコツはありますか?

江田さん:「自分の生き方や行動は、誰のどんな利益につながるのか」を考えてみると良いでしょう。例えば、私はいま「お寺の掲示板大賞」という企画を続けていますが、決して自己中心的な考えで続けているわけではありません。「仏教の布教につながるはずだ」「日本の仏教界のためにもなるはずだ」という利他の精神を持っています。

―自分が掲げた「利他」の精神が正解なのか、気になります

江田さん:そもそも「利他」の精神に正解はありません。それよりも「利他」の精神を持ち続けていることを、周りに分かってもらうことが大事なんです。
先ほど、私は「人は他人のことを意外と見ていない」と述べましたが、「利他」の精神を持っているかどうかは、無意識に見られていると思っています。
自己中心的な生き方と判断されたり、生きづらさを感じたりしないためにも、志の中に「利他」の精神は持ち続けておきましょう。

【プロフィール】

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江田 智昭●浄土真宗本願寺派僧侶。2011〜2017年はデュッセルドルフのドイツ惠光寺、2017年8月からは公益財団法人・仏教伝道協会の出版事業部にて仏教の布教に勤めている。著書『お寺の掲示板』(新潮社)は、人の心の琴線に触れる本として人気を博している。

取材・文=トヤカン
編集=TAPE

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