適応力は多様性の時代に必須! その理由やメリット、キャリアアップへの役立て方を解説

「適応力」とは、新しい環境においてストレスを感じずに対応しながら、パフォーマンスを発揮する能力です。この記事では、日々変化し続けるビジネスシーンで、適応力が求められる理由や身につけるためのポイントを解説します。

適応力は多様性の時代に必須! その理由やメリット、キャリアアップへの役立て方を解説

ビジネスシーンでは、新たな環境や人、習慣に遭遇する機会がたくさんあります。どんな状況でも高いパフォーマンスを発揮するには「適応力」が必要です。この記事では、ビジネスにおいて適応力が必要とされる理由をはじめ、適応力によるメリット、適応力の高い人の特徴を紹介します。そのうえで、今から適応力を高める方法と、転職やキャリアアップへのつなげ方について社会人基礎力協議会の代表理事である長尾素子さんに伺いました。

ビジネスにおける適応力とは?

ビジネスにおける適応力とは?

適応力とは、新しい環境や人、習慣、考え方などにストレスを感じることなく対応する能力です。いつもと異なる環境だとしても、普段と同様、もしくはそれ以上のパフォーマンスを発揮できるかどうかで、ビジネスにおける適応力が問われます。続いて、適応力に似た意味を持つ「順応力」と「対応力」との違いについて見てみましょう。

「順応力」との違いは?

順応力とは、自分の考え方や行動を変化させることで、新たな環境に自分を合わせていく能力です。環境に合わせていく力が順応力で、能動的に行動して環境を自分に引き寄せるのが適応力というとイメージしやすいでしょう。

「対応力」との違いは?

対応力とは、良い結果を出すためのパフォーマンスと言い換えられます。例えば、「トラブルに対して速やかに行動し、良い結果を得た」という状況においては、対応力の有無が評価されます。良い結果という出来事にアプローチするのが対応力、自身が発揮するパフォーマンスに焦点があたるのが適応力といえます。

ビジネスにおいて適応力が必要とされる理由とは?

ビジネスにおいて適応力が必要とされる理由とは?

ビジネスパーソンにとって適応力が必要となる背景には、次の理由があります。

人材の流動性が高まっているから

終身雇用制や年功序列型賃金など旧来の働き方が変化し、今では転職が当たり前の時代になりました。自分が転職した場合は、そのたびに新たな職場や環境に慣れる必要があります。また、自分が動かなかったとしても、転職によって異なる組織の文化を持った上司や部下、同僚が入社してくる可能性もあるでしょう。

さらに、日本人だけでなく海外の人と働く機会も増えています。こうした価値観、習慣、考え方が多様な人々と協働しながら、最大限のパフォーマンスを発揮することが求められているため、これまで以上に適応力が重要視されているのです。

テクノロジーが急速に進化しているから

生成AIが出現したことで、これまで人が行っていた仕事の多くがテクノロジーに代替できるようになりました。今後のビジネスシーンでは、人がどのような役割を果たしていくのかを考えることが課題になります。テクノロジーとの共存は、社会にさらなる変化をもたらしていくことになるでしょう。テクノロジーの進化と人の役割との共存を考えるなかで、変わり続ける環境での適応力が求められていくことが予想されます。

働き方が変化していっているから

昨今の企業では、ジョブ型雇用や、多様性や相違を活かしたD&I(Diversity & Inclusion)を前提とした働き方などが取り入れられるようになりました。このような状況から、一人ひとりがどのような人生やキャリアを積んでいきたいのか、常に考え行動することが重要です。生き方の選択肢が広がった今、自ら決断し、適応する力が求められていくでしょう。

予測不能なVUCAの時代が到来しているから

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの頭文字を取った造語で、環境が目まぐるしく変化し、将来の予想が難しい状況を指します。例えば、新型コロナウイルス感染症では、これまでの当たり前が通用せず、人間によるコントロールが難しい状況に陥りました。新型コロナウイルス感染を前提とした社会の仕組みを新たに考えなければならなかったことも、適応力が必要とされた出来事だったと言えるでしょう。

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適応力を身につけるメリットは?

適応力を身につけるメリットは?

