フォロワーシップとは? 必要な理由と実践する際のポイントを解説

フォロワーシップとは、目標達成に向けてメンバー同士が自律的に影響を与え合う能力のことです。その必要性や実践する際のポイントなどについて専門家の監修に基づいて解説します。

フォロワーシップとは? 必要な理由と実践する際のポイントを解説

ビジネスにおいて、リーダーに従ってばかりではなく、自らチームや会社のために働きかける「フォロワーシップ」が重要視されています。コミュニケーション論を専門とし、企業の組織づくりにも携わっている拓殖大学商学部教授の長尾素子さんにうかがった話を基に、フォロワーシップの概要や必要な理由、実践するポイントを解説します。

フォロワーシップとは?その概要を解説

フォロワーシップとは?その概要を解説

「フォロワーシップ」とは、チームが目標を達成できるよう、メンバー同士が自律的によい影響を与え合うことです。

チームをオーケストラに例えるなら、リーダーは指揮者、メンバーは各演奏者に相当します。リーダーは奏者一人ひとりの能力を発揮させ、良質な音楽が奏でられるよう全体を導く能力が求められます。

これに対し、メンバーは「チーム全体で良質な音楽を奏でる」という目標のもと、自分の役割を考え、行動し、チームとしてのパフォーマンスを最大化させる能力が求められるのです。

「フォロワーシップ」と「メンバーシップ」の違いは?

「メンバーシップ」とは、組織を構成する一員になると自動的に与えられる立場・役割のこと。例えば、プロジェクトメンバーになった場合、そのプロジェクトのミーティングに出席する立場と記録係などの役割が付与されるなどがこれにあたります。

一方でフォロワーシップは、メンバーがチームに影響を与えることを意味します。メンバーという「役割」に、意識的・能動的アクションが伴うと「フォロワーシップ」になるというイメージです。

フォロワーシップは、チームや組織の状況を変えるような影響力を秘めているといえます。

「フォロワーシップ」と「リーダーシップ」の関係性は?

フォロワーシップとリーダーシップは「鏡」のような関係ともいわれ、相互に作用します。

例えば、強権的なリーダーの下では従順なフォロワーが生まれ、民主的なリーダーの下ではフォロワーの自由な発言が多くなることがあります。逆に、フォロワーが寡黙だとリーダーは一人で意思決定し、物事をどんどん進めていくようになるかもしれません。

このように、フォロワーのパフォーマンスはリーダーが影響を与えた結果であり、リーダーのパフォーマンスはフォロワーの影響によるものだといえます。

フォロワーシップが求められている理由や背景とは?

フォロワーシップが求められている理由や背景とは?

次に、ビジネスシーンでフォロワーシップが求められている理由を見ていきましょう。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が推進されているから

終身雇用が当たり前だった時代では、価値観の似たメンバーが集まりやすく、リーダーが指示を出してメンバーがそれに従う組織づくりが機能していました。しかし、今では転職が珍しくなく、外国人や障がい者など多様な人々が同じチームで働く機会が増えています。

成果を出すためには、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受け入れ活用すること)が必須で、メンバーがフォロワーシップを発揮して自律的に影響を与え合い、それらを統合したり、相乗効果を生み出したりするような新しい組織づくりが求められているのです。

VUCA(ブーカ)の時代だから

VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまい性)の頭文字からなる言葉で、先行き不透明で複雑な社会や経済情勢などを表しています。

今はまさにVUCAの時代で、象徴的なのがコロナ禍です。これまでの常識が通用せず、世界全体が出口の見えない迷路でさまよう中、チーム全員で力を合わせて前進しなければなりませんでした。まさにフォロワーシップの必要性を痛感させられた出来事でしょう。

コト消費の時代に、新しい価値を提案するため

日本の国際競争力が低下し、これまでと同じように「いいモノ」を作れば売れる時代から、付加価値のある「コト」へと消費が向かう時代となりました。また、国内マーケットは人口減少に伴い、縮小が進んでいます。

そのような時代において企業が求めるものの一つが、新しい価値の創造です。メンバー一人ひとりのアイデアが言語化され、チームで議論され、商品化され、世に出ていく。そのような活発なビジネス活動を行うには、自律的な影響力、すなわちフォロワーシップが必須です。

コンプライアンスへの注目が高まっているから

ハラスメントやインサイダー取引など、企業のコンプライアンスが以前にも増して注目されるようになりました。コンプライアンス違反の多くは、それを放置してしまうリーダーシップの欠如と関わりがあると考えられています。

逆に言うと、盲目的にリーダーに従うのではなく、メンバーたちが自律的に影響を与えることが公正な組織づくりにも欠かせないと言えるでしょう。

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フォロワーシップを発揮すると得られる効果とは?

