「人間力」とは? 仕事で活きる3つの要素と人間力を高める方法

「人間力」とはなんでしょうか。ビジネスにおいてもプライベートにおいても「人間力」が発揮される場面が多くあると思います。「人間力」の定義は様々ですが、内閣府「人間力戦略研究会」が定義している内容が、ビジネスにおいて参考になります。メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんに「人間力」の高め方についてお伺いしました。

ビジネスにおける「人間力」とは

人間力とは人が自立的に生活し、社会に適応していくために必要となる基礎的な力です。社会・経済が日々目まぐるしく変化するなか、仕事を存分に楽しみ、充実感にあふれたビジネスライフを謳歌(おうか)するためには、「人間力の向上」がキーポイントになると考えられています。ビジネスを通じて人間力を高めるために、ぜひ意識していただきたいポイントについて解説します。

あなたの強みや弱みがわかるキャリアタイプ診断(無料)

「人間力」は内閣府の研究会が定義している

内閣府の「人間力戦略研究会」の定義によると、「人間力」とは「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」を意味します。人間力を高めるには、下記の「知的能力的要素」「社会・対人関係力的要素」「自己制御的要素」という3つの要素を総合的にバランスよく高めていくことが推奨されています。

知的能力的要素

学校教育などを通じて培った基礎学力に加えて、専門的な知識やノウハウも身につけ、それらの知識や技術を継続的に高めていく力を指します。培った知的能力をベースにして、物事を論理的に考える力や新しい物事を創造していく力などの応用力をつけていくことも知的能力的要素の向上につながります。

社会・対人関係力的要素

社会性を伸ばし、人とのよりよい対人関係を築くための、コミュニケーションスキルを指します。社会のルールを守り、リーダーシップを発揮して、公共の利益のために尽くそうとする心を持ち、仲間と切磋琢磨していくことで高めていくことができます。

自己制御的要素

自己制御的要素とは、上記の「知的能力的要素」や「社会・対人関係力的要素」を十分に発揮するために、自分らしい生き方とは何かを考え、目標達成のために頑張り、物事に意欲的に取り組んでいく力です。多少の困難があっても、忍耐強く頑張る力も必要となってきます。

あなたの仕事力はどれぐらい? リモートワークにも役立つ仕事力をチェック(無料)

人間力が求められる理由

ビジネスの場で「人間力」が求められる背景にはたくさんの理由がありますが、なかでも近年の特徴として考えられるのは、「予測不能で複雑化する社会環境」「加速化する社会の変革スピード」「新奇性に富んだ事業・業務の増加」「人とつながる力の重要性」という4つの要因です。

予測不能で複雑化する社会環境

経済と人流がグローバル化するなかで、世界経済や社会情勢の変動、病原体のまん延などの突発的な出来事が起こるたび、複雑に変化する社会環境への適応を迫られています。こうした予測不能で複雑化する社会環境に適応するためにも、人間力を高めていくことが求められます。

加速化する社会の変革スピード

デジタル化、IT化のスピードは年々加速し、それに伴って社会のあり方そのものが年々変革しています。メタバースや仮想通貨の誕生、ChatGPTなどの新しい情報サービスの開始など、社会の変革スピードは目覚ましく、それらに適応できる力を養うためにも、人間力を向上させることが必要と考えられます。

新奇性に富んだ事業・業務の増加

AIや自動化装置などの新しい技術が社会に導入されることにより、従来型の業務の多数を占めてきたルーチンワークや単純作業が減少しています。一方で新奇性に富んだ事業・業務が増加し、人間力を駆使した新たな事業の企画、新しい技術を活用したサービスの考案、運営を遂行する力が求められています。

人とつながる力の重要性

上記の3つの要因に適応するためには、多くの人とのつながりを持って良好な対人関係を築きながら、互いの知識や技術を持ち寄り、ともに課題を解決していく意識が必要です。そのためにも、多様性を認め、互いの個性を生かしながら困難を乗り越え、新しい社会に積極的に参画していこうという人間力の発揮が求められます。

