決断力って鍛えられる? ビジネスで必要な理由と決断できる人の特徴を解説

決断力とは、「複数の選択肢から責任と覚悟をもって決定し、実行する力」のことを指します。この記事では決断力の定義や決断力がある人の特徴、ビジネスで役立つシーン、これから決断力を鍛える方法をご紹介します。

決断力って鍛えられる? ビジネスで必要な理由と決断できる人の特徴を解説

ビジネスシーンでは、なにかと決断を求められがち。「決断力」が足りないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで、ビジネスで決断力が求められる場面や、決断力がある人の特徴、今から決断力を鍛える方法などについて、社会人基礎力協議会の代表理事である長尾素子さんに伺いました。

そもそも「決断力」とは?

そもそも「決断力」とは?

決断力とは、「複数の選択肢から責任を持って決定し、実行する力」のこと。立場や役職にもよりますが、単に実行するだけではなく、結果責任を引き受ける覚悟を伴うものです。世の中には、選択肢から決定することができても責任を取る覚悟がない人もいますし、決定はするけれど行動に移さない人もいます。また、結果について責任転嫁をする人もいます。いずれも決断力があるとは言えず、「選択」「決定」「実行」「結果責任を負う」というすべての要素がそろって初めて「決断力がある」と言えるのです。

「判断力」との違いは?

「決断力」と似たニュアンスで使われる言葉に「判断力」があります。判断は、情報に基づいて「何が正しく、適切か」を見分ける力です。決断は、ある判断に基づいて行われるアクションだと言えます。決断は、「選択し、決定し、実行する」ものですから、判断力は決断力の中に含まれると言えるでしょう。

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決断力が求められる場面とは?

決断力が求められる場面とは?

ビジネスにおいて、どのような場面で「決断力」が求められるのか、具体的な例を見ていきましょう。

今後のキャリア選択をするとき

仕事をひととおり覚え、課題も見えてくるようになれば、誰でも「このままでよいのか」と今の仕事に疑問を感じるときがあります。そのときに、「転職」「現状維持」「思い切って起業する」など、人生の決断を迫られることがあるかもしれません。

多くの人は、転職や起業が頭をよぎっても、現状維持に流れていくでしょう。前向きに決断した結果の現状維持ならいいのですが、何も決断しないで時間が流れていくとすれば、後悔につながるかもしれません。「とりあえず、このままで」と流されるのと「このスキルを身に付けるまではこの会社にいる」という目標ありきの残留とが違うように、「決断を保留する」ことと「決断力を持って行動する」ことは同じ結果に見えても中身が違います。「決断力」があれば、複数の選択肢の中から将来なりたいビジョンを見据えたうえで最適な選択肢を選ぶことができるのです。

マルチタスクが増えたとき

複数の仕事を同時進行でこなさなければいけないとき、求められるのは優先順位をつけて対応する力です。例えば、午後にある会議の資料準備をしている最中に、担当する顧客から急ぎの注文が入り、部長から呼び出しを受けてメモを持っていくと、午後から急な来客があり同席を命じられ…といった具合に、突発的な業務が起きることも多々あります。そんなときに、何を優先してどのように対応するのかを決断して行動するために「決断力」が役立ちます。

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決断力がない人の特徴は?

決断力がない人の特徴は?

決断力が足りない原因のひとつは、経験の幅の少なさです。同じ環境・限られた人間関係の中で長く行動してきた人は、物事を俯瞰してとらえる能力が弱くなる傾向にあります。ここからは「決断力がない人」に共通する特徴を見てみましょう。

人の意見に左右される

経験が少ないと、人の意見に左右されがちです。特に、ベテランと呼ばれる人からの意見には「違うのでは」と内心思いつつ従うケースも珍しくありません。また、他者の意見を尊重するあまり、さまざまな人の意見を少しずつ取り入れた結果、自分で決断できなくなる「調整型」と呼ばれるタイプの人もいます。

自分に自信がない

自分に自信がない人は、決断にも自信が持てません。結果に覚悟を持てない人とも言えます。失敗すること、マイナス評価を受けること、批判されることを恐れて、いつまでも決断できずに問題を先延ばしにしてしまうのです。

責任を持つことを恐れている

悪い結果になったときに不利益を被ることを恐れて、決断する前に予防線を張る人がいます。例えば、「部長の知り合いからの依頼だから、本当は気が進まないけど進めよう」といった具合です。結果が悪いとそれを言い訳にしたり、思わしくない結果が出ると「部長の推薦があったから信用した」と責任転嫁したりする傾向があります。

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決断力がある人の特徴は?

決断力がある人の特徴は?