フォロワーシップを発揮すると得られる効果とは?

ビジネスシーンでフォロワーシップを発揮すると、どのような効果が得られるのでしょうか。組織、メンバー個人それぞれの視点から見ていきましょう。

個人の効果(1)…仕事のモチベーションがアップする

誰にでも所属の欲求、承認の欲求があります。フォロワーシップを発揮してチームに貢献し、「このチームが自分の居場所だ」と感じられると、所属の欲求が満たされます。

さらに、上司から頼りにされると、承認の欲求が満たされ、「もっと期待に応えたい」というように仕事へのモチベーションにつながっていくのです。

個人の効果(2)…上司との信頼関係が構築できる

フォロワーシップを発揮することは、上司に対する「あなたをサポートします」といったメッセージにもなります。

例えば、上司が意思決定しやすいように情報を収集して提示したり意見を述べたりすると、上司から信頼が得られるでしょう。チームの大切な一員として頼りにされれば、それに応えたいというモチベーションにつながり、さらに評価されるという信頼関係が醸成されます。

組織としての効果(1)…組織が活性化する

フォロワーが能動的に考えを言葉にして、チームで共有されるようになれば、質疑応答や議論が活発になり、コミュニケーションの流れがよくなります。

人の体に例えると、コミュニケーションは血液です。血流がよくなると細胞が活性化するように、コミュニケーションの流れがよくなると組織全体が元気になるでしょう。

組織としての効果(2)…新しいものが生まれやすい

フォロワーシップは、チームの力を最大化させる働きかけです。チームへの影響力は、一人のリーダーよりもチーム全員のほうが大きくなるのは明白でしょう。

相乗効果により、さらに大きな成果や斬新なアイデアが生まれる可能性もあります。成果はすぐに出なくても、将来的な商品開発や組織改革、イノベーションにつながるかもしれません。

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フォロワーシップの2つの軸とは?

フォロワーシップの2つの軸とは?

そもそもフォロワーシップという用語は、アメリカ・カーネギーメロン大学の教授だったロバート・ケリー氏が1992年に著書『The Power of Followership』で提唱したのが始まりです。ケリー教授は、フォロワーシップを2つの軸で説明しています。

軸その①批判的思考

リーダーが示した方針や戦略、指示内容などをそのまま受け入れるのではなく、異なる視点を提供したり、建設的な提言を行ったりすること。

軸その②積極的関与

「自分ごと」として当事者意識を持ち、リーダーが示す方針や戦略、指示内容に自発的に影響を及ぼすこと。

フォロワーシップの5つのタイプとは?

フォロワーシップの5つのタイプとは?

フォロワーシップは先に解説した2つの軸を基に、下記の5つのタイプに分類されています。この5つのタイプは、現在の自分が職場でどのような立ち位置にいるのかを把握するための参考になります。

模範的フォロワー

批判的思考も積極的関与も強いタイプ。リーダーに対して建設的な意見を述べ、常に能動的に関与しようと努める、リーダーにとっては頼もしい存在です。

孤立型フォロワー

批判的思考が強く、積極的関与が弱いタイプ。建設的な意見を述べる存在です。しかしその一方で、汗をかかず、意見が理想論や「あるべき論」になる傾向があり、フォロワーとしては孤立しやすくなります。

順応型フォロワー

批判的思考が弱く、積極的関与が強いタイプ。リーダーの指示や意見に従う傾向があり、協力的なのでリーダーからの信頼は得られやすい存在です。ただし、「イエスマン」になる可能性もあります。

消極的フォロワー

批判的思考も積極的関与も弱いタイプ。消極的で指示されるまで動かない傾向があります。指示があればその範囲内で働きますが、自ら考えて行動することは稀です。

実務型フォロワー

時と場合によって批判的思考と積極的関与の度合いをコントロールするタイプ。リーダーが誰であるか、どのような仕事内容かによってパフォーマンスを変化させるため、現実的である一方で一貫性がない印象があります。

リーダーから見て理想的なのは、批判的思考と積極的関与をバランスよく持ち合わせている「模範的フォロワー」です。そこで次のブロックでは、批判的思考と積極的関与を養う、つまりフォロワーシップを高めるための方法を解説します。

フォロワーシップを高める方法とは?