<関連記事>社会人基礎力を高めるには?具体的な鍛え方を紹介

ビジネスにおける人間力を高める9つの要素

人間力は人が自立的に生活し、社会に適応していくために必要となる基礎的な力です。社会人にとっては、変化の激しいビジネスの場に適応し、はたらく仲間とともに仕事を通じてお互いを成長させ合うための重要な原動力になります。本項目では、内閣府の「人間力戦略研究会」によって定義された人間力を構成する3つの要素「知的能力」「社会・対人関係力」「自己制御」をベースに、ビジネスにおいて人間力を高める9つの要素を解説します。

【知的能力的要素】

1.インテリジェンス

学校生活で身につけた基礎学力をベースにし、仕事を通じてさらに専門性やスキルを高め、各分野に特有のノウハウを蓄積しながら、社会人としての知性や技術力を継続的に高めていきます。

2.ロジカルシンキング

物事を論理的に考え、課題解決に向けて取り組んでいく力です。理不尽なことがあっても感情的にならず、なぜそうなったのかを分析し、合理的な打開策を考えます。

3.新しい価値を創造する力

従来の慣習にとらわれ、前例の踏襲ばかりを意識していては、時代の変革スピードについていくことはできません。社会の流れを読みながら、新しい知見や情報を取り入れ価値ある物事を企画して創造する力を高めることが必要です。

【社会・対人関係力的要素】

4.コミュニケーションスキル

変革する時代のなかでは、常に一定の人とばかり仕事を続けていくことは不可能です。部署やチームの異動が頻繁に発生することを想定し、誰とでも友好的に会話し、信頼関係を築いていけるコミュニケーションスキルは重要です。

5.リーダーシップ

いついかなるときに新しいプロジェクトが発生しても、自分が率先して周囲を引っ張っていけるようにリーダーシップを意識することが必要です。そのためには、上司からの指示を待つのではなく、担当している仕事のなかから想定できる課題を提起して、積極的に周囲の協力を得ていく姿勢が必要です。

6.全体の利益のために尽くす力

自分の都合、自分だけの利益を考えるのではなく、組織や社会にとって何が必要かを考えて動く意識が必要です。そのためには、常に自ら率先して組織や社会のルールを守り、周囲をサポートしていくことも大切です。

7.切磋琢磨し合う力

一人の力でできることには限界があります。周囲の人と知恵を持ち寄り、互いに教え合い、学び合うことによって、互いの能力を高めていくことが必要になります。そのためにも、互いの強みや課題を率直に伝え合い、自己研鑽し合う意識が求められます。

【自己制御的要素】

8.セルフコントロールスキル

自分自身を常に冷静に見つめ、やるべきことに取り組む意識が必要になります。そのためにも、基本的な生活リズムを崩さず、常に自分を律して生活することが大切です。

9.前進する意欲

ビジネスの場では、困難に直面しても悲観的にならず、自分や仲間の強みを生かしながら前進する意欲を持つことが求められます。そのためにも、周囲の人や自分が置かれている環境、物事をできる限り良い方向から捉えるように意識することが重要です。