「決断力」がある人にはどのような特徴があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

自分の考えをしっかり持っている

自分の考えといっても、独断的でひとりよがりな視点ではありません。あらゆる情報を受け入れ、他者の意見を聞き、柔軟に取り込むことで養われる「自分なりの価値観」のことです。こういったさまざまな価値観に触れたうえで、最終的に責任を持って自分で判断し、決定していく姿勢が「決断力がある」と評価されるのです。

責任感が強い

自分の決定に対して責任を持つというのは、その決定に対して他者から協力を得るための信頼を醸成していくものです。「あの人はいつも大きなことを言うけれど、責任は取ってくれない」という場合には、何かを決断しても他者から信頼されず、「ただ決めただけ」で終わってしまいます。人がついてくるからこそ、決断したあとのアクションを起こすことができ、結果として、責任感の強い人が「決断力がある」と言われるようになります。

失敗を恐れない

決定が必ずしもよい結果を生むとは限りません。「責任感が強い」ともつながりますが、結果について責任を取ることができれば、その失敗を次の成功への糧とすることができます。

また、失敗を繰り返さないために、「なぜよい結果にならなかったのか」「どこで選択を間違えたのか」という見直しを行い、次に活かすようにしているのです。

何事も先延ばしにしない

限られた情報や選択肢から決断が求められるあまり、時間がかかってしまうことは多々あります。先延ばしにするというのは、ある意味「先延ばしという決断をした」ことと同じです。同じように時間がかかったとしても、そこに責任と覚悟が伴うものであれば、それは立派な「決断力」ですが、多くの場合「先延ばしにする」というのは無責任に放置することを指します。そのため、一般論として「決断力」のある人は「先延ばしにしない」と言えます。

視野が広い

決断をするにあたって、さまざまな選択肢を用意したり、結果についてもあらゆる要因を考慮したりする必要があります。視野が狭ければ、それだけ選択肢は狭まり、最適な決断ができているのかどうかもわからなくなってしまうでしょう。「決断力」のある人は、その決断によって誰にどのような影響を及ぼし、どのような結果を生むのかを予測できる視野の広さを持っています。

覚悟がある

「覚悟」は決断する際の姿勢を指します。近い意味合いである「責任感」は「ある・ない」といった状態を指しますが、「覚悟」は「する・しない」といった能動的な姿勢です。「自分の決断した結果がどのようなものでも、責任を取る覚悟がある」という意思表示は、周りの人の協力を仰ぐにあたって大切な姿勢です。

先見性がある

「決断力」というと「何かを決断する力」と思ってしまいがちです。しかし、「決断力」は決定すること自体を目的化するのではなく、その決定によって影響を受ける人たちの役に立つことが目的であり、それを見通す力が必要になります。例えば、「新商品を発売する」「旧ブランドのイメージを一新する」といった決定により、人や企業にどのような影響が出るのか、つまり先の結果まで考えたうえでの決断が重要なのです。

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決断力があることのメリットとは?

決断力があることのメリットとは?

「決断力」があると、仕事をするうえでさまざまなメリットがあります。具体的な例を見ていきましょう。

仕事をスピーディーに進めることができる

「決断力」があると、取捨選択や優先順位の決定も早くなり、その分行動に移すスピードがアップします。そのサイクルを回すと結果が見える化されやすくなり、仕事をさらに前へ進めることができます。

信頼されやすくなり、仕事のチャンスが増える

「決断力」のない人は仕事が停滞しがちです。「あの人に頼めば何とかなる」「何かが変わる」と他者から信頼されれば、相談や依頼が増えます。信頼を築いていけば、仕事のチャンスが増えていくことでしょう。

やりがいを感じて仕事のモチベーションが上がる

「決断力」を持って意思決定をすると、自分で仕事を動かしている感覚が得られます。逆に、上司や同僚が決断した仕事を一方的に与えられるばかりだと、やらされている感覚が強くなり、やりがいを感じることが難しくなる場合もあるでしょう。自分で決断するというのは、やりがいにつながるのです。

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今から決断力を鍛えるには?

今から決断力を鍛えるには?