適応力を身につけると、ビジネスにおいてさまざまなメリットが得られます。主なものを紹介します。

変化に対する耐性が得られる

人は誰しも、変化を避けて現状を維持しようとしてしまいがちです。これを、「現状維持バイアス」といいます。そのため、大抵の人は変化という状況に対してストレスを感じてしまいます。適応力を身につけることは、変化に対する強い耐性を獲得した状態とも言えるでしょう。

異文化を楽しむことができる

ビジネスシーンでも、外国人など異文化で生活を送ってきた人と接する機会が増えてきています。適応力を身につけている人は、偏見を持たずに接することができるでしょう。むしろ異文化を楽しみ、興味を示すことによって、自らの視野を広げることにもつながります。

予想外のことにも柔軟に対応できる

ビジネスはもちろんですが、物事は計画通りに進まないこともあります。急な予定変更に焦ってしまう場合もあるかもしれません。適応力を身につければ、想定外のことが起きても考えを切り替えることができ、ストレスを感じることなく柔軟に対応できるようになります。

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適応力が高い人の特徴は?

適応力が高い人の特徴は?

一般的に「適応力が高い人」とは、どのような人を指すのでしょうか。これまでの内容から、「不測の事態にも柔軟に対応できる人」「どんな場面においても、安定したパフォーマンスを発揮できる人」などをイメージするかもしれません。

ここで、適応力が役に立った例として、大学で教鞭をとるAさんのエピソードを紹介しましょう。

コロナ禍でAさんは、未経験でのオンライン授業を余儀なくされました。さまざまなセミナーでオンライン会議ツールを使った授業方法を学んだものの、実際の授業では機械トラブルや操作に戸惑うことが多く、なかなかうまくいきません。ところが、最新のツールに関しては学生の方が覚えが早く、学生からサポートを受けながら授業を最後まで行うことができたのです。

Aさんはこの経験を通して、「初めてのオンライン授業を楽しんでみよう」「わからなければ学生に聞こう」といったポジティブな気持ちに切り替えることの重要性を実感したといいます。「先生は失敗が許されない」「学生に教えてもらうなどとんでもない」「授業は対面で行ってこそ効果がある」という従来の考えに固執していたら、オンライン授業は頓挫していたかもしれません。

このように、自身の「当たり前」にとらわれずチャレンジして結果につながった原動力が、適応力であったといえます。この例を踏まえながら、適応力のある人とはどのような人を指すのか考えてみましょう。

物事を俯瞰して捉えることができる

変化する出来事の渦中にいると、不安になってしまうものです。適応力がある人は、このような状況で一歩下がって変化の先にあるものを想像できます。変化をプロセスの一部と考え、物事を俯瞰して捉えることは適応力に必要な視点です。

冷静に現状を把握し、整理できる

変化と同様に、新たな環境や見知らぬ状況に対して人はストレスを感じやすくなります。自分が経験したことのない状況においても、まずは冷静に情報を収集して分析すれば、どのように対応すべきかがおのずと見えてきます。

コミュニケーション能力が高い

適応力のある人は、コミュニケーション能力が高い人でもあります。適応力のある人は、新しい環境に慣れるため、さまざまな人から積極的に情報収集を行います。また、広いネットワークを持ち、他者からサポートを受けることができます。

変化や失敗をポジティブに捉えている

変化や失敗に対して敏感になると、ストレスの原因にもなります。これを解消するには、変化や失敗をポジティブに捉えることです。失敗は再チャレンジすることで成功につながります。

好奇心旺盛でチャレンジ精神がある

好奇心とは、変化をポジティブに捉える視点です。そして、チャンスによって生じる変化や新たなことに積極的に向き合うための土台となる姿勢です。チャレンジによって変化を乗り越えたときこそ、適応力が高いと言えるでしょう。

柔軟性が高い

「こうあるべき」という信念が強く、それ以外の意見や価値観を受け入れられない人は、適応力があるとは言えません。人の意見に耳を傾けながら、多様な価値を認め、柔軟に受け入れる姿勢こそ「適応力が高い」と言えます。

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適応力を高める方法は?

適応力を高める方法は?