人間力がある人の特徴

人間力のある人は、仕事やプライベートを通じていくつもの工夫や努力を重ねています。社会人としての人間力を高めている人に、よく見られる特徴をご紹介します。

1.知的好奇心を失わず、新しい知識を貪欲に吸収している

複数のニュースソースに目を通し、理解した知識を人に伝えることによって、知識のインプットとアウトプットを頻繁に行っています。

2.物事を論理的に考え、分析している

常に理性で物事を考えています。感情に流されずに、理由や根拠を明確にしながら、ロジカルに説明するよう意識しています。

3.失敗を恐れず、新しい物事にチャレンジしている

既成概念にとらわれず、時代の流れをよく読みながら、これからの時代に求められるものを考えて企画し、提案しています。

4.自分から積極的に話しかけ、人の話をよく聞いている

誰にでも自分から声をかけて、笑顔であいさつをしながら会話を楽しんでいます。一方的な会話にならないよう、周囲の話もしっかりと傾聴しています。

5.率先してチームをまとめ、チームを率いている

臆せずに自ら手を挙げてリーダー役を引き受け、メンバーを率いています。仲間の意見も積極的に取り入れて、チームをまとめています。

6.時間やマナーを守り、周囲に良い影響を与えている

時間やルール、マナーを守ることで、組織や社会が円滑に回るように尽力しています。その姿が、周囲からの信頼につながっています。

7.仕事を通じて学び合い、成長し合うよう働きかけている

職場の仲間と勉強会などを企画し、関係構築に努めています。互いを良きライバルと捉えながら、成長できるように切磋琢磨しています。

8.ストレスをかわし、軽減する力を身につけている

日々のストレスで疲弊しないよう、心身をメンテナンスしています。悩みは周囲の人に相談し、一人で抱えないようにしています。

9.常にポジティブに考えて行動している

ネガティブに思えることも見方を変えることでポジティブに変換し、物事の良い側面を見出しながら困難を打開していくように努めています。

人間力を高める3つの方法

ここまで「人間力」を高めるために必要なことについて解説してきましたが、「自分には難しそう」「やることが多すぎて挫折しそう」と躊躇される方も少なくないかもしれません。ですが、難しく考えることはありません。日々の仕事の中でほんの少し工夫をするだけで、人間力は着実に向上させることができます。今日から実践できる方法を3つお伝えします。

人間力を高める方法①常に学ぶ姿勢を忘れない

忙しい日常の中でも、意識一つで学びを深めることは可能です。情報を小まめに入手しながら、新しいキーワードに気づいたときにはその都度調べましょう。得た知識は、人に伝えることによって定着させていきましょう。この繰り返しによって知識はアップデートし、知性は磨かれていきます。

人間力を高める方法②人とのつながりを大切にする

仕事の仲間を大切にし、毎日気持ちよくあいさつをしましょう。困っている人がいたら、自分から積極的に声をかけてサポートをしてあげることです。プロジェクトで初めて関わる人や新しく入社した人とも自ら交流し、コツコツと人脈を拡げていくようにしましょう。すると、人とのつながりは自然に広がっていきます。

人間力を高める方法③発想の転換を意識する

ストレスをためてしまうと、柔軟な発想が湧かなくなってしまいます。悲観的な思考に気づいたら、同じ物事を別の側面から捉えることによって、できるだけ楽観的に考えられるように発想を転換させていきましょう。すると、発想が柔軟になり、多角的に物事をみられるようになります。

人間力は日々のちょっとした心がけから

人間力は、日々のちょっとした心がけを継続することによって磨かれていきます。上記でお伝えしたポイントを意識することで、毎日少しずつでも人間力を向上させ、一歩一歩、成長していきましょう。人間力が向上すれば、仕事のやりがいや充実感も高まり、多くの人と協力しながらビジネスを進めていく楽しさを強く実感できるようになると思います。

【プロフィール】
大美賀 直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持つ。「こころと人生と人間関係のベストバランス」をテーマに、カウンセリング、講演、執筆活動を行う。働く人のメンタルケアに関する造詣も深く、テレビ、新聞、雑誌、インターネットを中心に情報を発信。企業研修でも好評を得ている。『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』『サイボーグを目指さないことにした働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『どうして会社に行くのが嫌なのか?』(アスキー新書)などの仕事に関する著書も出版。

大美賀直子|メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 – 大美賀直子(メンタルケア・コンサルタント)の公式HP (mentalcare555.com)

【関連記事】
仕事でキャパオーバー…危ないサインに気付き適切な対処をしよう!
モチベーションを上げる方法10選!専門家監修のモチベ解決策
効果的な休み方とは? 疲れをため過ぎないコツを精神科医が紹介
なぜ人は不安になるのか?不安を軽減する5つの方法

page top