「決断力」を鍛えるのに、もう遅いということはありません。今からでも取り組める決断力を鍛える方法をご紹介します。

人の意見を聞いて多くの情報を得る

人の意見を聞いて多くの情報を得る、というのは「決断力」を鍛えるのに最適な体験です。一方で、収集した情報はいずれ自分で集約しなければなりません。情報を構造化(ロジックツリーやマインドマップなど)して整理していきましょう。そうすれば、感覚的な決断ではなく、構造化された情報を根拠としたロジカルな決断ができるようになります。

自分で決めたことが「正解」とポジティブにとらえる

自分の決断が「正解」とポジティブにとらえることも必要です。思ったような結果が出なかったとしても、「あの時点で自分にとってベストな決断」として、責任を取る覚悟もつきます。また、それを「失敗」と切り捨てるのではなく、次のチャンスにつながる「決断」と感じるようになり、その循環によって最終的にはよい結果につながる確率が上がります。

小さな「決断」を実践し、振り返る

「レストランのメニューから料理を選ぶ」「休日をどのように過ごすか決める」「ドラマとスポーツ番組のどちらを見るか」など、日常は小さな決断の連続です。何気なく行っていた決断に意識を向け、なぜその決断に至ったのかという根拠をしっかり考える、覚悟を持つ、といったことに挑戦してみましょう。小さな決断の積み重ねで、自分の決断をポジティブにとらえる習慣を身につけられるかもしれません。

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実際に決断するときはどうすればいい?

実際に決断するときはどうすればいい?

実際に決断するときにはどのようなプロセスが必要でしょうか。各プロセスについてご紹介します。

①課題の明確化

まず、何が問題であるのかという課題を明確にします。「会社の業績が下がってきている」という漠然とした話ではなく、「若手営業メンバーの残業時間が増えた」「とある商品の売上が予想を大幅に下回っている」など、なるべく具体的に洗い出しましょう。

②理想とする課題解決の状態を想像する

次に、「問題のある状態がどうなったら課題解決とするのか」というゴールを設定します。先の例でいくと「若手営業メンバーの残業時間をなくす」「とある商品の売上目標を達成する」などです。

③課題解決に至るまでの方法をいくつか示す

ゴールが決まれば、解決に至るまでにどのような方法を取ればいいのかを探します。この時点で大切なのは「これは無理」と決めつけて可能性を除外してしまわないことです。まずは「課題解決に至るまでの方法」を模索してみましょう。

④根拠となる情報収集

課題解決に至るまでの方法が出そろったら、その根拠となる情報を収集していきます。ぱっと思いついたもの以外にも方法がないか、選択肢をさらに広げて調べてみましょう。

⑤優先順位をつける

情報収集が終われば、それぞれの選択肢に論拠や具体的な手順が提示されます。例えば、「業務工数削減のために事務ソフトを導入する」という選択肢があった場合、「投資費用と具体的に削減される工数を見積もる」などです。ここで実際の状態と照らし合わせて、実現可能かどうか、メリット・デメリットを加味したうえで優先順位をつけていきます。

⑥決断

優先順位が決まったら、その中でどの方法を選ぶのかを決断します。優先順位の高い方法が必ずしも最善の手だとは限りません。どの方法を取ればどんな未来が待っているのか、周囲への影響や実現度も考慮に入れつつ決断しましょう。

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決断する際の注意点

決断する際の注意点

自分で決断するのは、プロセスの最終ステップです。失敗を必要以上に恐れる必要はありませんが、防げるミスによる失敗は避けたいもの。特に社会人経験が少ない場合、自己判断で決断を下してしまったり、思い込みや決めつけで仕事を進めてしまったりすると、ミスの原因になる可能性があります。そうならないためにも、決断の根拠となる情報の収集はとても重要です。インターネットや噂だけでなく、新聞や雑誌、論文など情報の発信元が明確で信頼できる情報源から収集したものを選ぶようにしましょう。

また、その決断の結果、誰の役に立つのか、仕事にどのような貢献ができるのかという視点も重要です。影響を受ける人やモノ、環境にも想像力を働かせなければ、よい決断とは言えません。決断することが目的なのではなく、決断によってよりよい結果になることが、よい決断の目的だという本質を忘れないようにしましょう。

決断力を身につけてよりよい環境づくりを

複数の選択肢から責任を持って決定し、実行する力である「決断力」は、どのような職種であろうと必要とされている力です。先行きが不透明で予測不能な現代では、前例が通用するとは限らず、新しい決断が求められます。多様な価値観や考え方、複雑な社会課題などに触れ、経験の幅を広げることが「決断力」につながります。今いる環境をよりよいものにするためにも、「決断力」を身につけておきましょう。

(監修プロフィール)
監修:一般社団法人 社会人基礎力協議会
経済産業省が立ち上げた「社会人基礎力育成グランプリ」の開催を引き継ぐために2013年に大学教職員の有志で設立された団体。2018年に経済産業省が「新社会人基礎力」を発表すると同時に、リカレント教育および研究部門を加え、「人生100年時代の社会人基礎力」の普及を目指し、一般社団法人となった。代表理事は拓殖大学商学部教授兼株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY取締役COOの長尾素子。

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