適応力を自分で高めていくためには、まず日々の行動を意識してみましょう。ここからは、適応力を高めていくための具体的な方法を紹介します。

依頼されたこと、誘われたことは積極的に引き受ける

依頼されたことに対して「自信がない」「面倒」「忙しい」など断わるための理由はたくさんあります。それでも、あえて自信がないことや面倒なことにチャレンジする姿勢が大切です。「どうすればできるのか」という視点を意識しながら向き合ってみましょう。

苦手だと思う人にも積極的に話しかける

苦手だなと感じる人と話をするのは、ストレスを感じるものです。そのような人であっても、まずは相手の反応を意識しすぎず、笑顔で挨拶してみましょう。タイミングを見て相談を持ちかけてみるのもおすすめです。これらをきっかけに、自分のことを話してくれるかもしれません。地道なコミュニケーションによって心の距離を縮めることで、新たに出会った人や苦手だと思い込んでいた人に対する適応力が高まります。

社外の人と交流する

コミュニケーションを取ったり情報収集したりすることは、適応力の向上につながります。異業種交流会や同窓会、セミナーなど、社外の人と出会う場に参加することで、交流の裾野を広げてみましょう。自分の立ち位置を俯瞰する視点を提供してくれるとともに、コミュニケーション能力を向上させるトレーニングにもなります。

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適応力はキャリアアップや転職にも役立つ

適応力はキャリアアップや転職にも役立つ

適応力は、キャリアアップや転職にも役立つ能力です。なぜ役立つのか、その理由を紹介していきます。

社内でのキャリアアップ

キャリアを積み上げていくなかで、大きな仕事を任されることもあるでしょう。その先には、リーダーや管理職といったキャリアアップのチャンスが訪れます。企業が成長していくには、適応力を持つ人材が求められます。伝統的な価値観に固執せず、変化によるリスクを恐れないことは、自身の評価にもつながるでしょう。

転職の面接でもアピールできる要素

転職活動では、志望先の企業が「どのような適応力を求めているのか」を見極めることが重要です。例えば、大きな変革やイノベーションを起こしたいという企業では、適応力の幅広さがアピールポイントになるでしょう。また、グローバル化を重視している場合は、国際的な視野を持つ人材を求めているかもしれません。このように転職では、求められている適応力の傾向を調べ、自分の適応力の質や高さと一致するかを確かめることが大切です。

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適応力をアピールする際の注意点は?

適応力をアピールする際の注意点は?

ビジネスにおいてさまざまな効果をもたらす適応力ですが、やたらにアピールすればいいというものではありません。適応力の高さを過剰にアピールすると、「流されやすい性格なのかも?」と思われかねず、逆効果を生んでしまう可能性もあるのです。物事には二面性があり、「慎重さ」は「優柔不断」、「自律的」は「独断的」と言うことができます。この点を踏まえ、「適応力の高さ」は「流されやすい」と捉えられる場合もあると認識しましょう。

実際に「流されやすい性格では?」と突っ込まれた際は、「そうとも言えるかもしれません」と前置きをし、自分の弱みを俯瞰できていることを伝えましょう。併せて、「ここぞと思ったときは、自分の意見を主張するように心がけています」と、弱みを克服する姿勢を見せるとアピールに繋がります。

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どんな環境でも前向きに仕事に取り組み、適応力を育もう

IT技術の進歩や、多様な価値観・働き方などビジネスの世界は日々めまぐるしくは変化しています。そのためには、適応力が欠かせないスキルとなります。経験のない環境に置かれると、戸惑いや不安などのストレスを感じるかもしれません。それでもまずは、どんな環境でも前向きに仕事に取り組むことで、適応力が育まれ、パフォーマンスにも反映されるでしょう。

(監修プロフィール)
監修:一般社団法人 社会人基礎力協議会
経済産業省が立ち上げた「社会人基礎力育成グランプリ」の開催を引き継ぐために2013年に大学教職員の有志で設立された団体。2018年に経済産業省が「新社会人基礎力」を発表すると同時に、リカレント教育および研究部門を加え、「人生100年時代の社会人基礎力」の普及を目指し、一般社団法人となった。代表理事は拓殖大学商学部教授兼株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY取締役COOの長尾素子。

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