フォロワーシップを高める方法とは?

フォロワーシップをより高めるためには、次のような方法がおすすめです。

批判的に考えてみる

「ほかに思考の軸はないか」「別の視点はないか」と物事をあらゆる角度から見るクリティカルシンキング(批判的思考)を取り入れてみましょう。リーダーの決定を建設的に批判する思考は、無批判に受け入れるよりもリーダーを手助けすることにつながります。

当たり前を一度疑う、課題について複数の解決法を探るなど、思考のトレーニングを積むとよいでしょう。ひたすらアイデア出しをする“ひとりブレインストーミング”も効果的です。

心理的安全性を構築する

メンバーと意見を交わすためには「心理的安全性」の担保が必要です。心理的安全性とは、ストレスなくどのような意見も率直に言える環境のこと。

日頃からチームのメンバーとコミュニケーションを図り、信頼関係を築きましょう。特に苦手だと思う上司や同僚に相談や報告をよく行い、できるだけよい関係を育めるよう意識してみてください。

積極的なフィードバックを心がける

ほかのメンバーのパフォーマンスや発信に対して、積極的にフィードバックをしましょう。

「おかげで助かりました」「そのアイデア、いいね!」など、ささやかな感謝や感想を伝えるだけでもかまいません。それだけでもチームの雰囲気がよくなり、働きやすい環境づくりに役立ちます。

さらに、自分の強みを知り、ほかのメンバーのためにどう役立てるか考えることにつながります。支援を求められたらすぐフォローできるように準備することにもなるのです。

チームへの関わり方を“外”で学ぶ

社外、組織外で開催されている研修会や交流会に積極的に参加してみましょう。いつもと異なるメンバーで、どのように「場」を盛り上げ、スムーズに進行させられるか。自分の役割を考え、実践するよい機会になるはずです。

他の人がどのようにフォロワーシップを発揮しているのか学ぶこともできます。また、サッカーや野球などのチームスポーツ、コーラスやバンドなどのグループでの音楽活動もおすすめです。チームが成果を上げるために自分がどう関わればよいのか、フォロワーシップを鍛えられるはずです。

フォロワーシップを実践する際のポイントは?

フォロワーシップを実践する際のポイントは?

最後に、フォロワーシップを実践するために役立つポイントを2つ紹介します。

自分やメンバーの強みと限界を知る

自分自身はもちろん、リーダーを含むほかのメンバーは何が強みで、何が限界なのか理解することが大切です。すると、チームの成果を最大化するために自分が何をすればよいのか見えてきます。そこから自分ができる役割をほかのメンバーに見える形で果たしていくとよいでしょう。

ネットワークを広げ、巻き込み力を養う

自分の強みを常に磨き、増やしていくことでフォロワーシップの幅が広がります。一方、限界については無理をせず、ほかのメンバーがその部分を補いやすいように促しましょう。あるいはチーム外の人に支援を求めることが必要かもしれません。

その際に役立つのがネットワークの広さです。適材適所の人を巻き込めるようになると、それがまた強みになります。

フォロワーシップを磨き、ますます求められる人に

VUCAの時代、フォロワーシップはますます必要になっていくでしょう。

これまでの常識が通用しないとき、メンバーそれぞれが自律的に考え、影響を与え合うことでチームの成果が最大化すると期待されています。日頃から自分の強みを知り、役割を果たしていくなど、フォロワーシップを高めるためにできることを実践していきたいですね。

監修:長尾素子
拓殖大学商学部教授
株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY(東京都英語村)取締役COOおよび一般社団法人 社会人基礎力協議会 代表理事を兼務。コミュニケーション論を専門とし、グローバル人材の育成、社会人基礎力の育成に携わる。また、企業・団体における研修事業にも関わっている。

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